雑食動物のジレンマ 上──ある4つの食事の自然史

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492043523

作品紹介・あらすじ

肥満の原因は何か?健康にも環境にも悪いものでさえ食べてしまう雑食動物の人間は何を食べるべきなのか。その答えを求めて、ファストフード、オーガニックフード、スローフードの食物連鎖を追う旅が始まる。全米100万部突破のベストセラー。

感想・レビュー・書評

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  • 上巻ではアメリカの食事を見つめなおす過程で、トウモロコシ農場と大規模畜産業について取り上げられている。

    アメリカの食事におけるトウモロコシの割合の高さに驚いた。
    もはや農作物ではなく工業製品としてのトウモロコシによってアメリカの食事は支えられている。
    大規模畜産業に関しては、今後アメリカ産の肉製品を食べたくなくなるような現実だった。

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    内容(「BOOK」データベースより)
    『肥満の原因は何か?健康にも環境にも悪いものでさえ食べてしまう雑食動物の人間は何を食べるべきなのか。その答えを求めて、ファストフード、オーガニックフード、スローフードの食物連鎖を追う旅が始まる。全米100万部突破のベストセラー。』

    『全米で話題沸騰! 数々の賞を受賞した全米批評家協会賞最終選考作!

    料理界のアカデミー賞とも言われるジェームス・ビアード賞最優秀賞(食関連著作部門)、カリフォルニア・ブック賞(ノンフィクション部門)、北カリフォルニア・ブック賞(ノンフィクション部門)を受賞し、全米批評家協会の最終選考作に選ばれた本書は、『ニューヨーク・タイムズ』の10 Best Books of 2006、『ワシントン・ポスト』のTop 10 Best of 2006、Amazon.comのBest Books of 2006に選ばれるなど、発売早々から各種メディアで話題の書として注目され、現在もベストセラーリストの上位にランクインしています。

    健康食ブームなのに増え続ける肥満や糖尿病、旬に関係なく食材が並ぶスーパーマーケット、工業化する有機農業、便利で簡単に料理ができる食品の開発、農業収入では生活できない農家、経済効率を求めた大規模農場や単一栽培……。同書に描かれている内容は、もちろん、アメリカの食と農業についてのことですが、読み進めるうちに、日本も変わらないのではと思えてきます。

    本書のタイトルにある「雑食動物」とは、植物でも動物でも何でも食べる動物、つまり私たち人間のことです。何でも食べることができるので、人間はどのような環境でも生きてこられたわけですが、同時に何を食べるべきなのかと頭を悩まし続けきました。コアラのようにユーカリの葉しかたべない動物とは違い、自らの健康や、地球環境に害を及ぼすものでさえ食べることができるのですからなおさらです。

    私たちがいつも口にしているものは一体何なのでしょうか? それはどこからどうやって食卓まで来たのでしょぅか? 私たちが食べるべきなのは、簡単で便利な冷凍・加工食品なのでしょうか? オーガニックフードなのでしょうか? その答えを見つけるために著者は、4つの食事――ファストフード、オーガニックフード、フードシェッドフード、スローフード──の食物連鎖を追いかける旅に出ます。

    いつもの食卓に並ぶ野菜や肉など、誰もが口にしている食べ物の食物連鎖を求めて、トウモロコシ農場から食品科学研究所、肥育場やファストフード店から有機農場や狩猟の現場までを案内し、私たちが正体を知らないまま口にしているものが何か突きとめます。

    そして、最後にたどり着いた完璧な食事とは?

    雑食動物を英語で言うとomnivoreですが、この言葉には、雑食動物のほかに、「幅広分野に好奇心を持ち、あるものは何でも読み、勉強し、概して吸収する者」という意味があります。私たちが食べているものの食物連鎖を知るということは、私たちが何を食べるかという選択が、地球温暖化などの環境問題にもかかわっていることも知ることになります。同書は、私たちの健康のためだけでなく、自然界の健康のために、私たちが何をどのように食べるべきかという知的好奇心を刺激してくれます。』(「Amazon」サイトより)


    原書名:『The Omnivore's Dilemma』
    著者:マイケル・ポーラン (Michael Pollan )
    訳者:ラッセル秀子
    出版社 ‏: ‎東洋経済新報社
    単行本 ‏: ‎302ページ

    メモ:
    一生のうちに読むべき100冊(Amazon.com)「100 Books to Read in a Lifetime」

  • 上下巻共に読んだ時の感想メモ。

    酪農、養鶏、狩猟など様々な分野のウェルギリウスと共に筆者がその世界を探索して"食料"について考察するお話。サスティナブルに生きるにはどうすればいいかは答えが出ないけれど、面白かった。変に菜食も肉食も崇拝してないのも良い。タイトル通り。

    あと、牛の屠殺のくだりで昔見たテンプル グランディン氏のドキュメンタリーの中での行動や機能設計の話思い出しながら読んでたら、マクドナルド社の担当者として本人が出てきたのでビビった。まだ現役(当時)だったのか。

  • トウモロコシは他の植物とは違う光合成をおこなう。効率がいい。普通は炭素が3つの有機物をつくるが、トウモロコシは4つの炭素を含む有機物をつくる。=C4植物=光合成の効率がいい。水分の損失を抑えつつ、炭素を同定する。
    トウモロコシのF1種は収穫量が多くなる。その代わり毎年同じ種を買わなければならない。
    トウモロコシは育てやすく、価格が下がっても作付面積を増やして補った。
    ハーバーボッシュ法による肥料のおかげ。それまでは、マメ科植物の根の細菌か、雷のエネルギーで固定化された窒素しかなかった。
    肥料にかかるエネルギーを考えると、1カロリーの食料をつくるのに化石燃料を1カロリー以上使っている。
    ハーバーボッシュ法は生態系を変えた。

    農場では、129人分の食料をつくるが、その収入だけでは家族を支えられない。補助金にたよっている。

    アメリカ人の体はトウモロコシからできている。トウモロコシから作った糖を含む。C13の量が多い。
    コーンは、あらゆる粒を表す単語。コーンビーフも塩の粒漬けの肉、という意味。
    トウモロコシは奴隷を買う時の通貨、食料にもなった。奴隷売買にも不可欠なもの。原資本主義的な植物。

    ニューディール政策の農業調整法は、トウモロコシの余剰を調整するためのもの。
    収量があがると価格が下がる。自由市場の原理では農業は機能しない。食料の需要は弾力的ではなく、生産も抑えられない。トウモロコシは興行的食物連鎖の一番下にいる。トウモロコシと大豆は大半は肥料になる。ほかの作物は買い手がいない。

    ソロー「人げな自ら作り出した道具の道具になってしまった」

    p79

  • 筆者は、明日から世界中の牛が喋りだしたら全人類に食べるのをやめろと言える人だろう。そのために一体どれだけの人類が死ぬのかを数える前に。

    本書は、特にトウモロコシに代表される工業的な食物生産サイクルにより犠牲にされる自然資源の枯渇を訴えるルポルタージュ。研究書ではないため表やグラフなどの統計もなく、ただ少なく稀な体験を頼りに、如何に現代の工業的農業生産が悪で、自然に任せた太陽光サイクルが正義であるのかを情に訴えかけてくる。

    もちろん問題提起に意味がないとは言わないが、誰だって動物が苦しむ姿を見るのは嫌だし、石油資源の枯渇を心配し、食料の安全に気を配っている。
    それを陰惨さを強調して情感たっぷりに脅されても、具体的な策も行動も誰かに丸投げでは、素人の遠吠えにしか聞こえない。

    本書で絶賛される自然を循環させた理想的な太陽光システムとして紹介されるのは、子供を学校に行かせずに家庭で育てるような一例のみ。エサも廃棄物も自然に任せる構造で、一度間違えた場所に放牧しただけで崩壊するようなあやういシステムだ。
    さらには自身の意見に固執するあまり、工業システムのメリットも自然システムのデメリットもまったく比較されない。

    現代の工業的農業生産システムが史上最高の到達点でないのは間違いない。そのために声を上げるのも正しい行いだろう。
    家畜の生活環境について、配慮しないよりしたほうが良い。農家への過剰な税金の援助はない方が良い。石油資源は節約できたほうが良い。凶作で安定しない生活はない方が良い。
    どれも一足飛びには解決できない超大な問題であるが、別に世の中の全ての課題に一個人が答えを持たなくても良いではないか。
    「考えさられた」なんて中身のない格好だけの言葉を吐くぐらいなら、堂々と「答えを持たない」と言い切ったうえで、新しい解決案が産まれることを願う。


  • ノンフィクション

  • ヒトの食生活について、工業的な食品に偏った食生活を批判している。印象的な記述を記す。
    「トウモロコシからできるもの。(えさ)牛、鶏、豚、羊、ナマズ、サケ、卵、牛乳、チーズ、ヨーグルト、(原料)コーンスターチ、コーンフラワー、コーン油、レシチン、グリセリド、クエン酸、コーンシロップ、ブドウ果糖液糖、デンプン、カラメル色素」
    「現在、合成窒素の半分以上はトウモロコシ栽培に使われている」
    「トウモロコシの生産は、生産量を高く、価格を低く保つシステムとなっている。それは、農家に目標価格の不足分を政府が支払うことによって、農家はできるだけ多くのトウモロコシを生産し、どんな価格であれ、市場にすべて出すことを奨励するからだ。当然、価格はさらに下がり、農家は収入を下げないために、トウモロコシをさらにつくるしかない」

  • "夕食は何を食べよう?
    という言葉の序章から現在の食文化を見つめ直す壮大な旅がはじまる。
    トウモロコシが、自分が思っている以上に口にされていることがわかる第一部から、驚きの連続だ。
    本来、牧草を食べる動物「牛」に、トウモロコシを与えている。短期間に大きく太らせるために。そのため、牛の胃は炎症を起こすが、それを押さえるために、抗生物質が混ぜられたトウモロコシを食べる。こんなこと、初めて知った!
    また、トウモロコシは加工されて、実に様々な食品となってスーパーマーケットに並ぶ。原材料を見てトウモロコシが含まれていないものを探すのが大変なくらい。清涼飲料、マーガリン、揚げ物の衣、植物性油となり様々な加工品に使われている。こうした実態を著者は、農場へ足を運び、経済合理性から清算され続ける現場をかいま見せてくれる。
    次の第2部では、牧草 というテーマで食物連鎖について、考えさせてくれる。オーガニック 有機農業とは何か?という問いかけである。スーパーに売られている有機野菜は、スーパーにならんだ時点で、すでに輸送のために石油エネルギーを使っているため、純粋に有機だといいきれなくなる。
    こうしたこだわりを持つ、農場に足を運び化学肥料、薬品を使わずに、食物連鎖で循環した環境を作る現場をかいま見せてくれる。
    本屋で何気なく手にした本。おもしろい。下巻も楽しみだ。"

  • (著書の中から、抜粋したモノや自分が思ったことなど無作為に書き殴る。↓)

    人間の脳が大きく複雑に進化したのは、自然界にあるモノは何でも食べられる(そしてそれを食したことによって死に至る)という雑食動物のジレンマに対処するためだと考える人類学者は少なくない。

    バラエティーに富んだ多くの食の選択肢はある場合には逆にストレスを招くこともある。
    人間の文化はタブーや儀式、レシピやマナー、伝統や言い伝えによってそんなジレンマを解消しようとしてきた歴史がある。

    「私が食べているコレは一体何処で生まれてどうやって運ばれてきたのか?」専門家に訊かなければならない程、現在の食環境は複雑で曖昧である。

    合成窒素の発明は良くも悪くも地球を変えた。
    これがなければ今生きている人間の5人に2人は存在しない。
    しかし、この発明こそ農業が工業化した一番の要因でもある。

    ※TPPに参加したがる政治家が多いのは、結局(彼らの圧力団体となる)農家の数を減らしたいからではないかと勘ぐりたくなった。

    人類を自然から転落せしめたのは工業化された農業である。

    人間は自ら作りだした道具の、その道具に成り果ててしまった。(H・Dソロー)

    「大農場の方が生産性は低くなる」
    それでも何故大規模化させたいかというと、それは食品加工メーカーにとっては出来る限り少数の農家と大規模な契約を交わした方が効率が良いからである。
    似たような発想で、日本政府はしきりに農地を大規模化したいのも、自分達にとって不利となる農家の数を減らしたいからである。

    工業的オーガニックは徹底的に化石燃料を使う、殊に加工と運搬に…。

    そもそもオーガニックが誕生したのは自然界の利に適った食を考え、太陽から肥沃性エネルギーを受け取る生態系に倣った食体系をつくることにあったが、安い石油の波に勝つことは出来なかった。

    ☆「放牧農家」という概念!牧草=太陽パネル

    太陽の恵みを人間のエネルギーに変換する最も効率的な方法は、目の前に自生しているモノを食べることである。

    人間が引き起こした温室効果ガスの1/3は農業に起因している。

    ある動物が他の動物を食するとき、1cal摂取する度に9calが無駄に浪費される。

    工業化で効率的なシステムは、反復・単純化することである。

    工業的食物連鎖の過程では、生産者と消費者の間で共通してテーマになるのは価格だけである。
    つまり今の食体系は「無知と安価」がお互いを支えて成り立っているのである。

    cf.フランシス・ムア・ラッペ「小さな惑星の緑の食卓」

    禁断の果実はNPK(窒素、リン、カリウム)…p上197

    ※農家は元々、知らない人間なんかと商取引などするよりも、土や植物と付き合っている方が好きだから農家になったのであって、それを今更「6次産業」などというビジネスモデルの旗手になれと言われても困惑するだけなのである。

    雑食動物の幸運は地球上のあらゆるものを食べられること。
    一方、不幸はどれが安全なモノなのかが誰にも頼れないことである。

    cf.ピーター・シンガー「動物の解放」
    現在の人間と動物の関係は優しさと野蛮さが共存する極度に矛盾した様相を呈している。

    スピーシズム

    ☆肉食は唯の美食的志向ではない。セックスが唯の娯楽的志向だから止めるべきだという異見がナンセンスなのと同じように。

    ☆バーコードの付いていない食材だけで料理をつくる。
    それはそれらの食材がどのようにして私の所に来たかを知ることである。
    完璧な食事とはそんな全ての代償が支払われた、誰にも何の借りもないシンプルなモノなのではないだろうか?

  • 人とトウモロコシの蜜月は続く。

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著者プロフィール

作家、ジャーナリスト、活動家。ハーヴァード大学英語学部でライティング、カリフォルニア大学バークレー校大学院でジャーナリズムを教える。
著書に、国際的にベストセラーになった『雑食動物のジレンマ』(東洋経済新報社)、『人間は料理をする』(NTT出版)、『欲望の植物誌』(八坂書房)、『幻覚剤は役に立つのか』(亜紀書房)など。『人間は料理をする』『幻覚剤は役に立つのか』はNetflixのドキュメンタリー番組となり好評を博す。
人類学、哲学、文化論、医学、自然誌など多角的な視点を取り入れ、みずからの体験を盛り込みながら植物、食、自然について重層的に論じる。 2010年、「タイム」誌の「世界で最も影響力を持つ100人」に選出。受賞歴多数。

「2023年 『意識をゆさぶる植物』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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