丹羽宇一郎 戦争の大問題

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492212349

作品紹介・あらすじ

「戦争を知っている世代が政治の中枢にいるうちは心配ない。平和について議論する必要もない。だが、戦争を知らない世代が政治の中枢となったときはとても危ない」
(田中角栄)

本書は、歴史家や軍事評論家が書く戦争論ではなく、国際的な見識を持つ代表的なビジネスマンであり、中国をよく知る元中国大使の丹羽宇一郎氏が、軍事や戦争に対する本質的な疑問を、戦争体験者や軍事・安全保障の専門家にぶつけ、そこから得た知見と教訓をまとめたものです。

戦争の痛みも知らず、戦力の現実も知らないまま、気に入らない国は懲らしめろという勢いだけがよい意見にはリアリティがありません。私たちは、いまこそ戦争の真実を追ってみるべきです。その上でもう一度、日本の平和と防衛を考えてみるべきではないでしょうか。

日本人は72年間戦争をせずにきましたが、同時に戦争を知ろうとせずに過ごしてきました。あと10年もすれば戦争を知っている世代がいなくなるでしょう。私たちは戦争の語り部を失ってしまうのです。

いまが最後のチャンスです。

■本書の3大特徴

1.戦場の真実がわかる

資料をもとに歴史家が書いた権威ある戦争研究の書籍とは違い、著者自ら、日中戦争・太平洋戦争で武器を手にした体験者を訪れ、専門家から見過ごされてきた多くの事実を聞いています。中国の広大な大地で、戦争末期の満州で、極寒のシベリアで、フィリピンの山中で、いったい何があったのか?

2.日本の防衛力の真実がわかる

日本が自ら戦争を仕掛けることはないでしょう。しかし、北朝鮮や中国が日本を攻撃しないとは言い切れません。戦争に巻き込まれる危険は常にあります。日本を守るのは誰でしょうか? 自衛隊でしょうか? 米軍でしょうか? 軍事・安全保障の専門家に聞いた、本当の日本の防衛力。

3.日本が目指すべき道がわかる

日本が目指すべきは世界中から尊敬される国です。世界を屈服させる強国ではありません。世界が感服するよい手本となる国です。戦争はしてはいけない。戦争から得られるものは何もない。戦争体験の教訓を学ぶことが、日本を再び戦争に導かない力となり、同時に世界に貢献できる手がかりとなるでしょう。

感想・レビュー・書評

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  • 「我が意を得たり」の内容だった。
    特にP250の内容は大賛成だった。
    今のマスコミや政財界要人、識者と呼ばれる人の発言に
    違和感を覚えていたので、久々に胸の支えがとれた感じだった。

  • 「戦争をなくすために大事なことはまず戦争を知ることである」と著者が冒頭に述べているがそのとおりだと思う。考えさせられることが多かった。

  • 戦争を防ぐにはどうするか。
    まずは我々が戦争を知ること、敵を知り、己を知ること。
    新エリートの政治家を選ぶこと。

  • 著者は、伊藤忠商事の会長、中国大使を経た丹羽氏。
    今のマスコミや世評を鑑み、対外的に強硬的に振るまい勝ちな昨今を諌めるような一書。
    書かれていることはもっともだが、言いたいことがあり過ぎたのか、内容はてんこ盛り。丹羽氏ならではの話を期待していたのに散漫になってしまったのが残念。

  • 戦争は勝っても負けても損をする絶対に日本がやってはいけない、巻き込まれない為にどうするか考え、行動すべきであるというのが要旨。
    日米安保をベースとした安全保障ではなく、自分達で考え中国に歩み寄り友好関係を築くなど日本にしかできない平和へのアプローチがあると実感した。
    丹羽さんの本を読むと自分の教養不足を痛感。調べながら読むので時間は掛かるがいつも勉強になる。

  • 西宮図書館で借りる

  •  戦争を知っている世代が世の中の主流であった頃は、強気で勇ましい意見は少なかったのだが、現在は韓国や中国に対してとても強圧的な意見が多くなっている。この本は「戦争してはいけない」ことを日本人に訴えかけるものである。田中角栄は「日本は戦争を経験した人たちが居るうちは大丈夫」だと言っていたという。
     そもそも歴史とは「勝者の物語」であり、敗者は悪であり鬼であると書かれるのは当たり前なのであるから、中国共産党か自らの正当性を高めるために日本軍を悪とする物語を語ることを非難しても仕方がない。韓国に対して歴史を歪曲していると攻撃しても、攻撃することによって得られる成果は少ないのだ。
     戦争を経験した人がいなくなってしまった現代こそ、書物から現代史を学ばなければならないのだ。

  • 2020/12/21丹羽宇一郎 戦争の大問題☆
    「エリートの育成」国家・企業の命運を決める
    歴史、特に現代史を直視し、リアリズムを鍛える
    丹羽宇一郎氏の著書としては異色 国家観
    1.日米戦争へ何故?
    リアリティの喪失 精神主義の横行 
    馬鹿な王さまが敗戦必至の戦争に踏み出す
    それを支える官僚体制がある
    国家の最終責任者は誰だったのか?
    天皇 東條英機 近衛文麿 まさか木戸幸一
    300万人も死んだ国民はやりきれない
    19年サイパン陥落後の死者が多数 リーダーの責任
    →民主主義国家でなかった 国民は虫けら
    「強靱な民主主義国家」を作ることが「繁栄の道」

    2.現代日本の課題
    ①人口問題 ②環境問題 ③資源問題
    「絶対に戦争に近付いてはならない」
    まずは戦争の事実・実態を知ること
    将来に希望が持てる人は、
     戦争という絶望的な事態は望まない
    将来に希望が見出せず自暴自棄になると恐い
    ⇒コロナ禍の怖さはそこ 

  • 戦争は不条理、不合理で、愚かしく、残酷で、悲惨で、不毛なもの。国民にはなんの役にも立たない戦争の真実を知ること。戦争をなくすためには、まず戦争を知ることである。日本は72年間平和であったが、同時に長い間、戦争の真実を知らずに過ごした。まもなく戦争を知る世代がいなくなる。戦争を知らない世代が政治の中枢となった時はとても危ない。

  • 人肉食の告白は衝撃

  • 安倍首相を支持している人たちには、親中派のたわごととして一顧だにされない内容と思います。

  • ストレートな反戦の主張と、そのために何が必要かを論じた本。憲法9条には触れていないが。政治家には、ステイツマンとポリティシアンの二種類があり、前者が真の政治家との指摘には目を見開かされた。この国にステイツマンはいるか?

  • 大使時代はかなり中国よりな印象を受けたけど、この本を読んで納得した。ビジネスに例えるとわかりやすいけれど、国際政治も同列に扱ってもいいのかという疑問は残った。

  • 戦争を知っている世代が政治の中枢にいるうちは心配ない。平和について議論する必要もない。だが、戦争を知らない世代が政治の中枢となったときはとても危ない。田中角栄

    解釈は勝者によって決められる

    歴史とは、勝者による、勝者のための、勝者の物語である

    人は本能的に、全体の利益以上にまず自らに望ましい情報に向かっていく

    人は非常時になると当然のことが見えなくなる。冷戦な判断ができなくなる

    兵士が発砲する理由は何かという質問に、戦争体験のない人は、「撃たないと撃たれるから」と答え、戦争経験者は、「撃てと命令されたから」と答える

    戦争で生き残った人に共通するのは運

    戦場から生還した人々はけっして運がよかったからだけではない。「生きたい、行きて帰らなければ」という強い意志があったから、運を拾うことも出来たのだろう

    事前の徹底的したリサーチ、綿密な計画、適切な予測の裏付けがあった、初めて、「勇気ある決断」に到る

    戦術の誤りは戦略で補うことができるが、戦略のあやまりを戦術で補うことはできない

    日本が選ぶべき道は中国との軍拡競争ではない。
    現在疎遠になっているように見える両国の関係をより深める努力を一層深化させることが、真の我が国の安全保障である

    2002/9 小泉首相と金正日委員長が調印した日朝平壌宣言では、北朝鮮がNPTを遵守し、IAEAによる査察を受けて核開発をやめ、その見返りに日本は北朝鮮と国交を樹立し、経済協力を行うことを定めていた。もし北朝鮮が査察を拒めば、日本は経済協力をとめることをで手綱を握れた
    北朝鮮の核開発を日本がほぼ独力で阻止したことに世界は驚嘆した

    清水信次会長 北朝鮮に援助をして国民を豊かにしてやることだ。国民が豊かに生活できるようにすれば自然と独裁体制に疑問を持ち始める。援助をして北朝鮮の国民を豊かにしてやることが、最もよい北朝鮮対策だ

    防衛力で望ましいのが、戦わずして勝つこと

    潜水艦を発見する能力 日本の海上自衛隊が勝ることもある 人の技量の差

    マリアナ沖海戦で日本軍は壊滅的な損害を受けた。あの段階で日本は戦争をやめるべきだった。
    マリアナ沖回旋ででは日本軍戦死者3500名、空母三隻と艦載機のほぼすべてを失った。この段階で太平洋の制海権、制空権はアメリカのものとなった

    いま伝えたい日本人の誇るべき真髄 清水信次

    中国南部に侵攻した日本軍兵士の安全を保証し、十分な食料を与え、使役することなく日本へ帰したのも中国であった

    巨額の不良債権を抱えた企業は往々にして、債権のうちの良質な部分にばかり注目しようとするし、巨大なプロジェクトが停滞したときには、経営者に上がってくる情報は明るい見通しだけだ

    経営者がバッドニュースファーストを基本姿勢にしていれば、心地よい情報ばかり上がってくることはない

    人々がついていこうとするのは、往々にして正しいことを言っていいる人の後ではなく、強気で勇ましい発言をする人のあとだ

    心を学ぶとは、結局、人に学び、本に学び、体験仕事のなかで学ぶしかない

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著者プロフィール

丹羽宇一郎(にわういちろう)
公益社団法人日本中国友好協会会長。一九三九年愛知県生まれ。元・中華人民共和国駐箚特命全権大使。名古屋大学法学部卒業後、伊藤忠商事(株)に入社。九八年に社長に就任すると、翌九九年には約四〇〇〇億円の不良資産を一括処理しながらも、二〇〇一年三月期決算で同社の史上最高益を計上し、世間を瞠目させた。〇四年会長就任。内閣府経済財政諮問会議議員、地方分権改革推進委員会委員長、日本郵政取締役、国際連合世界食糧計画(WFP)協会会長などを歴任ののち、一〇年に民間出身では初の駐中国大使に就任。現在、一般社団法人グローバルビジネス学会名誉会長、伊藤忠商事名誉理事。

「2023年 『仕事がなくなる!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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