マインド・イーター[完全版] (創元SF文庫) (創元SF文庫)
- 東京創元社 (2011年11月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (509ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488742010
作品紹介・あらすじ
宇宙へ出た人類に襲いかかったもの、それがM・E。ひとつ前の宇宙の残滓であり、人間に悪意をもつ、小天体の姿をした存在。精神を食いちぎり人を異質なものに変える。これを破壊せんと連合はハンターを育成し宇宙へ送るが、戦いは絶望的だ。しかもハンターがM・Eの顎に倒れると、精神的に強く結ばれた恋人や肉親までもが変貌するのだ。日本SFの里程標的傑作を完全版で贈る。
感想・レビュー・書評
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宇宙へ進出した人類に襲い掛かり精神を破壊し、その肉体を異質なものに変化させる鉱物意識体マインド・イーター(M・E)と人類との攻防を基本設定に8話から成る短編は、宇宙と人間、感性と感情、生と死という哲学的テーマを通して、人はなぜフィクションを求めるのか?、SFとは何か?という問いを読者に投げかける。
1980年日本SF小説の全盛期において小松左京、筒井康隆らも盛んに作品の題材に取りあげたテーマ。その≪文系SF小説≫の中においても本書は今なお傑作を謳われる一作であり、30年前の作品とは思えない全く古さを感じさせない文体と構成は見事。
1984年にハヤカワJA文庫で刊行され長い間絶版になっていた本書に未収録の2話を加えた「完全版」。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
幕切れがあまりにも唐突な作品群だった。意図してそう書かれたものなのだろうが、描かれていない部分が多くてなんとももどかしい。あとがきに至ってその理由らしきものが書かれているが、つまり物語そのものは収斂させず、切り取られた場面の雰囲気やその瞬間のキャラクタたちの感情、そこから想起されるイメージを楽しめばいい感じかね(その構成で損してるな、とも思う)。短編らしいとも言えるか。M・Eが「なんでわかってくれないんだ!?」って苛つくシーン全般と、ケインが作ってるのがキリスト像だと気付いたときが自分の中でのハイライト。
ハイテンションで解説書いてる飛さんの『象られた力』未読の人がもしいたら、ぜひ読んでみてほしいな。 -
面白かった。今まで見逃していたのを悔やむほどに。M・Eとそれを破壊するハンターのアクションよりも、M・E症のもたらす悲劇よりも、それら全て(M・Eとは何かも含めて)を通して人間とは、生きることとは何かを問う物語なのではなかろうか。M・Eとの闘いの決着は着かないが、それもまた良し。できればもっとこの世界の話を読みたいものだ。
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SF
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129:ついったで飛浩隆さんが解説を書いておられると話題になっていたので購入。難しかったですが、神林作品と同じニオイがするので読み返すごとに自分の中で解釈が変わってゆくような、そんな気もします。M・Eとの戦闘に始まり、M・E=「Me」の暗示、ヒトの誕生で終焉を迎えるこの作品に込められたものはあまりに多く、一度読んだだけではとても理解が追いつかない、というのが本音。ただただ圧倒的。大切に、何度も読みたい。
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当時、毎号欠かさず買っていたSFマガジンに掲載された「野生の夢」を読んだとき、異様な衝撃を受けたことを覚えている。それから30年近くも後の2011年になって再刊された理由は分からないが、ハヤカワ文庫JA版に収録されなかった2作を含めた全作品が一度に読めるようになったのは、ありがたい。
収録作品:「野生の夢」、「サック・フル・オブ・ドリームス」、「夢の浅瀬」、「おまえのしるし」、「緑の記憶」、「憎悪の谷」、「リトル・ジニー」、「迷宮」 -
1984年に刊行された短編連作の完全版だが、著者は現在、作家としての活動は全く行っていないようだ。
面白かっただけに新作が発表される気配すら無いのは残念……。 -
読後感がすっきりするってわけじゃないのだけど、もう一度読み返したいと強く思える作品。
マインドイーター、M.E。それってつまり「私」なのだ、という後書きに痺れた。