MM9 (創元SF文庫 ) (創元SF文庫 や 1-1)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 736
感想 : 96
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488737016

作品紹介・あらすじ

地震、台風などと同じく自然災害の一種として"怪獣災害"が存在する現代。有数の怪獣大国である日本では気象庁内に設置された怪獣対策のスペシャリスト集団"特異生物対策部"略して"気特対"が、昼夜を問わず駆けまわっている。多種多様な怪獣たちの出現予測に、正体の特定、自衛隊と連携しての作戦行動…。相次ぐ難局に立ち向かう気特対の活躍を描く本格SF+怪獣小説。

感想・レビュー・書評

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  • 「怪獣小説」とは、日常の中に“怪獣”という架空の生き物を如何にリアルに存在させられるストーリーを構築できるか?が最も重要なポイント。超トンデモな話だけに設定に嘘とハッタリの骨格はしっかりしておかないとストーリー自体がいとも簡単に破綻してしまう。登場するキャラクター造形や怪獣の存在に人間社会が翻弄されるも、如何にして話を収束させられるか「上手なホラ」が求められる。また、作者に「照れ」があると一気に胡散臭くなってしまうという作品としては非常に難しいジャンルでもある。
    本書は「怪獣」という生物が既に存在して、人間側の対応が自然災害と同じ扱いとなっている「もう一つの現代」を舞台にした怪獣小説短編集。バラエティー豊かなキャラクター達の繰り広げるホラ話をテンポ良くまとめて手堅く仕上げたストーリーは、昭和60年代のテレビ番組「空想特撮シリーズ」を髣髴とさせてくれる。
    明日の朝、通勤電車の窓から「奴ら」に逢う事が出来るだろうか?ふとそんな妄想を抱かせてくれる良作。

    • bandit250fさん
      本シリーズをネットで読める事をご存知ですか?「WEBミステリーズ!」と言うサイトで無料公開しています。2作目の連載中に気付いて仕事中に全部読...
      本シリーズをネットで読める事をご存知ですか?「WEBミステリーズ!」と言うサイトで無料公開しています。2作目の連載中に気付いて仕事中に全部読んでしまいました。勿論単行本になって読みなおしてからブクロクに載せています。
      2013/10/03
  • 読友さんのお薦め作品。怪獣が災害の一種と位置付けられた現代を舞台に、通称<気特対>の面々が怪獣退治に奮闘する姿を描くSF作品。MM(モンスター・マグニチュード)という災害規模を示す値など、著者拘りの数々の設定は中々魅力的。第一話も変則的な展開なのだが、第二話目にして予想の斜め上を行く変化球を投げてくるのは只々驚愕。私はもう少し地に足のついた設定が好みなので、<ヒメ>や第五話の大怪獣には若干興を削がれるものの、全体的には楽しめた。余談ですが、私が映画館で初めて観た怪獣映画は「ゴジラvsビオランテ」でしたね。

  • 本格SFにして怪獣小説という、異色の作品です。怪獣災害に立ち向かう気象庁特異生物対策部、略して「気特対」に所属する、灰田涼、藤澤さくらたちの活躍をえがいています。

    この世界の物理法則を超えた怪獣の存在を説明するために本書がもち出すのが、人間原理を拡張した「多重人間原理」です。これは、宇宙とそれを認識する意識との関係は複数存在しうるというもので、人間の意識が属している「ビッグバン宇宙」とはまったく異なる物理法則の支配する「神話宇宙」に、怪獣たちは生きていると説明されています。

    凝ったディテール設定と、軽快なストーリーの組み合わせがおもしろくて、オタク心をくすぐられるような作品だと感じました。

  • 油断してました。怪獣小説となっていたので、どーせ子供騙し的な物語だろうと侮っていました。ところが読み始めると、これがなかなか面白い。面白くって、つい惹きこまれてしまいました。
    とにかく設定がユニークです。怪獣は世界各地に現れるのですが、毎年200件近い怪獣災害のうち約5%は日本に集中しています。日本は怪獣大国なのです。
    怪獣による被害は自然災害と同等に扱われ、日本では怪獣の出現とその進路、被害規模を予測し、対策をたてることを任されているのが気象庁です。気象庁の中の特異生物対策本部(気特対)がその役割を担っています。気特対メンバーはあくまで気象庁に勤める公務員ですから、武器は所有していません。怪獣と対峙するのは自衛隊です。そして、タイトルになっている〝MM〟とは、モンスターマグニチュードの略で、怪獣の規模を表す基準値となっています。
    なぜ怪獣が出現するのかということも、SF的論理できちんと説明されています。
    怪獣だって小説になるんだということを、思い知らされました。



    べそかきアルルカンの詩的日常
    http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
    べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え”
    http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a
    べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
    http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2

  • 「ビブリオバトル部」を読んでから、久し振りにSFを読んでみたくなり、その本の巻末に広告が載っていた同じ作者のこの本にする。カバーの絵がそれらしくて、なかなか良い感じ。
    今週も東京出張があったので、読み止しの本を置いて、サラのこの本を持って出たが、サクサク進んで帰りの新幹線の途中で読み終えた。
    台風が来るのと同じように怪獣被害が日常化している世界。有数の怪獣大国である日本において、怪獣たちの出現予測、正体の特定・命名、自衛隊と連携した作戦行動などを行う怪獣対策のスペシャリスト・気象庁特異生物対策部、通称“気特対”の活躍が描かれる。
    最初の2つのお話を読み終えた時には、なんか普通のウルトラQとかそんなものへのオマージュという感じだったが、第3話は飛行怪獣を追った関東縦断スカイチェイスの果て、サスペンスも盛り込まれた話になり小味が効いて来る。
    4つ目のお話からはそれまでにも物理の法則を超えた怪獣の存在に理屈をつけていた「多重人間原理」とやらが詳しく語りだされ、最終話ではそれも踏まえてパラレルワールドとか神話や民話の世界まで総動員した宇宙論が語られる中で、壮大な怪獣同士の闘いが繰り広げられスペクタクル感が満載横溢。
    宇宙人が地球人に憑依するのはバルタン星人とかクトウリュウはキングギドラってくらいまでは良いとして、解説に書かれていたような細かな仕掛けまでは分からず、それらが分かるともっと楽しいのだろうけど、そうでなくても十分に楽しめた。

  • 怪獣の襲来は自然災害の一つであり、気象庁はその怪獣の進路と被害の大きさを予報して警報を発令し、自衛隊を使いそれを殲滅する。この著者でなければ思いつかないであろう突飛なアイディアのSFで面白い。あんな巨大な怪獣が地上に二本足で立つことは、この宇宙の物理法則では不可能なのだが、それにさえこの著者は理論的(判ったような判らないような)な説明が書かれており、さすがのと学会会長なのである。

  •  自然災害の一種として怪獣災害が存在する現代。怪獣たちに立ち向かう気象庁の”特異生物対策部”(通称”気特対”)の活躍を描く連作。

     ゴジラもウルトラマンも見ないまま幼少期を卒業してしまったためか、「怪獣ものなんて子供向けだろう」などと思っていましたが、SF色のかなり強い作品で驚きました。

     どの短編も怪獣が現れた時のシュミレーションや対策がしっかりと練られていて面白いです。世界観も現代なので、怪獣に対し巨大ロボットをぶつける、といったものではなく、
    住民や建物に(なるべく)危害が加わらないように怪獣をを誘導したり、怪獣が発生した時の警報や注意報を発するときも国民からクレームが出ないよう考えているあたりといったリアリティがあるものばかりで面白いです。

     そしてクライマックスではそうした面白みに加え、神話や伝承、トンデモ論理まで飛び出し最後は怪獣大決戦と、いろんな要素を詰め込んだ贅沢っぷり!

     解説でもありましたが有川浩さんの『空の中』『海の底』の自衛隊の活躍を描いたパートに近い雰囲気があります。『空の中』『海の底』の怪獣対策が面白かった人はぜひこちらにも手を伸ばしてほしいです。

  • 100冊ビブリオバトル@オンライン第12ゲームで紹介された本です。オンライン開催。チャンプ本
    2020.08.22〜23

  • ウルトラマンもダイナまでしか見てないからなあ、てなことを考えさせてくれる、小ネタの多さ。ラスボスをぶっ倒したヒメの必殺技はやっぱりエースなのかな。「SFとは筋の通った馬鹿話である」と宣言する山本氏らしく、どう考えたって筋の通らない「怪獣」に、そこそももっともらしい疑似科学的説明をでっち上げてくれる。この力業に拍手。

  •  真面目に取り組むとバカバカしい怪獣SF(一例を挙げると、あれだけの体重をどうやって二足歩行で支えるのか)を「多重人間原理」によって大真面目に説明づけてくれる。
     随所に過去の怪獣映画やテレビ番組へのオマージュがある。そこも嬉しい。
     タイムスケールが違うヒメの目は赤外線を捉え、ちょこまか動く人間が白く光って見えるという着眼は面白い。
     クトウリュウを倒したヒメの技は、ウルトラマンAのバーチカルギロチンだろう。山本先生、お若い。年下の自分がそろそろバカバカしくなっていた「ウルトラマンA」を真剣に視ておられたのか。

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著者プロフィール

元神戸大学教授

「2023年 『民事訴訟法〔第4版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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