結晶銀河 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

制作 : 大森 望  日下 三蔵 
  • 東京創元社
3.75
  • (15)
  • (38)
  • (27)
  • (0)
  • (3)
本棚登録 : 289
感想 : 37
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (555ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488734046

作品紹介・あらすじ

第2回創元SF短編賞受賞作を収録。本巻は、おそらくこれまでで最もSF濃度の高い一冊になったと思う。今年は対象作品全体に占める直球SF作品の数が、例年になく多かったためである。第一世代の超ベテランから未知の新人まで、14人の作家の手になる2010年の日本SFの収穫-。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 真っ先に津原泰水「五色の舟」を読みましたが、噂に違わず良かった。異能・異形の者たちと時代背景は、恩田陸「光の帝国」とも雰囲気が似ている。しかし文章はこちらが断然好み。本当にうまいです。
    広島出身の著者なので、やはり背景にあの戦争が色濃くあるのだろうか。多彩な作風の方だが、特にSF作品に昭和の空気がまとわりついているように思う。ノスタルジックという意味ではなく。
    「11」が楽しみすぎてまだ手を出せていない。

    冲方・小川・円城作品は本誌初出時に一読していた。山本作品はわかりやすい皮肉っぷりだが存外突飛でもない。長谷作品は初読だったけど、あの長さを読ませるなあ…。「ロリータ」をSFでやったような…。そして犯罪者とそうでないものを分ける境界の頼りなさはここでも提起されている。現実世界の不安を不安のまま、目に見えるかたちで差し出すとき、著者も言っているように適度な距離感を保てる形式として、SFは独特の地位を占めていると思う。

  • 山へ持ってって、本日読了。
    やはり夏の休みにはSFですな。

  • 『皆勤の徒』を読んでいて、なぜか民明書房が頭に浮かんだ (。A。)

    半分以上は読んでいた作品でしたが、SFSFしている谷甲州と、幻想と量子論が融合昇華された津原泰水が既読の中では双璧。

    上田早夕里のハードボイルドな文体で描かれる世界、長谷敏司の意識と認識と脳と内心と表層に現れる行動・感情を真っ向から描く作品。
    このふたりはやはり凄い。

    もちろん傑作選だから、自分の好みの作品・作家を探す楽しみもある。

    堪能しました。

    冲方があんな話をかけるとは思わなかったのも拾いもの。

  • メトセトラ:2
    アリスマ:3
    完全なる脳髄:4
    五色の船:1(sfじゃなくない?)
    成人式:1
    機龍警察:3(よかったけどsfではない)
    光の栞:1
    エデン逆行:1
    0年代:意味不明
    メデューサ複合体:4(こういうのがsfっていうと思うの)
    アリスへの決別:1(気持ち悪い)
    あろあろといとい:0(最高に気持ち悪い。作者やばい)
    じきにこけるよ:1(sfではない)
    皆勤の徒:0(吐き気を催す。読まないほうがいい。ものすごく気持ち悪い)

    前半はまぁまぁだったけど、sfじゃないの多いし、
    後半のは気持ち悪い読物で、最低だった。

  • 冲方 丁「メトセラとプラスチックと太陽の臓器」
    小川一水「アリスマ王の愛した魔物」
    上田早夕里「完全なる脳髄」
    津原泰水「五色の舟」
    白井弓子「成人式」
    月村了衛「機龍警察 火宅」
    瀬名秀明「光の栞」
    円城 塔「エデン逆行」
    伴名 練「ゼロ年代の臨界点」
    谷 甲州「メデューサ複合体」
    山本 弘「アリスへの決別」
    長谷敏司「allo, toi, toi」
    眉村 卓「じきに、こけるよ」
    酉島伝法「皆勤の徒」(第2回創元SF短編賞受賞作)

    伴名 練「ゼロ年代の臨界点」が面白かった。「皆勤の徒」はもう読み切れる年齢ではなくなった。

  • 20190908
    2010発表のSF短編アンソロジー。収録数も多く、満足できる。
    アンソロジーは新たな作家さんとの出会いがあるのでいいなぁと思うが、複数読んでいるとかぶりが出てくるのが少し残念。SFが背景にあるミステリから、SFのふりをした幻想小説まで。しかし、幻想系は自分と合わないと全く意味がわからないまま終わるものだ。酉島伝法さんの作品は全くわからなかった。伴名練さんの作品はテンポもよく、詰め込み具合がよかったので、他の作品も読んでみたい。

  • 編:大森望、日下三蔵、創元SF短編賞受賞
    メトセラとプラスチックと太陽の臓器(冲方丁)◆アリスマ王の愛した魔物(小川一水)◆完全なる脳髄(上田早夕里)◆五色の舟(津原泰水)◆成人式(白井弓子)◆機龍警察火宅(月村了衛)◆光の栞(瀬名秀明)◆エデン逆行(円城塔)◆ゼロ年代の臨界点(伴名練)◆メデューサ複合体(谷甲州)◆アリスへの決別(山本弘)◆allo,toi,toi(長谷敏司)◆じきに、こけるよ(眉村卓)◆皆勤の徒(酉島伝法)(創元SF短編賞受賞)◆二〇一〇年の日本SF界概況(大森望)

  • 毎回全編読み終えてから感想を書いているが
    最後の解説を読み終えるころには
    最初のほうに何が書かれていたか既に忘れている
    覚えているふりをして思い出して感想を書く先行馬と
    読み終えたばかりで印象強い追い込み馬はどちらが有利か
    もともとの感想ていどを思えばどちらでもわりとどうでも良い

    今回はSF度合いでなくタグ付けのような分類形式で測る


    沖方丁 『メトセラとプラスチックと太陽の臓器』
    ★*4 分類:未来予想随筆
    SFマガジン2011年7月号の東日本大震災に対する特集での
    「10万年後のSF」は印象深かった
    小川一水、長谷敏司お二方も並び書かれていたが個性の違いが
    短い同じ主題にも文章でなく切り口にはっきり現れることよ
    この作品は震災前に書かれたもののようだが
    上の「10万年後の」と同じおもむきの随筆なあじわい
    大人が子供のために
    事件人口両面で「日本のおわりはじまった」な2011年だが
    世界が終わるわけでもないわけで


    小川一水 『アリスマ王の愛した魔物』
    ★*4 分類:計算機のある寓話
    変換したら「アリス魔王の愛した魔物」になった
    さもありなん
    この作者らしい物語発想の豊かさを感じる作品
    魔物と王の接続がそれほど効果的に決まっていなかったかも
    やや語り説明が長かったかも


    上田早夕里 『完全なる脳髄』
    ★*3 分類:サイボーグフランケンシュタイン
    この作者の印象は最初に読んだ『魚舟獣舟』以降右肩下がり
    構成も読みづらいだけだしことばも上滑りに感じる


    津原泰水 『五色の舟』
    ★*5 分類:やや奇形趣味幻想小説
    上手い
    文章も上手いのだろうけれど
    その上手な様をわかっていないで褒めようもないので
    話の並べ方や見せ方や登場人物の個性や配置や台詞が上手い
    ここをこう並べ替えたらなどという素人判断を寄せ付けない


    白井弓子『成人式』
    ★*4 分類:教養小説+マンガ+少女
    題名どおり「大人になる通過儀礼」という教養小説と冒険小説の接続
    『樹魔』とかあのあたりのSF風なファンタジーで
    わかったふうなことを言うなら
    人間の女性においては「出産」という
    大人とするに「適当」に過ぎるものがあるゆえに
    こういうふうに大人となる時点が必要なのだろうか
    少女小説でないけれど(女の一代記みたいな)大人ではない女性的主題のもの
    アニメの『おもひでぽろぽろ』や『ワンダーワンダフル』や本作みたいなを読むと
    そんなように思う
    「教養小説」は男が大人になる話と思う女性にとっては少し違うものなのかと
    どうだかわかるものでもないが


    月村了衛 『機龍警察 火宅』
    ★*3 分類:ミステリ
    この外伝でなく本編の方はSF風味あるらしいが
    これ自体は警察ものミステリとしか読みようがない
    ミステリとしては短いからとはいえ都合よすぎ


    瀬名秀明『光の栞』
    ★*3 分類:なんでもない風景賛美なおもむき
    こういうふいんき勝負の作品をどう分類したらよいか悩むところ
    最初の「メトセラとプラスチックと~」も同じようなものなのだが
    活版印刷からなる書物というものは素晴らしい
    というびぶりおまにあなところに共感できないと楽しみがたい
    世界の大多数のひとにとって
    本が必要なもの欲しいもの面白いものかというとそうでもない
    人間文化文明にとって必要不可欠なのは確かでも
    テレビとか車とか電話のほうがすばらしいと思うのでなかろうか
    本は勿論冷蔵庫も洗濯機がなくとも生きていけるが
    携帯か最低限テレビがないと生きていけない日本人は多そうだ
    ガラパゴスについては名前どおりわざとそうしている目の付け所が鋭いひとな感
    まねした電器はお隣の国でなく日本の合言葉


    円城塔 『エデン逆行』
    ★*- 分類:数理SF
    前回は普通に読めて驚いたが今回は安定の読めなさ
    それでもいつもよりはわかったふうな風味な気もしないでもない
    バラード『時間都市』みたいな情景か
    やはり数理素材は頭のいいひとに逐次解説してほしい


    伴名練 『ゼロ年代の臨界点』
    ★*4 分類:SF+評論+パロディ
    ネタバレ危険な一発ネタの評論作品
    SFマニアでもなんでもないので
    埋め込まれているだろう細かいネタはさっぱりわからないが
    それでも楽しくしっかり読める


    谷甲州 『メデューサ複合体』
    ★*3 分類:冒険SF+薀蓄
    土木建築SF 
    ただこの話だけだと
    SFなのかというと舞台が宇宙だからなだけで
    地上で土木建築薀蓄職業ものとしても成り立つとは思う
    がそれをいったらあれもこれもSFでないか
    『クレギオン』のように大ネタふるうとSFという感じがますます感
    職業ものとしてはそこそこだがSFと結びつけて効果的かというとどうか
    ハインラインなら同じ題材でもっとエンタメ的に面白く書く気がする


    山本弘 『アリスへの決別』
    ★*3 分類:SF+俗
    再読
    前回書いたとおり「俗」な見方で次に来る(下にある)作品と比べ
    「浅い」のだが
    「浅い」から作品として悪いわけではない
    狭い範囲への訴えだからより趣旨が明瞭だし
    おおくのわれわれに合わせた程度として適当である
    もっともそうなれば「ロリコンドン引き」で終わる気もしないではない


    長谷敏司 『allo,toi,toi』
    ★*5 分類:SF+変態
    ファン心理に拠る贔屓目フィルターの曇りを取るのが困難
    こういう中に並べるとちゃんとSFの文章にみえるし
    いつもの完全に完璧に全壁に変態さんにみえるし
    アニマがメイゼルのようにみえてやばい
    そういうわけでSFとして他と比較するのは無理
    好きと嫌いと興味の関係とかいちいち壷に入り過ぎ面白すぎてまずい
    長谷せんせはやっぱりこっち側だぜときもいことを思う


    眉村卓 『じきに、こけるよ』
    ★*5 分類:小説
    どこがSFなのかわからないが趣深い心境小説
    私小説という分類が国語教育の補助資料集みたいな本に載っているが
    この作品がそれだとしてその分類の無意味さを思う
    また「老い」とか「孤独」とかもただようが
    それを周囲と社会と接続しないところが作品の味で
    やはり私小説とはなんだかわからない


    酉島伝法 『皆勤の徒』 
    ★*4 分類:絵本+ファンタジー
    ないぞうどろへどろな軽妙ぐろぐろ描写のファンタジー
    そういう描写がわりとすべてで小説としてはよくわからない
    絵+雰囲気描写文という「絵本」の形式が適当では



    長谷せんせ作品は好みに合いすぎていて他を比較並べるのが難しいが
    沖方、小川、津原の3方はもはや実力に疑いなく高品質安定
    円城作品はいつもどおり何が書いてあるかわからないがすごそうさ安定
    初めて読んだひとでは
    伴名練『ゼロ年代の臨界点』は一発ネタ風なので今後次第
    眉村卓『じきに、こけるよ』もあたりはずれが大きそう
    という印象で新規開拓まではいかない感か

  • 結晶銀河 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

  • 119:買ったのは夏だけど、ようやく読了。アンソロジーということで、「NOVA」などで読んだ短編が多くありましたが、小川一水「アリスマ王の愛した魔物」はさすがとしか言えない見事な短編。他には、円城塔「エデン逆行」、津原泰水「五色の舟」が好きです。どれをとってもずっしり骨太なSFで、(読みにくいものもあるけど)濃密な一冊。

全37件中 1 - 10件を表示
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×