軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い

著者 :
  • 東洋経済新報社
4.00
  • (5)
  • (9)
  • (2)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 105
レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492223802

作品紹介・あらすじ

真山 仁氏推薦!
「『遺族の責務』を探し続けた男が挑む不条理
闘う遺族を静かに寄り添うジャーナリストが辿り着いた
日本社会の欺瞞と脆弱」

「責任追及は横に置く。一緒にやらないか」
遺族と加害企業の社長。
相反する立場の2人は巨大組織を変えるためにどう闘ったのか。
あの事故から始まった13年間の「軌道」を描く。

私は、この事故を淺野弥三一という一人の遺族の側から見つめてきた。
彼の発言や行動は、これまで私が取材や報道を通して見聞きしてきた事故や災害の遺族とは何かが決定的に違っていた。
淺野の視点と方法論は独特で、語る言葉は時に難解で、JR西に対する姿勢は鋭く峻烈でありながら、柔軟で融和的に見えるところもあった。(「プロローグ」より)


<本書の内容>
乗客と運転士107人が死亡、562人が重軽傷を負った2005年4月25日のJR福知山線脱線事故。
妻と実妹を奪われ、娘が重傷を負わされた都市計画コンサルタントの淺野弥三一は、なぜこんな事故が起き、家族が死ななければならなかったのかを繰り返し問うてきた。
事故調報告が結論付けた「運転士のブレーキ遅れ」「日勤教育」「ATS-Pの未設置」等は事故の原因ではなく、結果だ。
国鉄民営化から18年間の経営手法と、それによって形成された組織の欠陥が招いた必然だった。

「組織事故」を確信した淺野は、JR西日本自身による原因究明と説明、そして、組織と安全体制の変革を求める。
そのために遺族感情も責任追及も封印し、遺族と加害企業による異例の共同検証を持ち掛けた。

淺野の思いに呼応し、組織改革に動いた人物がいた。事故後、子会社から呼び戻され、初の技術屋社長となった山崎正夫。
3年半でトップを退くが、その孤独な闘いは、JR西日本という巨大組織を、長年の宿痾からの脱却へと向かわせた。
それは、「天皇」井手正敬の独裁に依存しきった組織風土、さらには、国鉄改革の成功体験との決別だった。

淺野と山崎。
遺族と加害企業のトップという関係ながら、同世代の技術屋ゆえに通じ合った2人を軸に、
巨大組織を変えた闘い、鉄道の安全を確立する闘いの「軌道」を描く。
そこから見えてきたのは、二つの戦後史の「軌道」だった──。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  •  テスラの自動運転の死亡事故は、本来ブレーキをかけるべき運転者が前を見ずにスマホいじっていたのが原因だ。
     交通業界にいる身としては、お粗末すぎると思った。

     自動運転の技術革新が目覚ましく、世界中で開発競争が激しい。
     この新技術での遅れは、その国の科学技術が世界から遅れることに直結している。
     ということは理解している。

     翻って鉄道業界は、外部からではほとんど分からないほど変わらない技術だ。
     だがもし、テスラの事故と同じことを鉄道がやらかしとすると、社会の目は自動運転とは比べ物にならないほど大きい。
     トライ&エラーとか言ってられない、100%の安全が求められるのが鉄道業界だ。
     だから、新技術もひたすら何年もモニターラン・コントロールランを繰り返して、ようやく世に出せる。
     世に出るころには、すでに技術的には遅れていても必要なステップだ。

     13年前、107人の死亡者を出した列車脱線事故。
     平成の世にこんなことが起こるのか日本ヤベーなと思っていたが、鉄道業界の技術部門に入った身としては、起こりうるというのが現在の認識だ。 
     死亡者数の裏には、表には出てこない残された人たちの人生が隠れている。
     突然に家族を奪われた怒りと絶望がある。

     次はうまくやります。トライ&エラーです。なんてことを、人を殺すことがある業界は言ってはいけない、考えてはいけない。
     絶対安全じゃなければいけないのだ。

     便利、コストダウン、技術革新、未来の技術、そんな目先のきれいごとで交通業界が守るべき安全をないがしろにしてはいけない。
     新システムが人を殺す。
     技術者はそのことに恐れなければいけない。

  • 2005年4月25日 福知山線事故
    2008年9月8日 兵庫県警が山崎社長ら10名を書類送検
    2009年1月 遺族が歴代3社長を告訴
    2010年7月8日 神戸地検が山崎を在宅起訴
    2009年8月21日 歴代3社長の不起訴を不服として遺族が神戸第一審査会に審査申し立て
    2009年10月9日 歴代3社長に対して検察審査会が「起訴相当」を議決。二か月後、神戸地検が再び不起訴処分に。
    2010年3月26日 歴代3社長に対して、検察審査会が「起訴議決」
    2010年4月23日 検察官役の指定弁護士が歴代3社長を業務上過失致死傷罪で強制起訴
    2012年1月11日 神戸地裁が山崎に無罪判決。神戸地裁は控訴を断念。同26日に無罪確定
    2012年7月6日 歴代3社長の公判が神戸地裁で始まる
    2013年9月27日 神戸地裁が歴代3社長に無罪判決。指定弁護士は控訴
    2915年3月27日 大阪高裁が歴代3社長に対する控訴を棄却。一審を支持し、無罪とした。指定弁護士は最高裁に上告
    2017年6月12日 最高裁は歴代3社長に対する上告を棄却。指定弁護士は異議を申し立てず、無罪が確定

  • 被害者遺族の代表の一人浅野氏に寄り添う形で,丁寧に聞き取り調査をして,JR西日本の体質歴史に切り込んでいるのは見事.ただ批判するだけではなく,これからどうすれば事故を防げるかにポイントを置いて,身勝手な井手天皇をも冷静に分析している.福知山脱線事故の本は興味があって何冊か読んでいるが,これが一番心にグッときました.

  • 関係者などをはじめ、かなり調べて書かれている本書。
    その熱意には頭が下がる。
    が、技術的な専門用語が多くてかなり難しい。
    失礼ながら、その辺りはちゃっちゃっと飛ばし、淺野氏やJR西日本関係者の話やエピソードの辺りを読む。
    事故ると確かに大惨事になる鉄道だが、全国で毎日運営されている鉄道数を考えると、その数は非常に低いといえるだろう。考えてみれば、それってすごいことだ。
    過去の事故からたの「学び」が生かされているのだろう(と信じたい)。
    「人間がかかわるものはミスが起こるもの」と想定して備えておかないといかんな。

    まるで見当違いの感想だが、「一番前の車両に乗って運転士と同じ視線で景色を楽しむ派」の私だが、本書を読んで一両目に乗るのが怖くなったかも(汗

  • 建物の1階部分にひしゃげた車両がめり込んでいる。脱線事故とは
    言え、これはどういう状況なのか。2005年4月25日に発生した
    福知山線脱線事故のニュース映像だ。しかも、テレビ画面に映し
    出されていた車両は2両目だった。

    この事故で妻と妹を失い、次女が重傷を負った都市計画コンサルタント
    淺野弥三一氏が巨大組織JR西日本を相手に組織としての原因追求と
    安全対策の改善を求めた記録が本書である。

    淺野氏は被害者遺族であり。被害者家族である。その人が被害者感情を
    優先するのではなく、組織事故としてJR西日本に真摯な対応を求める。

    誰もが出来ることではないと思う。大規模事故に自分が、または身内
    が巻き込まれたのなら、私だったら被害者感情が先に立ち安全の確立
    を求めることまでには考えが至らないだろうと思う。

    国鉄の分割民営化後のJR西日本が優良企業となって行く過程、その
    なかで育まれてしまった上に物が言えぬ組織風土。それをJR西日本
    自身に見つめ直されるのには、事故後に社長に就任した山崎正夫氏
    の登場を待つしかなかった。

    残念ながら山崎氏は自身の不祥事と福知山線脱線事故での在宅起訴
    で社長の座を去ることになったが、彼がいたことで淺野氏たち被害者
    組織との対話の実現への突破口になる。

    あの事故を運転士個人の責任として済ませてしまうのは却って簡単なの
    だろう。では、何故、ヒューマンエラーが起きるのか。その背景を洗い
    出した記録として本書は貴重な作品だと感じた。

    一貫してJR西日本の組織的責任を追及し続けた淺野氏は勿論のこと、
    JR西日本関係者の多くに取材し、丹念に描かれた良書である。

  • 運転手も含め107名の犠牲者を出した2005年4月25日に発生した福知山線脱線事故。その事故で奥様を亡くし、娘さんが大けがを負った浅野弥三一氏が、JR西日本に対して事故原因の追究を訴え、被害者と加害者という立場を超えて再発防止に取り組んできた日々を追うノンフィクション。
    当初JR西日本経営陣は事故原因を運転手のミスと主張していました。しかし、浅野氏は運転手のミスは原因ではなく、運転ミスを厳しく罰する懲罰主義やミスに対する厳しい日勤教育をはじめとする精神論などの企業体質にこそ原因があると考え、JR西日本の企業体質の変革を目指しました。
    当初、専ら組織防衛に徹する経営陣とは議論がかみ合わない中、新たに社長に就任した山崎正夫氏との出会いが事態を動かすきっかけになりました。山崎氏はJR西日本初の技術系出身の社長であり、技術コンサルタントであった浅野氏と技術者同氏として語り合うことができたからです。浅野氏が山崎氏と初対面の時の印象を「彼は技術屋でしょう。彼となら対話ができるかもしれない。事務方の用意した官僚答弁ではなく、自分の言葉で本音を喋る人だ。」と述べ、「責任追及はこの際、横に置く。一緒に安全の再構築に取り組まないか」と語りかけています。
    鉄道など公共交通機関は安全が最優先とはわかっていながら、利用者である私たちは「より速く、より快適に」という要求を過度に求め過ぎていないでしょうか。「原発には反対だが、快適な生活は手放したくない」といった要求とよく似た構図がみられる気がします。鉄道の安全を確保するのは確かに鉄道を運行している企業であるのは当然ですが、その企業に過度なプレッシャーを与えていないか、再考させられる1冊でした。

  • JR西日本の福知山線脱線事故。なぜこのような凄惨な事故が起きたのかを究明し、改善を求めていく闘いを追ったルポ。
    被害者家族の心情、JRという巨大官僚組織の不気味さ、経営陣と現場のかい離など、様々な視点で読むことができる。
    事故報道に限らないが、我々は分かり易い解を求め勝ちで、マスコミが提供するストーリーも一本調子。
    しかし真の課題は複雑で、それ故に簡単な解決策を許さない。昨年も山陽新幹線で重大事故が起きた。組織の変革の難しさを思う。

  • 『軌道 福知山脱線事故 JR西日本を変えた闘い』 (刀根明日香)- HONZ
    http://honz.jp/articles/-/44752

    東洋経済新報社のPR
    遺族と加害企業トップの2人は、組織を変えるためにどう闘ったのか。あの事故から始まった13年間の「軌道」を描く。真山仁氏推薦!
    https://store.toyokeizai.net/books/9784492223802/

  • ページをめくるごとに様々なことを考えさせられる本だった。

    事故を防ぐにはどうすべきか、それを企業という様々なしがらみの中でどう実現するか、そしてそれを隅々までどう浸透させるのか。

    事故が起きてしまったとき、一人の人間として、被害者として、あるいはその場に居合わせた一員として、また社員として、さらには経営者という立場だったとして、自分に何が出来るのか。

    大企業を前にして一人の人間に何が出来るのか、
    大企業という巨大な組織を前に一人の社員あるいは経営者として何が出来るのか。


    こうした次々湧き上がる疑問に唯一の答えはないのだろう。
    答えがあるとすれば、それは考え続けることかもしれない。

    そして、自分にとっては、こうした本を読んだり、様々なことを学び直したりすることが、改めてそうした疑問に向きあい、深く考える機会になる。

    本書でもたびたび登場するヒューマンエラーの考え方にも通ずるが、人間は気合だけで常に高い集中力、危機感を維持することは出来ない。
    残念ながら安全意識も同じである。
    経営理念を掲げるだけで安全を守れるほど甘くはない。

    人間の意識は低下することを前提に、それをマネージすることが必要である。
    その視点を忘れずに、考え続けていかなければならない。

  • 東2法経図・6F開架 686.7A/Ma81k//K

全11件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

松本 創(マツモト ハジム)
ライター
1970年、大阪府生まれ。神戸新聞記者を経て、現在はフリーランスのライター。関西を拠点に、政治・行政、都市や文化などをテーマに取材し、人物ルポやインタビュー、コラムなどを執筆している。著書に『誰が「橋下徹」をつくったか――大阪都構想とメディアの迷走』(140B、2016年度日本ジャーナリスト会議賞受賞)、『日本人のひたむきな生き方』(講談社)、『ふたつの震災――[1・17]の神戸から[3・11]の東北へ』(西岡研介との共著、講談社)などがある。

「2018年 『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』 で使われていた紹介文から引用しています。」

軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘いのその他の作品

松本創の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村田 沙耶香
國重 惇史
塩田 武士
フィル・ナイト
三浦 しをん
リンダ グラット...
恩田 陸
辻村 深月
朝井 リョウ
有効な右矢印 無効な右矢印

軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘いを本棚に登録しているひと

ツイートする