マインド・イーター[完全版] (創元SF文庫) (創元SF文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (509ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488742010

作品紹介・あらすじ

宇宙へ出た人類に襲いかかったもの、それがM・E。ひとつ前の宇宙の残滓であり、人間に悪意をもつ、小天体の姿をした存在。精神を食いちぎり人を異質なものに変える。これを破壊せんと連合はハンターを育成し宇宙へ送るが、戦いは絶望的だ。しかもハンターがM・Eの顎に倒れると、精神的に強く結ばれた恋人や肉親までもが変貌するのだ。日本SFの里程標的傑作を完全版で贈る。

感想・レビュー・書評

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  • 宇宙へ進出した人類に襲い掛かり精神を破壊し、その肉体を異質なものに変化させる鉱物意識体マインド・イーター(M・E)と人類との攻防を基本設定に8話から成る短編は、宇宙と人間、感性と感情、生と死という哲学的テーマを通して、人はなぜフィクションを求めるのか?、SFとは何か?という問いを読者に投げかける。
    1980年日本SF小説の全盛期において小松左京、筒井康隆らも盛んに作品の題材に取りあげたテーマ。その≪文系SF小説≫の中においても本書は今なお傑作を謳われる一作であり、30年前の作品とは思えない全く古さを感じさせない文体と構成は見事。
    1984年にハヤカワJA文庫で刊行され長い間絶版になっていた本書に未収録の2話を加えた「完全版」。

  • 幕切れがあまりにも唐突な作品群だった。意図してそう書かれたものなのだろうが、描かれていない部分が多くてなんとももどかしい。あとがきに至ってその理由らしきものが書かれているが、つまり物語そのものは収斂させず、切り取られた場面の雰囲気やその瞬間のキャラクタたちの感情、そこから想起されるイメージを楽しめばいい感じかね(その構成で損してるな、とも思う)。短編らしいとも言えるか。M・Eが「なんでわかってくれないんだ!?」って苛つくシーン全般と、ケインが作ってるのがキリスト像だと気付いたときが自分の中でのハイライト。
    ハイテンションで解説書いてる飛さんの『象られた力』未読の人がもしいたら、ぜひ読んでみてほしいな。

  • 面白かった。今まで見逃していたのを悔やむほどに。M・Eとそれを破壊するハンターのアクションよりも、M・E症のもたらす悲劇よりも、それら全て(M・Eとは何かも含めて)を通して人間とは、生きることとは何かを問う物語なのではなかろうか。M・Eとの闘いの決着は着かないが、それもまた良し。できればもっとこの世界の話を読みたいものだ。

  •  宇宙に進出した人類を待ち受ける存在マインド・イーターは不治の病を引き起こしその行く手を阻む。強力な敵に人類は絶望的な戦いを挑むが・・・。
     1980年代に一部で高評価を得ていた連作集が完全版としてリニューアル復活。創元の日本SF復刻は良心的な企画が多いがこれも素晴らしい。
     描ききれないような邪悪な存在をいかにして描くかについて様々な手法やアイディアに取り組んでおり、大変野心的。また宇宙に出ることが出来ない人類という視点はディレイニー「スター・ピット」などニューウェーヴとの共通性が感じられ、日本SF史的にも重要な位置を占めると思われる(当時数作読んだ記憶があるが、あんまり凄さに気づいてなかったなー)。サスペンスフルで冒頭を飾る「野生の夢」や豪快な展開の「夢の浅瀬」などスケールの大きいSFらしい作品が本筋のシリーズだが、未来の日常が描かれ音楽をテーマにしているさりげない「サックフル・オブ・ドリームス」が一番好きだったりする(一番ディレイニーっぽい感じもする)。

  • 水見稜。1980年代のみに活躍し、作品数も10作に満たない作家でありながら、今でも名前を見ることがある。
    特にこのマインドイーターは良いニュアンスで名前が出されているのを目にし、一度読んでみたいと思っていた。

    読んでみた感想は「これが30年以上前の作品なのか」というもの。
    MEとの壮絶な戦いを期待していた私には肩すかしではあったが、決して期待外れでは無く、人間の内面、特に弱い部分や気持ちの移ろいの描写はすばらしいものがあった。
    近年のSFでは忘れられている感もある「地球を離れて人間は生きられるのか?」というテーマも含まれていて、宇宙から俯瞰して見た「生きる」とはどういう事かを考えさせられる。

    また、評価の割に作家としての活動期間が短かったので、「もしかしたら早世されているのでは」と思っていたが、2011年の完全版出版時のコメントが載っており安心した。

  • SF

  • 129:ついったで飛浩隆さんが解説を書いておられると話題になっていたので購入。難しかったですが、神林作品と同じニオイがするので読み返すごとに自分の中で解釈が変わってゆくような、そんな気もします。M・Eとの戦闘に始まり、M・E=「Me」の暗示、ヒトの誕生で終焉を迎えるこの作品に込められたものはあまりに多く、一度読んだだけではとても理解が追いつかない、というのが本音。ただただ圧倒的。大切に、何度も読みたい。

  • 当時、毎号欠かさず買っていたSFマガジンに掲載された「野生の夢」を読んだとき、異様な衝撃を受けたことを覚えている。それから30年近くも後の2011年になって再刊された理由は分からないが、ハヤカワ文庫JA版に収録されなかった2作を含めた全作品が一度に読めるようになったのは、ありがたい。
    収録作品:「野生の夢」、「サック・フル・オブ・ドリームス」、「夢の浅瀬」、「おまえのしるし」、「緑の記憶」、「憎悪の谷」、「リトル・ジニー」、「迷宮」

  • 1984年に刊行された短編連作の完全版だが、著者は現在、作家としての活動は全く行っていないようだ。
    面白かっただけに新作が発表される気配すら無いのは残念……。

  • 読後感がすっきりするってわけじゃないのだけど、もう一度読み返したいと強く思える作品。
    マインドイーター、M.E。それってつまり「私」なのだ、という後書きに痺れた。

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