平等社会

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492223024

作品紹介・あらすじ

人は格差社会で満たされるのか?健康問題や社会問題の大半は、格差が大きい社会で、より深刻だ。充実した生活は、格差の小さい、より平等な社会から生まれる。

感想・レビュー・書評

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  • 科学的(に見える)手法の悪い使用例。
    自説に有利になるように評価係数を作り、効果を大きく見せるために縦横軸をカットし、相関係数、R値を出さずにずさんな回帰直線を引き、統計値が同じ前提に立って調査されているかも怪しい。
    学士論文レベル。それも査問で教授に突っ込みをくらいまくるレベルの。

  • 書名からは理想論をとくとくと述べているものかと想像したが、豊富なデータを用いて客観的分析を行い、平等社会が誰にとっても好ましいことを示している。これほど明確なデータがあるにもかかわらず、格差を是正する動きがなかなか進まないのが不思議に思うほどだ。

    主要工業国間やアメリカの州の比較によると、所得格差が大きくなるほど、
    ・国民間の信頼が低下する
    ・女性の地位が低い
    ・対外援助の国民所得比が小さい
    ・精神疾患の人口比率が高い(格差が最大の社会と最小の社会の差は5倍)
    ・平均余命が短く、乳幼児死亡率が高い
    ・成人の肥満率(同6倍)も子供の太りすぎの率も高い(ストレスが過食を引き起こす)
    ・生徒の学力が低く、高校の中退率が高い
    ・殺人率が高く、子どもたちの喧嘩やいじめが多い
    ・人口当たりの収監者数が多く(同5倍)、警察や治安維持要因の人口比率が高い
    ・収入の親子間の関係が強い(社会移動が少ない)
    ・労働時間が長い
    ・ごみのリサイクル率が低い

    これらの傾向は、社会的階層別に比較しても同じ。所得格差が小さくなれば、貧しい人に及ぼす影響はより大きいが、豊かな人も恩恵を受ける。

    経時的な変化でも、
    ・イギリスでは、2つの大戦間に政府が戦争協力を促すためにとった完全雇用と小さな所得格差の政策によって、健康状態の改善と犯罪率の減少につながった。
    ・1990年代初頭に統制経済から市場経済に移行して格差が拡大したロシアでは、平均余命が大きく下がった。東欧諸国では、所得格差が急激に広がった国ほど、平均余命はより短くなった。
    ・アメリカよりも健康状態が良い国は1950年代には数か国しかなかったが、1970年代に所得格差が広がると、1980年代には30位に向けて後退した。
    ・ベルリンの壁が崩壊後に急激に格差が広がった旧東ドイツ地域では、子供、青年層、母親のBMIが増大した。

    世界銀行は、東アジア諸国の急激な経済発展が、平等性拡大によって支えられているとする報告書を発表している。国際的にも、国内の格差が小さい国ほど、国際問題により目配りをするようになり、国際交渉でも開発途上国を思った主張をしている。

    より平等な国の方が高い唯一の問題は自殺率である。その理由として、社会の下層の人々では自殺率が高くないこと、自殺率は他殺率に反比例していることがある。

    社会の平等性を実現する方法として、税金や社会福祉の配分と、労働分配率を高くして所得そのものを平等化する2通りがある。

    アメリカやイギリスでは、1980年代から1990年代初頭にかけて所得格差は40%大きくなった。両国が国内の格差問題を緩和すれば、国際的な問題がどれだけ減るだろうかと思う。

  • 格差が犯罪や他人への信頼感と大きくつながっていることを統計データを利用して現している。やや冗長なところと、統計データのバーに数値がないこと、そうなっている理由の深掘りがないため、事実としては面白いが、後に残るものがやや少ない。

  • <内容>
    健康問題や社会問題に影響→社会の格差の程度(p.31)
    「社会的な物質的な格差の程度が、階級や文化の違いの骨格と思うべきなのだろう」(p.31)

    「格差の広がりは社会的な門田や社会階級にまつわる偏見を助長するのみならず、後続章で明かすように、コミュニティの暮らしをも脅かし、信頼を損ない、暴力を増大させるのだ。」(p.51)
    →ブルデューの「象徴的暴力」(p.189)


    →所得格差を減らした方がまとまりのよい社会へ(亀裂を生じさせる)
    →格差が大きい→社会構造が硬直→機会均等が遠のく

    *日本の平等性=税引き前所得そのものを高度に平等化して税や福祉による再配分をなくす(p.203)←日本型雇用が前提だが崩壊気味、これどうする?

    <感想>
    日本の政治経済学者はこうした論文をあまり紹介したがらない。しっかり現実を直視して、もっと政策提言しなさいよといいたい。まぁ一部経済学者の訳分からない議論はごめん被りたい。

  • 教育、平均寿命から肥満、暴力、10代の出産まで、格差がいかに我々の社会に害をなすかを、様々なデータと指数で検証。2007年までの数値を見ると、日本は先進国ではトップ4に入る所得格差の少ない国家。自民党安倍政権の成長戦略(=格差増大)で、この国の形がどう変わっていくのか…非常に不安になります。

  • 訳が非常に良いので読みやすい。先進国の国別比較がかなり出てくるが、これを読むと日本がどんなに凄い国か改めて理解出来る。

  • 論文として読むよりも、一つの問題提起をする著作と考える。これらのデータ、仮説をしっかりと検証するだけの労力はないけれども、伏流している不平等という問題をさらけ出すには十分な証拠を示せているのではないかと思う。各省の分量と内容も適度で読みやすい。

  • 石橋先生に借りた本。
    所得格差が減ると、人々がまとまり、信頼度の高い社会になる。そうなれば栄養指導もいらなくなるかな。

  • 問題のデータまとめとしては良いように思う。人間のDNAはピグミーチンパンジーに近いっていうのは、そうなのかーと思った。

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著者プロフィール

リチャード ウィルキンソン
ノッティンガム大学メディカルスクール名誉教授
経済学者、公衆衛生学者。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで経済史を学び、後に疫学を学ぶ。ノッティンガム大学メディカルスクール名誉教授、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン名誉教授。著者に『格差社会の衝撃』『寿命を決める社会のオキテ』など。ケイト・ピケットとの共著『平等社会』は『ニュー・ステイツマン』誌の「この10年に読むべき本トップ10」に選出され、20を超える言語に翻訳された。

「2020年 『格差は心を壊す 比較という呪縛』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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