マーダーボット・ダイアリー 下 (創元SF文庫)

制作 : 渡邊 利道 
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488780029

作品紹介・あらすじ

プリザベーション補助隊の事件をきっかけに自由の身となった“弊機”は、強化人間を装いながら自らの大量殺人事件の真相を求め、宇宙を旅する。なぜかトラブルに巻き込まれどおしの弊機は、出会う人間たちの行動に苛立ちながらも、しだいに芽生えてくるさまざまな感情に戸惑う。そんな中で、人類の宇宙進出以前に存在した異星文明の遺物を密かに発掘・独占しようとしている悪徳企業グレイクリスの策動が浮かび上がる。弊機はメンサー博士のため、惑星ミルーの放棄されたテラフォーム施設に潜入を試みるが、そこにはまたしても未知の危険が!

感想・レビュー・書評

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  • 記録は削除されていますが古巣で殺戮を行った可能性のある警備ユニット“弊機”を主人公に物語が進む、様々な人間模様と状況の変化が絡むハードSF小説の下巻です。
    自称マーダーボットの弊機がメンサー博士のチームを救出し失踪してからの後日譚です。
    相変わらず娯楽作品を観ながら警備ユニット稼業で放浪生活を続ける弊機ですが、どうやら目的があるようで…。
    上下巻読了後の感想として、ハードSFの重さを持ったライトノベルのような世界観の作品であるという印象を受けました。
    近未来ではなく遠未来が舞台なので読み始めは感情移入できるか不安でしたが、弊機の飄々とした態度や言動が可愛らしくて楽しく読み終えることができました。
    次回作があるようなので、邦訳に期待します。

  • 作者のマーサ・ウェルズさんはマジック・ザ・ギャザリングのノベルも書いてるんですね。しかも「ドミナリア」私も数年お世話になりました。弊機くんはMTGの世界だったらアーティファクト・クリーチャー(オーパーツやゴーレム)として扱われるんでしょうか?またはファイレクシア(悪魔や機械兵器の国)だったりして…

    雑談はさておき、マーダーボットダイアリーは、その名の通り「人を殺すために作られた"弊機"」が管理システムをハッキングして自らの意思で行動するようになり、惑星の調査隊に同行し警備をしているところから始まる。

    弊機は、その目的から人間にも嫌われ、弊機としても人間が大の苦手、できれば会話したくないと思いつつ。
    人間がそばにいるといつも気まずい空気…

    保管庫で待機中に映像メディア(連続ドラマ)をみて過ごしている。
    暇があれば、どんな状況でも、数分間だけでも見てる…

    創元SF文庫というと「七つの航跡」依頼で硬派なSFの多い印象でしたが主人公のキャラクター(隠キャ、人嫌い、捻くれ者、ドラマ大好き、仕事はプロフェッショナル)で面白く読ませつつ。もはや人間なの?ロボなの?な感情の動きを暖かく見せてくれる良い話でした。
    「ダイアリー」とあるので、弊機くんの一人語りの形式で文が連なっていくのですが、読みようによっては「システムが出力しているログ」のようにも読める。苦手な人もいるかも。
    続編出るらしいので読みたい。

  • 自分が起こしたとされている過去の大量殺人事件の真相を知るため、強化人間のふりをしながら旅を続けていく弊機。その過程で上巻の顧客、メンサー博士の助けになりそうな証拠を掴むため目的地を訪れる調査隊の警備役として潜り込む。ここで出会った人型ボットのミキが人間と対等な関係を築いているのにイライラするの、それ嫉妬だよねと相変わらずいじけ気味の弊機可愛い。メンサー博士達に再会する時の後ろ向きさが特に。でも危機に対しては優秀に対応する姿は格好良い。相変わらず場面設定の説明がないので想像つけにくいけどそういえばこれ弊機のダイアリーだしそんなもんだで読み進める。道中の経験からちょっとずつ人間に対して心を開いていく姿にはつい怖くないよー、と声かけたくなった。弊機嫌がりそうだけど。しかし皆言うけどこの一人称「弊機」の訳は秀逸だ。

  • さて第三話。第一話で敵対していたグレイクリス社の陰謀の証拠を掴むために、弊機が惑星ミルーへ向かうところから始まる。
    警備ユニットであることを隠しながら、色んなシステムをハッキングし、周囲を監視するとともに自分の痕跡は消しながら行動する姿は、そこらのスパイも顔負け。
    密航した貨物船で一緒に来た調査隊の一行を助けざるを得ないシチュエーションになるが、人間たちの行動に苛立ち、彼らに同行する人型ペットボットに対しても心を乱しながら、次第に芽生えてくる何とも言えない感情に戸惑う弊機が面白い。
    誰もいないはずのテラフォーム施設に潜んでいた戦闘ボット・戦闘ドローンとの闘いや胡散臭い警備員コンサルタントを出し抜きながらの脱出劇が続き、一難去ってまた一難に最後まで気が抜けず(それぞれの思惑が交錯して何だかややこしかったが、グレイクリス社が悪いことをしていることは分かった)。
    あんな風に動くと思わなかったペットボットの最後の行動が泣ける。

    第二話と第三話で掴んだデータをメンサー博士に手渡すため、弊機が再び貨物船に乗ったステーションに戻ったところから始まる第四話。
    しかし博士は所在不明になっており、どうやらグレイクリス社の本社があるハブステーションに連れ去られたらしいことを突き止める。
    ステーションやホテルの警備資源をグレイクリス社が全て買収済みの完全アウェーの中、博士を救出にきたメンバーとともに“最悪一歩手前の作戦”で博士を奪還した後は、パイプ式列車、ポッド、自動キャリアなどを乗り継いでの逃走劇。
    戦闘警備ユニットに殺されそうになったり、ようやく追手を逃れたシャトルが砲艦に回収されてからも艦のシステムに侵入されての危機一髪に、最後まで息がつけず。
    その再会の中で、あれだけ人間と目を合わせて話をするのが苦手なだった弊機が博士をまっすぐ見つめ、『まあ、どうしても必要なら、抱き締めてもらってもかまいません』と言ったり、敵を欺くためとはいえ手を握ったりで、微笑ましく。

    終章、また、どこかへ行くのかと心配したよ。自分がなにをやりたいのか、考えるあいだの居場所ができて良かったね。その内、続編も読みます。

  • 自らの犯した大量殺人事件の真相を探して旅を続ける“弊機”。
    外見を改造し、人間らしくふるまう動きを取り入れるなどしながら、『警備コンサルタントの強化人間』を装って、また人間たちと行動を共にするが…


    これまでの事件は、異星人の遺物を違法に採掘し利益を得ていたグレイクリス社が、違法行為の証拠を隠すために起こした、事故に見せかけた周到な殺人事件だった。
    そして、いくつもの事件に関わり窮地を切り抜けた弊機は、事件の証拠を持つ存在として狙われる。
    弊機を捕えるために、所有者のメンサー博士がグレイクリス社に拘束されたことを知った弊機は、メンサー博士を救出し、グレイクリス社を告発するために自ら危地に飛び込む。


    いやぁ〜、面白かったぁ!

    過去に出会った多くの人間たちから受けた扱いの酷さと、『自分は殺人ボット、暴走ユニットなのである』という自意識から、人間がボットに愛情を持つことや、ボットの人権(?)を擁護しようとする人間を理解できずにいた弊機。
    下巻の一話目で出会った、ペットボットのミキが見せた献身と、ミキが失われた時の喪失感で、またまた戸惑う弊機。
    弊機の高度な知性と、思春期のお子様のような揺らぎまくりの感情のアンバランスさに、何とも言えずくすぐられる。
    「人間に警備をやらせるとこれだからだめなのです」には、笑いが止まらず。

    皆さんのレビューで続編があるらしいと知り、ワクワクしています。

    ただ、アニメやCGを多用した実写映像にするには、弊機の処理能力と運動性能を同時平行的に1/100秒単位のスピードを感じさせるように、なおかつ処理能力に劣る人間にも理解できるように描写しなくてはならないので、スローモーションによる表現ばかりになってしまうでしょう。
    それでは、おそらく退屈で、見るに耐えないものにしかならない。
    そのように描かれるのは、不愉快です。
    なんちゃって。


    最近、何かとストレスフルで、ちょっとしたミスが多い。
    そんな時、「運用信頼性〇〇%、さらに低下中」と心の中でつぶやいて、ちょっと気持ちの凝りをほぐすのが、密かなブームです。

  • 脱走した警備ユニットである"弊機"が、様々な星々における出来事に巻き込まれ(下巻では、自ら飛び込んでいる感の方が強いですが…)、その中で人々と関わっていく、スペース・ウエスタンっぽいSFストーリーの下巻です。
    全体的には優しめのストーリー展開なので、ちょい若めの年齢層を狙ってるのかな?と思いつつ、30代のおっさん(私です)から見ても十分面白い作品でした。

    下巻の書きぶりも上巻と変わらず、"弊機"の屈折した(まぁ人間から見てですがw)語りぶりと、いかに危険な状況でも人間を守り通そうとする真摯さには心打たれるところがありました。
    ※ホントに統制モジュール、ハックしたんだよね…?
    将来、脳を持ったロボットが実用化されたとして、我々は"弊機"と同じような関係性を結べるだろうか…。あと、結局著者が描こうとしていたロボットと人間の関係性というのは、最終的にロボットは人間に収斂するってコトで良いのか?と、結末のくだりについてはどう捉えたら良いんだろう…という感じです。ロボットはロボット、の個性で良いと思うのですが。

    ただ個人的には、続刊が出そうな感じの含みの持たせ方だったので、それだけでも満足です(笑
    「ちょっとSF読んでみたい」需要に最適。気軽に読めて、結構面白いです。アクションシーンは頭がついていかない時がありますが、もし映像化されたら見てみたいなぁ。。


  • 面白かった〜。
    ほんとに面白い時って、この一言!
    「あなたのこと、ぜーんぶ好き!」って感じ。

    上巻読後『鉄腕アトムの憂鬱』と書いたけど、『用心棒の孤独』も加わり
    『旅の仲間(指輪物語)』も楽しめた。
    (ART最高!ミキ死なないで!)

    設定はSFだから想像力を試されているが、あらすじは極めてシンプルで、すんなり楽しめる。
    主人公が敵中に潜入する時や、攻撃を受けて仲間を守る時、脅したり騙したりして利用できるあらゆる物を味方につけていく様は、爽快の一言。

    これから町を歩くと「あの信号の統制モジュールを乗っ取り、青信号を3秒遅らせて…」「あのコンビニの防犯カメラから、自分の姿を消去して…」なんて空想しちゃいそう。

    さあ、
    向こうから、なんかいいことやってこないか「ピンを打って確認」してみるか。

  • #日本SF読者クラブ 下巻を読了。「弊機」の屈折したところががカワイイ、と思いながら読んでいた。読んでいくうちに、「ターミネーター2」を思い起こした。そう、人間を守るミッションなんだと。 

  • 宇宙を放浪するバトー専用タチコマが主人公のスタンド・アローン・コンプレックスな冒険物語、みたいな連作中編集。
    器は多脚戦車ではなくチビ素子(リモート義体)な感じだけど。
    ご丁寧にも、放浪の途中で知り合った愛玩ロボットの名前が「ミキ」ちゃんだったりする。(そのミキちゃんはタチコマンズ・アタックでお釈迦になっちゃったけど)
    作者がどこまで攻殻を意識してるのかは知らないけど。

  • 面白かった。
    SF慣れしてないので上巻の頭は描写の具体的イメージがわかなくて、なかなか頭にスルスル入ってこないところがあったんだけど、よくわからないことはスルーしてもそう支障がないんだなと割り切ってからは楽しめた。
    一人称「弊機」の発明が偉大だ。これだけで面白さ二割増し。

    弊機がだんだん人間らしくなりつつ、「愚かな人間になどなりたくない」とずっとつっぱね続けるのが、またボットなのに矛盾している感じでとても、かわいい。
    メンサーやARTやミキとの関わりで変わっていくのもよかったな。
    ARTは最後また出てこないかな??と期待してたので出てこず残念。続編があるなら読みたいな。

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