ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容

著者 :
  • 東洋経済新報社
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本棚登録 : 96
レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492212097

作品紹介・あらすじ

2013年参院選から解禁されることとなった「ネット選挙」。
しかし、そもそもネット選挙とは何なのか? その解禁によって、巷間言われるように「お金がなくても政治家になれる」、「ネットで見た候補者の発信に触発されて、若者が選挙に行くようになる」というのは本当か? 「この情報化社会にインターネットの使用を禁止するなんて、時代遅れもいいところだ!」という主張は正しいのか? テクニカルな側面だけを見ていても、本質には辿り着けない。ネット選挙を丁寧に一歩踏み込んで考察すれば、これらの主張が幻想に過ぎないことは明らかだ。

しかしそれなら、ツイッター議員はなぜツイッター議員であろうとするのか? なぜ全国紙がソーシャルメディア分析に取り組むのか? 解禁による静かな変化が、候補者・有権者・マスメディア・ネットメディアに及ぼす影響はどのようなもので、そこから日本はどう変わっていくのだろうか? インターネットの設計思想を政治に受け入れることで、日本社会が変わる!?

――ツイッターやフェイスブック、私たちが何気なく利用するソーシャルメディア上で、政治家の個人アカウントを目にする機会が増えてきました。ところが、公職選挙法に定められた選挙運動期間に入ると、新しいツイートも政治家個人のブログ更新もぱったりと止まっていたのが、2012年末の衆院選までのこと(一部例外もあり)。それはなぜだったのでしょうか? その答えからわかるのは、公職選挙法が実現しようとした選挙戦環境のありよう、そしてその基となる理念です。
一般市民による選挙関連のツイートやYouTubeへの動画投稿も、場合によっては合法とはいえなかった、という意外な事実に驚かされます。日常の中でほとんど意識することのない法律ですが、公職選挙法はそもそも何を実現しようとしたものだったのか? 改正によって何が可能になり、その影響は日本社会、私たち個人にどう及ぶのか? まさに、「制度だけでなく、これは思想の問題だ!」

感想・レビュー・書評

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  •  7月の参院選からいよいよ解禁になる「ネット選挙」(※)について、1983年生まれの若手社会学者(立命館大学准教授)がさまざまな角度から解説・分析したもの。

    ※正しくは「選挙運動におけるネットの利活用」の解禁。ネット投票が解禁になるわけではない

     ネット選挙を解説した類書はほかにもあるが、本書はとてもよくできているので、「解禁前に、とりあえず解説書を1冊読んでおきたい」という向きにはこれがオススメ。

     この手の時事的な本の常で、突貫工事で書き上げた(あとがきによれば正味1ヶ月ほどで書いたという)ようだが、それにしてはよくまとまっている。ネット選挙の先進国であるアメリカ、韓国との比較や、解禁が論じられ始めてからの約20年間の歩み、解禁後に何がどう変わるかについての展望などが、バランスよく詰め込まれているのだ。

     そして、そのような事実面での解説に加え、ネット選挙解禁の思想的意味についても深堀りしているのが、本書の特長である。

     日本の公職選挙法が志向してきた「均質な公平性」と、インターネットの設計思想である「漸進的改良主義」には、本来相容れない部分が大きい。ゆえにネット選挙の解禁は、じつは日本政治そのものに「価値観の転換」を迫るものであり、制度上の変更であるにとどまらず、大きな思想的意味をもっている……というのが著者の見立て。
     私自身は「へえ、そんなもんですかね」と思うのみで、著者の問題提起はピンとこないのだが。

     ネット選挙解禁までの歩みをたどった3~4章は、資料的価値はあるだろうが、退屈。
     逆に、解禁後の変化を予測した7章と、ネット選挙解禁の意義を民主主義という大きな枠組みの中で考察した終章(全体のまとめ・結論でもある)は、刺激的で面白かった。

     「ネット選挙解禁で、これまでより選挙にお金がかからなくなる」とか、「ネット選挙が解禁されれば若者が選挙に目を向けるようになり、投票率が上がる」などという誤解(少なくとも「そうとはかぎらない」こと)が、具体的データから正されていくのも面白い。

     たとえば、韓国ではネット選挙解禁後、大統領選の投票率はむしろ下がり、選挙運動の費用は下がっていないという。

  • 配置場所:2F手動式書架
    請求記号:314.85||N 81
    資料ID:W0173125

  • ネット選挙の一般的な認識としてあった「若者の投票率が増える」をしっかりと論理的に否定し、今後のネット選挙の展望についてわかりやすくかかれた書籍であると感じた。

  • 内容は2、3ページにまとめて書いてしまえる薄さで、特に目新しい論考もない
    ネット選挙について話題になっていたようなネタをそのまま深く弄らずツギハギした感じで、出版時のネット選挙に関する空気を伝える事だけには意味があるのかもしれなき

  • 本質は「均質な公平性」のもとでの競走から、「斬進的改良主義」の価値観を政治に取り込むこと。情報技術と政治の距離を近づけ、その豊かな可能性を引き寄せ得る。

    しっかり考えてくれている人、に期待します。

  • 「制度だけでなく、これは思想の問題だ!」気鋭の社会学者が説く『ネット選挙』という事象。僕自身は今までさして興味は正直無かったのですが、これを読んで一体どういう事が起こっているかを改めて知りました。

    2013年の参議院選挙から解禁となった『ネット選挙』新聞などを見ていると「親子で学ぶネット選挙」というような特集が組まれているのを散見することがありますが、僕は正直、あまり関心が無かったのかもしれません。ここでいう『ネット選挙』とは選挙活動にネットようのコンテンツ。具体的にはツイッターやフェイスブック等のソーシャルメディアということになるのでしょうが、先日テレビのニュース番組を見ていて、ある国会議員が四苦八苦しながらツイッターを使っていたり、ブログに自分の所属する党の『裏事情』を書きすぎて執行部からお灸をすえられた議員もいるとかという話が流れておりました。

    本書にするされているのはそもそもネット選挙とは何なのか?という根源的な話や、巷でもよく言われている
    「お金がなくても政治家になれる」

    「ネットで見た候補者の発信に触発されて、若者が選挙に行くようになる」
    なんていうことが本当に起こるのか?さらにはネット論壇などでよく言われている
    「この情報化社会にインターネットの使用を禁止するなんて、時代遅れもいいところだ!」
    に至るまで多角的な角度から語られているということと、豊富なデータが提示されており、これ一冊読みきることができれば『ネット選挙』という事象についてほぼ正確に把握できるのではないでしょうかというのが僕の読後感でございました。

    しかしツイッターをよく活用している「ツイッター議員」はなぜツイッター議員であろうとするのか?にはじまる様なネット社会の思想を政治の中に取り込むことによって何が変わってくるのか?ということも論じられていてとても面白かったです。こういった話は立場によって意見が異なるかと思いますが、本書はすぐ読めますし、「ネット選挙って何?」という方には一読をオススメしたいと思います。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:314.85//N81

  • 「公平性の重視」から「漸進的改良主義」

  • 「理念なき解禁」を超え、日本の政治を「斬新的改良主義」へ―。トライ&エラーを繰り返しながら、ブラッシュアップしていく政治。そこでネット選挙運動の真価が問われるのか。そんな政治を見てみたい。ありがとう。

  • テレビなどの新しいメディアの選挙運動への利用は認められてこなかったが、なぜネット選挙だけ認められるのか?
    「お金がかからない」、「若者の投票率が上がる」という言説は合理的な根拠に乏しい。
    理論なきネット選挙解禁は意味がない。まずは「インターネット」という世界の価値観の共有やそれを政治に取り入れる際に起こりうる変化を議論するべきである。
    インターネットは政治家と国民の距離の遠さを縮め、政治を透明化できる可能性がある。ただし、ネットは手段のひとつで、従来のメディアや選挙活動を含めた総合的な議論が必要である。

    ということが書いてありました。

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著者プロフィール

西田亮介(にしだりょうすけ)
一九八三年京都生まれ。社会学者。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。博士(政策・メディア)。慶應義塾大学総合政策部卒業。同大学院政策・メディア研究科修士課程修了。同後期博士課程単位取得退学。(独)中小企業基盤整備機構経営支援情報センターリサーチャー、立命館大学大学院特別招聘准教授などを経て現職。『ネット選挙とデジタル・デモクラシー』(NHK出版/二〇一三年)『メディアと自民党』(角川新書/二〇一五年/社会情報学会二〇一六年優秀文献賞受賞)『なぜ政治はわかりにくいのか:社会と民主主義をとらえなおす』(春秋社/二〇一八年)『情報武装する政治』(KADOKAWA/二〇一八年)など。

「2019年 『「言葉」で読み解く平成政治史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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