情報亡国の危機 ―インテリジェンス・リテラシーのすすめ

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492211915

感想・レビュー・書評

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  • 正に、今、ウィキリークスなる暴露サイトが全世界を混乱に陥れていますが、日本の情報管理の脆弱性は官民と関係なく国際社会と比べると、いかに甘いかが実感されます。

    この本で指摘しているように、日本も本腰を入れて、情報管理・防諜をはかっていかないといけないと考えさせられました。

  • インテリジェンス研究の重要さを知ることができました。
    また、海外と比較し、日本の研究が遅れていることが分かり、読んでいて悲しくなってきます。

    著者がしきりに主張している、「インテリジェンス・リテラシー」を高めることが、今後の国際社会を勝ち抜くために必須であると感じました。

  • 日本は、狩場。
    もうその言葉が全てを物語る。
    サファリのような国際社会で、なぜ公明正大にしていれば幸せに平和に暮らせると思うのだろう。
    いいものを作っても、新しいものを開発しても、あっという間に他国に持っていかれる。しかも日本は、開発できなければ盗んでこいという、破廉恥な国がすぐ隣にあるにも関わらず。

    インテリジェンスの酷さから大戦に追い込まれ、インテリジェンスのまずさから敗戦を迎えた。

    本当に、歴史の総括を行いもしないことが今に至っている。
    マジに、日本そのもんがなくなる。怖い。

  • 東2法経図・開架 391A/N38j//K

  • 日本でのインテリジェンス普及の第一人者である中西教授の本です。
    なぜインテリジェンスが必要なのか、また情報史を歴史を学ぶことが必要なのか、自身のイギリス留学時のエピソードなどを交えて綴られています。
    自身が立ち上げた情報史研究会のポリシーが集約されていると感じました。
    たまに読み返してます。

  • 【159冊目】京都大学の論客・中西教授による、歴史学的なインテリジェンス研究の必要性を説く書。国際関係論や外交史研究におけるインテリジェンスへの顧慮が必要であることは分かったし、政策的にも国民の間で情報活動に対する理解(インテリジェンス・リテラシーと著者は呼ぶ。)が広まることは日本が今後国際社会で生き残っていくために必要であるということも分かった。ただまぁ、著者による主張という側面が強くて、あんまり学問的な本ではなかったな。
    あと、欧米においてインテリジェンス関係の公文書の公開が相次いだために学問的な発展が飛躍的に見られたと筆者は言うが、ではそうした公開に消極的な日本においてどのように当該学問の環境を整備していくのかがイマイチ不明瞭だったかと思う。

  • 大変興味深い内容でした。日本人の歴史観のなさは、このインテリジェンスリテラシーの無さによるものでしょうか。
    もっと、学術的に成熟していくことを望みます。
    図らずも、イスラム国のテロにより、日本のインテリジェンスの低さが露呈した事は、今後を考えると、不幸中の幸いだったかもしれない。

  • 学問としての情報史・インテリジェンスについてあるべき姿を雄弁に語る著作

    政策について筆者は
    ・国家情報の三要件は1)国家の最高指導部とつながっている 2)中央情報機関に集約・一元化 3)中央情報機関は寄せ集めであってはならない
    ・日本が見習うべきはドイツ型。イギリスは情報に関する考え方が対照的に日本と異なり、制度などの表層を見習うと危険である。
    ・ブラックプロパガンダは倫理的にも経済的にも見合わない
    と明確に主張する。

    情報史の意義を信じ、日本という特殊な環境において学問として成立させるために「現役政府職員を研究会に加えない」「公的資金を研究費にいれない」などの通常の学会とは趣が異なる配慮をされているのが、印象的であった。

  • 「外交とは情報戦争である」——。外国による情報操作や世論工作が横行し、国家機密や先端技術情報の漏洩も止まらない。そんな中、情報史の権威が、日本の危機と今後の国家情報戦略のあり方や、個々が身につけるべきインテリジェンスとは何かを提示する。

    プロローグ インテリジェンスとの出会 ――イギリス留学で受けた知的衝撃
    第1章 イギリスに学ぶ情報立国のあり方 ――情報先進国のインテリジェンス・リテラシー
    第2章 インテリジェンスの常識に欠ける日本
    第3章 インテリジェンスをいかに活用するか ――インテリジェンス・プロセスを知る
    第4章 国家と企業の機密が狙われている
    第5章 情報史から見える新たな歴史像
    第6章 情報史学が拓く地平:日本と世界
    エピローグ 学問としてのインテリジェンス ――なぜインテリジェンスを学ぶのか

  • 近年起こったさまざまな国際的事件が
    日本国民の意識に確実な変化をもたらしている。

    9.11同時テロや北朝鮮の核やミサイルに象徴されるように、
    これまでの日本人が抱いてきたイメージと全く違う国際社会の現実、
    あるいは目をそむけてきた「国際関係の本質」に、
    日本人がようやく気づき始めたことが大きいのかもしれない。

    また、日本企業をターゲットに、
    技術情報を盗み出そうとする事件も次々と起こっている。

    近年の日本では、
    ほとんどあらゆる企業活動の分野で、
    情報<インテリジェンス>にかかわる事件が頻発しているのである。

    アメリカだけでなく主要先進国のインテリジェンス予算は、
    軒並み冷戦時代よりも増大されている。

    情報活動が国益にとっていかに重要と考えられているかは、
    各国がそれに投入している予算とエネルギーを見れば歴然と分かる。


    では、その「インテリジェンス」とは何か。


    オックスフォード大学の、
    マイケル・ハーマン教授は
    以下の3つを定義しています。

    ◆第1の意味

    国策、政策に役立てるために、
    国家ないしは国家機関に準ずる組織が集めた情報の内容を指す。

    生の情報(インフォメーション)を受け止めて、
    それが自分の国の国益とか政府の立場、経済界の立場に対して、
    「どのような意味を持つのか」というところにまで、信憑性を吟味したうえで解釈を施したもの。


    ◆第2の意味

    「インテリジェンス」という語には、
    そういうものを入手するための活動自体を指すという場合もある。

    ◆第3の意味

    第2で定義したような活動をする機関、
    あるいは組織、つまり「情報機関」そのものを指す場合がある。


    ●国家反逆罪

    欧州各国では、政治家が権力の座を去るとき、
    オフィスから文書を1枚でも持ち帰ったり、
    意図的に毀損したりしたら、
    場合によると「国家反逆罪」として重罪に問われることにもなる。

    前政権からの秘密文書の継承こそ、政権交代の核心であり、
    その隠匿や破棄があれば、国政の継続性が脅かされるからだ。

    ところが、そういう伝統が日本にはない。

    最近も、
    北朝鮮との交渉に携わったある外交官が、
    交渉時に残した公文書のうち何枚かを退官時に持ち出し、
    いまだに行方不明になっていると報じられた。

    これは、拉致被害者の数について、
    北朝鮮側は最近になって「日本側に事情を通知していた」
    と主張し始めたからである。

    そこで日本側が交渉時の資料を調べてみたところ、
    一部が消失ないし紛失していたことば発覚したのである。

    実はこれは「核密約」以上の大スキャンダルなのに、
    日本では全くもって問題にされていない。

    もし欧米諸国なら、
    国家的ない事件に発展するところだ。


    ★最近でも民主党から自民党に政権交代した際に
    引き継ぎがなかったことが、
    日中関係悪化の原因と、大前研一は指摘していますね。


    ●著者の主張

    外国からの秘密工作による
    不自然なメディア操作によって国論が分裂したり、
    民主主義のプロセスが乱されてしまうことは、
    あってはならないことだ。

    そのためには、国民が国際情勢に関心を持ち、
    もう少しその理解を深める必要がある。

    しかし、ここでより重要なのは、
    “感覚”なのである。

    いろいろな報道に接しても、

    「なぜだろう?」と疑問に思ったり、
    「そういう世界もあるのか」と好奇心を持ったりする、
    素直でストレートな感性が大切なのである。

    欧米では、大学を卒業してビジネスや行政の世界に入った人が
    より高いポジションを目指すために、
    30歳前後になって大学院などに戻って
    勉強し直すケースが少なくない。

    あるいは仕事に就いたままでも、
    政治家やエリートを目指して勉学に励む人もいる。

    そういう人は、専門分野が何であれ、
    以下の三点の勉強を欠かさない。

    第一は、核兵器についてだ。

    欧米の主要国は核保有国だから、
    これを学ばなければ政治家にはなれない。

    大学のキャンパスでも、
    学生や教員どうしが核について熱く議論する光景はよく見かける。

    第二は、国際金融についてだ。

    理科系でも、古典文学を専攻している人でも、
    金融のメカニズムについては、
    一般常識としてよく学んでいる。

    そして第三にが、インテリジェンスの基礎教養ないし知識である。



    国のリーダー、政策決定に携わるエリート層や
    報道に携わるジャーナリスト、あるいは一般国民が
    しっかりしたインテリジェンスに関わる知識と教養を身に着けた上で、
    外交・安全保障問題を議論し、
    政策を評価する能力を身につけていく。


    そうした「健全なインテリジェンス・リテラシー」を、
    日本の有権者が身につけていき、
    一日も早く他の先進民主主義国の国民と同等レヴェルの「知性」を備えて、
    国際社会を理解できるようになることが急務なのである。

    ★そうしたら外交で失態や損をすることはないのかもしれませんね。
    外務省や総理大臣をけなしてばかりいられません。

    一般人である自分も海外と同様の知性をもたないと恥ずかしいということですね。

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著者プロフィール

1947年、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。英国ケンブリッジ大学歴史学部大学院修了。京都大学助手、三重大学助教授、スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授、京都大学教授を歴任。石橋湛山賞(1990年)、毎日出版文化賞・山本七平賞(1997年)、正論大賞(2002年)、文藝春秋読者賞(1999年、2005年)受賞。専門は国際政治学、国際関係史、文明史。主な著書に『帝国としての中国――覇権の論理と現実』(東洋経済新報社)、『アメリカ外交の魂』(文藝春秋)、『大英帝国衰亡史』(PHP文庫)、『なぜ国家は衰亡するのか』(PHP新書)、『国民の文明史』(扶桑社)。


<第2巻執筆者>
小山俊樹(帝京大学教授)
森田吉彦(大阪観光大学教授)
川島真(東京大学教授)
石 平(評論家)
平野聡(東京大学教授)
木村幹(神戸大学教授)
坂元一哉(大阪大学名誉教授)
佐々木正明(大和大学教授)

「2023年 『シリーズ日本人のための文明学2 外交と歴史から見る中国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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