グローバリズムという病

著者 :
  • 東洋経済新報社
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レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492314500

作品紹介・あらすじ

内田樹氏推薦!
「これは平川君の書き物のうちでも最良のもののひとつだと思う。
僕はこの本のすべての頁に同意署名できる。」

東洋経済ブックスオンラインの人気連載を加筆・修正し単行本化。
著者が、常々感じていたグローバリズムというものに対する違和感を綴った経済エッセイ。

グローバル企業、グローバル人材などの「グローバル○○」という用語。
ニューストピックなどで見かけない日がないといっても過言ではありません。
同時に、グローバル、グローバルと迫られても「なんだかなあ」「もうウンザリ」と違和感をもつ方も少なくないはず。
そんなモヤモヤした気持ちをもたらす由縁である「グローバリズム」の正体を丁寧に解きほぐしていく一冊です。

グローバリズムは、資本主義が生き延びるための最後の処方箋かのようにいわれていますが、はたしてそうなのでしょうか?
むしろ資本主義が必然として生み出す副作用ではないでしょうか?
本書ではわたしたちが逃れ得ぬ「グローバリズムという病」に罹患しつつも、それでも生き延びていくための道筋を示します。

また、税逃れのタックスヘイブン、残業代ゼロ・低賃金かつ解雇自由な労働環境の整備が進むなど、このままでは国民国家が株式会社に乗っ取られるかのような動きも見られます。
国民国家と株式会社が手を携えて発展していた健康な時代が終わり、株式会社が病としか言いようのない行動をとるようになった背景には何があったのかも明らかにします。

感想・レビュー・書評

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  • グローバリズムとグローバリゼーションの違い、などということ、今まで考えたことありませんでした。
    グローバリズムは収奪のハイブリッドシステム…なるほどなぁと。
    何だか結局よくわからなかった安倍総理が、どこを見て経済政策をしていたのかよぉくわかりました。国民生活などに目を全く向けてなかったんですね。そりゃ、税金が!福祉が!とピープルが叫んでもカケラも届きませんよね。

    いい言葉がたくさん出てきます。引用にも記載しましたが、あと二つほど。

    (引用)わたしたちは、ロジカルであるということは言葉の整合性があるかどうかであると思いがちだが、どんなに言葉が整合的であったとしても 、それが部分的なものであれば全体としては不整合であるかもしれないということを疑わなければならない。

    これはすべてのロジカルであるということに、物事を見極めるということにあてはまる姿勢でしょうね。
    疑ってみるという態度は必要ですよね。

    (引用 吉本隆明の言葉)結婚して子供を産み、そして、子供に背かれ、老いてくたばって死ぬ、そういう生活者をもしも想定できるならば、そういう生活の仕方をして生涯を終える者が、いちばん価値のある存在なんだ
    (引用 それを噛み砕いた著者の言葉)人間が、普通に生活をしていて、一生涯を生きていくということの意味の重さは、知識を積んだり、事業に成功して大金持ちになったり、会社で役職に就いたり、政治家になって権力の階段を上ったりすることとは無関係であると言っているのだ。

    このような人が生きるということの本質について、心から納得、あるいは理解する人がどのくらいいるだろう。
    吉本さんの言葉は、平易に本当のことを語っていると思います。

    この言葉を知って、何も目に見える価値あるものを残さず苦労の絶えない人生を生きて この世を去った自分の両親も、自分だけにとってではなく充分に価値ある存在だったのだな、と思うことが出来た、ように思います。

  • 以前に紹介した『小商いのススメ』『消費をやめる』の著者が今度はグローバリズムに対する考えを述べたエッセイ。本書は経済学でも経営学でもない。「エッセイ」です。

    さて、テーマは「グローバリズム」。著者はこれと「グローバリゼーション」とは違うことを強調しています。商品は求められればどこまでも拡大していく性質をもって産み出されたものなので、世界の隅々にまで浸透することを止めないのは当然のことであって、このグローバリゼーションと呼ばれる動きは現代に限ったことではなく古代からずっとあるもの。

    一方で「グローバリズム」は最近やたら強調されるようなったもので、我々の行動の根幹的な部分に制約をかけようとする「イデオロギー」であるとする。例として「社内の公用語を英語にする」「世界に通用する人材を求める」といった考えを標榜する企業が挙げられ、あたかもそのような人材が優秀で、日本語しか話せず、日本の中でしか仕事ができない人はダメですよと言っているように聞こえる。

    このような風潮に「待った」をかけ、流されずもう少し考えてみようよ、というのが本書の内容。ちなみに英語を話し、世界に挑戦することが悪いと言っているのではなく、そうできる人はそうしたらいいし、そうすべきだが、特に多国籍企業が標榜しているこの「グローバル人材」に適すか適さないかだけで、人の良しあし、時代に乗り遅れる、遅れないを評価はできないのだということ。

    多国籍企業は利益を生むことを最大の目的としているため、人件費が上がれば安いところへ拠点を変え、法人税が安いところへ居を構え、自分たちが発展するまでにお世話になった地域や人々に利益を還元し、地域に恩返しをするといった気概がない。あるのは得か損か。今、右肩上がりの経済成長は止まったと言われ、人件費の安いところもやがてなくなり、このやり方も終わりが来るだろうということは、多くの経済書で述べられています。

    多国籍企業のことはよく分かりませんが、地域への貢献や恩返しに縛られないやり方は、日本が昔から大切にしてきた家族的経営を崩壊させたと言われており、日本でも貧困者の増加が問題となっている一方で、富裕層がより裕福になるということがおきつつある。

    富裕者が増えれば、彼らの富がめぐりめぐって庶民にまで回ってくる、いわゆる「トリクルダウン」効果はアベノミクスでもウリ文句になっていたと思いますが、これもあり得ないとする。稼いだ利益は成熟しきった日本で投資しても、回収できないことが分かっているため。なるほどです。

    グローバリズムを掲げるのは多国籍企業が多いため、全体として多国籍企業ってどうよ?という内容になっていますが、根本的に大切なのは英語が話せようが話せまいが、貢献できる場所はあるということ。やりたい仕事の条件に「英会話ができること」の他に「翻訳機が使いこなせること」と入れてほしいと思うことは多々ありますが(笑)

  • 面白い。書かれてある内容についてはすべてにおいて
    同意したいことばかり。
    内田樹氏の仲間的な著者なので、内容的には
    同じようなことではありますが、平川氏のほうが
    論理的・理論的によくわかる気がします。

    株式会社とグローバリズムに対しての警鐘。
    成長すること・右肩上がりであることのみを
    前提とした株式会社制度が先行きが成り立たなくなる。
    そのためにグローバリズムを標榜し、国民国家の解体に
    向かうということになってしまう。
    それでいいのか?成長することだけが是なのか?
    ということはいろんな方向で考えていく必要があるのだ
    と思います。とはいえ無邪気に生活していかないと
    いけない現実はあるのですが。。。

  • 処方箋無き病は厄介。。。

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    「内田樹氏推薦!
    「これは平川君の書き物のうちでも最良のもののひとつだと思う。
    僕はこの本のすべての頁に同意署名できる。」

    東洋経済ブックスオンラインの人気連載を加筆・修正し単行本化。
    著者が、常々感じていたグローバリズムというものに対する違和感を綴った経済エッセイ。

    グローバル企業、グローバル人材などの「グローバル○○」という用語。
    ニューストピックなどで見かけない日がないといっても過言ではありません。
    同時に、グローバル、グローバルと迫られても「なんだかなあ」「もうウンザリ」と違和感をもつ方も少なくないはず。
    そんなモヤモヤした気持ちをもたらす由縁である「グローバリズム」の正体を丁寧に解きほぐしていく一冊です。

    グローバリズムは、資本主義が生き延びるための最後の処方箋かのようにいわれていますが、はたしてそうなのでしょうか?
    むしろ資本主義が必然として生み出す副作用ではないでしょうか?
    本書ではわたしたちが逃れ得ぬ「グローバリズムという病」に罹患しつつも、それでも生き延びていくための道筋を示します。

    また、税逃れのタックスヘイブン、残業代ゼロ・低賃金かつ解雇自由な労働環境の整備が進むなど、このままでは国民国家が株式会社に乗っ取られるかのような動きも見られます。
    国民国家と株式会社が手を携えて発展していた健康な時代が終わり、株式会社が病としか言いようのない行動をとるようになった背景には何があったのかも明らかにします。」

  • アングロサクソンたる英米はグローバリズムを全面支持かと思いきや、英国のEU離脱と米国のトランプ勝利には驚かされた。

    この問題を理解するためには「グローバリズムの本質」への理解が必要である。

    まず、問題を考えるにあたっては言葉の正しい理解が必要である。「グローバリゼーション」は国と国がある限りは通商などで必ずおこりうるもの。だが、「グローバリズム」というのは、国家間の障壁をなくそうという動きであり、世界がひとつの市場・ひとつの通貨・ひとつの言語を目指すものである。

    つまりはグローバル化というのは、ローカルの消滅ということ。グローバル化をすすめるためのダイバーシティ(多様性)という言葉があるが、グローバル化の本質はローカルの排除による均質化である。いまや日本の各都市が同じ景色になってしまったように、世界の各都市も同じ景色になるということ。

    ローカルの消滅というのは地域社会の崩壊につながる。地域経済の崩壊、英語教育重視の中での国語力の衰退、外国人の流入、生活習慣の国際化、などグローバル化の問題は大きい。

    EU離脱を決断した英国民、TPP離脱表明のトランプを選んだ米国民、たんなるポピュリズムではなく、それなりの理由はあるのだ。

    【このひと言】
    〇グローバリズムの思想的根拠は自由主義である

  • 「グローバリズム」という新しいイデオロギーの危うさをエッセイ風に書き連ねている本。国民国家と株式会社の発生時期が歴史的にほぼ同じで、どちらも若い概念であること。現代では国民国家と(巨大な)株式会社が激しく衝突していること。各国で採用される政治形態は、その国の伝統的な家族制度との類似性が高いこと。などを書き連ねたうえで、株式会社は出資者の利益が優先されるため、スケールメリットを最大化すべくグローバル統一基準で効率よく利益を上げようとするが、本来の会社とは地域の文化を守りながら小さくとも存続し続ける存在であるべきことを主張している。まあ、なかなか難しいところではあるけれど、どこの大企業はおかしいところは満載だし、その根源を辿ると、米国や英国の金融資本主義に行きつくのかなとも思う。(金融やITの革命は、産業革命のような物理面ではなく、認知面でヒューマンスケールを軽々と越えてしまい、社会も人間も「進化」した帰結として壊れつつある。こんなのを「進歩」だとはとても認められない)

    【川崎市立川崎図書館 333.6】

  • グローバルスタンダードが、自分たちが何にビハインドしてるかの明確な指標が欲しいあまりに作り出されたものであり、本来は存在していないという考察を興味深く読みました。〜では、〜では、○○であるが、それに比して、日本の政府は〜、日本の企業は〜、日本の教育は〜という、何かに負けている、何かより劣っているという前提でしかものごとを語れない傾向は仕事をしていてもよく聞くロジックであるなあと思いました。その基準だけでなく、日本語を正しく操って内外に向けた表現や交渉が出来ているのか、それ以前にもっと内面内部に磨きをかけて外面外部ににじみだす努力も怠ってはいけないなと思う次第です。

  • 内田樹氏の帯に惹かれて手にしました。

    グローバリズム...、あぁイヤダイヤだ。

  • グローバリズムの問題点についての議論。
    著者はグローバル化とグローバリズムは別のものだと考えている。
    グローバル化は世界が小さくなってきていると言うことで避けがたい歴史の必然であるが、グローバリズムとはアメリカに代表される多国籍企業が国家という枠組みを超えて富を簒奪するためのイデオロギーだと考えている。
    論点は株式会社資本主義の問題点をアメリカの歴史から見て考え、租税回避や新自由主義の欺瞞などについて批判している。
    最大の問題点は株式会社資本主義が常に成長を求め利益を追求し、とどまることを知らないという点であり、議論は明快で十分納得できる。経済学者の故飯田経夫教授が言っていた「足るを知る」という経済学には必要なのだと思う。
    筆者はアメリカのシリコンバレーが絶好調の時にアメリカで起業し、ITバブルがはじけた後に企業をたたみ、あれやこれや苦労をした人物なのでアメリカ資本主義の問題点もよくわかるのだと思う。
    しかし、敗者であればこそ本書が書かれたのであり、もし大成功して超大金持ちになっていたら本書は書かれたのだろうか。

  •  自分と考え方がここまで一致する本というのも珍しい。
     
     そもそもグローバルとはなんなのだろうと考えると人の持ち物を容赦なく奪うという事この一言に尽きるのではないだろうか。今までは多様化という言葉で成り立ってきた社会がグローバルという掛け声ひとつで強者に吸収されようとしている。こんな考え方が特に気持ちが悪い。

     たとえこの国の需要が絶え、自国でまかり得なければ外に出て商売をすればよい。こんな考え方がまともだとすれば遅かれ早かれ世界の需要はこの考えに太刀打ちできなくなり破綻してしまう。なら次はどうするか何十年何百年先には他の惑星の知的生命体とでも貿易することになるのだろうか、そんなことを考えると本当の核というのが分からなくなる。何が大切で何が大切ではないかという根拠は各々の国の社会的基盤にのみ裏打ちされることだろう。

     



     人間の身体は、せいぜい半径数キロメートルの範囲のなかで生きていくように設計されている。人間の身体性が持つ限界が告げているのは、その範囲のなかで耕作をし、モノやサービスをつくり、人々と交わり、生活を営んで余剰がないという生き方である。人間には、丈夫な二本の脚はあるが、広大な大空を渡るための翼もなければ、海洋を泳ぎ回る鰭もない。     52

     1971年制定の合衆国憲法修正第二条
     「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、市民が武器を保有し、また携帯する権利は、これを侵してはならない」
     A well regulated Militia, being necessary to the
    security of a free State, the right of the people to
    keep and bear Arms, shall not be infringed.
     この文章が成り立つためにはMilitia = Peopleが成り立たなければならない。
     原文を見ても、やはり前後の主語が異なっている。75

     しかし、それらの企業は、事業パートナー、顧客、下請けなどの経営基盤をもともと有していない、機動性だけが頼りの企業なのであり、出て行きたいのなら出て行けば良いと思う。
     そのかわりに、二度と帰ってくるなと言いたい。107

     

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著者プロフィール

平川克美(ひらかわ・かつみ) 1950年、東京都生まれ。文筆家、隣町珈琲店主。

「2020年 『街場の日韓論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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