雑食動物のジレンマ 上──ある4つの食事の自然史

制作 : ラッセル秀子 
  • 東洋経済新報社
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レビュー : 45
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492043523

作品紹介・あらすじ

肥満の原因は何か?健康にも環境にも悪いものでさえ食べてしまう雑食動物の人間は何を食べるべきなのか。その答えを求めて、ファストフード、オーガニックフード、スローフードの食物連鎖を追う旅が始まる。全米100万部突破のベストセラー。

感想・レビュー・書評

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  • 筆者は、明日から世界中の牛が喋りだしたら全人類に食べるのをやめろと言える人だろう。そのために一体どれだけの人類が死ぬのかを数える前に。

    本書は、特にトウモロコシに代表される工業的な食物生産サイクルにより犠牲にされる自然資源の枯渇を訴えるルポルタージュ。研究書ではないため表やグラフなどの統計もなく、ただ少なく稀な体験を頼りに、如何に現代の工業的農業生産が悪で、自然に任せた太陽光サイクルが正義であるのかを情に訴えかけてくる。

    もちろん問題提起に意味がないとは言わないが、誰だって動物が苦しむ姿を見るのは嫌だし、石油資源の枯渇を心配し、食料の安全に気を配っている。
    それを陰惨さを強調して情感たっぷりに脅されても、具体的な策も行動も誰かに丸投げでは、素人の遠吠えにしか聞こえない。

    本書で絶賛される自然を循環させた理想的な太陽光システムとして紹介されるのは、子供を学校に行かせずに家庭で育てるような一例のみ。エサも廃棄物も自然に任せる構造で、一度間違えた場所に放牧しただけで崩壊するようなあやういシステムだ。
    さらには自身の意見に固執するあまり、工業システムのメリットも自然システムのデメリットもまったく比較されない。

    現代の工業的農業生産システムが史上最高の到達点でないのは間違いない。そのために声を上げるのも正しい行いだろう。
    家畜の生活環境について、配慮しないよりしたほうが良い。農家への過剰な税金の援助はない方が良い。石油資源は節約できたほうが良い。凶作で安定しない生活はない方が良い。
    どれも一足飛びには解決できない超大な問題であるが、別に世の中の全ての課題に一個人が答えを持たなくても良いではないか。
    「考えさられた」なんて中身のない格好だけの言葉を吐くぐらいなら、堂々と「答えを持たない」と言い切ったうえで、新しい解決案が産まれることを願う。


  • ノンフィクション

  • ヒトの食生活について、工業的な食品に偏った食生活を批判している。印象的な記述を記す。
    「トウモロコシからできるもの。(えさ)牛、鶏、豚、羊、ナマズ、サケ、卵、牛乳、チーズ、ヨーグルト、(原料)コーンスターチ、コーンフラワー、コーン油、レシチン、グリセリド、クエン酸、コーンシロップ、ブドウ果糖液糖、デンプン、カラメル色素」
    「現在、合成窒素の半分以上はトウモロコシ栽培に使われている」
    「トウモロコシの生産は、生産量を高く、価格を低く保つシステムとなっている。それは、農家に目標価格の不足分を政府が支払うことによって、農家はできるだけ多くのトウモロコシを生産し、どんな価格であれ、市場にすべて出すことを奨励するからだ。当然、価格はさらに下がり、農家は収入を下げないために、トウモロコシをさらにつくるしかない」

  • "夕食は何を食べよう?
    という言葉の序章から現在の食文化を見つめ直す壮大な旅がはじまる。
    トウモロコシが、自分が思っている以上に口にされていることがわかる第一部から、驚きの連続だ。
    本来、牧草を食べる動物「牛」に、トウモロコシを与えている。短期間に大きく太らせるために。そのため、牛の胃は炎症を起こすが、それを押さえるために、抗生物質が混ぜられたトウモロコシを食べる。こんなこと、初めて知った!
    また、トウモロコシは加工されて、実に様々な食品となってスーパーマーケットに並ぶ。原材料を見てトウモロコシが含まれていないものを探すのが大変なくらい。清涼飲料、マーガリン、揚げ物の衣、植物性油となり様々な加工品に使われている。こうした実態を著者は、農場へ足を運び、経済合理性から清算され続ける現場をかいま見せてくれる。
    次の第2部では、牧草 というテーマで食物連鎖について、考えさせてくれる。オーガニック 有機農業とは何か?という問いかけである。スーパーに売られている有機野菜は、スーパーにならんだ時点で、すでに輸送のために石油エネルギーを使っているため、純粋に有機だといいきれなくなる。
    こうしたこだわりを持つ、農場に足を運び化学肥料、薬品を使わずに、食物連鎖で循環した環境を作る現場をかいま見せてくれる。
    本屋で何気なく手にした本。おもしろい。下巻も楽しみだ。"

  • (著書の中から、抜粋したモノや自分が思ったことなど無作為に書き殴る。↓)

    人間の脳が大きく複雑に進化したのは、自然界にあるモノは何でも食べられる(そしてそれを食したことによって死に至る)という雑食動物のジレンマに対処するためだと考える人類学者は少なくない。

    バラエティーに富んだ多くの食の選択肢はある場合には逆にストレスを招くこともある。
    人間の文化はタブーや儀式、レシピやマナー、伝統や言い伝えによってそんなジレンマを解消しようとしてきた歴史がある。

    「私が食べているコレは一体何処で生まれてどうやって運ばれてきたのか?」専門家に訊かなければならない程、現在の食環境は複雑で曖昧である。

    合成窒素の発明は良くも悪くも地球を変えた。
    これがなければ今生きている人間の5人に2人は存在しない。
    しかし、この発明こそ農業が工業化した一番の要因でもある。

    ※TPPに参加したがる政治家が多いのは、結局(彼らの圧力団体となる)農家の数を減らしたいからではないかと勘ぐりたくなった。

    人類を自然から転落せしめたのは工業化された農業である。

    人間は自ら作りだした道具の、その道具に成り果ててしまった。(H・Dソロー)

    「大農場の方が生産性は低くなる」
    それでも何故大規模化させたいかというと、それは食品加工メーカーにとっては出来る限り少数の農家と大規模な契約を交わした方が効率が良いからである。
    似たような発想で、日本政府はしきりに農地を大規模化したいのも、自分達にとって不利となる農家の数を減らしたいからである。

    工業的オーガニックは徹底的に化石燃料を使う、殊に加工と運搬に…。

    そもそもオーガニックが誕生したのは自然界の利に適った食を考え、太陽から肥沃性エネルギーを受け取る生態系に倣った食体系をつくることにあったが、安い石油の波に勝つことは出来なかった。

    ☆「放牧農家」という概念!牧草=太陽パネル

    太陽の恵みを人間のエネルギーに変換する最も効率的な方法は、目の前に自生しているモノを食べることである。

    人間が引き起こした温室効果ガスの1/3は農業に起因している。

    ある動物が他の動物を食するとき、1cal摂取する度に9calが無駄に浪費される。

    工業化で効率的なシステムは、反復・単純化することである。

    工業的食物連鎖の過程では、生産者と消費者の間で共通してテーマになるのは価格だけである。
    つまり今の食体系は「無知と安価」がお互いを支えて成り立っているのである。

    cf.フランシス・ムア・ラッペ「小さな惑星の緑の食卓」

    禁断の果実はNPK(窒素、リン、カリウム)…p上197

    ※農家は元々、知らない人間なんかと商取引などするよりも、土や植物と付き合っている方が好きだから農家になったのであって、それを今更「6次産業」などというビジネスモデルの旗手になれと言われても困惑するだけなのである。

    雑食動物の幸運は地球上のあらゆるものを食べられること。
    一方、不幸はどれが安全なモノなのかが誰にも頼れないことである。

    cf.ピーター・シンガー「動物の解放」
    現在の人間と動物の関係は優しさと野蛮さが共存する極度に矛盾した様相を呈している。

    スピーシズム

    ☆肉食は唯の美食的志向ではない。セックスが唯の娯楽的志向だから止めるべきだという異見がナンセンスなのと同じように。

    ☆バーコードの付いていない食材だけで料理をつくる。
    それはそれらの食材がどのようにして私の所に来たかを知ることである。
    完璧な食事とはそんな全ての代償が支払われた、誰にも何の借りもないシンプルなモノなのではないだろうか?

  • 人とトウモロコシの蜜月は続く。

  • 例えばコアラはユーカリの葉以外は食べない。他に選択肢がないので食に悩みはないだろう。でも人間は雑食で日々何を食べるか悩む。時に健康にも環境にも悪いものさえ食べてしまう。色々なものが食べられるのに、何を食べようか悩む・・・これがタイトルにある「雑食動物のジレンマ」。著者は何を食べるべきなのか、その答えを求めてファーストフードやオーガニックフードの食物連鎖を追う。

    食品は様々なものでできているため、これらの連鎖を追うとなると壮大な旅になるかと思いきや、いきなり商品の大元は「トウモロコシ」だという結論で始まります。

    牛や鶏などの飼料はトウモロコシ
    チキンナゲットなどのつなぎはコーンスターチ
    衣はコーンフラワー、添加物であるレシチンやクエン酸などもトウモロコシからつくることができる。
    飲み物に使われている高果糖シロップもトウモロコシ由来。トウモロコシでできている食べ物をたべながら、トウモロコシを飲んでいる、という表現には笑いました。

    なぜこんなにトウモロコシなのか?
    それはこんなにトウモロコシをつかったものがあふれていると、他のものを作るより売れるため、農家はトウモロコシを作ってしまう。過剰生産になると、価格が下がり、もっと作らないと採算がとれなくなるため、さらに作り続けてしまう。しかもトウモロコシ農家には補助金が出るため、止めるにやめられないのだそうです。農政と企業の癒着の匂いがぷんぷんしますが・・・・

    やがて田園の食物連鎖へと話はうつり、オーガニックの内容が中心になります。前回紹介した「オーガニックラベルの裏側」で、工業的オーガニックの問題点が暴露されていましたが、ここでも同じことが指摘されていました。

    何千キロもの遠隔地から取り寄せられたオーガニック農産物、幸せそうに育てられている牛や鶏のパッケージ。大量のエネルギーを使って輸入されるオーガニックには、もはや地球、生き物に負担をかけない、などの哲学はない。牛や鶏の飼育環境の現状は劣悪で、大量に生産するために安価な労働力まで使われている。

    そもそもオーガニックとは何かという定義が、あやふやなところに原因があると思うのですが、消費者のオーガニックという言葉から連想するなんだかよさげなイメージを逆手にとって、企業が儲けようとする姿がここにも取り上げられていました。

    しかし、こうしたオーガニックの哲学が無視され、本来の姿が資本主義にむしばまれていく中で、それ以上のオーガニックを目指して農園を営む人々の取材は、興味深い。トウモロコシではなく牧草で牛や鶏を飼い、糞で牧草を回復させるという循環を実践している彼らは、生産量を守り、決して欲を出して作り過ぎることはしない。完全に農園の中で食物が循環している。彼らいわく、多くの農家が専門家や企業がだしてくる単純化された数値を当てにして、自分たちの経験から得られるもっと複雑な営みを忘れてしまったのだという。

    オーガニックに対してはもはや信用し過ぎてもいけないことは学びましたが、オーガニックでもそうでなくても、旬のものをかう、遠距離輸入されたものは避ける、というだけでエネルギー削減に貢献はできます。

    いずれにしても、資本主義の波にさらされ始めたオーガニックは今、次の段階へ進む過渡期にあるのは確かなようです。

    本書は上下巻に分かれており、食物連鎖の度は下巻へ続きます

  • 著者は、食や農に関して鋭く問題を指摘し続けるアメリカの著名なジャーナリスト。雑食動物たる人間は、何を食べるべきなのか?という問いに答えるために、食の流れを大地から食卓まで追跡取材する。国際・園芸をともに考えられる好著。 (松村 教員)

  • 3

  • 143大量食べ物出されると通常より30パーセント多い量食べる

    経済界のためにアメリカは補助金出しつつ、コーン価格下げ
    農家は収入あげるために、大量作成する(思惑どおり
    )コーンだけ作るから、窒素を土中に固定できず土地やせる
    肥料づけどの農家も不作恐れて肥料3倍とか使う。当然、遺伝子組み換えも使う
    土地と河川汚染飲むとブルーベビーってやばい事になるので、子供に水道水飲ませるな注意報出てる
    垂れ流し肥料で藻類異常繁殖。一方で魚類は全滅
    これがコーン恐怖一部
    増えすぎたコーンはどこへ行くか。糖につながる

    大量生産したコーンは余る
    人はそんなに食べられない
    高果糖コーンシロップブドウを作り、そこからの加工品として、糖果糖液糖やらデンプンへ。そこから清涼飲料水、シリアル、パン、調味料、なんでも甘くなる
    さらに、「ちょっとお金出せば倍量!」作戦で、消費量アップ
    加工食品の原料は大半がコーン(炭素分析で由来わかる)
    肥満大国できあがり

    エタノールも作れる
    エタノールは大気汚染するけど、エタノールをガソリンに10%を法律化してる州ある

    でも余る
    牛や豚や鶏に食わせれば、成長早くなるし一石二鳥!
    本来草食べる牛に穀物
    牧場いらない
    草もない糞尿まみれの牛舎で食べるだけ
    体調不良や病原菌が体内で繁殖
    抗生物質漬け
    14ヶ月で出荷「これ以上は生きられないですから」

    だいぶ軽めに書いて、こんなんだわ(笑)そりゃ怖くもなりますって
    アメリカ産コーンビーフ(缶詰めでなく、コーン育ち牛)はヤバいって読んだ事あるけど、こゆ意味だったとは
    ちなみに作者は、このために牛オーナーになり、見学に行きコーン農家や牧場で働いたり、鶏を絞めたりもして取材してた

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著者プロフィール

アメリカのジャーナリスト。1955年生まれ。食や農業、人間と自然界が交わる世界を書き続け、ジェームズ・ビアード賞、ロイター&国際自然保護連合環境ジャーナリズム・グローバル賞など数々の賞を受賞。

「2015年 『これ、食べていいの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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