- Amazon.co.jp ・本 (723ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492315163
作品紹介・あらすじ
平等は破壊の後にやってくる
[戦争]第二次大戦後の日本 250万人戦死 トップ1%の富が9割下落
[革命]毛沢東「大躍進」 4000万人以上死亡 ジニ係数の劇的改善
[崩壊]西ローマ帝国の崩壊 あらゆる支配層の消滅 搾取の終焉・生活向上
[疫病]欧州のペスト 2000万人死亡 実質賃金が2倍以上に
・・・・・・他多数
核戦争なき平等化はありえるか?
平等化に有効だった戦争と革命は、20世紀の現象だった。
21世紀の私たちはいかにして平等化を実現するのか?
スタンフォード大学古代史教授が
石器時代から現代まで、壮大なスケールで
世界各国の不平等の歴史を描き出す。
現代世界の不穏な空気を読み解く衝撃の書
世界11カ国で続々刊行!
FT & マッキンゼー ビジネス・ブック・オブ・ザ・イヤー話題作
【推薦の言葉】
「所得の不平等の歴史に関する最高の書物」
――タイラー・コーエン(ジョージ・メイソン大学教授、『大格差』著者)
「新石器革命から現代までの強力な長期分析。その点で本書を超える本はない。際立って斬新だ」
――フィリップ・T・ホフマン(カリフォルニア工科大学教授)
「挑発的な分析。理性、証拠、緻密なスタイルによって書かれている」
――スティーブン・ピンカー(ハーバード大学教授、『暴力の人類史』著者)
感想・レビュー・書評
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まず、本書については一言で言うと、
『重い』(物理的にも、内容的にも)
ということに尽きる。
人類の歴史が始まって以来、人類の歴史は
持つ者と持たざる者との歴史
であると言って良いと思う。
本書をざっと読んでみて、平等を実現することがどれほど難しいということかが改めて確認できた。
農耕生活が始まる以前の
狩猟採取生活
が人類が最後に経験した平等であったのかもしれない。
本書で論じられる人類を平等化をさせる可能性のある四騎士
〇戦争
〇革命
〇崩壊
〇疫病
のうち、本当の意味である一定の社会を平等化できたのは
〇戦争→大量動員戦争である第二次世界大戦
〇革命→ソビエト連邦革命と中国共産党革命
だけだったのかもしれない。
〇崩壊(国の崩壊)
〇疫病(ペスト)
も多少の平等化は実現できたが、根本的な平等化とは程遠かった。
ただ、第二次世界大戦もソ連革命、中国共産党革命も圧倒的な暴力とその犠牲により成立しており、いずれも平等化されたからといって手放しで喜べるものではない。
では、今の社会で平等化は実現できるだろうか?
著者は悲観的である。
それこそ前述したような圧倒的な暴力による平等化は可能であろう。
つまり、それは核戦争などによって、
全人類が『平等』に死滅する
ということである。
この本を読んで、今までの人類の歴史では
「戦争や革命」はその固定化された社会を一旦リセットする
という役割があったということは、目からうろこが落ちる思いであった。
いずれにせよ、今の固定化された社会が平等化されるのはなんらかの大きな力が作用しなけれならないのであろう。かなり難しい問題である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一言でいうなら、大著である。それだけに読む者にもそれなりの労力が求められる。
本書は、古代からの人類の悠久の歴史が、持てる者と持たざる者の不平等の歴史であること、両者の格差は拡大と縮小を繰り返してきたことを実証していく。そして、格差が是正され、平等化に近づくのは、常に暴力的事象の後であることを指摘する。すなわち、戦争、革命、国家の崩壊、疫病であり、著者のシャイデルはこれをもって「平等化の四騎士」と命名した。ただし、小規模な破壊やどちらかの一方的な勝利などは、平等化にほとんど影響しないか、限定的な効果しかない。四騎士の剣が振るわれるのは、壊滅的なまでの暴力のみである。
ここ数十年、世界のグローバル化に伴い、所得と富の不平等が広範囲に拡大している(それでも大戦前の不平等よりはマシだという)。それらを抑制する暴力的衝撃である四騎士が力を失ったからだとシャイデルは指摘する。壊滅的な戦争も、大規模な国家の崩壊も現在ではほとんどない。
ちなみに本書の原著は2016年にまとめられ、2017年に刊行された。このため、疫病の観点から、昨今のコロナ禍に関する考察はない。コロナ禍の一年、株や債券を持つエリート層はさらに富を拡大させた。本書の論理は間違いではないかという声が聞こえてきそうだ。
しかし、コロナはかつてのペストのように人口の何割もが命を落とす性質の暴力ではない。人口が減少し、労働力が不足して、賃金が上昇するということもない。コロナ禍で失われたのは労働力ではなく、仕事そのものである。コロナはむしろ貧しい人々に深刻な影響をもたらした。ただ、コロナが収束し、経済活動が再開されれば、労働賃金が増し、平等化が推し進められる可能性はあるだろう。
歴史家であるシャイデルが積み上げたデータは膨大である。特にジニ係数と所得シェア率に注目して論を組み立てていくのは非常に興味深い。また、戦前戦後の日本にかなりのページを割いているのも、我々日本人の好奇心をかき立てる。
高齢化や移民問題を重要な課題としつつ、シャイデルは不平等是正の処方箋をいくつか検討してみせる。しかし、歴史を省みて、暴力的な破壊なしにそれが達成されることに悲観的である。
シャイデルから渡されたバトンをどう未来につなぐか、まずは目の前のコロナ禍への各国の対応に注目していきたい。 -
・世界の不平等の歴史を探究する難題
・世界で最も裕福な1%の世帯が、世界の個人純資産の半分あまりを保有している
・「平等化の四騎士」=戦争、革命、国家破綻、伝染病が不平等を是正する
・本書の目的は、不平等が減少するのはなぜかという疑問に答え、平等化のメカニズムを突き止める。
・古代の遺跡や埋葬からも、ヒエラルキーや階層社会のような不平等社会はみられている。
・経済的な余剰の多寡が政治的不平等を発展させていることがわかる。たいした余剰生産のない集団は86%が政治的不平等の形跡がない。
・最初の「1%」ー少数のエリートを生み出す構造 →国家構造がうまく維持されている限り、エリート支配は安定していた。
・世界のリーダーとは、地位の低い農業生産者の搾取者にほかならなく、派手な消費をすることは、力関係を明らかにして強化する重要な手段であった。
・富の獲得方法は、歴史上2つしかない。作るか、奪うか。
・資源をおのずと権力者に集中させることが近代国家の特徴
・大きな暴力的破壊がないことこそが「不平等」の決定的な必要条件
・何百年と続いたエリートへの富の集中による不平等が、ヨーロッパと中東でおきた疫病によって一変する。人口が減ることで労働賃金は上がり、地代は減るのでエリート層の資産は下がる。
・日本は鎖国まではあまり不平等が進んでいなかったが、世界経済に向けて国を開いてから不平等化が進んだ。
・日本はかつては地球上で最も不平等な国の一つだったが、第二次世界大戦による劇的な展開で、類をみないレベルの平等化が起きた。日本は戦争由来の平等化の教科書的な事例。
・日本は開国してから不平等化が進み、地主、株主、企業幹部は莫大な利益を得ていた。
・ところが1938年の春に「国家総動員法」が制定されて、政府は日本の経済を戦争遂行のために自由に使うことができることになった。
・戦争は勝者は不平等が拡大し、敗者は平等化になる。勝者側の指導者層は利益を期待できるのに対し、破壊された側は不平等が縮小された。
・伝染病で土地の地価が下がり、労働賃金が上がるため、地主や雇用主が貧しく、労働者が裕福になり不平等が抑制された。
・「誰もが世界の終わりと思った」中世後期の伝染病の流行。ペストに感染すると細胞壊死と神経系の中毒症状がでて50〜60%は数日で死亡。肺ペストに感染すると肺から放出される飛沫で人間同士で直接感染する。こちらは死亡率ほぼ100%。
・ペストは一世代に2、3度発生して人口を抑制し、その結果1430年代のヨーロッパの人口は13世紀末と比べて半分以下になった。
・平和的な平等化に関しては確実な証拠は得られていない。土地改革、不況、民主化は功を奏する時があるものの、不平等を体系的に軽減する効果はない。
・未来はどうなるか。人体の改造も不平等の進展になる。富裕層だけがバイオテクノロジーや遺伝子改良を特権的に享受できるようになるかもしれない。
デザイナーズベイビーを創り出すことで、遺伝子操作やサイボーグ化による「持てるもの」と「持たざるもの」とにわかれ、最終的には2つの種に分岐することになる。それが遺伝子エリートとその他多勢=天然人
・こんにちの世界では平等化の最も有効なメカニズム=4騎士はどれも作用していない。
・時とともに人類は平和になってきている。
人類の平和化を強めている具体的な要因のひとつは人口の高齢化である。人口の高齢化が暴力的紛争の可能性を全体として減らすとみられている。
・次に疫病の可能性について。近代以前の感染爆発の規模に匹敵する厄災が発生すれば世界で何億人もの死者が見込まれる。おおむね発展途上国に限られるかもしれない。
また兵器製造技術でスーパー細菌がつくられるかもしれないが、そのような物資をばらまこうとする発想を国家の首脳が抱くことはまずありえないという。
・また、現代では疫病による経済的影響で所得と富の不平等が平準化するまでになるかはわからない。インフルエンザは貧しい人に影響はあるものの、経済全般にはほとんど害がない。
現代において真に破壊的な疫病が世界中で何億もの人命を奪うとすれば、少なくとも短期的には抑えられない。伝染病で疲弊した経済においては、やがてロボットが失われた労働者にとって変わるかもしれない。
・四騎士が消えつつあることで、将来の平等化の見込みは薄い。
・経済的平等性を称える者すべてが肝に銘じるべきなのは、ごく稀な例を除いて、それが悲嘆のなかでしか実現してこなかったこと。 -
四騎士として戦争、革命、崩壊、疫病を挙げ歴史上それらが不平等の解消にどれくらい寄与したのかが細かいデータに基づいて述べられている。
結論から言うと暴力を伴わない富の再配分は効果が薄く、累進課税制をはじめとした平和的な制度によるアプローチは論外でフランス革命や共産主義革命ですら効果は限定的だったという救いのない考察。個人的にはベターな選択肢として第三次世界大戦が始まるよりも格差のある平和な世界を望んでしまう。
Chaos isn't a pit.Chaos is a ladder.
読みながら「ゲームオブスローンズ」リトルフィンガーの言葉を思い出した。
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過去では、大量に人が死ぬことで平等化されてきたんだよ、という話。
富裕層に余剰の資産があるのが常で、有事にはその余剰が没収され貧困層に再分配される、という極めてシンプルな市場原理を、4つのパターン(戦争、革命、崩壊、疫病)に分けて50個くらいの事例を用いて解説している。経済書と言うより歴史書。
めちゃめちゃ示唆に富んでいる。事例の網羅性がすごいので、過去に平等化が進んだケース、進まないケースの違いが様々な側面から示されている。
この本から何を持ち帰るか、と言う点では難しい。あくまで歴史書であり、現代に近い話はほぼ皆無なので。ここに、技術の介在などの現代の要素を取り入れることで、自分の意見にできるのだと思う。昨今の情勢を分析する視点を手に入れた、という意味で僕的には非常に読む価値があった。
如何せん事例が詳細すぎるし、世界中の歴史が出てきてついていけないし、書き方がP580にわたる論文なので、(索引がP140にわたる)読むにはめっちゃ体力が必要。が、趣旨自体はそこまで混み合ってないはず。おすすめです。 -
歴史的に見て、不平等が解消されるのは(大量動員)戦争、革命、国家崩壊、疫病という非常に大きなイベントが起きたときのみで、それ以外の状況では格差はどんどん拡大していくという内容。
シンプルな内容だが、学術書としてデータ積み上げて事実を論証していく大著。 -
世界大戦により不平等が圧縮された歴史があるが、過去何度かにわたる戦争の中ではなかなか富は再分配されなかった
ペストや疫病でも、不平等は圧縮された
しかし、今後そのような大きな戦争は起こる可能性が低い(おこってほしくない)
そのようか中で開いていく格差をどのように埋められるのだろうか…
#速読 -
平等って、何なんだろう一体。ということを考えさせられる。その指標で果たして良いのか?というのも最後まで問われるし、最後でひっくり返される感もある。「地獄への道は善意で舗装されている」その裏返しとして、「地獄の経験は平等に向けた道に繋がっている」のかもしれないし、そうでもないかもしれない。希望があるかと問われれば苦笑するしかない。個人的には第9章が好き。どうしたもんかね。
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序論 不平等という難題
<第1部> 不平等の概略史
第1章 不平等の出現
第2章 不平等の帝国
第3章 不平等の拡大と圧縮
<第2部> 第一の騎士――戦争
第4章 国家総力戦――日本の大規模な平等化
第5章 大圧縮――2度の大戦による先進国の富の劇的な分配
第6章 前産業化時代の戦争と内戦――平等化の効果はあったか
<第3部> 第二の騎士――革命
第7章 共産主義――全面的没収の実現
第8章 レーニン以前――共産主義革命の原型
<第4部> 第三の騎士――崩壊
第9章 国家の破綻と体制の崩壊
<第5部> 第四の騎士――疫病
第10章 黒死病――暴力ではない暴力的破壊
第11章 流行病、飢饉、戦争――複合して発揮する平等化の効果
<第6部> 四騎士に代わる平等化のてだて
第12章 改革、経済危機、民主主義――平和的平等化
第13章 経済発展と教育――最大級の力を持つのか
第14章 もしも……だったら? 歴史から反事実的仮定へ
<第7部> 不平等の再来と平等化の未来
第15章 現代はどうか?
第16章 未来はどうなる?
補遺 不平等の限界