- Amazon.co.jp ・本 (177ページ)
- / ISBN・EAN: 9784489007088
作品紹介・あらすじ
高等学校の微分積分で学んだ「ロルの定理」は最大値の存在定理を使って証明される。では、この最大値が存在するという事実が成り立つのはどうしてだろうか?数学的にはどう証明すればいいのだろうか?本書は、こうした観点から、微分積分学の基礎理論となるものを見つめ直し、現在の解析学の基盤となる、位相空間論の諸概念まで、読者を誘う。この部分の難しさは、多くの公式や予備知識を必要とするというのではなく、概念じたいの納得の難しさに、まさに直結している。イメージだけでも、論理だけでも、なかなか理解しづらい難関を、ユニークな構成にしたがって一つひとつじっくりと解説する。
感想・レビュー・書評
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本書の目的は、「実数の連続性」や「関数の連続性」という概念を、直観に頼らず厳密に捉え直すことにある。これらは、高校数学では感覚的な理解にとどめているが、大学初年度の微分積分学の講義で最初に扱われる内容であり、いわば大学数学の入り口部分である。記述が丁寧で文章も読みやすく、高校数学から大学数学への橋渡しとしてちょうどいい。
ただし、本書の証明の一部には、論理の飛躍が感じられる箇所もある。
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以下、本書の概要を記しておく。
第1章では、まずロルの定理の証明を検討することから始める。ロルの定理は微分積分学にとって最も根本的な定理のひとつである。というのも、微分はその定義からわかるように関数の局所的な性質を調べるための理論であるが、それを大域的に広げていく根拠となるのが、このロルの定理だからである。事実、ロルの定理の一般化として、平均値の定理、テイラーの定理が証明され、さらに、第1次導関数の符号と関数の増減や、第2次導関数の符号とグラフの凹凸など、微分法に関する基本的な定理が導かれることになる。
このロルの定理の証明において、「閉区間上の連続関数は最大値・最小値をもつ」(ワイエルシュトラスの定理)という、直観的には明らかな命題が前提されていることを確認し、これを厳密に証明することが、本書の目標として設定される。以下の章では、実数の連続性の概念や、関数の連続性の概念を、直観に頼らず厳密に定義していくことになる。
第2章では、実数の連続性をデデキントの切断公理によって定める。それが、上限・下限の存在定理、有界単調数列の収束定理、区間縮小法の原理と同値であることが確認される。第3章ではε-N論法によって数列の極限を、そして第4章ではε-δ論法によって関数の極限と連続性を厳密に定義する。こうして、連続関数の性質として、最大値・最小値の定理が証明されることになる。また、中間値の定理の証明も与えられる。第5章の前半では、ボルツァーノ‐ワイエルシュトラスの定理、ハイネ‐ボレルの定理の証明が与えられ、ここまでの内容が概ね高木貞二『解析概論』第1章と重なる。
第5章の後半では、連続関数の性質として原始関数の存在定理が証明される。第6章では、一般的な位相の概念が導入され、最大値・最小値の定理が位相空間におけるコンパクト性という広い観点に立って見直されることになる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
完全理解ではないけど初学者としてイメージがつかめたので良書と思う。数学の定理や公理は、突き詰めれば「そういうルールにしたんだからそうなる」みたいなことのようだ。
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「無限」という概念をむりやり定義して「連続である」ということを記述できるようにする。そうすれば、いちばん「良い」ことはどうすればできるようになるのか、とか、未来はどうなるのか、ということについて、考えることができるようになる。数学、解析学の精神のてほどきとして、いい本だと思う。