- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492371138
感想・レビュー・書評
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【メモ】
本書は、経済学史を専攻する1965年生まれの経済学者が2003年に刊行した本を一部改定したもの。
従来の学説が生まれた経緯やそこにまつわる議論をとりあげて、そこで行われた取り組み/当時の問題の捉え方が、現代でも有効(知ることが必要? くらい)だということを示そうとしている。
ということで、経済学史の網羅的で純粋な解説ではなさげ。
・ちなみに、「コラム」と「エコノミックスの考現学」は前提知識が必要なうえ込み入ってるので、経済学初心者には少し難易度が高いかもしれない。
・変なことを言うエコノミストや評論家(等)には厳しい。
・著者は、所謂リフレ派の立場。
・最後の「リフレ戦記」は一読では消化できず……
・初出はメールマガジン(さすが2000年代前半!)。『日本国の研究――不安との訣別/再生のカルテ』(編集長は猪瀬直樹)という(仰々しいタイトルの)メルマガでの連載「エコノミックスの考古学」全13回(2001.03.28〜2002.07.25)と、掲載された書評5本が、本書の下敷き。
【簡易目次】
プロローグ 経済学者とは何者か?
○第一部 経済学者たちの「勝利」と「敗北」
第一章 「欲張りなことはよいことだ」 ―マンデヴィルの世界
第二章 バブル崩壊後の経済学 ―二八〇年前のバブルと二人の銀行家
第三章 何のための「セーフガード」か? ―ヒュームと既得権益との戦い
第四章 誰が改革を担うのか? ―スミスと既得権益との戦い
第五章 歴史のなかの開発主義者たち ―ハミルトンから村上泰亮まで
第六章 ソーントンの前例なき要求 ―中央銀行の責任(1)
第七章 リカードウの新平価解禁論 ―中央銀行の責任(2)
第八章 「影の大蔵大臣」バジョット ―中央銀行の責任(3)
第九章 経済学者は冷血動物なのか? ―J・S・ミル 対 反経済学者たち
○第二部 二十世紀最高の経済学者は誰か?
第十章 景気が良くなると改革が進まない? ―シュンペーターとしごき的構造改革
第十一章 デフレと金本位制復帰 ―一九二五年、ケインズの敗戦
第十二章 一九三〇年代の「非正統的な」政策 ―ヴィクセルとその同僚たち
第十三章 終わりなき戦い ―その後のケインズ
エピローグ 再び、経済学者とは何者か?
【目次】
目次 [iii-ix]
プロローグ 経済学者とは何者か? 001
人気のない経済学/経済学版「マーフィーの法則」/根強い反経済学の伝統/さまざまな経済学者たち
第I部 経済学者たちの「勝利」と「敗北」
第01章 「欲張りなのはよいことだ」――マンデヴィルの世界 014
映画で経済学?/『蜂の寓話』の世界/見えない手と見える手
第02章 バブル崩壊後の経済学―― 二八〇年前のバブルと二人の銀行家 025
バブルとその崩壊/リスクを計算した銀行家/企業者活動が結ぶ市場経済/「バブルの反省」とは
エコノミックスの考現学① 現代のバブル 038
バブルの破裂するとき/根拠なき熱狂/「新しい時代がやってきた」?/マスコミか口コミか
第03章 何のための「セーフガード」か?――ヒュームと既得権益との闘い 038
何を「セーフガード」し、「保護」するのか?/「貿易衰退」論者たち/「大多数の幸福」を求めて/クルーグマンとしてのヒューム
第04章 誰が改革を担うのか?――スミスと既得権益との闘い 042
大学教授の経済学?/『諸国民の富の性質と原因に関する研究』/改革の政治経済学/古典の生命力
第05章 歴史のなかの開発主義者たち――ハミルトンから村上泰亮まで 075
挙証責任の転換/開発主義者とは何か/開発主義者は可能か/「唯一の天才」――アレグザンダー・ハミルトン/ハミルトンの提案/政策評価の難しさ/恩恵どころか制約を受けたソニーやホンダ/政府の能力――誰が仕切るのか
エコノミックスの考現学② 産業論の正しい見方 092
産業の再生と産業論の再生/産業論の現在を示す二冊/企業家精神の衰退?/ミクロからマクロへ?/政府の適切な役割とは何か
第06章 ソーントンの前例なき要求――中央銀行の責任(1) 102
何のための独立性か?/地金論争の時代/古典派最高の貨幣理論家――ヘンリー・ソートン/貨幣の過剰発行の仕組み/イングランド銀行の責任
第07章 リカードウの新平価解禁論――中央銀行の責任(2) 113
「経済学者のなかの経済学者」/インフレからデフレへ/産業構造の転換を支えるマクロ経済の安定/リカードウの貿易論でデフレ不況を説明できるか?/危機が鍛える経済学
エコノミックスの考現学③ 銀行の陰謀? 124
銀行の責任/陰謀の筋書き/全知全能の「黒幕」?/予測に失敗した陰謀本
第08章 「影の大蔵大臣」バジョット――中央銀行の責任(3) 129
危機と中央銀行/「影の大蔵大臣」――ウォルター・バジョット/中央銀行をめぐる緊張/中央銀行総裁の条件/130年前のバジョットの問いと選択
エコノミックスの考現学④ アメリカの「素晴らしい10年」をもたらしたもの 139
アメリカ90年代の成果/マクロ経済学者の面目躍如/我が国の学ぶべき教訓とは/経済学者の決め技
第09章 経済学者は冷血動物なのか?――J・S・ミル対反経済学者たち 145
陰鬱な科学?/経済学者の使命とは/反経済学者/反撃する経済学者/インセンティブに注目したスミスとミル/偉大な改革者の時代の記憶
エコノミックスの考現学⑤ 不平等を正当化する人々 155
平等――熱い問題/いかに平等を実現するか/経済学者の責任?
第II部 二〇世紀最高の経済学者は誰か?
年表……………160
歴史的背景……162
第10章 景気が良くなると改革が進まない?――シュンペーターとしごき的構造改革 164
何でもランキング、ついに経済学者も?/20世紀という時代/成長から循環へ――企業者活動/しごき的構造改革――「景気が良くなると改革が進まなくなる」?/循環から成長へ――「アルゼンチンをめざせ」?/シュンペーターからケインズへ
第11章 デフレと金本位制復帰―― 一九二五年春、ケインズの敗戦 179
エコノミストの格付け?/通貨が堕落するとき?/デフレの恐怖/敗戦――1925年3月17日/再戦――大蔵省=中央銀行連合との闘い/敗戦を繰り返さないために
増補版への追記…………200
第12章 一九三〇年代の「非正統的な」政策――ヴィクセルとその同僚たち 202
数学者から経済学者へ――クヌート・ヴィクセル/不滅の金字塔――『利子と物価』/「非正統的な」政策の発動/スウェーデンの経験をどう捉えるか?/「非正統的な」政策を可能にしたもの/再びケインズへ
第13章 終わりなき闘い――その後のケインズ 222
経済学のイメージ/「足かせ」からの脱出/理論と実践/『雇用・利子および貨幣の一般理論』――説得のロジックとレトリック/IS-LMモデルの有効性/「一人しかいなかった」ケインズ
エピローグ 再び、経済学者とは何者か? 247
呪術師たちの系譜?/昭和金融恐慌の真の教訓とは/「前例がない」政策?/「勝利」と「敗北」と/経済学の危機も進行する日本/終わりなき闘い
補章 リフレ戦記――その後の経済学者たちの闘い 269
2012年12月26日――アベノミクス始動/1992年初頭――マネー激変とマネーサプライ論争/金融政策の迷走とデフレ論争――リフレーション政策の台頭/2001年から06年――量的緩和からその解除/2008年9月――リーマン・ショックと第二次世界大恐慌の回避/評価1:リアルタイムでの金融政策批判/経済学の危機、再び/評価2:日本版ゾンビ経済学との対決/アベノミクスをどう評価するか/決着をつけよう
あとがき(二〇〇三年一月 若田部昌澄) [312-317]
『経済学者たちの闘い(増補版)』へのあとがき(デフレを完全に脱却する日に思いをはせながら 2013年3月4日) [318-320]
参照文献一覧 [321-345]
人名索引 [346-347]
事項索引 [348-349]
COLUMN
コラムA 日銀理論 008
コラムB 一般均衡と部分均衡 035
コラムC 金本位制 049
コラムD 比較優位説 054
コラムE アダム・スミスとアマルティア・セン 064
コラムF 知識と情報 089
コラムG ミクロとマクロ、短期と長期 120
コラムH 経済における「専門知」と「世間知」 190
コラムI IS-LMモデルと実践マクロ経済学 237
コラムJ ヴィクトリア朝後期の「良いデフレ」? 255 -
mo
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歴史上の経済学者たちから、現在の「エコノミスト」まで、彼らの主義主張の本質を抑えながら、議論を整理していく、その体系がすごい。が、その議論の本質がよくわからない。経済学を肌感覚で身に付けるためには、どういう生活を送ればよいのか・・・。あるいは不要なのか。