[新訳]大転換

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (632ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492371077

作品紹介・あらすじ

市場は社会に何をしたのか?自己調整的市場のユートピア性と破壊性を文明史的に解き明かした政治経済学のモニュメント。グローバル資本主義の危険性を根源から解明した現代の古典。待望の新訳完成。

感想・レビュー・書評

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  • 歴史的名著だが、難しいです。
    でもなかなか面白い。19世紀の長い平和から一気に対立と混迷を深めていく20世紀以降の世界についての考察が明快で引きこまれる。

  • この時期読み返してみました。

    本書は、19世紀文明(自己調整的市場を母体にバランス・オブ・パワー・システム、国際金本位制、自由主義国家)の誕生とその興隆、そして20世紀前半におけるその滅亡の物語です。
    ボリューム/お値段とも半端では有りませんが、内容は「目からウロコ」、編集は「良」です。

    【「目からウロコのご紹介】
    ○滅亡の原因を「自己調整市場」という考え方がまったくの「ユートピア」であったとしている。
    ○自己調整市場の制度は、社会の人間的存在と自然的実在を壊滅させること無しには一瞬たりとも存在せず、「経済人」に依拠する人為的な社会は、19世紀のイギリスが生んだ突然変異であるとしている。
    ○自然で生来的な社会は、「互酬」「再分配」「家政」「交換」の4つの原理で経済をモデル化する必要があるとしている。
    ○近代の経済学は、擬制商品(労働、土地(自然環境)、貨幣)が本来商品と全く同じように機能すると言う間違った前提に立っているとしている。

    最近の「経済学の教科書」にはお目にかかれない「着眼点」です。

    大変難しくボリュームのある本なのですが、「序文」「紹介」「訳者のあとがき」だけでも全容が把握できます。さらに各章の先頭ページに良くまとまった「訳者による梗概」が有ります。

  • いやあ、面白かった。市場の自己調整機能を「ユートピア」として退ける態度、「19世紀文明」の崩壊を、経済法則的にではなく、歴史的視点も取り入れながら読み解く姿勢、「個々の人間の行動動機が物質的な欲求充足の必要性によって決定されるというのはきわめて例外的」という人間観。

    「人間非合理論」は、同時代に日本で丸山眞男や大塚久雄が、人間の合理性を重視していた思想史的文脈と対比しても、興味深いのかもしれない。

  • ヘビーだ。。古典で完全に消化不良。でもむちゃむちゃ面白かった。。またゆっくり読も〜。輪読のレポートを発見。http://ow.ly/PX2D

  • 星5つでも足りない、歴史的な名著。
    19世紀100年の平和がなぜ破られ、2つの破滅的な世界大戦が起きたのか。
    それはふたつの大転換によるのだとポランニーは言う。
    ひとつは産業革命と資本主義の運動により、これまで社会の中に埋め込まれてあくまで社会活動の一部であった経済が自立化し、本来商品として存在しているものではない労働、土地、貨幣が擬制商品として自己調整的市場原理に委ねられる(という大転換)ことになった。しかしそれは社会的な存在としての人間が耐えうるものではなく、そのムーブメントに対して人間を保護する動きが必然的に生じた。そのひとつが社会主義運動であり、いまひとつがファシズム(という第二の大転換)である。
    自己調整的市場原理vs人間保護の運動。これは現代の新自由主義=グローバリズムvsコミュニタリズムあるいは伝統回帰、反グローバリズムという対立図式にも符合する。
    今リアルに起きていることを明晰に理解する上でも、参照するべき書物である。

  •  難解。各章にある「訳者による梗概」を参照しながら何とか読了した。60年以上も前に土地と労働、そして貨幣を擬制商品として市場に委ねる危険性を見抜いていたポラニーの洞察力には感嘆するしかない。
     不思議なのは、偉大なる先人の叡智が現代の政治に全く反映されていないことだ。マスコミに登場する社会学者と名乗る人たちはこういう古典を読んでいないのだろうか?

  • 歴史的名著をようやく読み終わった。経済社会をとらえる視点が斬新かつ明晰で、現代文明を批判する視点は極めて貴重である。

  • 本書は近現代に至るまでの自由市場を批評した政治経済学本である(但し、ここで言う政治経済学は、経済学の中の一分野である政治経済学ではなく、政治と経済を論じる学問という意味での政治経済学である)。たくさんの歴史的な実証から、筆者は自由市場というものを批判している。
    結構知らない事だらけだったので概ね楽しく読めた。しかしながら、欲を言えば、(本書の趣旨ではないのかもしれないが)自由市場のもたらした良い面などについてもしっかり評価した上で、自由市場がなぜダメなのかを論じてほしかったと思ったりもする。

  • 現代資本主義がどのように生まれてきたかを述べる、ポラニーの大著。
    A・スミスなど古典派は、「人間には交換性向がある」としたが、ポラニーは未開人の「互酬・再配分・家政」などの文化から、人間の交換性向は、後付に依るものだと結論づける。

    ポラニーはマルクスの唯物史観を一定程度評価しているようだが、マルクスが分析したイギリス資本主義でさえ、一定程度の社会保障が存在したことは、ポラニー曰く「分析されていない。」とする。エリザベス救貧法に代表される、貧民への給付である。これは自由主義者などから批判はされつつも、存続した。資本主義はつねに単独で存在するわけではなく、社会との密接な関連の中で生まれていた。もちろんマルクス研究者の中には、上部構造の反作用性を主張する者もいるが、どれほどまで、マルクスはプロレタリアの革命を期待したのか、少し疑問に思った。

    またポラニーは「労働・土地・貨幣は擬制商品である。」という。本来売り買いされるものではない。むしろ生産の本元要素である、とする。囲い込み運動で労働者が大量に吐き出されたことも特筆されがちだが、土地もこの時期に売り買いされるようになった。

    ポラニーは、このように「経済と国家の密接な関連」を紐解くことによって、その資本主義の「後天性」「植えつけられた物」であるとする意見を声を大にして云っている。新自由主義の台頭によって国家の経済への不干渉を主張するが、その不干渉の政策もまた国家によるものにほかならない。そもそも経済は国家の営みの中で生まれてきたかのようにも思えるし(未開経済)、そんなことは不可能なのかも知れない。認識を根底から改める必要性が、あるように思える。現に、ニューディール政策やファシズムの台頭は、自由主義経済への不安から生じた。
    もう一度、その「資本主義の特殊性」のヴェールを取り、どのように成立していったのかというのを、読み取る必要がこの本からありそうだ。

  • 本書は、「19世紀に全盛となった市場経済というひとつの特殊な経済システムのもつ社会的な意味をあきらかにすること」(マッキーバー) にある。その結論は、近代の市場経済的資本主義は、人間の本源的要素である土地・労働・貨幣を商品にすることによって、市場に従属させた。それは、人間関係を解体し、自然を破滅させるものであった。今日の市場主義をすでに半世紀前に批判していた書    

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