トラジャ JR「革マル」30年の呪縛、労組の終焉

著者 :
  • 東洋経済新報社
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レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (623ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492223918

作品紹介・あらすじ

「人殺しの組合にはいられない」(本文より)

JR東日本労組「3万人大量脱退」、「JR革マル」対「党革マル」の「内ゲバ」、北海道の社長2人と青年組合員の相次ぐ「謎の死」の真相とは。
事態の裏側で、いったい何が起きているのか。
『マングローブ』を凌ぐ、衝撃の超弩級ノンフィクション!

◆「トラジャ」とは?
①インドネシアのセレベス(スラウェシ)等の山地に住む民族。水稲耕作を営む。(『広辞苑』)
②旧国鉄の「動労」(動力車労働組合)や「真国労」など革マル系組合出身の労働者で、分割民営化前後に、革マル派党中央に上がり、国鉄内の革マル系組合だけでなく他産別を指導する「労働者」出身の革マル派同盟員の秘密組織。

<内容紹介>
『週刊東洋経済』の短期集中連載「JR 歪んだ労使関係」(3回)を、追加取材の上、大幅加筆し単行本化。
講談社ノンフィクション賞を受賞した前著『マングローブ テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実』(07年)以後を描く。
テーマはJR東日本、JR北海道、さらにはJR貨物の三社の国鉄分割民営化から今日までの労使関係を中心にした経営問題。
それに加えて、『マングローブ』執筆時に判明していなかった、知られざる革マル派非公然部隊の動きや、党革マルVSJR革マルとの暗闘劇を描く。
またJR東労組の大量脱退問題は、会社に対する敗北ではなく、組合という存在自体に嫌悪感やアレルギーを持っている「当世社員(組合員)気質」への敗北であると位置づける。その上で今回の大量脱退は国鉄・JR労働運動の終焉、さらにはナショナルセンター「連合」に代表される組合型労働運動の終焉を意味していると結論づける。

感想・レビュー・書評

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  •  いったい、あの労働組合の存在はなんだったのか。
     内部にいても全然わからなかった。

     2018年初、まず地方支社から雪崩をうって労働組合脱退が各職場で始まった。
     当時、まだ長野支社にいた俺は、

    「電力はすでに終わった」
    「設備で残ってんのはウチだけだ、とにかく急げ」

     との声を聞いていたい。
     たしか2月か3月か、所員集まって一人ずつ届けを出して、晴れて労働組合から脱退した。
     その時は、なんでこんな話になってるのか全く知らなかったが、あとから原因は、会社に対してスト権を打つという組合への反発だったと知る。

     4.69万人を誇った自称世界最強の労働組合は2019年初までに脱退者は3.5万人にのぼり、実質崩壊した。

     今更ながら労働組合の横柄な態度が大嫌いだった。
     3,4年前、支社登山クラブに属していた関係で、労働組合の登山大会の手伝いをしたことがある。
     ホテルの受付やっていて、ある人が日本酒の酒瓶を渡して「部屋に持っていけ」と言った。
     どちら様?と聞くと「俺を知らないのか!」と怒鳴られた。
     東京地本のエラい人だった。
     知るか、バカ。
     以来、労働組合が大嫌いで、なるべくなら関わらないようにしてきた。


     本書は、2008年の「マングローブ」から10年経った続編のようなノンフィクションだ。
     前書では、JR総連の末端に至るまで浸透する革マル派の党員、通称「マングローブ」について書かれていた。

     本書では、逆にJR総連から革マル派党員になった通称「トラジャ」について書かれている。
     まず、2018年のJR東日本とJR東労組で起きた労使協調の破棄から起こる大量脱退について。
     次に、JR東日本とJR東労組の歴史的な経緯について書かれる。
     
     本書での本題は、JR東労組の上位団体、JR総連を切り口にして、未だに異常な労使協調が続けれられているJR北海道とJR貨物が後半の主題となる。
     

     内部にいてさえ、全然わからないまま労働組合が崩壊した。
     殆どの社員は、俺含め労働組合無所属だ。
     JR東労組の成り立ちからして、組織は内部に敵を作ることで強化してきた。
     逆に、内部の敵が増えすぎて組織が瓦解したと筆者は分析している。

     あの大量脱退騒ぎは何だったのか。
     一定の答えが本書にある。

  • JRの歪んだ労使関係をテーマにした600ページもの力作。
    前作の「マングローブ」、類書の「暴君」でも、このような常識外れの組織が生き残っていることに驚いたが、それは本書も同じ。親方日の丸的体質と経営者の保身ゆえなのか。
    それにしても、JR北の惨状は目を覆うばかり。疲弊する地域経済の基幹インフラ企業がこのままで良いはずがない。使命感を持った多くの従業員のためにも、早くまともな組織になることを願うばかり。
    本書では連合会長のインタビューまで交え、労組の存在意義と健全な労使関係が大切だと訴える。単にJR労組のルポに終わらない点でも厚みがあった。

  • なんのための労働組合なのか考えさせられる本。
    JR東日本と北海道の実態を膨大な取材、長期間にわたる執念で追い続けてまとめられていて素晴らしい。
    自己の組合の労働者の行動を、強権で縛り付け、付き合いまで管理・干渉し、敵対する労組の組合員へのいじめへの加担を強要するのを見ると、いかにも社会主義共産主義の行き着く先という印象。
    連合・政党含めてまともな労働運動を行う組織の登場を願いたい物です。

  • 牧久著「暴君」と合わせて読むべき書。JR北海道についてはこちらが詳しい。炎上事故など不祥事続出の背景にあったもの。未だ革マル組合が支配する。同僚の結婚式を祝えない。組織破壊行為のレッテルを貼り死まで追いやる。少数組合員への嫌がらせ配転。中労委の命令にも素直に応じない。組合の介入で経営上の意思決定が変わる。それを利用する一部経営者。歴代社長2人の変死・・。発足当初から厳しい経営環境だったが潰したくても潰せないこんな会社。作るべきではなかった。国定分割民営化の失敗。どうすべきだったかが少し見えてきた。

  • 国鉄の民営化以降も革命的マルクス主義者たちがJR各社の労働組合を牛耳り、役人上がりの経営者と癒着して生きながらえてきた様子を克明に事実をベースに記述。JR東はつい数年前まで、北海道についてはこの瞬間もまだ以上な組合員運動が行われている。

  •  日本には、いまだにこんな労組と経営者がいるのだろうということは、まあ、知ってはいるのだけど・・・。JRだけではないということも知っている。でも、ひどい。

     JRに巣食う「革マル」。虎の威を借る労働者。保身と自らの出世だけに関心がある経営者。両者がつるんで、国民の安全をないがしろにし、税金を強奪する。民営化前から続く、その癒着ぶり、異常さを暴く。21世紀の話とはとても思えない、拉致、暴力、策謀・・・・。

     革マルが指導してきたJR東労組はついに組合員が大量脱退し、少数組合に転じたが、それまでは第一組、連合の中でも最大単組だったという。それはなぜか? 著者はあとがきでこう言う「実直で、従順な気質は多分に、組合であろうが、会社であろうが、「その時の力のある者」になびく傾向にある。」。つまり、革マルに従ったのは経営者より力があったからで、大量一斉脱退したのは、経営者のほうが力を持ったから・・・と言うこと。

     これはどうやら、「日本人論」かもしれない。

  • 国鉄民営化の影響が取り沙汰される時代になったと改めて。

  • ★第2弾だからこその厚み★前作「マングローブ」を読んでいないので重複する部分がどの程度あるのかは知らない。JR東労組から3万人超が脱退した異常事態の裏側を描き、同じ総連系ながら、触れられることの少なかったJR北海道労組の今も残るいびつさを描く。あとがきの最後にあったように、北海道の話をメインに書きたかったが、読者が限られるので東の現在進行形のトピックを先に持ってきたのだろう。東の話を書いた本は多いが北海道は少ないだけに貴重だ。取材の蓄積と歴史観に強みがある。

    東については、経営側が労政転換をして組合をつぶしにかかったといっても、そんなに組合員が一致団結して脱退するわけではない。法令違反かもしれないが、経営側が現場の管理職などを動かしたのだろう。これまでの組合の歪さはおそらく前著でも触れており、逆に経営側から見たこの段階での具体的な戦術が見えるとさらに興味深い。また、現状ではほとんどの社員が組合未加入という事態になった。日本の大手企業としては異例のこの状況がどうなるのかは、労使関係の壮大な実験にもなる。

    北海道の組合の歴史はきちんとたどった書物がないだけに読みごたえがある。ハシにいるからこそ、革マルがより先鋭になるのだろう。内部資料の積み重ねもあり取材は手厚い。社長経験者2人が自死したのは本当に異例の事態だ。中島氏については組合問題とささやかれてはいた。36協定違反を契機に組合が経営側ののませようとした、国鉄時代に逆戻りする「現場協議の復活」の意味の大きさが、詳細な資料と歴史的な経緯をきちんとひも解いてくれたことで理解できた。
    ところで、西側をおさえる連合系の組合なら問題は生じていないのだろうか。

    いずれにも共通するが、(ほぼ)会ったことがない人を糾弾している例も多い。もちろん努力をしても会えなかったのだろう。対立する側の取材が中心となるなかで、まだ生きている人について書ききるのは、取材の厚みへの自信なのか割り切りなのか。胆力がいる。

  • JRではいまだにこんな歪な労使関係がまかり通っているのかと、唖然としながら読みました。
    わが(筆者は北海道出身、在住)JR北海道では、経営側が労組の言いなり。
    たとえば、乗務員らのアルコール検知器を使っての検査も組合側の抵抗(!)で義務化できず、実現したのはようやく2012年になってからです。
    ちなみにこの労組とは、JR北海道労組。
    組合員が他の組合に属する組合員と口を利くことを許さず、結婚式にも出席するのはご法度というのですから、あまりにも偏狭です。
    世間の常識とかけ離れた組合と言わざるを得ません。
    もっとも、歪んだ労政を転換しようとした経営者もいます。
    しかし、労組の抵抗に遭い挫折。
    しかも、わずか3年の間に2人の社長(1人は元社長)が自殺に追い込まれました。
    ぜんたい、社長(1人は元社長)が2人も立て続けに自殺する会社なんてどこにあるでしょうか。
    百歩譲って、JR社内だけのことならまだいいです。
    所詮はコップの中の水の話。
    しかし、これがこと「乗客の安全」に関わってくるとすれば到底、看過できません。
    実際、JR北海道では近年、石勝線で特急「スーパーおおぞら14号」の脱線火災事故をはじめ、数々の事故や重大事案が続きました。
    この背景に、歪な労使関係を背景とした杜撰な安全管理体制があったことを、本書は告発しています。
    さらに、JR北海道では、組合員によるATS(自動列車停止装置)破壊、覚せい剤を使用しながらの運転などが明らかとなりました。
    開いた口が塞がりません。
    JR東日本も相当に異常です。
    特に、JR東労組を脱退した組合員に対する嫌がらせには、怒りを通り越してあきれ果てました。
    この元組合員が制服に着替え、電車に乗務しようとすると、JR東労組の組合員たちが運転席に一番近い車両に乗り込み、「この野郎、こんなところでブレーキをかけやがって」「ヘタクソ、危ねーな」などとヤジを飛ばすのです(一部は現在もyoutubeにアップされています)。
    さらに、この元組合員の証言によると、対向車線から来た電車にハイビームで2、3回パッシングされたり(危険な行為!)、駅構内の信号機を隠されたりしたこともあったそうです。
    乗客の安全などそっちのけ、大事なのは組合のメンツや保身なのでしょう。
    実は、自分は新聞記者として札幌市の小・中学校における国旗掲揚・国歌斉唱の問題を約1年間にわたり取材した経験があります。
    国旗掲揚・国歌斉唱の是非はこの際脇に置いておくとして、その過程で何度も教職員組合を取材しました。
    実は、「子供のことなんて考えていないのではないか」と疑問に思うことがしばしばありました。
    組合の論理が、真に大切な子供たちに優先するのですね。
    JR北海道労組やJR東日本労組、さらにはその上部団体であるJR総連には、極左暴力集団で殺人をも厭わない革マル派が相当浸透しており、本書の大半はそこに割かれています。
    かなり複雑に入り組んでいるので理解するのはなかなか難しいですが、公的企業であり人命を何よりも優先すべきJRに、こんな危険な人物たちが入り込んでいると考えると慄然とします。
    労働者たちが安心して働くためにも組合という存在は必要ですが、不健全な労使関係はただちに是正し、真に「お客様のためのJR」に生まれ変わってほしいと切に願います。
    読む価値あり!

  • 東2法経図・6F開架:366.62A/N86t//K

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著者プロフィール

西岡 研介(ニシオカ ケンスケ)
ノンフィクションライター
ノンフィクションライター。1967年、大阪市生まれ。90年に同志社大学法学部を卒業。91年に神戸新聞社へ入社。社会部記者として、阪神・淡路大震災、神戸連続児童殺傷事件などを取材。 98年に『噂の眞相』編集部に移籍。則定衛東京高等検察庁検事長のスキャンダル、森喜朗内閣総理大臣(当時)の買春検挙歴報道などをスクープ。2年連続で編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞を受賞した。その後、『週刊文春』『週刊現代』記者を経て現在はフリーランスの取材記者。『週刊現代』時代の連載に加筆した著書『マングローブ――テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実』(講談社)で、2008年、第30回講談社ノンフィクション賞を受賞。他の著書に『スキャンダルを追え!――「噂の眞相」トップ屋稼業』(講談社、01年)、『襲撃――中田カウスの1000日戦争』(朝日新聞出版、09年)、『ふたつの震災――[1・17]の神戸から[3・11]の東北へ』(松本創との共著、講談社、12年)、『百田尚樹「殉愛」の真実』(共著、宝島社、15年)などがある。

「2019年 『トラジャ JR「革マル」30年の呪縛、労組の終焉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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