魂の退社

著者 :
  • 東洋経済新報社
3.64
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本棚登録 : 843
レビュー : 121
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492045947

作品紹介・あらすじ

「まっとうに会社で働く人が日本を支えている。それは本当にそうだと思う。
 しかし、会社で働いていない人だって日本を支えている。
自営業の人たち、フリーランスで働く人たちは言うまでもない。
 さらに、お金を稼いでいない人たち、たとえば専業主婦、仕事をやめた高齢者、何かの事情で働けない人、子どもだって、みんな日本を支えているんじゃないだろうか?
 食事をつくる、掃除をする、孫と遊ぶ、何かを買う、近所の人にあいさつをする、だれかと友達になる、だれかに笑顔を見せる――世の中とは要するに「支え合い」である。
 必ずしもお金が仲介しなくたって、支え合うことさえできればそこそこに生きていくことができるはずだ。
 しかし会社で働いていると、そんなことは忘れてしまう。毎月給料が振り込まれることに慣れてしまうと、知らず知らずのうちに、まずお金を稼がなければ何も始められないかのように思い込み始める。
 そして、高給をもらっている人間がエラいかのようにも思い始める。
 だから、会社で働いていると、どうしても「もっと給料よこせ」という感覚になる。これは、どんな高給をもらっていても同じである。(中略)
 しかし私は、もうその争いに意味を感じなくなってしまった」(プロローグより)
 そういう著者が選択したのは、会社を辞め、電気代200円で暮らす清貧生活だった。しかし、著者はかつてないほど希望に満ちていると書く。日々が何より新しい。それは「お金」や「会社」から自由になったことで得たものだ。会社とは、お金とは、人生とは何かを問う。笑って泣けて考えさせられて最後に元気が出る本!

感想・レビュー・書評

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  • 「アフロ記者」に続いて一気読み。

    会社勤めをしたことがないとか、三日でやめちゃったとか、フリーに生きている人に対して、ずっと憧れがある。自分にはとてもできないからだ。なぜできないのか、つらつら考えてみるに、小心者の心配性であることとか、わりに計算高いところがあるとか、ネガティブ思考に流れがちであるとか、もろもろあるなかで、しみついた優等生気質というのも大きいように思う。しっかり勉強して、良い大学から安定した仕事に就き、有用な人間と認められる…この流れは、正のインセンティブが働くので、無自覚にのっていくと抜けにくいものだと思う。「期待される人間像」をついなぞっていくことになる。

    著者もそうした流れのなかで会社人間として働いてきたのだが、五十歳にしてそこを飛び出してしまう。レールに乗っていたときには見えなかったあれこれが、実感をもって綴られていて読みごたえがある。「会社員」(か「会社員の妻」)でないとどうも生きづらい日本社会って、実にヘンだと思うけど、そういう制度設計が隅々まで行き渡っているのだよね。新聞記者として何を見てきたのかという自省の念も綴られている。

    それでも、困難は数々あれど、希望もたくさんある、というのが著者の基本的なスタンスで、そこがいい。エピローグのシメの言葉がかっこいい。
    「『つながり』がこれからの社会のキーワードだと言う人がいるし、私もそう思うけど、つながるためにはまず一人になることが必要なんだ。みんな知ってた?私は初めて知ったよ」

    • niwatokoさん
      続けてのコメント、失礼します。こちらもすごくおもしろそうです!! 
      わたしは逆にきちんと会社勤めしたことがありません。まさにモラトリアムで...
      続けてのコメント、失礼します。こちらもすごくおもしろそうです!! 
      わたしは逆にきちんと会社勤めしたことがありません。まさにモラトリアムで、会社コワイ、フリーかっこいい、フリーでなんとかなる、とか思ってました。そして、50代になってそんな人生を深く深く深く後悔する毎日です(苦笑)。これからの生き方?を考えるうえでも読みたいかもと思いました。(……自分の話書いてすみません)。
      2016/07/29
    • たまもひさん
      この方の「自由」な感じは、高野秀行さんのお仲間さんたち的なフリーさとはまた違ったものがあります。わたしはいたく共感しました。
      私の娘は大学...
      この方の「自由」な感じは、高野秀行さんのお仲間さんたち的なフリーさとはまた違ったものがあります。わたしはいたく共感しました。
      私の娘は大学院生なんですが、是非読むようにすすめるつもりです。立場や年齢が違っても、きっといろいろ受け取るものがあり、励まされるんじゃないかなあと思います。
      2016/07/29
  • いわゆる「ダウンシフト」についての一冊。

    著者が香川県民に感心させられたという、「うどん」単位で物事を考える姿勢についての話は面白かった。
    安くて確実に腹を満たせる「うどん」を単位に考えれば、たとえばテーマパークの魅力はあまりなくなる。
    「それやったらうどん○○杯食べられる」が決め台詞。ぜいたくは最低限になる。

    ほかはそんなにかなあ…。共感はできるけれど目からウロコってほどの話はなかったです。
    口語と文語を混ぜた書き方など、コラムやエッセイを書きたい人にとっては文章の参考になるかもしれないですね。

  • 痛快、生きる自信が沸く本。▼筆者は朝日新聞社に勤務し、で高度成長の成金ハッピーを享受していたが、40歳ごろに将来に不安を持ち、自分改造計画。「お金が無くてもハッピーな人生」にするにはどうすれば‥‥。それは意外なところに隠れていた。▼結果がどうであろうが与えられた場所でベストを尽くすこと。▼「モノを手に入れれば豊かになれる」という発想は急速に過去のものとなりつつある。それでは会社は困る。そこで、働く人を安く使い捨てにする。もう一つはお客をだます。会社が頑張るほど不幸な人間が増える時代に突入。会社は行き詰っている。▼経済成長の別名は「大量生産・大量消費」。経済成長は自立ではなく、依存を生んでしまった。どうすれば自立できる?▼仕事とは、突き詰めて言えば、会社に入ることでも、お金をもらうことでもない。他人を喜ばせたり、助けたりすること。つまり人のために何かをすること。それは遊びとは違う。人を喜ばせるには絶対に真剣にならなければならない。だから仕事は面白い。苦労もするし、思う通りにいかなくても逃げ出せない。しかしだからこそ達成感もあるし、仲間もできるし、人間関係のも広がっていく。

  • 2017.12.23
    TVで見かけてアフロにびっくりして覚えた稲垣さん。
    今まさしく仕事とか働き方にうやうやしている自分にとって、今のタイミングでこの本に出会えたことはとてもよかった。
    会社への依存度を下げるというのにドキッとした。
    毎月一定額を受け取れるこの環境に慣れてはいけない。変わりゆくのが早い現代、今の私の仕事がずっとあるのかもわからないし、そもそも終身雇用さえもう制度的に無理がある。
    モヤモヤしつつ答えはまだ見つからないけれど、会社に属する自分ではなくって、一個人として何ができるかを考えていきたいと思う。

  • まず、稲垣さんが50代ということに驚いた。
    テレビで見て、30代後半から40代と思っていたから。
    アフロが若く見せているのか、童顔、お肌がキレイだからかも。
    文章がとても読みやすくて、分かりやすかった。
    やっぱり会社って…あってもなくても、勤めてても自営でも日本に住んでるだけでこんなに違うんだよなぁと改めて気付かされた。
    自立、自活たしかにこれから日本人ができるかできないかだよなぁととても納得できた。

  • なんせ大会社で、その恩恵を受けまくっていた方のようなので、一般以下の地味~な生活をしている私なんかとは、感覚がちょっと違うなとw

    まぁ、でも、それを辞めちゃうってのは、凄い決断だと思う。いろいろ思うことはあっても、やっぱ会社に所属してるのって楽だもんね。。。

    私も、もっと若い時に、いろんな世界に足を突っ込んで、いろんな人と知り合っていたら、今とは変わってたかもなぁ~とは思うけど、会社に所属していながら、全然会社に重きを置いていないので、自分の仕事はガシガシやるけど、あとは知らん~~w

    とはいえ、今の会社の事業とかは、人のためになることもやってるし、わりといいかなと思う。愛社精神とは違うけど。

    「お金さえあえば幸せ」なんて価値観はもともと持ちようもなかったわけで、会社の隅っこで、ちょこちょこっと仕事らしきことをしつつ、わりと自由にさせてもらってるので、給料もそこそこだけど、それに見合う程度の仕事だけして、会社から外に出ればハッピー気分♪w

    ただ、もっとシンプルに、物を持たない生活がしたいなぁとは思っているので、仕事を辞めたら、えみ子さんみたいな冷蔵庫も洗濯機も掃除機もない生活を・・・って、無理な気がするけど、掃除機くらいはなくてもいい、ゆるやかな生活がしたいなw

  • 軽やかに退社したように書かれているが、実際は泥臭い時間がたくさんあったのだろうな。でも、大企業に勤めて数十年、貯金が充分あった著者だからこそできたことでもあるのだろうな、絶対的に。

  • 50歳、夫なし、子なし、そして無職…しかし、私は今、希望でいっぱいである。大学卒業以来、28年間勤めていた朝日新聞社を辞めた著者が、会社を辞めてみて身の回りに起きたこと、「会社で働くこと」について語る。

    「50歳、夫なし、子なし」だから辞められたのは読む前からわかっていたこと。でも論説委員までやって(たぶん)早期退職割増金を貰って、自由になったと言われても…。辞めてからわかったという世間の常識があまりに当たり前のことで、こんなことも知らずに朝日の記者や論説委員をやっていたのか!と驚いた。
    (D)

  • 世間知らずのおばさんが、会社を辞めて右往左往。
    最初はそんな印象の内容だったけど、要するに「お金がない暮らし」のレベルが違うんだと思った。
    お金がなくても、という言葉が何度も出てくるけど、お金がないわけはないし。
    会社を辞めても仕事は探しているし。
    月収100万でもそこそこ暮らしていたけど、月10万でも幸せに暮らせる方法を見つけましたーーー!私ってすごい?みたいな。
    感覚が違い過ぎ。
    結局このような本を執筆して収入はあるのだし。

    結局団体に所属していたら気がつかなかったけど、独立して初めて世間というのを知った。ということかな?
    30代や40代で会社を辞める話と、50で辞めるのとではかなり違うみたい。
    早期退職とあまり変わらないみたいだし、特にこの方はバブル入社だから少し特殊な気がした。

  • いやーー、自分が会社辞めるときのことを思い出してしまった。
    もちろん会社の規模や仕事の内容や働きぶりは違いますよ。勤続年数も。わたしはたった10年だし。
    でも、わたしには何か違う仕事ができるはず、やってみたい! 何もお金だけがすべてじゃない、新しいことにチャレンジして暮らしていけるはず! っていう、意気込みと希望と、そして不安がないまぜになったような気持ちはとてもとてもよくわかるのだ。
    いかに会社に守られていたかということに気付くところも同じだなーと。失業保険は次の会社を探す人にしか給付されないところに気付くくだり(↓)。
    P142「つまり失業保険とは、我が国の大人を「会社」というシステムに押し込むためのシステムだったのである!! 自分の足で立とうとしている人間は、それまでいくら保険料を納めてこようが失業後に必要な保護を受けることができないのだ。
    エーーーーっという衝撃、理解していただけますでしょうか。」
    年金もしかり。日本がいかに会社社会であるか、そのおかしさに気付くあたりはさすがです。

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著者プロフィール

稲垣えみ子(いながき えみこ)
1965年、愛知県生まれ。一橋大学社会学部卒。朝日新聞社入社。大阪本社社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員をつとめ、2016年1月 退社。夫なし、子なし、冷蔵庫なし。仕事したりしなかったりの、フリーランスな日々を送る。その生活ぶりを紹介したテレビ番組『情熱大陸』が話題に。日本酒好き。著書に『魂の退社』『寂しい生活』(共に東洋経済新報社)ほか。
『もうレシピ本はいらない』で「料理レシピ本大賞 in Japan 2018」料理部門:エッセイ賞を受賞。

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