子どもの教養の育て方

  • 東洋経済新報社
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レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492044834

感想・レビュー・書評

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  •  ここ最近、小2の子どもに「図書館行く?」と尋ねると、「行く行く!」との嬉しそうな答えが来ることが増えてきました。お目当ては『マジック・ツリーハウス』というファンタジーシリーズ、各国の歴史ネタも散りばめられていて、意外と侮れません(「アレクサンダー大王」の話をし始めた時には、ちょっとびっくりしました)。

     もともとは、昔話系の絵本から始まって、『ミッケ』などのギミック系を経て、最近では『マジック・ツリーハウス』の他、『かいけつゾロリ』や『ドラえもん』、ポケモンや名探偵コナンの映画ノベライズあたりなどが主流です。

     この先どんな方向性で読書の機会を広げていこうかなぁ、、と悩んでいるのですが、そんな中、子どもに対するお勧め本の解説書としても面白いなぁと感じたのが、こちら。

     元外交官で“知の巨人”とも言われる佐藤優さんと、5人のお子さんを育てられている元衆議院議員・井戸まさえさんの、育児を軸にした“教養”を涵養していくことについての対談集となります。

     子どもと一緒に読んでほしいとの想いからか、平易な書き方でサラッと読めますが、内容は非常に濃いものとなっています。

     “子どもが興味を持つ本を与えて、活字好きにすることが重要”

     これは確かにそう感じることが多く、本に限らず、興味が無いものは何事も長続きはしないなと。ただ、そのきっかけは半ば強制でもいいかなと思います。うちの例では、強制的に放り込んだスイミングは何のかんのと3年目に突入ですが、野球やサッカーは、体験だけで終わっています。。

     “読み方の指導というのは、課題図書を与えるのであれば、
      具体的な「課題」を与えることです。”

     そして、興味が継続するのであれば、どこかのタイミングからは“成果(アウトプット)”を意識させていくことが大事なのかな、とも。

     お二人は、教育の究極的な目的を「信頼」 とされ、ではその信頼関係を作るのに必要なものを「思いやり」「想像力」「ユーモア」とされています。それではどのようにそれらを身につけていけばいいのか、、それに対する一つの“解”として「読書」を位置付けられていて、どのような本を手に取らせればよいのかとの、談義を重ねられています。

     その幅は広く、古今東西の古典名著はもとより、絵本、漫画、小説などなど、非常に多岐にわたるジャンルの本が紹介されています。

     そして“教養”を身にまとうには、次の2点が大事とおっしゃっています。

     “ひとつは学術です。
      論理によって自分の置かれている
      社会的な位置を知って、言語化していくことです。”

     “もうひとつは、小説によって、
      自分の社会的に置かれている位置を
      感情で追体験することです。”

     論理と感情、一見相反するモノのようですが、どちらかに偏るのではなく、どちらもバランスよく“食べていく”のが大事なのかなと。小説などでの虚構の設定であっても、その中で語られている事象に対し、自分自身がどう感じたのかというコトは間違いなく“真実”として、残るでしょうから。

     “いまはどの大学を出ていようと、どのくらいの教養のレベルがあるかという
      国際スタンダードが問われる時代”

     そしてそれらを高いレベルで融合させた教養が、国際的に求められるレベルなのかな、とも。確か“地頭”という言葉を使い始めたのは佐藤さんだったと思いますが、ソレはこのレベルに達して初めて説得力が出てくる言葉なんですかね、、なんて風にも。

     ふと佐藤さんが『読書の技法』で「ビジネスの延長で雑談をするには、専門分野とは全く別の“歴史書や哲学書、さらに小説など、意外な本を挙げる必要がある”」と話されていたことも思い出しました。

     “小説というのは、自分たちは同じ時間を共有して、
      同じ舞台にいるんだという、共通の意識を持たせる文学形式です。”

     本書の後半では『八日目の蝉』を題材にして、人の罪と罰、そして営みの螺旋について読み解こうとされています。こちら、表面的に言えば人さらいの話です、現実的になかなかできるものではないでしょう。だからこそ、追体験としての価値を見いだせるのだと思います。

     仮に私が同じような位置付けで取り上げるとすれば、『シャーロック・ホームズ』のシリーズ、それも短編をあげるでしょう。昔から不思議と好きだったのですが、それは、19世紀ロンドン、そしてイギリスの“在り様”を追体験できるから、と今では考えています(ポアロやルパンには不思議と惹かれなかったんです)。

     なお、井戸さんは5人のお子さんがいらっしゃるそうですが、佐藤さんにはお子さんはおられないそうです。それでも不思議とスルッと入って来る説得力があるのは、、古くはモスクワ駐在時代に現地の学生にポケットマネーで仕事を与えていた、今でも、経済的に困窮している学生を同じように支援しているとのエピソードがあるからでしょうか。

     一貫して、その“軸”がブレない方なのだなと言うことを、感じることができました。我が身を振り返って、ブレない軸をどの程度に持てているのだろうか、なんてことを考えさせられた一冊です。

  • 「舌切雀」の「絵本を読んでいる大人のほうは、多かれ少なかれ見た目で大きいつづらを選んで"失敗した"という体験をしているんですね。」に思わず吹き出した。
    読ませる本、家庭学習、受験、環境などについて井戸さんの質問に佐藤さんがバンバン応えて行く。
    あまりにも内容が多岐にわたって盛り込まれているので消化するのに苦労する。
    一度読んだだけではすんなり入ってこない。
    というか、佐藤さんが示しているのはあくまでも入り口なのでこれを受けてどうするかと悶々としているというか。
    「採用基準」といい本書といい、日本の未来はそうとうに厳しい見通し。

    ・教養は「読む」「書く」「聞く」「話す」4つの力。

    ・読む本のステップアップ
    絵本→神話→偉人伝
    名作(時代が違うもの)は映像と連動
    同世代の小説で追体験させる

    ・「点数がいい」「理解できている」「頭がいい」ということはそれぞれ別のことと親が理解していることが重要

    ・「理論力」を身につけると国語の問題は8割できる
    国語ができるようになれば、すべての科目の成績が上がる

    ・「テレビとゲームは敵」

    ・物事というのは、8割を超えた後、そこから完璧なところまで近づくいていくには、特別な努力が必要になるんです。逆に言えば、どんな問題でも8割理解していれば、だいたい対応できるんです。

    ・教養のある人は闘志を隠します。教養とは隠す力でもありますから。

    ・教育の最終的なところは、社会人の教育でも、子どもの教育でも、結局は「信頼醸成」に尽きると思うんです。
    どうやって信頼される人間になるか。あるいは人を信頼できる人間になるかというのは、どうやって騙されない人間になるかということと「裏と表」なわけです。

    ・「その先に子どもの幸せがあるか」ということを考える。

  • 作家、佐藤優氏にとって初めての育児教育本です。対談がメインで、その相手は5人の子どもの母親である元衆議院議員の井戸まきえさんとによるもので、段階を踏んだ解説がとても参考になるものでございました。

    本書は「知の怪物」の異名を持つ作家、佐藤優氏と、自らも5人の子供を持つ母親である元衆議院議員の井戸まきえさんの2人が、共著で著したもので、佐藤優氏にとっては初めての子育て教育本になるのだそうです。

    「佐藤さんのような教養人にはどうすればなれるんですか?」
    という井戸まきえさんの直球の質問に対して佐藤氏は実に丁寧な形で答えていて、読んでいてとても面白かったです。それも段階的に示されており、本を読む力に始まって文章を読み、書く力。習い事や受験勉強に至るまでのロードマップが記されており、僕もこれを読みながら自分の来し方行く末を思い浮かべておりました。

    紹介されているテキストも東西の古典から、角田光代さんの傑作『八日目の蝉』に至るまで、幅広いものがございました。そして、巻末のほうでは育児をめぐる相談に対する二人からの回答が収録されており、とても参考になりました。

    しかし、僕がとても感銘を受けたのは育児の話ではなく、かつて佐藤氏が外交官時代にロシアのモスクワ大学で教鞭をとっていた際、生活に困っていた学生を自らのポケットマネーで仕事を与え、援助していたというエピソードがあり、現在、職業作家となっても自らのできる範囲で、経済的に困窮している学生達を支援しているのだそうです。その中で公認会計士などになり、佐藤氏の下を巣立っていった方がいるという話で彼の持つ軸がぶれていないことを再確認いたしました。

    僕にはまだ育児の経験がありませんが、将来の参考になればと。また、現在育児をされていらっしゃる方は、とても参考になるかと思われます。

  • 人とは、他人に比べ操作し易い自己の判断を正当化する傾向がある。そのため、人生訓は必ず、その人の経験則に基づき、主観というフィルターを通して語られる。謙遜しながらも内在する、自己に対する圧倒的自信。本著曰く、隠す事も教養。しかし、この立場から語られる教訓は、かなりの歪みを持つ危険性があり、本著もそこを脱せない。

    つまり、語られるのは、佐藤優が咀嚼し、胃袋で消化した価値観と言葉だ。

    私の価値観とは、例えば、次の事が異なる。習い事は、不要ではなく、あればベターなものだ。予備校は、行った方が良いとは思わない。テレビは必要とは思わないが、ゲームは依存しない限り、やった方が良い。これらは、私自身の生き方からの人生訓だ。自分がそのように生き、今の自分をわりと気に入っている。価値観とは、そのようにして生まれる。説教は、価値観を通じて放たれる。本著は、指南書ではなく、参考書だ。

    叩き込み教育。受験のための勉強。否定的に捉えがちだし、私もある部分には否定的だ。しかし、唯一、光ある教科がある。それは、国語だ。その他の科目はどれだけ効率良く暗記ができたかを確かめる教科だ。従い、勉強時間に結果が比例する。しかし、国語は勉強時間とは無関係だ。地頭を問われる。論理性を問われる。勉強ができる子も、国語の点数は安定しない。そして、この事が、社会に出て活躍できるか、という点の核心部となる。読みながら、そんな事を考えた。

  • 佐藤優と井戸まさえ(民主党議員)の対談形式による、子供の教育に関する本。佐藤優は教育に対しても確固たる信念を持ち、歯切れ良く意見を述べている。ただし、自分に子供がいないためか、説得力に欠ける点も見受けられた。子供に読ますべき数々の本の紹介は面白い。
    「(文章の)起承転結が問題。「転」は不要。起承転結で書いてしまうと、公務員試験も司法試験も全部落ちます」p78
    「教育の最終的なところは「信頼醸成」に尽きる。どうやって信頼される人間になるか、あるいは人を信頼できる人間になるかというのは、どうやってだまされない人間になるかと「裏と表」なわけです。信頼について勉強する、信頼関係を構築できるということは、だまされない、人をだまさないということ(を学ぶこと)」p242

  • 安定の佐藤優。

    教養は、人が生き残るために必要という原則があるように思える。
    今の時代で、子供が生き残っていくには、学校での勉強は避けて通れないんだから勉強させる必要があるよね。時代が違えば、動物の狩りの仕方だったり、農作物の育て方だったり。状況に応じて、生き残っていく術をどうやって獲得していくか?

    途中紹介されていたが、個人的に国内の私小説って嫌いなんだけど、小説から追体験させる必要については、確かに良い悪い、好き嫌いという判断を自分自身で出来るようになる点でそうだなと思えた。



  • 普段私は対談形式の本って読まないんですけど、今回は「子どもの教養をどう育てるか」という、普段から興味のあるテーマだったので、すんなり読めました。
    ところどころ「なるほど~」と思うところはありましたが、あくまで個人的考えとして参考にするレベルの話にとどめたいなと思いました。

    1章の「子どもを本好きにさせるには」のところにはたくさんのおすすめ本が出てきます。図書館でオススメされる古臭いベストセラーの本ばかりじゃないオススメが多くあったので参考になりそうです。

    また、なるほどと思ったのは、子どもたちに宗教観を育てることも大事という話。道徳の時間に教えるよりも宗教的な話のほうが心に響きやすいので、アリかなと思う。幼稚園や保育園は宗教系がオススメというのもうなずけます。
    ちなみに我が家の子どもたちは最近、長男の友達のおうちが教会なのでイベントのたびに出かけ、そこでお話を聞いてきています。親が話してもなかなか聞いてくれないのに、第三者的立場の大人が話すと耳を傾けるので不思議です。

  • 子どもの教育をテーマにした、知の巨人・佐藤優と国会議員・井戸まさえの対談。前半は比較的具体的に「書く力」や「読む力」、また「受験」などいくつかの項目に分けてそのポイントを佐藤優が説明する形。後半は『八日目の蝉』を題材に、そこから現代の家族関係の問題点を読み解いている。

    対談という形式だからか、全体を振り返るとなんとなく焦点がぼやけてしまう。けれど個別具体的に詳細を見ていくと参考になる部分も多い。たとえばこんなところ。

    ◼️本は書き込みをしたり、ポストイットを貼るなどして、汚して読むというのが佐藤流読書術でしたね。それでこそ頭に入るのだと。
    ◼️p36-37 理屈で説明するのは難しい民族の特徴や文化を、神話はわかりやすい言葉で物語っているからです。
    ◼️p54 「親はどんなことがあっても子どもを許す」「子どもの味方である」という信頼関係をきちんとつくっておくことですね。
    ◼️p56 偉人の話の対極になるのですが、社会はわれわれ凡人によってつくられているということも忘れてはなりません。だから、ふつうの人が危機的な状況においてどういう選択をしたかを学んでおくことは、重要だと思うんです。
    ◼️p131 国際社会に通用するためには、外国語と数学と国語の力が重要です。国語はイコール論理の力です。この3つは絶対に必要ですね。

    ただ本の最後で、子どもの教育で大事なのは結局「信頼醸成」なんだという主張がされていたが、これは些か唐突すぎではないだろうか。

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    子どもに読ませたくない本は、人をバカにする本。43
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    子どもは「自分よりわがままな存在」に出会って、はじめて自分の姿を客観視できるようになる。147
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    女性の外交官のほうが自分の力に自信がある人が多いように思います。ただし、みんな気は強いですが。でも、気が強いのを隠す力はある。教養のある人は闘志を隠します。教養とは隠す力でもありますから。181
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  • 大事なのは信頼醸成。

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著者プロフィール

作家・元外務省主任分析官。1960年東京都生まれ。85年同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在ロシア連邦日本国大使館勤務等を経て、本省国際情報局分析第一課主任分析官として、対露外交の最前線で活躍。2002年背任と偽計業務妨害罪容疑で東京地検特捜部に逮捕され、512日間勾留される。09年、最高裁で上告棄却、有罪が確定し外務省を失職。05年発表の『国家の罠』で第59回毎日出版文化賞特別賞を受賞。翌06年には『自壊する帝国』で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。

「2018年 『宗教と生命 シリーズ:激動する世界と宗教』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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