- Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488780012
作品紹介・あらすじ
かつて大量殺人を犯したとされたが、その記憶を消されている人型警備ユニットの“弊機”は、自らの行動を縛る統制モジュールをハッキングして自由になった。しかし、連続ドラマの視聴を密かな趣味としつつも、人間を守るようプログラムされたとおり所有者である保険会社の業務を続けている。ある惑星資源調査隊の警備任務に派遣された弊機は、ミッションに襲いかかる様々な危険に対し、プログラムと契約に従って顧客を守ろうとするが……。ノヴェラ部門でヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞3冠&2年連続ヒューゴー賞受賞を達成した傑作!
感想・レビュー・書評
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小気味良く、設定も面白いSF。寝ずに読むまではいかずとも、翻訳も読みやすいおかげで結構なスピードで読了してしまいました。
当然、下巻も読む予定です。
いつかもわからない相当な未来で、主人公は「人型警備ユニット」の"弊機"(しょーもない指摘ですが、この翻訳は"兵器"とかけているんでしょうか…)が星々を股にかけた活躍?をするというもの。
軽めの謎を交えたストーリーと漂うユーモア感は、どことなくアニメ「カウボーイビバップ」を思い起こしました。(主人公の設定等、全然違うのですが)
上下巻になってはいますが、上巻は大きく2編に分かれていて、割ととっつきやすい感じです。
「ダイアリー」と題するだけに、呟き手の”弊機”のキャラと語り口が面白いというのが第一ですが、この点は文句なし。
機械にしては、連続ドラマに耽溺するなど人間臭く、そのくせ対人恐怖症というギャップ。文中に「運用信頼性」なんて表現がちょくちょく出るのですが、ちょっとしたコミュニケーションのストレスで何%か低下するあたりはお約束ギャグの香りすらします。
そして舞台設定。本著内では詳しく解説されずチラ見せレベルで触れられていくのですが、これも面白い。
政治形態はもはや企業が中心のよう。人間、強化人間、ボットがそれぞれ存在し、共存しつつも独特の距離感を保っている。危険な惑星開発には保険会社が保険を提供し、それには人型警備ユニットが監視役を兼ねてついてくる…等。
ベースには、水面下の氷山のように膨大な設定が眠っているのかなと思わせる見せ方は非常に上手く、これも本著の魅力です。
延々と続けられそうな舞台設定なのですが、下巻で終わっちゃうんでしょうか。とりあえずは下巻も楽しみです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
#日本SF読者クラブ 東京創元社の近刊案内で、本作を知った。これは面白そうとSF者の嗅覚に反応。やはり面白かった。自分のこと(一人称)を、「弊機」と訳したのは妙訳だ。連作ものだが、ミステリーの要素もある。下巻を読み始めたところ。
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最新のSFなのに
何だか懐かしいテイスト。
ちょっとクセのある一人称なので
慣れるまで助走が必要だったけども
全体としては読みやすくて
おもしろかった!
なんといっても主役の"弊機"が愛しい…。
全4話からなる連作短編集ですが
その時々に知り合った人間たちとの
関係の築き方が独特。
なぜならお手本がダウンロードした
映像メディアの連ドラだから(笑)
そもそも人間と関わり持つのもめんどう
…とか言って、少しずつ変化するし。
しかし、女子率の高いSFだ。
どうやら弊機も女性タイプみたいだし
弊機の変化のきっかけを作った
メンサー博士もカッコよかった! -
上下巻に2話ずつのエピソードが収められているオムニバス。
主人公は多くの人間を死に追いやったことのある殺人ボット(アンドロイド)であり、現在は当時の記憶を消され、ある保険会社で警備業務についている。
このアンドロイドが妙に人間くさく、自分のことを”弊機”とへりくだるわりには、人間や統制コンピューターを出し抜く巧妙さと分別を隠し持ち、業務の合間にこっそり古い連続ドラマを見ることを趣味にしている。
ある惑星の探査では調査隊の危機を救い、隊員たちから感謝され異例の好待遇をほどこされるが、安住の身分に釈然としないアンドロイドは黙って脱出し、自らが起こした事件の真相を探ろうと貨物船に乗り込む。
人間のコントロール下から密かに逃れて動き回る元殺人機械という、人類にとって凶悪な存在なのに、行く先々で巻き込まれる悪事はいずれも人間たちが引き起こしたものであり、どちらかというと善意の人間たちを救ったり、悪い人間たちを懲らしめたりする立場になってしまうところがおかしい。
冷めた視線で人間たちを観察し、とぼけた感想を述べる元殺人ボットが、人間たちの予期せぬ善意に対して感情を動かされる場面は、単なる不器用な人のように見え、温かく見守りたい気持ちになる。下巻の残り2話のエピソードも楽しみ。 -
対人恐怖症の殺人ロボット。いいじゃないか。
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いやに人間くさいけど、機械以上人間未満な自律的な人型機械である主人公が面白い。人間不信気味なのに徹底して顧客である人を守ろうとし、それでいて隙あらば逃避気味にドラマに耽溺する。ちょっと見たことない主人公象です。
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〈弊機〉って読めますか?意味はわかりますか?
これは、本書の主人公が自身を呼ぶときの一人称です。僕でも俺でも私でもない「弊機(へいき)」。
クローンの皮膚という有機的部分と、機械という非有機的部分の複合体=〈構成機体〉である主人公「弊機」は、保険会社の所有する人型警備ユニットで、会社の顧客の警備を業務としています。
会社が部品代をケチったことによる不具合とも言われていますが、「弊機」には大量の顧客を殺してしまったという過去があるようで、会社からその時の記憶を消去されています。
記憶消去後に起動する際に、再び殺人ロボットになってしまうのではという自身への恐れと会社への不信から、体内の「統制モジュール(人間に従うよう行動を制御する部分)」を自分自身でハッキングすることで、思考と行動の自由を手に入れ、会社や周囲にはそれをひた隠しに隠して、変わらず仕事を続けています。
「弊機」という一人称から想像がつくかもですが、この「弊機」、生真面目で気難しく、周囲(特に人間)とのつき合いが苦手で、孤独な場所に閉じこもってネットワークからダウンロードする連続ドラマを延々と観ているのが大好きという、なかなかに拗れたキャラです。
そういった可笑しみの反面、「弊機」が遭遇する事件は、なかなかタフで危険で血生臭いときもあります。
SFでありながら、個人的な感想としてはハードボイルドが色濃く出ているように思います。
保険会社の警備ユニットということで、「保険の調査員=オプ=私立探偵」を掛けてるのかなっと思ってしまうほど。
現在に起こる事件や、自らが犯したとされる顧客の大量殺人事件の真相を探るシリアスな部分、拗らせキャラのコミカルな部分、人間が苦手と言いつつも、人間を守るという自らの役割には頑ななまでに忠実で、危険をものともしない姿にホロっとさせられる部分など、誰もがどこかに惹かれるポイントがある、そんな魅力的な小説です。
形式は長編ではなく、ノヴェラ(中長編)が各巻二編ずつ納められた連作集。
特に上巻収録の第一話はヒューゴー、ネビュラ、ローカスの各賞を同時受賞するというトリプル・クラウン、第二話は、第一話に続き2年連続でのヒューゴー、ネビュラ賞のダブル・クラウン受賞など、実績もお墨付きのスグレものです。
作者のマーサ自身が、つい先日Twitterで、「日本語版の写真をゲットしたけど、むっちゃクール!」←(意訳ですw)と呟いた安倍吉俊さんのカバー絵も素敵です。
続編の翻訳を首長くして楽しみにしてます! -
上下一括感想下巻にて
期待は裏切られていない。
『鉄腕アトムの憂鬱』
つづく…
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