資本主義の次に来る世界

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492315491

作品紹介・あらすじ

「少ないほうが豊か」である!
「アニミズム対二元論」というかつてない視点で文明を読み解き、
成長を必要としない次なる社会を描く希望の書!

ケイト・ラワース(『ドーナツ経済学が世界を救う』著者)、
ダニー・ドーリング(『Slowdown 減速する素晴らしき世界』著者)ほか、
世界の知識人が大絶賛!

デカルトの二元論は「人間」と「自然」を分離した。
そして資本主義により、自然や身体は「外部化」され、
「ニーズ」や「欲求」が人為的に創出されるようになった。

資本主義の成長志向のシステムは、人間のニーズを満たすのではなく、
「満たさないようにすること」が目的なのだ。

それでは、人類や地球に不幸と破滅をもたらさない、
「成長に依存しない次なるシステム」とは何か?
経済人類学者が描く、かつてない文明論と未来論。

本書が語るのは破滅ではない。語りたいのは希望だ。
どうすれば、支配と搾取を軸とする経済から生物界との
互恵に根ざした経済へ移行できるかを語ろう。
(「はじめに 人新世と資本主義」より)

感想・レビュー・書評

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  • 地球を破壊し続けている人間の傲慢さと愚かさを思い知るとともに、未来の子どもたちの為に何ができるだろうか、と考えるきっかけをもらった。自分の頭の中を整理したく、内容を簡単にまとめる。

    今、地球は破滅へと向かっている。
    さまざまな生物が絶滅している。また、気温上昇により、自然災害が起き、多くの犠牲者が出ている。同時に、海面上昇により、海岸地域の多くが海面下に沈み、頻繁な洪水や高潮をもたらすようになることが予想される。さらに、食料にも影響を及ぼし、氷河が補充されるより速く溶けていくため、水が足りなくなる。また、主要作物の生産量も減少する。食料不足に陥った地域では大量の難民が発生する。

    原因は「資本主義」という経済システムである。
    資本主義は、経済の成長に依済している。テクノロジーは、生態系の崩壊を防ぐには欠かせないが、問題解決にはならない。結局、テクノロジーにより効率が向上した後も、ますます成長を追い求めるサイクルに陥ってしまうから。つまり、成長が問題なのだ。

    「脱成長」にこそ地球の未来がある。
    脱成長とは、経済の物質・エネルギー消費を削減して生物界とのバランスを取り戻す一方で、所得と資源をより公平に分配し、人々を不必要な労働から解放して繁栄させるために必要な公共財への投資を行うこと。
    現代では、計画的陳腐化と激しい広告で、人々の購買を過剰に促される。家電が長持ちしないのは、わざと早く壊れるように設計して、買い替えを促すため。なんということだ。
    資源の大量消費を止めるためには、計画的陳腐化を止めて、広告を減らす必要がある。また、購入でなくリースや共用にしたり、食品廃棄を防ぐために、廃棄を禁止や廃棄料の徴収するなども効果がある。

    そして、人間がアミニズムの思想を失い、人間以外のものを資源と捉えるようになったことも、大きく関係している。
    人間は特別な生き物だと勘違いし、目先の利潤だけを追って、地球を破壊し続けた結果は、いつか自分たちに返ってくる。
    以上。

    前半で絶望的な気持ちになったが、後半で希望も与えてくれた。やっぱり諦めちゃダメだよね。しかし、小さな取り組みではもう間に合わない、根本的な改革が求められている。現代に生きる人間としての責任だと重く受け取った。

  • 「成長」は自然な現象で、生物は成長する。
    しかし、生物はある所まで成長・成熟すると、成長のグラフは水平になり健全な均衡状態を維持する。

    資本主義経済は、増えた資本でさらに資本を増やす「成長」自体を目的としている。
    経済学では「国がどれほど豊かになってもGDPは年々増え続けるべきだ」という考え方が主流だ。

    投資家は「成長」(私有財産を増やすこと)を追い求めている。
    だから、資本主義での成長グラフは右肩上がりしか許さない。

    だが、地球の資源には限界があるので、資本主義は社会を滅ぼす。
    成長には限界がないとする経済理論が問題なので、成長限界のある経済に再編成する必要がある。
    しかし、今だに成長主義への信頼が揺らぐ兆しはない。

    世界の半分以上の人が「資本主義はいい事より悪いことの方が多い」と答えている。
    主要な資本主義国の3/4が、「企業は腐敗している」と述べている。
    大多数の人は現在可能な取り分を放棄してでも、将来の世代に資源を残そうとしている。

    問題は残りの少数の人が、目先の利益のために共有すべき資源を存分に使うという選択をすることだ。

    資本主義の中心的ロジックは、「与えるより多くを奪うこと」で、これが「成長」のメカニズムの土台になっている。
    その結果が貧富の格差拡大と地球環境の破壊をもたらした。

    資本主義の「成長」のためには、人間のニーズを満たさないようにすることが必要だ。
    豊かに暮らすために必要な物にアクセスできるようになると、人々は新たな成長は欲しなくなる。
    基本的な要求が満たされないようにするには、賃金を抑えて働き続けさせる仕組みが必要だ。

    経済学者や政治家や投資家は常に経済成長を選び、奇妙な会計処理や社会システムを作り上げてきた。
    経済成長を正当化するために、コスト削減・生産性向上・公的規制・法整備など並外れた努力を重ねて来た。

    だが「全体の成長」が必要だと言う考えは、もはや意味をなさない。
    誰にとっての、何のための成長かをはっきりさせる必要がある。
    総収益の4分の1が億万長者の懐に入るような経済を受け入れ続けるのが良いのか。

    GDPは資本主義が順調に進んでいるかを調べるために作られた指標だ。
    この中に生態系の破壊というコストは含まれていない。

    成長を必要としない経済への移行が必要。
    本書では、どうすべきかのビジョンも具体的に示している。

    1.計画的陳腐化を終わらせる(壊れやすく修理しにくい→買い替え)
    2.広告を減らす(不安をあおり不安を解消→不用品の購入)
    3.所有権から使用権へ移行
    4.食料廃棄を終わらせる(厳しい賞味期限、見栄え重視、まとめ買いに誘導→大量廃棄)
    5.生態系を破壊する産業の縮小

    資本家は成長(私有財産)を生むために、コモンズ(公共の富)を搾取してきた。
    脱成長の経済を創出するには、これを逆転させコモンズを復活させればよい。

    コモンズ(公共の富)が豊かであれば、人々は成長を求めない。
    図書館や公園のような公共施設の充実は豊かな時間を過ごすのに重要だ。

    我々は長年資本主義を疑問視することは許されない社会で生きてきた。
    だが、生態系崩壊の時代にあっては、この障壁を打ち破らなければならない。

    資本主義に代わる新しい経済理論の確立が必要だと思う。
    本書はそのための具体策を提示しているので議論を進める上で参考になるだろう。

    私の読了後の感想は次のとおり。

    ・「成長」追求主義の未来には絶望が見える。
    ・「脱成長」の未来には希望が見える。

  • 自分、資本主義の世で産湯に浸かり、
    アメリカの豊かな生活に憧れる少年時代を
    過ごしましたんで、
    この本のように「資本主義にブレーキをかけなければ」
    と主張されましてもなかなか目が覚めません。

    でも一方では、
    長時間勤務、勤勉な勤務、自己啓発、周囲の雰囲気をこわさないために職場で文句は言わない、有給休暇をとらない等々、よいとされている働き方をしていては育児との両立が非常に困難な生活実態について、
    こんな社会は変だ、こんな社会を次世代に残すのはかわいそうだという気持ちは強いです。

    著者が一刀両断、「GDP成長率を追求し続ける資本主義はあかんねん、地球がもたないからな(意訳です)」
    「富の蓄積を解体して、新しい分配で世界を変えんとあかん(意訳)」
    「人間の幸福に関して言えば、収入をふやせば幸福なのではなく、福利購買力を高めることが肝要(これも意訳)」
    歯切れ良く主張している内容は確かに心地よいです。

    自分、不器用なんで今日はここまでです。

  • うんうん、納得。
    ・・・で、読み終わった今日から、私は何をしたらよい?
    今、朝の9時。寒い。
    今日も洗濯物乾きそうにないな、最初から乾燥機にかけようか、、、という思考は、OK?
    (世界の上位数パーセントの富裕層以外は、今のままの生活を続けてOK?)

    ・・・具体的に、どうしたら、未来を変えて、豊かな世界を取り戻せるのだろう?

    ・・・そこは、それぞれが考えて実行することで、本が教えてくれるわけじゃないのね、そりゃそうですね。

  • 私たちは経済成長をいいものだと思っているが、必ずしもそうではないのかもしれない。
    この本は今まで当たり前に思ってきた価値観が、資本主義によるものであり、それが環境問題や労働の搾取にもつながるもので、あらためて考え直してみる機会をくれた。

    資本主義は、限りなく成長を求めさせ続けるもので、財やサービスの生産は、それがどのように役にたつかという使用価値でなく、より利益になるようにと交換価値に重きをおくものになっている。
    そして、人為的に希少性をつくることで、あふれるほどの富がありながら、満たされることなく、より成長を求めて、自然や労働が搾取されていくような状況をつくっている。
    資本主義は、いい面もあったかもしれないが、餓鬼道(仏教でいう、欲が決して満たされず苦しむ世界)をこの世につくってきた面もあるな、と考えさせられた。

    最近、この本のように環境問題や格差など、資本主義の欠点を指摘する本が増えていて、マルクスが見直されたりもしている。
    ただ、富裕層叩きや権力者批判とか、陰謀論とかそんなものでは何も解決しない。
    この本もそのようなものではなく、社会全体的な構造に問題があり、個人では解決しない難しいところがある。
    少なくとも学ぶことには意味があると思うし、学ばなければ、正しい理解も行動も生まれないと思う。

  • 図書館に他の本を借りに行って、特設コーナーで見かけてタイトルに興味を惹かれて借りた。結果、今年読んだ本の中で一番良かった本になりそうだ。

    「資本主義の次に何がくるのか?」という結論が知りたくて先を読み進めたいのだが、なかなか先に進めなかった。1日50ページくらいずつが限度だった。資本主義、物質主義の只中にある私にはヘビーで考えさせられる内容だったからだ。2週間の貸出期限を延長して、今朝やっと読み終えた。

    読んでいる途中で夫にも是非読んで感想を聞かせて欲しいと思った。自分の本棚にも1冊欲しいと思った。
    買おうとして、ベストセラーなのを知った。

    著者の描くポスト資本主義の世界にうっとりする。私たちのこれからの選択次第で、そんな世界もありうるのだ。私が今まで生きにくかった理由もなんとなくわかった気がした。

    とはいえ、ここは資本主義の中にある。折り合いをつけながら自分に出来ることを身の回りでやっていくしかない。声高に主義主張を叫ぶのではなく、自分にやれることを愚直にやるだけだ。

  • 自分がしっかりと資本主義社会に浸透されていることを改めて自覚した。
    今は時代の流れに沿って頑張るけど、今の暮らしにも互恵関係を取り入れつつ生きてきたいな。
    自然や世の中から何かをもらい続けることがつまらなくなってきたっていうのもある。消費者なんよな常に。
    あと、将来海や緑の近くで古民家暮らしがしたいという思いがもっと強くなったな。

  • 帯にある「少ない方が豊か」とはどんなことなのか。膨大な資料、考察を経て最後にこれが語られる。資本主義の中では経済は成長していかなければならない。しかしその「成長」が地球全体を蝕むという理論は、これまで経済について深く考えてこなかった自分に対する警鐘でもあった。資本主義の歴史を遡り、植民地支配、資源の強奪、富める者と貧困者の格差が語られる。グラフは常に右肩上がりであるべきだ、という思い込みが覆される。アニミズムにまで考察が及ぶが、著者は決して原始的なものへの回帰を語っているのではない。自分自身でも「人為的稀少性」を念頭に消費に邁進してきたのだ。これに気づいただけでも収穫有りと言えるだろう。

  • 今年ベスト!
    資本主義の限界だけでなくポスト資本主義への道を示してる
    こういう考え方で運営する自治体が日本に出てきたら移住してみたいた
    世界はこの方向に行くしかない気がするがそうはなってない
    多くの成長主義者のこの本への反論を聞きたい

    自己正当化じゃないが真っ当に勉強したらリベラルになると思ってて、自分の読書遍歴の集大成的な本だった

    ・マザーツリー
    ・大地の五億年
    ・暇と退屈の倫理学
    ・あなたの体は9割が細菌
    ・くもをさがす
    ・意識高い系資本主義が民主主義を滅ぼす
    ・人間がいなくなった後の自然

    等とリンクする

  • まだ咀嚼しきれていないが、投資へのリターンのために常に成長を求められる現状の資本主義が環境破壊の要因だと、人間と自然を分離した二元論により自然は収奪対象になったこと、などなど。
    どこまで信用してよいのかもわからないが、少なくともいろいろなことを考えるキッカケにはなるはず。
    たくさんの人に読んでほしい一冊です。

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著者プロフィール

ジェイソン・ヒッケル
経済人類学者。英国王立芸術家協会のフェローで、フルブライト・ヘイズ・プログラムから研究資金を提供されている。エスワティニ(旧スワジランド)出身で、数年間、南アフリカで出稼ぎ労働者と共に暮らし、アパルトヘイト後の搾取と政治的抵抗について研究してきた。近著The Divide: A Brief Guide to Global Inequality and its Solutions(『分断:グローバルな不平等とその解決策』、未訳)を含む3冊の著書がある。『ガーディアン』紙、アルジャジーラ、『フォーリン・ポリシー』誌に定期的に寄稿し、欧州グリーン・ニューディールの諮問委員を務め、「ランセット 賠償および再分配正義に関する委員会」のメンバーでもある。

「2023年 『資本主義の次に来る世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジェイソン・ヒッケルの作品

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