結晶銀河 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

制作 : 大森 望  日下 三蔵 
  • 東京創元社
3.80
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本棚登録 : 254
レビュー : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (555ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488734046

作品紹介・あらすじ

第2回創元SF短編賞受賞作を収録。本巻は、おそらくこれまでで最もSF濃度の高い一冊になったと思う。今年は対象作品全体に占める直球SF作品の数が、例年になく多かったためである。第一世代の超ベテランから未知の新人まで、14人の作家の手になる2010年の日本SFの収穫-。

感想・レビュー・書評

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  • 真っ先に津原泰水「五色の舟」を読みましたが、噂に違わず良かった。異能・異形の者たちと時代背景は、恩田陸「光の帝国」とも雰囲気が似ている。しかし文章はこちらが断然好み。本当にうまいです。
    広島出身の著者なので、やはり背景にあの戦争が色濃くあるのだろうか。多彩な作風の方だが、特にSF作品に昭和の空気がまとわりついているように思う。ノスタルジックという意味ではなく。
    「11」が楽しみすぎてまだ手を出せていない。

    冲方・小川・円城作品は本誌初出時に一読していた。山本作品はわかりやすい皮肉っぷりだが存外突飛でもない。長谷作品は初読だったけど、あの長さを読ませるなあ…。「ロリータ」をSFでやったような…。そして犯罪者とそうでないものを分ける境界の頼りなさはここでも提起されている。現実世界の不安を不安のまま、目に見えるかたちで差し出すとき、著者も言っているように適度な距離感を保てる形式として、SFは独特の地位を占めていると思う。

  • 山へ持ってって、本日読了。
    やはり夏の休みにはSFですな。

  • 『皆勤の徒』を読んでいて、なぜか民明書房が頭に浮かんだ (。A。)

    半分以上は読んでいた作品でしたが、SFSFしている谷甲州と、幻想と量子論が融合昇華された津原泰水が既読の中では双璧。

    上田早夕里のハードボイルドな文体で描かれる世界、長谷敏司の意識と認識と脳と内心と表層に現れる行動・感情を真っ向から描く作品。
    このふたりはやはり凄い。

    もちろん傑作選だから、自分の好みの作品・作家を探す楽しみもある。

    堪能しました。

    冲方があんな話をかけるとは思わなかったのも拾いもの。

  • 編:大森望、日下三蔵、創元SF短編賞受賞
    メトセラとプラスチックと太陽の臓器(冲方丁)◆アリスマ王の愛した魔物(小川一水)◆完全なる脳髄(上田早夕里)◆五色の舟(津原泰水)◆成人式(白井弓子)◆機龍警察火宅(月村了衛)◆光の栞(瀬名秀明)◆エデン逆行(円城塔)◆ゼロ年代の臨界点(伴名練)◆メデューサ複合体(谷甲州)◆アリスへの決別(山本弘)◆allo,toi,toi(長谷敏司)◆じきに、こけるよ(眉村卓)◆皆勤の徒(酉島伝法)(創元SF短編賞受賞)◆二〇一〇年の日本SF界概況(大森望)

  • 毎回全編読み終えてから感想を書いているが
    最後の解説を読み終えるころには
    最初のほうに何が書かれていたか既に忘れている
    覚えているふりをして思い出して感想を書く先行馬と
    読み終えたばかりで印象強い追い込み馬はどちらが有利か
    もともとの感想ていどを思えばどちらでもわりとどうでも良い

    今回はSF度合いでなくタグ付けのような分類形式で測る


    沖方丁 『メトセラとプラスチックと太陽の臓器』
    ★*4 分類:未来予想随筆
    SFマガジン2011年7月号の東日本大震災に対する特集での
    「10万年後のSF」は印象深かった
    小川一水、長谷敏司お二方も並び書かれていたが個性の違いが
    短い同じ主題にも文章でなく切り口にはっきり現れることよ
    この作品は震災前に書かれたもののようだが
    上の「10万年後の」と同じおもむきの随筆なあじわい
    大人が子供のために
    事件人口両面で「日本のおわりはじまった」な2011年だが
    世界が終わるわけでもないわけで


    小川一水 『アリスマ王の愛した魔物』
    ★*4 分類:計算機のある寓話
    変換したら「アリス魔王の愛した魔物」になった
    さもありなん
    この作者らしい物語発想の豊かさを感じる作品
    魔物と王の接続がそれほど効果的に決まっていなかったかも
    やや語り説明が長かったかも


    上田早夕里 『完全なる脳髄』
    ★*3 分類:サイボーグフランケンシュタイン
    この作者の印象は最初に読んだ『魚舟獣舟』以降右肩下がり
    構成も読みづらいだけだしことばも上滑りに感じる


    津原泰水 『五色の舟』
    ★*5 分類:やや奇形趣味幻想小説
    上手い
    文章も上手いのだろうけれど
    その上手な様をわかっていないで褒めようもないので
    話の並べ方や見せ方や登場人物の個性や配置や台詞が上手い
    ここをこう並べ替えたらなどという素人判断を寄せ付けない


    白井弓子『成人式』
    ★*4 分類:教養小説+マンガ+少女
    題名どおり「大人になる通過儀礼」という教養小説と冒険小説の接続
    『樹魔』とかあのあたりのSF風なファンタジーで
    わかったふうなことを言うなら
    人間の女性においては「出産」という
    大人とするに「適当」に過ぎるものがあるゆえに
    こういうふうに大人となる時点が必要なのだろうか
    少女小説でないけれど(女の一代記みたいな)大人ではない女性的主題のもの
    アニメの『おもひでぽろぽろ』や『ワンダーワンダフル』や本作みたいなを読むと
    そんなように思う
    「教養小説」は男が大人になる話と思う女性にとっては少し違うものなのかと
    どうだかわかるものでもないが


    月村了衛 『機龍警察 火宅』
    ★*3 分類:ミステリ
    この外伝でなく本編の方はSF風味あるらしいが
    これ自体は警察ものミステリとしか読みようがない
    ミステリとしては短いからとはいえ都合よすぎ


    瀬名秀明『光の栞』
    ★*3 分類:なんでもない風景賛美なおもむき
    こういうふいんき勝負の作品をどう分類したらよいか悩むところ
    最初の「メトセラとプラスチックと~」も同じようなものなのだが
    活版印刷からなる書物というものは素晴らしい
    というびぶりおまにあなところに共感できないと楽しみがたい
    世界の大多数のひとにとって
    本が必要なもの欲しいもの面白いものかというとそうでもない
    人間文化文明にとって必要不可欠なのは確かでも
    テレビとか車とか電話のほうがすばらしいと思うのでなかろうか
    本は勿論冷蔵庫も洗濯機がなくとも生きていけるが
    携帯か最低限テレビがないと生きていけない日本人は多そうだ
    ガラパゴスについては名前どおりわざとそうしている目の付け所が鋭いひとな感
    まねした電器はお隣の国でなく日本の合言葉


    円城塔 『エデン逆行』
    ★*- 分類:数理SF
    前回は普通に読めて驚いたが今回は安定の読めなさ
    それでもいつもよりはわかったふうな風味な気もしないでもない
    バラード『時間都市』みたいな情景か
    やはり数理素材は頭のいいひとに逐次解説してほしい


    伴名練 『ゼロ年代の臨界点』
    ★*4 分類:SF+評論+パロディ
    ネタバレ危険な一発ネタの評論作品
    SFマニアでもなんでもないので
    埋め込まれているだろう細かいネタはさっぱりわからないが
    それでも楽しくしっかり読める


    谷甲州 『メデューサ複合体』
    ★*3 分類:冒険SF+薀蓄
    土木建築SF 
    ただこの話だけだと
    SFなのかというと舞台が宇宙だからなだけで
    地上で土木建築薀蓄職業ものとしても成り立つとは思う
    がそれをいったらあれもこれもSFでないか
    『クレギオン』のように大ネタふるうとSFという感じがますます感
    職業ものとしてはそこそこだがSFと結びつけて効果的かというとどうか
    ハインラインなら同じ題材でもっとエンタメ的に面白く書く気がする


    山本弘 『アリスへの決別』
    ★*3 分類:SF+俗
    再読
    前回書いたとおり「俗」な見方で次に来る(下にある)作品と比べ
    「浅い」のだが
    「浅い」から作品として悪いわけではない
    狭い範囲への訴えだからより趣旨が明瞭だし
    おおくのわれわれに合わせた程度として適当である
    もっともそうなれば「ロリコンドン引き」で終わる気もしないではない


    長谷敏司 『allo,toi,toi』
    ★*5 分類:SF+変態
    ファン心理に拠る贔屓目フィルターの曇りを取るのが困難
    こういう中に並べるとちゃんとSFの文章にみえるし
    いつもの完全に完璧に全壁に変態さんにみえるし
    アニマがメイゼルのようにみえてやばい
    そういうわけでSFとして他と比較するのは無理
    好きと嫌いと興味の関係とかいちいち壷に入り過ぎ面白すぎてまずい
    長谷せんせはやっぱりこっち側だぜときもいことを思う


    眉村卓 『じきに、こけるよ』
    ★*5 分類:小説
    どこがSFなのかわからないが趣深い心境小説
    私小説という分類が国語教育の補助資料集みたいな本に載っているが
    この作品がそれだとしてその分類の無意味さを思う
    また「老い」とか「孤独」とかもただようが
    それを周囲と社会と接続しないところが作品の味で
    やはり私小説とはなんだかわからない


    酉島伝法 『皆勤の徒』 
    ★*4 分類:絵本+ファンタジー
    ないぞうどろへどろな軽妙ぐろぐろ描写のファンタジー
    そういう描写がわりとすべてで小説としてはよくわからない
    絵+雰囲気描写文という「絵本」の形式が適当では



    長谷せんせ作品は好みに合いすぎていて他を比較並べるのが難しいが
    沖方、小川、津原の3方はもはや実力に疑いなく高品質安定
    円城作品はいつもどおり何が書いてあるかわからないがすごそうさ安定
    初めて読んだひとでは
    伴名練『ゼロ年代の臨界点』は一発ネタ風なので今後次第
    眉村卓『じきに、こけるよ』もあたりはずれが大きそう
    という印象で新規開拓まではいかない感か

  • 結晶銀河 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

  • 119:買ったのは夏だけど、ようやく読了。アンソロジーということで、「NOVA」などで読んだ短編が多くありましたが、小川一水「アリスマ王の愛した魔物」はさすがとしか言えない見事な短編。他には、円城塔「エデン逆行」、津原泰水「五色の舟」が好きです。どれをとってもずっしり骨太なSFで、(読みにくいものもあるけど)濃密な一冊。

  • 2010年度のSF傑作選
    半分近くは作家名で本を買っちゃてる作家の作品だったが、『皆勤の徒』を読んでみたくて購入。
    なんとまぁ悍ましくも、グロテスクな世界でしょ。^^;
    酉島伝法はイラストレーターでデザイナーでもあるってことで、絵本で読んでみたいな。

  • どの作品も内容が濃くて読み応えがあった。中でもallo,toi,toi は傑作で何度も読み返してしまった。

  • 2010年に発表されたすぐれたSF短編作品を集めたアンソロジー。どの作品も悪くはないが全体的には自分の好みではないものが散見され、手放しでお勧めできるものではない。好みの作家さんの作品が収録されているか確認してから読むといいだろう。収録作品で個人的に好きなのは、小川一水さんの『アリスマ王の愛した魔物』、谷甲州さんの『メデューサ複合体』、山本弘さんの『アリスへの決別』だ。

    以下、各作品の感想。

    ◎メトセトラとプラスチックと太陽の臓器:冲方丁
    個人的には「だから何?」という感想しか持てなかった。後日談があれば読んでみたい。もう少し未来の話の方が面白そう。

    ◎アリスマ王の愛した魔物:小川一水
    文句なしに面白い。コンピュータ登場以前の人力計算機「算厰」で世界を征服していく物語。計算で未来を予測し判断を下す、現代では意思決定支援システムや株価や経済状況を計算するコンピュータが該当する。個人的にも算厰くらいのコンピュータが欲しい。2050年くらいには個人が使える算厰みたいな機器ができているかもしれないな。会社の経営者や政治家が要らなくなる。

    ◎完全なる脳髄:上田早夕里
    ぐいぐい引き込まれるドライブ感が最高。読んでいて伊藤計劃の『屍者の帝国』が頭の中に出てきた。生きている人間とは何かを考えさせる。

    ◎五色の舟:津原泰水
    様々なことを考えさせられる作品。完璧な人間はいないと言えば多くの人は頷くだろうが、誰もが欠損を抱えていると言えば多くの人が否定するのではなかろうか。上手く表現できないが、幸せを追及する姿勢だけは変わらないのかななどと感じた次第です。

    ◎成人式:白井弓子
    大人になるための儀式として樹木の幹がつながった円環を一周するマンガ。儀式というよりも冒険をするのだが、かなり厳しい旅になる。壮大な物語なのでページが少ないのが物足りない。

    ◎機龍警察 家宅:月村了衛
    あまりSFっぽくなく、どちらかというとミステリの部類だろう。機龍がSFのガジェットになるのだが、言葉としては登場するものの実物は出てこない。シリーズものなので、他の長編を読んでみたい。純粋にエンターテインメントとして面白いのだから。

    ◎光の栞(しおり):瀬名秀明
    電車の中で読んでいたので、途中で栞を挟まなければならない状況になった。だからというわけではないが、読み始めたときのドキドキ感が再開してからは落ちてしまった。また、フランケンシュタインとどういう関係があるのか読み取れなかった。一気に読めばよかったと後悔している。それでも印象に残ったのは様々な場面の描写が美しいこと。世界を堪能した感じです。

    ◎エデン逆行:円城塔
    難しい。自分がどこまで理解したのかさえ分からない。内容としては『輪廻の蛇』を思い出した。でもタイムパラドックス物でもなさそうだし。やっぱり分からん。

    ◎ゼロ年代の臨界点:伴名練
    “ゼロ年代”ってそういうことか。他の人のレビューでは面白かったというのが多いけど、私はあまり意味が分からなかった。きっとSF作品をたくさん読んでいる人はクスリと笑うことができたのだろうが、経験値の低い私には、何かとかけているのだろうけど、何とかけているのかさっぱり分からなかった。精進あるのみか。

    ◎メデューサ複合体(コンプレックス):谷甲州
    宇宙土木シリーズ。木星上空に建設された宇宙基地のメデューサ複合体の構造に問題があり、それを修理する物語。メデューサ複合体は100キロメートルにもなる巨大な建築物だ。歪みが検出されたので調べたところ、10時間で崩壊するという結果が出た。メデューサ複合体にいる仮想人格とともにどのように危機を脱出するのか、ドキドキしながら読み進めた。全体的にあっさりしており、人物像をもっと細かく描写してほしかったが、短編なのでこれくらいが限度なのだろう。長編で読みたい。

    ◎アリスへの決別:山本弘
    児童ポルノの行き過ぎた規制に対する見事な回答。ラストの言葉には震えた。規制は正義ではない。殺しているのだ。これは傑作である。

    ◎allo,toi,toi:長谷敏司
    小児性虐待者で服役中のチャップマン。脳に組み込まれた“アニマ”による治療を受けるが、最後は・・・。いろいろ考えさせられる作品だ。「好き」とは「嫌い」とは。頭の中(脳)に生じた気持ちをどのように他人が見えるようになれば不幸な結果を避けられるのだろうか。また、テクノロジーによって不幸を回避できるのか、曖昧ではあるが回答をもらったように思える。

    ◎じきに、こけるよ:眉村卓
    作者が「私ファンタジー」と呼ぶ作品。ファンタジーではあるが、何となく作者自身が体験した話ではなかろうかと感じてしまう。ジェットコースターのような展開はないが、老人にとっては散歩するだけでも冒険のようなものだろうから、きっとこれは冒険小説だと勝手に解釈した。中高年には響く物語だろう。

    ◎皆勤の徒(と):酉島伝法
    異形の従業員や社長が登場する。体液とかネバネバの液や内臓が出てきて個人的にはあまり好きな世界ではない。ただし、異形の従業員や社長を自分の会社の人に置き換えながら読んでみると、「なんだ、日常じゃないか」と違和感や気持ち悪さがなくなった。ここまで想像できれば物語は(自虐的だが)喜劇のように思える。否定的ともとれるコメントで申し訳ないが、作品自体は素晴らしいものだ。独特の世界観があって、読者を空想の世界に誘ってくれる。よくこのような話を短編にまとめられたなあと感心する。長編でもいけそうな気がしました。

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