計算とは何か (math stories)

制作 : 新井 紀子  新井 紀子  上野 健爾  上野 健爾 
  • 東京図書
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レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784489020544

感想・レビュー・書評

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  • おそらく高校生か大学生くらいを想定読者として書かれた数学の読み物。主眼は計算とは何かを考察することを通じて、日頃学んでいる数学がそれぞれどう関連しているかのイメージを与えることにある。そして計算可能性の理論へ誘う。

    理論と計算は違うという冒頭に出てくる議論(p.vi)は面白くて、最初の動機付けとしてよい。数記号の意味はよく分かっても、どうやって計算するのか分からないものは多い。例えば7.39の平方根と10.22の平方根の和はいくつか。1ラジアンのsinと1ラジアンのcosの和は。π-log52は。これらを小数点以下第二位まで求めるには。

    本書では一番平易な複数桁の足し算から初めて、計算のアルゴリズムを追っていく。割り算のアルゴリズム、分数の加減乗除のアルゴリズム、循環小数、円周率、三角関数、対数と続く。これらの計算方法の授業は、概念の意味、式の記法、アルゴリズムの発見、正しさの証明、アルゴリズムの改良の5つからなっている(p.16)。

    これらの計算方法を述べた後、テイラー展開(マクローリン展開)が扱われている。ここまではそれぞれに固有の計算方法だったが、テイラー展開は多項式に展開することにより、関数を任意の精度で四則演算だけで近似できる方法として扱われる(p.86,119)。

    後は実数の連続性と計算可能性がトレードオフになることが述べられる。まず、どんな実数の大小も比較できるような計算方法はない(p.169-173)。さらに計算可能性理論の概要が展開される。チューリング機械を導入し、universal machineと対角線論法を使って計算不可能な実数の存在を導いている(p.198-202)。計算可能な範囲に実数を限ってもいいが、そうなると実数の連続性が失われるというのが著者の結論だ(古典主義以外の立場からは様々な異論があろう)。計算可能性に限界があることは悲嘆すべき事態に思われるかもしれないが、計算概念の形式化とuniversal machineの発見は、フォン・ノイマン型コンピュータという極めて有効なコンピュータの概念を産んだことを喜ぶべきだと閉じられる(p.209)。ここはちょっと尻切れトンボのような感じだ。

    計算とは何かについて興味を持つにはよい本だろう。

  •  計算って何だろう。たし算は、1桁の数どうしのたし算の数表を暗記することからはじまる。結合の法則で10をつくり、交換の法則で10をあつめ、分配の法則で10の同類項をまとめ、繰り上がるたし算の正しさを保証しよう。計算の手順をアルゴリズムという。アルゴリズムはその正しさが別途証明されなければならない。より優れた手順に改良することも重要だ。

  • [ 内容 ]


    [ 目次 ]
    1 計算って何だろう
    2 エデンの園からの追放
    3 計算できる・できない
    4 再びエデンへ
    5 計算を振り返る
    6 計算のブラックホール

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 数学は好き。だけど、計算は嫌い。
    そういう人って、結構いるんじゃないだろうか。
    私もその一人。
    私たちのためにこそ、この本はある。
    計算と一口に言うけれど、実のところ結構奥が深い。

    CHAPTER 3「計算できる・できない」の章が特に興味深かった。考えてみれば学校の数学では「計算できない」ということはめったにない。問題集の問題は、ほとんどが「計算できる」ように作られているからだ。でもそれって考えてみればとても不自然なことで。ゼロから問題に取り組もうとすれば、「計算できるか、できないか」という判断は当然一番に必要になるものだ。
    学校で身につく「数学」というのはもちろん重要だしそれはそれでとても楽しいけれど、それは数学の考え方の一部でしかないのだなぁ。

  • 本書の想定する読者層を考えるのなら、
    「4.5 テイラー展開」のパートは、よりわかり易い記述ができると思うが・・・それでは、本書の趣旨に沿わなくなるのかな~?

  • 正直、私はゴリゴリの文系人間である。
    高校生のとき、物理と化学さっぱり頭に入らずに、
    理系の道を諦めた。
    一応、数II・Bまでは履修したけれど、
    それもあくまで「受験科目」と割り切っての勉強だった。
    ともかく「理数」が苦手なのである。

    無事に受験が終わって数年、もはや今、ほとんど何も覚えていない。

    が、科学や哲学に対する興味がどんどん沸いてくる中で
    「科学史」ということだけではなくて、
    学問の中身そのものについて、理数の分野から逃げていては
    より深いところに到達できないと気付き、
    ともかくも「やさしい入門書」あたりから読んでみようと
    思った次第である。

    それで、たまたま本書を手に取ったのだが・・・。

    いや、計算の世界に魅せられてしまった。

    本書の扱う領域はあくまで「計算」である。数学すべてではない。
    しかしこの計算というところにとってみても、
    歴史の中でどういう需要から発生、進化し、そして何を果たし、
    現在の社会でどう役に立っているかというところまで
    俯瞰的に、かつ「計算」の具体例を通しながら
    知ることができたのは、とてもよい学びだった。

    ぜひ、高校1年生くらいで、計算の苛酷さ、理解不能さを原因として
    数学から逃げ出そうという若者がいたら、
    ちょっとでいいから読んでみてほしいなと思った。

    特に「すごい!」と感動したのは、
    円周率πの計算式のところ。
    弧度法とマクローリン展開を使うことで、
    アルゴリズム(計算の手順)にのっとった円周率の計算ができる。
    この本を読まなかったら一生知らなかっただろう。

    あとは、p.152の以下の文章がすばらしい。

    -----------------
     私たちの祖先が小さな共同体を脱して、都市を形成し始めたとき、
    最重要課題は「構成員が飢えずに次の年を迎えること」でした。
    無事に次の年を迎えるには、彼らには2つの選択肢があったこと
    でしょう。ひとつは彼らの護り神に祈り、すべてを委ねること。
    もうひとつは、論理と計算によって人類自らの手で
    未来を見通すことです。
     結局、彼らは太陽の動きを観察して、計算から暦をつくり出すことを
    選びました。いつ小麦の種をまけば収穫が最大になるか、
    いつナイル川が氾濫するか、を見通すためです。計算によって、
    彼らの富は増大し、文明は栄えたのです。
     文明とは、神にゆだねる領域を、論理と計算によって狭めていく
    過程のことだと言っても過言ではありません。だからこそ、計算することに
    対し、人間は常に後ろめたさを感じてもいました。そのことを示す
    興味深い記述を旧約聖書の中に見出すことができます。
    (略)
     今日でも、私たちには計算を恐れる気持ちがあります。計算(人工知能)への
    過度の依存が引き起こす人類の破滅は、現代においてもなお文学が繰り返し
    取り上げる主要なテーマのひとつです。
     新たに計算の技術が発見されることにより、長年の経験や勘を持つもの
    特権が奪われ、社会が変容することは、古代エジプトの時代から繰り返されて
    きました。筆算の発見は、当時の「計算士」の職を奪ったことでしょうし、
    今日では、統計技術がワイン評論家の地位を脅かしつつあります。
     計算には、私たちが望むか否かにかかわらず、社会そのものを再構築し、
    富を再分配する力が潜んでいるようです。その事実が私たちを怯えさせるのかも
    しれませんね。ただ、その日ぐらしに怯える狩猟・採集の生活に戻る
    ことができない私たちは、計算の力を恐れながらも、それを利用しながら
    生きていくより道はないのです。
    ------------------

    狩猟採集社会から農耕社会へのシフトが、計算のはじまりに
    大きく関わるというこの人類史的な見方を、
    実は僕は不勉強にもまるで考えてみたことがなかった。
    言われてみれば、なるほどである。
    文明の統治者は、計算をコントロールし、使いこなしてきたのだ。

    この見方を手に入れたことで、もっと歴史をおもしろく重層的に
    とらえることができそうだ。
    その点でも、本書と、著者に感謝したい。


    -------------------------------------------------------

    目次

    CHAPTER 1  計算って何だろう
    1.1 記憶の糸をたどる
    1.2 アラビア数字という発明
    1.3 たし算の筆算
    1.4 計算の要素
    CHAPTER 2  エデンの園からの追放
    2.1 異質なわり算
    2.2 わり算のアルゴリズム
    2.3 分数の計算
    CHAPTER 3  計算できる・できない
    3.1 循環小数
    3.2 平方根
    3.3 円周率
    3.4 三角比
    3.5 指数対数
    CHAPTER 4  再びエデンへ
    4.1 曲線を近似する
    4.2 カーブの傾き:微分係数
    4.3 瞬間的な変化の寄せ集め:積分
    4.4 微分係数で「カーブ」を表現してみる
    4.5 テイラー展開
    CHAPTER 5  計算を振り返る
    5.1 計算のバリエーション
     5.1.1 数表
     5.1.2 計算法則
     5.1.3 判断
     5.1.4 探索
     5.1.5 繰り返し
    5.2 アルゴリズムを書いてみよう
    5.3 機械に計算を代行させるには?
    5.4 計算の着地点
    5.5 計算の根幹をなすもの
    ● COLUMN   カーナビゲーションと計算 (宇野毅明)
    CHAPTER 6  計算のブラックホール
    6.1 実数の四則演算
    6.2 実数が実数であるために
    6.3 無限小数,ふたたび
    6.4 計算とは何だろうか
    6.5 計算できない実数
    6.6 恐ろしい結論

    http://www.tokyo-tosho.co.jp/books/ISBN978-4-489-02054-4.html

  • 純粋に面白い。
    理系大学生であるけども、ただただ感動した。こういった本は、やっぱり現行の文科省の算数とか数学とか言ったあんま面白みのない砂漠に、途端にオアシスを見つけたみたいな感じで、多くの人に読んでほしい。もっとみんな数と遊べばいいのになぁ。もっと身近なこととかに疑問を抱くうえでも本当にいい本だと思います。おすすめ!

  • 割り算でつまづく子供がいる。
    次は,分数と小数。

    本書だけでは,割り算を乗り越えることはできないかもしれないが,
    割り算を乗り越えられない子供に教えるきっかけを作ることができるかもしれない。

    ゼロで割ると無限大になるということを,どうやって教えるかのきっかけが掴めれば,うまくいくかもしれない。

    本書は,計算とは何かを教えるきっかけとしてよいかもしれない。

    コンピュータで計算が止まるかどうかがわからないところの説明をもう少し詳しく説明があると嬉しい。

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著者プロフィール

新井 紀子(あらい のりこ)
1962年、東京都小平市生まれの研究者。国立情報学研究所社会共有知研究センター長・教授。専門は数理論理学、遠隔教育。東京都立国立高等学校、一橋大学法学部を経てイリノイ大学数学科に留学し、同大学数学科大学院修士課程に進学。1990年に修士号を取得。帰国後の1994年に一橋大学法学部を卒業、専業主婦を経て広島市立大学情報科学部助手に着任。1997年東京工業大学博士。2006年から国立情報学研究所教授。
代表作に『AI vs.教科書が読めない子どもたち』。同作で2018年日本エッセイスト・クラブ賞、山本七平賞を受賞している。

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