- Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488740023
作品紹介・あらすじ
私は内通者Kを殺害した。死体は仲間たちによって埋められ、事件の痕跡は完全に消去された。その後警察が捜査を開始するが、その結果明らかになったのは、Kなる男がどこにも存在しないという事実であった…。非在の男がもたらす不安が"殺人者"を思わぬ結末へと導く表題作ほか、幻の単行本初収録作「開放時間」「内宇宙の銀河」など、著者の真骨頂ともいえる傑作9篇を収録。
感想・レビュー・書評
-
傑作選の第2巻。こちらも再読。
1巻と2巻を比べると、不条理さというか、ワケの解らなさというのはこちらの方が強い。安部公房が一番近いような気がするが、『S』や『K』といった記号的な固有名詞の使い方は倉橋由美子を思わせるところもある。
しかし、好みかどうかで言う話をすると、巻末のあとがきで著者本人が下した評価がイマイチな方が好きだったりもw詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
実はあんまり期待してなかったんですが、読んだらなかなか面白かったです。
書かれたのが1970年あたりなので、今読むと風景も懐かしいようなクラシックなような、その懐古的な雰囲気と、閉塞したSF設定がマッチしていて今のSFにはない味があります。
「メシメリ街道」はなんだか不思議な音感のタイトルといい、不条理な雰囲気といい、小松左京っぽくもあります。
「開放時間」は、タイムマシンができちゃったら目的を失ってしまう人々の姿が面白いです。SF作家が宗教家になってしまうのも皮肉です。
「Tと失踪者たち」は、突然消えていく人類消滅の日を淡々と描いてますが、虚無感あふれるラストといい、好みです。
表題作「殺人者の空」は、学生運動を舞台に、不条理な殺人事件が起こります。自分の殺した男は誰だったのか。しかしこれは正当な殺人なのだ…と逡巡する主人公の辿る道は。これも面白かったです。
この作者の傑作選の1も読んでみたくなりました。
(なぜか2を買ってしまったので) -
作者本人による自信満々の解説は楽しいのだが、本文そのものはどうしても難解で理解できない。何回か読まないとだめなんだろうか。要するにどこが面白いのか「さっぱり」わからない。展開は非常にスリリングで、いったいどうなるんだろうと思うんだけれど、オチがまったく意味不明。この短編集でも同じ感想だ。
途中の作品から、オチが面白くない方向でこうなるんだろうってな予感ができるようになる。その通りのオチになるんだが、面白くない。私には理解できない、久しぶりの小説だなぁ。
作品は以下の通り。
「メシメリ街道」「開放時間」「闇に星々」「Tと失踪者たち」「φ」「森の人々」「殺人者の空」「内宇宙の銀河」「ザ・クライム」 -
山野浩一傑作選のその2。『鳥はいまどこを飛ぶか』と比べると少し時代が後のものが多いのかな。より思弁的で幻想的な内容ヘとシフトしているのが作風の変化として印象的。収録作だけでなく、その掲載順にも配慮が施されているため、二冊併せて作家・山野浩一ヘの入門編として最適。「あとがき」での著者自身による自作への冷静なツッコミも愉しい。
「メシメリ街道」、「内宇宙の銀河」、「ザ・クライム(The Crime)」がお気に入り。