マーダーボット・ダイアリー 下 (創元SF文庫)

制作 : 渡邊 利道 
  • 東京創元社
4.42
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本棚登録 : 176
レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488780029

作品紹介・あらすじ

プリザベーション補助隊の事件をきっかけに自由の身となった“弊機”は、強化人間を装いながら自らの大量殺人事件の真相を求め、宇宙を旅する。なぜかトラブルに巻き込まれどおしの弊機は、出会う人間たちの行動に苛立ちながらも、しだいに芽生えてくるさまざまな感情に戸惑う。そんな中で、人類の宇宙進出以前に存在した異星文明の遺物を密かに発掘・独占しようとしている悪徳企業グレイクリスの策動が浮かび上がる。弊機はメンサー博士のため、惑星ミルーの放棄されたテラフォーム施設に潜入を試みるが、そこにはまたしても未知の危険が!

感想・レビュー・書評

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  • 自らの犯した大量殺人事件の真相を探して旅を続ける“弊機”。
    外見を改造し、人間らしくふるまう動きを取り入れるなどしながら、『警備コンサルタントの強化人間』を装って、また人間たちと行動を共にするが…


    これまでの事件は、異星人の遺物を違法に採掘し利益を得ていたグレイクリス社が、違法行為の証拠を隠すために起こした、事故に見せかけた周到な殺人事件だった。
    そして、いくつもの事件に関わり窮地を切り抜けた弊機は、事件の証拠を持つ存在として狙われる。
    弊機を捕えるために、所有者のメンサー博士がグレイクリス社に拘束されたことを知った弊機は、メンサー博士を救出し、グレイクリス社を告発するために自ら危地に飛び込む。


    いやぁ〜、面白かったぁ!

    過去に出会った多くの人間たちから受けた扱いの酷さと、『自分は殺人ボット、暴走ユニットなのである』という自意識から、人間がボットに愛情を持つことや、ボットの人権(?)を擁護しようとする人間を理解できずにいた弊機。
    下巻の一話目で出会った、ペットボットのミキが見せた献身と、ミキが失われた時の喪失感で、またまた戸惑う弊機。
    弊機の高度な知性と、思春期のお子様のような揺らぎまくりの感情のアンバランスさに、何とも言えずくすぐられる。
    「人間に警備をやらせるとこれだからだめなのです」には、笑いが止まらず。

    皆さんのレビューで続編があるらしいと知り、ワクワクしています。

    ただ、アニメやCGを多用した実写映像にするには、弊機の処理能力と運動性能を同時平行的に1/100秒単位のスピードを感じさせるように、なおかつ処理能力に劣る人間にも理解できるように描写しなくてはならないので、スローモーションによる表現ばかりになってしまうでしょう。
    それでは、おそらく退屈で、見るに耐えないものにしかならない。
    そのように描かれるのは、不愉快です。
    なんちゃって。


    最近、何かとストレスフルで、ちょっとしたミスが多い。
    そんな時、「運用信頼性〇〇%、さらに低下中」と心の中でつぶやいて、ちょっと気持ちの凝りをほぐすのが、密かなブームです。

  • 脱走した警備ユニットである"弊機"が、様々な星々における出来事に巻き込まれ(下巻では、自ら飛び込んでいる感の方が強いですが…)、その中で人々と関わっていく、スペース・ウエスタンっぽいSFストーリーの下巻です。
    全体的には優しめのストーリー展開なので、ちょい若めの年齢層を狙ってるのかな?と思いつつ、30代のおっさん(私です)から見ても十分面白い作品でした。

    下巻の書きぶりも上巻と変わらず、"弊機"の屈折した(まぁ人間から見てですがw)語りぶりと、いかに危険な状況でも人間を守り通そうとする真摯さには心打たれるところがありました。
    ※ホントに統制モジュール、ハックしたんだよね…?
    将来、脳を持ったロボットが実用化されたとして、我々は"弊機"と同じような関係性を結べるだろうか…。あと、結局著者が描こうとしていたロボットと人間の関係性というのは、最終的にロボットは人間に収斂するってコトで良いのか?と、結末のくだりについてはどう捉えたら良いんだろう…という感じです。ロボットはロボット、の個性で良いと思うのですが。

    ただ個人的には、続刊が出そうな感じの含みの持たせ方だったので、それだけでも満足です(笑
    「ちょっとSF読んでみたい」需要に最適。気軽に読めて、結構面白いです。アクションシーンは頭がついていかない時がありますが、もし映像化されたら見てみたいなぁ。。

  • #日本SF読者クラブ 下巻を読了。「弊機」の屈折したところががカワイイ、と思いながら読んでいた。読んでいくうちに、「ターミネーター2」を思い起こした。そう、人間を守るミッションなんだと。 

  • 宇宙を放浪するバトー専用タチコマが主人公のスタンド・アローン・コンプレックスな冒険物語、みたいな連作中編集。
    器は多脚戦車ではなくチビ素子(リモート義体)な感じだけど。
    ご丁寧にも、放浪の途中で知り合った愛玩ロボットの名前が「ミキ」ちゃんだったりする。(そのミキちゃんはタチコマンズ・アタックでお釈迦になっちゃったけど)
    作者がどこまで攻殻を意識してるのかは知らないけど。

  • 〈弊機〉って読めますか?意味はわかりますか?
    これは、本書の主人公が自身を呼ぶときの一人称です。僕でも俺でも私でもない「弊機(へいき)」。
    クローンの皮膚という有機的部分と、機械という非有機的部分の複合体=〈構成機体〉である主人公「弊機」は、保険会社の所有する人型警備ユニットで、会社の顧客の警備を業務としています。

    会社が部品代をケチったことによる不具合とも言われていますが、「弊機」には大量の顧客を殺してしまったという過去があるようで、会社からその時の記憶を消去されています。
    記憶消去後に起動する際に、再び殺人ロボットになってしまうのではという自身への恐れと会社への不信から、体内の「統制モジュール(人間に従うよう行動を制御する部分)」を自分自身でハッキングすることで、思考と行動の自由を手に入れ、会社や周囲にはそれをひた隠しに隠して、変わらず仕事を続けています。

    「弊機」という一人称から想像がつくかもですが、この「弊機」、生真面目で気難しく、周囲(特に人間)とのつき合いが苦手で、孤独な場所に閉じこもってネットワークからダウンロードする連続ドラマを延々と観ているのが大好きという、なかなかに拗れたキャラです。
    そういった可笑しみの反面、「弊機」が遭遇する事件は、なかなかタフで危険で血生臭いときもあります。
    SFでありながら、個人的な感想としてはハードボイルドが色濃く出ているように思います。
    保険会社の警備ユニットということで、「保険の調査員=オプ=私立探偵」を掛けてるのかなっと思ってしまうほど。

    現在に起こる事件や、自らが犯したとされる顧客の大量殺人事件の真相を探るシリアスな部分、拗らせキャラのコミカルな部分、人間が苦手と言いつつも、人間を守るという自らの役割には頑ななまでに忠実で、危険をものともしない姿にホロっとさせられる部分など、誰もがどこかに惹かれるポイントがある、そんな魅力的な小説です。

    形式は長編ではなく、ノヴェラ(中長編)が各巻二編ずつ納められた連作集。
    特に上巻収録の第一話はヒューゴー、ネビュラ、ローカスの各賞を同時受賞するというトリプル・クラウン、第二話は、第一話に続き2年連続でのヒューゴー、ネビュラ賞のダブル・クラウン受賞など、実績もお墨付きのスグレものです。

    作者のマーサ自身が、つい先日Twitterで、「日本語版の写真をゲットしたけど、むっちゃクール!」←(意訳ですw)と呟いた安倍吉俊さんのカバー絵も素敵です。

    続編の翻訳を首長くして楽しみにしてます!

  • 39:「統制モジュールをハッキングしたことで、大量殺人ボットになる可能性もありました」が「娯楽チャンネルの全フィードにアクセスできることに気づき」「以来、三万五千時間あまりが経過しましたが」あらゆる娯楽フィードに「たぶん三万五千時間近く耽溺してきました。」冒頭5行で弊機くん愛しすぎた。
    読み進めるにつれ、「弊機」の語りのおかしみや境遇の不憫さ、それでいて機械にも人間にもなれない、なりたくない、このままの自分を認められたい欲求が明らかになり、「人の立場から弊機を評価すること」がナンセンスだと思えてくる。恐らく、読み手や彼の周りの人間たちは弊機が(少年兵のような)「可哀想な」存在であると、無意識に下に見ているのかなあ、と付箋を貼りながら二周目を読んでいます。
    極上のエンタメであり、切実で真摯な弊機がやっぱり愛おしい。
    来年、続編が発表されるとのことなので、そちらもぜひ翻訳して欲しいです。


  • 面白かった〜。
    ほんとに面白い時って、この一言!
    「あなたのこと、ぜーんぶ好き!」って感じ。

    上巻読後『鉄腕アトムの憂鬱』と書いたけど、『用心棒の孤独』も加わり
    『旅の仲間(指輪物語)』も楽しめた。
    (ART最高!ミキ死なないで!)

    設定はSFだから想像力を試されているが、あらすじは極めてシンプルで、すんなり楽しめる。
    主人公が敵中に潜入する時や、攻撃を受けて仲間を守る時、脅したり騙したりして利用できるあらゆる物を味方につけていく様は、爽快の一言。

    これから町を歩くと「あの信号の統制モジュールを乗っ取り、青信号を3秒遅らせて…」「あのコンビニの防犯カメラから、自分の姿を消去して…」なんて空想しちゃいそう。

    さあ、
    向こうから、なんかいいことやってこないか「ピンを打って確認」してみるか。

  • 創元文庫版では上下巻で刊行されましたが、原本では連作中編のようですね。ロボット、パワードスーツみたいなもの、教科人間、ドローンなんかが入り乱れた戦闘が描かれるんですが、弾が飛び交うなかハッキングを仕掛けあって先を読みあうあたりが2000年代のSFらしいですね。

  • こんなに登場キャラクターを愛おしいと思ったことは久しくなかった。
    大好き。
    読み終わるのがイヤでぐずぐずしてしまったほど。

    次作は長編とのこと。
    待ちきれない。

  • 上下巻纏めて。
    まず、主人公の設定がユニーク。『弊機』という一人称も良い(〝弊社〟〝弊店〟と同義語)。こういう訳語を思いつける翻訳家って凄いな。
    語り口調のテンポと語彙の選択が面白くて、それがとぼけた味を出している。ストーリーだけ取り出すとけっこうヘビーなのだが、作中の雰囲気が明るいのはこの訳文のおかげだろう。

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