- 本 ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492211779
感想・レビュー・書評
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アフリカの苦悩は、環境や歴史に起源するものではなく、腐敗した「政府と行政」にある。たぶん、誰もがなんとなくそう思っているのに、「人道的」だとか、あるいは歴史の「負い目」を負っていると考える〈善意〉の人(=世界の大部分)は、そのことを言語化できなかった。しかし、最近のジンバブエの大統領、政府の出鱈目ぶりはいよいよそのことを白日の下にさらけだされた、といえる。それでも安保理ではその制裁に拒否権を発動する国が複数出る始末である。
新自由主義的な規制緩和によって多くの困難が解決するような著者の主張すべてに同意することはできない。それでも「取材に訪れたカメルーンでビールを運ぶトラックに同乗したのだが、私たちは四七回も警察の検問に停止を命じられたのだ。そのたびにスケジュールは遅れ、警官たちに金をつかませなければならないこともしばしばだった。おかげでビールは割高になっていた。」というエピソードひとつで、何が発展をぞいしているか想像できるというものである。
政府、行政の出鱈目ぶりがこれでもかと、紹介される。しかし著者は一方で、アフリカの人々を信頼している。だから、新自由主義的な政策がすべてを解決する、と主張できるのだろうけど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アフリカに関する本をあまり読んでこなかったこともあり、少し古い内容であはあるが、非常に示唆に富むものだと感じた。先進国の援助がドブにお金を捨てるような行為だったことがよくわかる。
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なぜアフリカは支援を続けても貧しいままなのかという疑問対する回答
『エコノミスト』誌の特派員によるアフリカルポ。
「アフリカが貧しいのは、政府に問題があるからだ」という主張を中心とし、ジンバブエ、南アフリカ、ナイジェリアなど各国の現状を分析していく。資源があるのに貧しくなってしまった国と豊かになれた国の違いなど大変興味深かった。
内容は2008年のものなので本文で「これからどうなるか注目していきたい」といった話を最新の視点で答え合わせできるのも、今読むときの魅力の一つとなりそうだ。白人経営者を逆差別で淘汰した南アフリカは、GDPでナイジェリアに抜かれ、優秀な人材イーロン・マスクはアメリカで世界一のお金持ちになっている。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/49159 -
読了
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「ヒトラーのようだ」「ナチスの時と同じだ」という言葉は時の政敵への非難として使い古された表現だが、
「ムガペのようだ」「ルワンダの時と同じだ」みたいなバリエーションがないのは、他の事例を調べるほどには社会に関心がないからだろうか。
「今この瞬間にもアフリカの子どもたちは苦しんでいる」という説教も古くからある言葉ではあるが、これは残念ながら現時点でも色褪せていない。
例えば1994年にルワンダで虐殺された市民は6週間で約80万人。2001年のボツワナでは3人に1人がエイズに感染している。
アフリカの困窮について一般的に挙げられるのは、かつての植民地政策による傷跡や海外貿易におけるモノカルチャーの押し付けなどのマクロな視点であるが、実際にアフリカの人々はどのような壁に直面しているのか。
『幸福の形はいつも同じだが、不幸の形はそれぞれ違う』
エコノミストの現地特派員である著者がミクロ経済の視点から見えた政治は、国の数、いや、人の数だけの苦悩だった。
例えばジンバブエドル。ハイパーインフレになったときには「支払いは1億ジンバブエドルで」みたいな冗談を見かけたものだが、
当事国においてはムガペによる親族経営のための経営権の奪取、搾取のための公営化、無策な価格操作、借金と紙幣の乱造、保身のための出兵といった混迷の表象の一つであり、この政権の間で平均余命は10年短くなり、平均年収は半分以下になった。
例えばナイジェリア。250の部族が36の州に分かれ、さらにキリスト教とイスラム教とが複雑に絡み合うこの国では、油田のような地域限定的な資産を活用するのは難しく、30年間で2800億ドルの収入を使い果たし、さらに300億ドルの負債を背負うことになった。
唯一貧困から脱しつつある南アフリカであっても、アパルトヘイトの反動のアファーマティブ・アクションは、労働市場において自由市場原理にそぐわない歪みを生じさせ、94年に160万人だった失業者は2001年には360万人に増え、大学進学者は8万8千人から6万8千人に減った。
レンガの組み方も知らない先進国の人間が安全できれいな家に住み、自分の手で家を建てられるアフリカの人たちがボロ家に住む。
この非効率的な社会は個人の力で覆されるものではなく、政治の力なくしては立ち直れない。
過去の混迷が深い傷跡を残していることは間違いないが、東南アジア、インド、中国が貧困を抜け出しつつある中で、なぜアフリカだけが立ち遅れているのか。なぜ惨状を招いたムガペが今も大統領としていられるのか。
本書にその答えはないが、無思慮な資金援助が当事国に悪影響を及ぼす事例は多数取り上げられる。
『効果的、効率的な援助』という言葉に違和感を感じる人には、得られることが多い一冊となるだろう。 -
アフリカの経済、歴史、政治について 全く知らなかった。アフリカに初めて触れた気がする。「コンゴジャーニー」即購入
なぜ アフリカは富まないのか。生きることが こんなに 大変でいいのだろうか。政治と大衆教育の重要性を知った
著者は アフリカの成長の 潜在能力を信じているように感じた
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