薩長史観の正体

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492062043

作品紹介・あらすじ

150年目に明かされる真実!  「明治維新」という名の洗脳を解く!! 
勝者(薩摩、長州)がでっち上げた通史の誤りを徹底究明。「薩長史観」と「真相」の対比から、幕末維新の真実を明らかにする。

◆著者の言葉
「薩長史観」とは何か。明治政府がその成立を正当化するために創り上げた歴史である。それは、薩摩や長州が幕末から明治維新にかけて行なった策謀・謀反・反逆・暴虐・殺戮・略奪・強姦など、ありとあらゆる犯罪行為を隠蔽するために創られた欺瞞(ぎまん)に満ちた歴史観であるということである。

◆主な内容(一部を抜粋)

[薩長史観1]幕府は無力・無策のまま開国したために倒幕運動が起こった
[真相]幕府は薩長に比べて遥かに開明的で、開国による近代化を進めていた

[薩長史観2]吉田松陰は松下村塾で幕末志士を育成した大教育者である
[真相]松陰は、暴力革命を礼賛するテロの扇動であった

[薩長史観4]西郷隆盛は「無私の心」で明治維新を成しとげた最大の功労者である
[真相]西郷は僧侶を殺し、江戸を混乱させ、同調者を見殺しにした策謀家だ

[薩長史観17]孝明天皇の病死で、英明な明治天皇が即位して日本は夜明けに向かった
[真相]孝明天皇は、薩摩と岩倉具視の陰謀によって毒殺された可能性が高い

[薩長史観19]「討幕の密勅」は正式なもので、天皇から幕府討滅の宣旨が下された
[真相]討幕の密勅は偽造されたものであり、その真相は文章に示されている

[薩長史観20]大政奉還は、その場しのぎの愚かな決断である
[真相]大政奉還は「慶応維新」というべき歴史的偉業であり「明治維新」より優れていた

[薩長史観29]急いで日本を武力統一しなければ、外国の植民地にされていた
[真相]外国勢力は局外中立を指示されており、植民地化を意図していたわけではない

[薩長史観31]会津藩主は、「朝敵」の筆頭である
[真相]松平容保は、天皇を守り抜いて奮闘した正義の藩主である

[薩長史観33]長岡藩の河井継之助は「官軍」に刃向かった逆賊である
[真相]和平を説いた河井は、征討軍の理不尽な態度のため、やむを得ず挙兵に踏み切った

[薩長史観35]朝敵会津の討伐は、正々堂々と行なわれた軍事行動である
[真相]負傷者の殺害、人肉食、強奪、強姦など新政府軍は徹底的に会津を蹂躙した

[薩長史観36]会津藩以外の同盟軍は大した抵抗を見せることなく降伏した
[真相]長岡のほか庄内藩は「官軍」を寄せつけず、薩摩兵と互角に戦って勇猛さを見せた

[薩長史観40]靖国神社は、国家に殉じた忠誠者の御霊を平等に祀るものである
[真相]「賊軍」を排除する靖国神社のあり方は、薩長史観の本質を露骨に示すものである

感想・レビュー・書評

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  • 薩長史観ズブズブの、にわか幕末ファンの目を覚まさせるには悪くないと思う。一方で司馬史観を完全に信じ切って坂本龍馬を英雄視している論調は噴飯もの。「薩長同盟で坂本が西郷と桂を叱りつけて〜」とか、ドラマの見過ぎ(笑)。また、薩長が全て悪いという論理に導くために、史実と個人の憶測・願望・決めつけが入り混じっているのが気になった。

  • 薩長の人物に対する評価が偏りすぎていて、もちろん同意するところもあるが、そこまで言うか?と感じることが多々あった。
    確かに無血が理想だが、仮に明治政府ができてなかったときにより良い未来が待っていたかどうかは分からない。
    特に利権が維持されたままで革命もままならず、欧米列強に並ぶことはできなかったかもしれない。
    それに多くの人物が薩長の人たちに惹かれ味方したのは間違いなく、人間的魅力があったのは間違いないだろう。

    とこの本に良い印象は抱かなかったが、印象が変わる人物も多くいた。
    たとえば一橋慶喜は逃げ回る無能将軍に思われがちだが、勝海舟と共に幕府側が負けるように動いてると感じた。
    (勝海舟が一橋慶喜の命を奪わないよう動いたのも、事前にその取り決めを交わしていたんじゃないか)

  • このところこの手の視点の本がいくつかあって、「勝てば官軍」の意味が本当によく判る。教科書に書いてあることが正しいわけではないと言ういい例だ。

    この本はかなり網羅的に項目を取り上げているのだが、出典とかも殆どなく、何が事実か、ちょっとトンデモ感も感じてしまったのは事実。

    特に、この無茶苦茶な薩長維新の流れが、先の大戦の日本の「暴挙」につながったってのは納得できないなあ。
    そこも、何が事実かまず検証してからでないと触れてはいけないと思うんだ。

    何れにしても、維新の偉勲、西郷隆盛が大嫌いになれることは必至。

  • 明治維新は素晴らしいと学んできたが、嘘も多かったらしい。らしいとつけたのは、この本に書かれたことが真実であると信じるにはもっとたくさんの資料が欲しいからだ。でも、西郷や坂本などの人物には後から美化した部分も多いだろうとは推測される。吉田松陰が暴力革命を礼賛するテロの扇動家であったのにはなぜか納得した。

  • 薩長の欺瞞ぶり、反知性振り、生命軽視の姿勢は、現政権と通じるものがある。

  • 内容的には「知ってる話が多いなぁ」という印象。
    「禁門の変」で長州がやったことは朝敵と呼ぶに匹敵するとか、孝明天皇毒殺説や錦の御旗偽造などは、こっちのほうが定説ちゃうかといえる話で、目新しい話は特になかったように思います。

    でも、薩長史観で言われている話と比較して書かれていたので、まとまりがよく、これはこれで興味深く読ませていただきました。

    あ、ひとつ驚いたことがありました。
    禁門の変で自刃した久坂玄瑞が、靖国神社に合祀されていたのは知りませんでした。靖国神社の理屈として、それおかしいやろ。

  • 封建制のもとで弊害だけがあった徳川幕府の体制を倒して、新しい国家を樹立し、日本の近代化を図って、日本を世界に伍する国にしたのが明治維新であるという一般的に流布している明治維新観を、薩長を中心とする明治政府がその成立を正当化するために創り上げた「薩長史観」であると批判し、その「真実の歴史」を取り戻すことを意図している。
    薩長史観批判については妥当な部分が少なくないとは思うが、取り上げられている「真実」(幕末の薩長勢力が一種のテロリズム集団であったこと等)は、どこかで見聞きしたことがあることが多く、さほど目新しいものはないと感じた。また、論拠をほとんど示しておらず、説得力に欠ける印象を持った。

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著者プロフィール

武田 鏡村(タケダ キョウソン)
歴史家
日本歴史宗教研究所所長、歴史家、作家。
1947年新潟県生まれ。1969年新潟大学卒業。長年にわたり、在野の歴史家として、通説にとらわれない実証的な史実研究を続ける。教科書に書かれない「歴史の真実」に鋭く斬り込む著書が多数ある。浄土真宗の僧籍も持つ。主な著書に『決定版 親鸞』『藩主 なるほど人物事典』『新時代の幕開けを演出した龍馬と十人の男たち』『坂本龍馬の行動学』『幕末維新の謎がすべてわかる本』などがある。

「2017年 『薩長史観の正体』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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