魂の退社

著者 :
  • 東洋経済新報社
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感想 : 200
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492045947

作品紹介・あらすじ

「まっとうに会社で働く人が日本を支えている。それは本当にそうだと思う。
 しかし、会社で働いていない人だって日本を支えている。
自営業の人たち、フリーランスで働く人たちは言うまでもない。
 さらに、お金を稼いでいない人たち、たとえば専業主婦、仕事をやめた高齢者、何かの事情で働けない人、子どもだって、みんな日本を支えているんじゃないだろうか?
 食事をつくる、掃除をする、孫と遊ぶ、何かを買う、近所の人にあいさつをする、だれかと友達になる、だれかに笑顔を見せる――世の中とは要するに「支え合い」である。
 必ずしもお金が仲介しなくたって、支え合うことさえできればそこそこに生きていくことができるはずだ。
 しかし会社で働いていると、そんなことは忘れてしまう。毎月給料が振り込まれることに慣れてしまうと、知らず知らずのうちに、まずお金を稼がなければ何も始められないかのように思い込み始める。
 そして、高給をもらっている人間がエラいかのようにも思い始める。
 だから、会社で働いていると、どうしても「もっと給料よこせ」という感覚になる。これは、どんな高給をもらっていても同じである。(中略)
 しかし私は、もうその争いに意味を感じなくなってしまった」(プロローグより)
 そういう著者が選択したのは、会社を辞め、電気代200円で暮らす清貧生活だった。しかし、著者はかつてないほど希望に満ちていると書く。日々が何より新しい。それは「お金」や「会社」から自由になったことで得たものだ。会社とは、お金とは、人生とは何かを問う。笑って泣けて考えさせられて最後に元気が出る本!

感想・レビュー・書評

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  • 以前読んだ『老後とピアノ』よりは、参考になる部分が多かった。ただ、転職を繰り返して来た身には、「ずいぶんお気楽だなぁ…」と感じてしまった。もう少し著者の作品を追いかけてみたい。

  • さすが朝日新聞社の論説委員までされただけあって、日本社会の会社を主体にした経済やら会社に依存した日本のシステム(健康保険やら厚生年金等) など明解に書かれていてよく分かった

    そして、今の日本経済の停滞についても。
    物をたくさん所有していることが豊かさの判断基準だったのが、ほとんどの人が物をある程度所有できるようになった今、物を作っても売れない時代に突入、そんな中で利益を上げる方法は二つしかないと筆者は言う
    一つは、働く人を安く使い捨てにすること
    もう一つは、客を騙すこと

    まさに日本経済が負のスパイラルに陥っている

    会社に依存しない自分を作ることができれば、きっと本来の仕事の喜びが蘇ってくる。さらにそういう人が少しずつ増えていけば、「会社社会」ではなく「人間社会」
    が現れるのだと思うと語られる

    今までいかに会社に依存していたか、退職した後、自分の携帯の買い方が分からず、店員の勧めるプランを言われるがままに契約して高熱で3日間寝込んだ話には、気の毒ながら笑ってしまった

    しかし、退職後の生活、決して痩せ我慢ではないだろう
    私も周囲の人に「もったいない」と言われながら53歳で早期退職した
    お金はないが、
    見える景色が違う!
    空の青さが違う!
    自由であることの素晴らしさ!

    『お金はなくてもハッピーだよね』から
    『お金がない方がハッピーだよね』
    地球環境問題の観点からも全ての人がシフトダウンすべき時が来ているのではと思う

    今まで何かを得ることが幸せだと思ってきたが、何かを捨てることこそが本当の幸せへの道なのかもしれない・・・という言葉がズシリと胸に響く

    退職後、稲垣さんがどんなことを発見され、再認識されたのか他の著書も読んでみたいと思った

  • 私の価値観を会社に乗っ取られないために ー『魂の退社 会社を辞めるということ。』を読むー - LIFULL STORIES
    https://media.lifull.com/crossviews/2023022858/

    「50歳、夫なし、子なし、無職」で手にした自由と希望。「会社とお金に依存していたら未来はない」 【アフロの元記者・稲垣えみ子『魂の退社』インタビュー前編】 | ダ・ヴィンチWeb(2016/8/16)
    https://ddnavi.com/news/312131/a/

    『魂の退社――会社を辞めるということ。』稲垣えみ子著 | PRESIDENT Online(2017/03/04)
    https://president.jp/articles/-/21260?page=1

    魂の退社 | 東洋経済STORE
    https://str.toyokeizai.net/books/9784492045947/

  • 稲垣えみ子さん2冊目。2016年1月に朝日新聞を50歳で自主退職するまでのことが中心に綴られている。最初に読んだ『老後とピアノ』では退職後、ピアノを始めた話だったので、稲垣さんの退職を決意するまでに至った経緯や思い、実際に無職になって感じたことなどを初めて知ることができ面白かった。日本の社会制度は、実質的に会社に所属することが前提で設計されており、組織に所属する人以外に金銭的にもとてもシビアであるということもよくわかった。

    私は目下、大多数の人たちと同じように会社に所属し働いている。しかし、日本の働きすぎの風潮や同調を重視するところにしっくりきていない。それなので、稲垣さんが会社を辞めると周囲に告げた時、大多数の「もったいない!」という反応に違和感を感じたというところにとても共感した。稲垣さんのような柔軟な視点で人と接し、物事を考えられるようになると、どんな状況に置かれても、より可能性の広がる人生になるのだろうと思う。
    また、退職を考えた時から10余年は朝日新聞でしっかり働き、組織の中でやれることはやり切った上での退職と知り、考え抜いた上での退職だったことがわかった。だからこそ退職後、過去は振り返らず、新たな充実した人生を歩めているのだろうな。こういう人がもっとたくさん増えれば、少しずつ社会に柔軟性が生まれるのかもしれない。

  • 「アフロ記者」に続いて一気読み。

    会社勤めをしたことがないとか、三日でやめちゃったとか、フリーに生きている人に対して、ずっと憧れがある。自分にはとてもできないからだ。なぜできないのか、つらつら考えてみるに、小心者の心配性であることとか、わりに計算高いところがあるとか、ネガティブ思考に流れがちであるとか、もろもろあるなかで、しみついた優等生気質というのも大きいように思う。しっかり勉強して、良い大学から安定した仕事に就き、有用な人間と認められる…この流れは、正のインセンティブが働くので、無自覚にのっていくと抜けにくいものだと思う。「期待される人間像」をついなぞっていくことになる。

    著者もそうした流れのなかで会社人間として働いてきたのだが、五十歳にしてそこを飛び出してしまう。レールに乗っていたときには見えなかったあれこれが、実感をもって綴られていて読みごたえがある。「会社員」(か「会社員の妻」)でないとどうも生きづらい日本社会って、実にヘンだと思うけど、そういう制度設計が隅々まで行き渡っているのだよね。新聞記者として何を見てきたのかという自省の念も綴られている。

    それでも、困難は数々あれど、希望もたくさんある、というのが著者の基本的なスタンスで、そこがいい。エピローグのシメの言葉がかっこいい。
    「『つながり』がこれからの社会のキーワードだと言う人がいるし、私もそう思うけど、つながるためにはまず一人になることが必要なんだ。みんな知ってた?私は初めて知ったよ」

    • niwatokoさん
      続けてのコメント、失礼します。こちらもすごくおもしろそうです!! 
      わたしは逆にきちんと会社勤めしたことがありません。まさにモラトリアムで...
      続けてのコメント、失礼します。こちらもすごくおもしろそうです!! 
      わたしは逆にきちんと会社勤めしたことがありません。まさにモラトリアムで、会社コワイ、フリーかっこいい、フリーでなんとかなる、とか思ってました。そして、50代になってそんな人生を深く深く深く後悔する毎日です(苦笑)。これからの生き方?を考えるうえでも読みたいかもと思いました。(……自分の話書いてすみません)。
      2016/07/29
    • たまもひさん
      この方の「自由」な感じは、高野秀行さんのお仲間さんたち的なフリーさとはまた違ったものがあります。わたしはいたく共感しました。
      私の娘は大学...
      この方の「自由」な感じは、高野秀行さんのお仲間さんたち的なフリーさとはまた違ったものがあります。わたしはいたく共感しました。
      私の娘は大学院生なんですが、是非読むようにすすめるつもりです。立場や年齢が違っても、きっといろいろ受け取るものがあり、励まされるんじゃないかなあと思います。
      2016/07/29
  • 朝日新聞社を中途退社してフリーになり、それまでなじんでいた価値観と暮らし方とはガラリと変わった生活になったことによって、目から鱗がぼろぼろ落ち続けている様子を、新聞社で鍛え上げられた文章力と表現力を駆使して広く大勢の人に伝えたいという意気込みが迫ってくる面白エッセイでした。自分も21年務めた会社を辞めて地方に移住し自営業に身を転じた経験があるので、会社に勤めていた頃のなんとなく受け止めて当然だと思っていたそれまでの「一般的な」価値観や視点が、あくまで世の中に人の数だけ何億何千万とあってしかるべきそれぞれの価値観の「平均」とか「無難」のようなものであると実感したときの静かな衝撃であるとか、仕事に慣れてまずまず回せるようになって気持ちよく過ごしていたのに段々と管理職になって部下を持ちなさいと迫られ、こんなはずではなかった、と動揺するくだりとか、それでも良い査定をもらえれば喜ぶし同期がどんなポジションでどういう仕事をしているかは気になるし、という虚栄心に左右されてしまう自分の気持ちのあり方などを正直に書いているくだりとか、とても共感しながら読みました。浪人したり留年したり留学したり休学したり中退したりしたことが無かったので、会社組織を抜けて「個人」となったときの自由さと頼りなさを語ったくだりでは、まさに!っと(脳内で)膝を打ちました。賃貸契約が結べないとか新規でカードを作れないとかのエピソードは、さすがに無防備に過ぎるのではと思ったりしながらも、新聞記者という拘束時間の異様に長い職業についていたからかも、と思ったりしました。大変面白かったです。

  • 2020年58冊目。満足度★★★★☆ 50歳で朝日新聞を辞めた元記者のエッセイ。「会社人間」を辞めた人間にしか分からない世界がそこにありました。はい。私にはよく理解できました。

  • 多くの人に読んでほしい本です。
    うちは自営なので頷ける事も多かった。
    日本が変わっていくといいなぁと思いました。

    香川県の県民の話が面白かったな。

  • アフロヘアで有名?らしい著者が、朝日新聞社を退職するまでの経緯と、退職後の自身の変化について語られている。いい子として育ち一流大学を出て一流会社に勤め、世間から見ると何不自由なく順風満帆な人生に見えるが、男性社会の中で不条理に感じる処遇の変化を感じつつ、そんなときカラオケで被ったアフロのカツラ姿を見て、自身が変化することに向けた一歩を感じる。退職して初めて知る会社社会の現実。会社という組織に所属していたら守られている社会に気づくが、この依存から抜け出すことによる自由、規範に縛られない生き方があるんだという発見。著者は、こうした依存しない人々との繋がりに、活動の場を見いだそうと踏み出している。これまでの大多数の日本人のあり方への同感でもあり決別宣言でもある。

  • 同年代。自分もここ数年は会社、もう辞めようかなぁと思ったり、いやまだ働かないとと思ったりの繰り返し。
    この方は何故やめたのか、辞める前はどういう心持ちだったのか、辞めたらどういう心持ちになったのか、興味があった。
    読めば読むほど、私も辞めようと思ったり、いや、もちょっとがんばらないかんか、と思ったり、色々考えさせられたけど、ともかく勇気が出た。勇気が出る本というのは滅多にない。
    この本は、勇気が出る。力強く歩め、自分!と言いたくなった。

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著者プロフィール

一九六五年、愛知県生まれ。一橋大学社会学部卒。朝日新聞社で大阪本社社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員を務め、二〇一六年に五〇歳で退社。以来、都内で夫なし、子なし、冷蔵庫なし、ガス契約なしのフリーランス生活を送る。『魂の退社』『もうレシピ本はいらない』(第五回料理レシピ本大賞料理部門エッセイ賞受賞)、『一人飲みで生きていく』『老後とピアノ』など著書多数。


「2023年 『家事か地獄か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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