- 本 ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492315477
作品紹介・あらすじ
AIならば可能なのか。
将来世代はどうなるのか。
今という時代を「限りない拡大・成長」と「持続可能性」に向かうベクトルの“せめぎ合い”の時代としてとらえ、 過去・現在・未来を俯瞰する超長期の時間軸から科学と資本主義の未来を展望する。
一貫して「定常型社会=持続可能な福祉社会」を提唱してきた著者が、『人口減少社会のデザイン』『無と意識の人類史』に続いて世に問う三部作完結編。
感想・レビュー・書評
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資本主義社会が行き詰まっていることは、徐々に、一般人の私たちにも広まりつつあるが、じゃあ、具体的にどんな社会が必要なのか、そのシミュレーションをしてくれるのが広井さんだと思う。
斎藤幸平がポスト資本主義の在り方をマルクスに求めたのに対し、広井さんは持続可能な福祉社会を提唱する。
生産性の考え方を、「労働生産性」から「環境生産性」に転換していき、資源消費や環境負荷をできるだけ抑え、むしろ人は積極的に使うという考え方だ。
持続可能性と地球環境を重視するという基本スタンスから、まずは「緑の成長」(資源消費や環境への負荷を最小限なものにしながら経済成長ないしGDPの増加を追求する)を過渡的な姿とし、その後「脱成長」していく。
斎藤幸平氏の考え方より、現実路線であり、EUのグリーンディール政策とよく似ている。(というか違いが私にはよくわからない…)
ポスト資本主義を考えねばならない時期にある現代で
有効で実効性のある政策なのかもしれない。
たくさん勉強しなくちゃなー。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本書は死生観や哲学が中心となった抽象的な内容となっており、科学や資本主義の具体的記述は一部に触れられるのみであった。
内容は相当難しい内容で、一部を理解して読んだに過ぎなかったが、科学と資本主義の未来の具体的な事例を期待していた自分としては、面白みにかける内容であった。
その中では、自然を制圧する西洋的考えと比して、日本人の鎮守の森、八百万の神など自然との共生モデルは、今後の社会のモデルとなりうるという事例が印象に残った。 -
分野横断的で面白かった。物質、エネルギー、情報と来て、これからは生命、ケア。要素還元より関係性。資源が枯渇すると思想の時代になる。社会保障と環境問題はつながっている。というあたりが特に響いた。
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著者の主張に全面的に同意。日本の政治家(とそれを選んでいる有権者=多数派の高齢者)は経済成長の幻想を抱き、借金や環境破壊等で将来世代にたくさんのツケをまわしている。本書だけでなく至る所で同様の主張や議論があるのに、オープンな場で政治家が議論しているのを寡聞にして知らない。本当に気が滅入る、、
資本主義は市場経済ということに加えて拡大成長を志向しているのが特色だというのが勉強になった。地球資源が有限である以上、この資本主義が変容を迫られているのは自明。だが持続可能な社会と資本主義は相容れないのでは?という疑問があったが、成長ではなく再分配を強く志向する欧州型の資本主義へまずは移行するのは確かに現実的かもと思った。
現状の課題を論うだけでなく、政策提言などもありとてもためになった一冊だった。 -
『資本主義の次に来る未来』の方法論を日本に当てはめたらどうなる的な本でむちゃくちゃ面白かった
昭和を生きてきたおじいちゃん政治家はこんな考え方しないからあと20年くらいしたら自然とこうなる気もするがそれまで日本が持つかどうか -
資本主義の定義、その背景にある哲学、社会課題の因果などがわかりやすく整理されている。特に福祉課題と環境課題はともに世代間の問題であり、日本はいずれも先送りしており、将来世代にツケを残し続けているということや、この二つの課題を含めて、持続可能性や世代間格差をテーマにする政党がいないことも、悲しい現実である。
教育投資を年金の比較などもわかりやすく先のない日本の政策を明示している。
これからのポスト資本主義には、世代間格差、人生前半の社会保障(再分配機能の強化)がより一層必要になるため、それに対応した国に有望な人的資源も集まるだろう。 -
資本主義 = 市場経済 + 「限りない拡大・成長」を志向するシステム
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温暖化、資源枯渇、格差など、地球規模で解決困難な課題を世間が認識するにつれて、成長が全て解決するというこれまでの価値観が揺らいでいることは間違いない。本書の序文では、それを、スーパー資本主義・スーパー情報化とポスト資本主義・ポスト情報化のせめぎ合いの時代、と表現している。これまでを振り返り、これからを見通すためには、資本主義と両輪で成長を支えてきた科学技術の役割や本質について理解する必要がある。
…と期待して読んだが、本書を特徴づける科学・技術についての意見が、あまりに私見で読むのがつらい…
〜〜である、〜〜といえる、〜〜な論文がある、から私は〇〇と思う、〇〇ではないだろうか、の飛躍なのか感想なのか、かと言って押しつけない訳でもなく、分からない奴はいないよね、的な。
そもそも科学的な根拠である再現可能性について、本書では疑義を呈しているので、共感できる人に届けばよい位置づけなのかもしれない。
とはいえ、根拠のない私見でも卓見かもしれず、うっかり共感できた内容も結構あった。
特に日本の自治体などと実践しているガーデンシティ的な取り組み、生命科学の進歩・展開についての解釈などは目から鱗であった。
最後に気になった点。年金について、高所得者が年金を多くもらえることが格差を助長する、とあるが、そもそもが保険として払ってるのだから、多く払った人が多くもらえないと不公平な気もする…今までいくら払った人がいくらもらうかという定量的な議論が欲しいところだ。もちろん年金のない人を救済することはやぶさかでないが、それこそベーシックインカム的な解決の方が根本的な気もする。賦課方式なら最初から財源を分けずに北欧のように全部税にしたらシンプルなのに、とも思うが、そんな変革できるわけないか。 -
非常に面白い。
第三の定常化という観点で、無制限の資本主義を考え直す視点は私にとって新しかった。情報と生命のあたりもそんな大局観があるのかと気づきがあった。 -
経済と科学だけでなく、医療や福祉政策についても理解できた。各国の社会福祉制度の比較がわかりやすく、一部分だけで判断していたと思えた。
著者の提言の意味合いが強いが、一つの視点として把握した方がいいと感じる。
著者プロフィール
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