- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492395004
感想・レビュー・書評
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・売るシステムから買うシステムへのパラダイム・シフト
仮に新しいパラダイムが生まれるとして、製造業はどうしていったらよいのか、考える必要がある。
序章 どうして、今、円高政策なのか
第1章 21世紀の世界経済
第2章 1ドル360円から79円へ
第3章 日本の製造業の成熟
第4章 ドルとユーロ――ドル安は続くのか
第5章 円安バブルの形成と崩壊
第6章 アジアの世紀は来るのか
第 7章 構造改革と円高政策詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ハイテク=コモディティ化、資源=稀少化 ∴円高を逆手にとって資源を確保せよ。理屈はそうだけど、資源ナショナリズムの風潮はどうなる?
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ー売るシステムから買うシステムへの転換ー
アジア等の新興国の成長や人口構造等の相対的な変化といった、世界経済の構造変化は、21世紀型の価格革命、すなわち資源価格の高等とハイテク商品のコモディティー化をもたらす。
その中で日本経済が生きていくためには、従来の労働集約的な輸出立国から、資本集約、更に技術集約的なブランド商法へと産業構造を転換していく必要がある。
榊原さんの主張は要約すると以上のようになる。
気になった点として、現状(2008年9月時点での「現状」だから、当然今現在とは全く異なる!)は円安バブルという主張はイマイチぴんと来なかった。
それは、主張の根拠に名目レートではなく実質実効為替レートを用いて「歴史的な円安」と言っているのだが、その部分の説明がほとんどなされていないために、(自分のような国際金融の初心者には)論旨、ロジックがつかみにくいからだ。
実質実効為替レートでは円安とのことだが、それが名目レートとなぜ乖離しているのか、その意味を説明して欲しかった。
本旨ではないが、読んでいて印象に残ったのは、日本独特の総合商社の強み。独自のファイナンス機能のもと、資源等を国際的に買うビジネスを展開するその姿は、榊原さんの主張する「買うシステム」の好例だ、と。海外の投資銀行が担っている機能を、日本では商社が展開している。
これは、黒木亮の『トップ・レフト』の劇的な結末のシーンを彷彿とさせるものだった。 -
資源・食料の希少品化、そしてハイテク製品のコモディティー化のトレンドが今後ますます加速して行くというのが筆者の主張。他の方も書いてありますが、間に挟んである為替の歴史(ニクソンショックから現在に至る)が冗長すぎて全体が締まらなかった印象でした。ただ筆者の考えは、現在の円高について考える上で参考になりました。
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榊原氏の本は今回初めて読んだが、納得のいく論理展開と明快なvisionの提示によって1日で読了してしまった。
製造業中心の輸出による外需主導では日本経済は立ち行かないこと、金融を強くして海外の資本を集めること、海外へ積極的に技術や資本、労働力さえ移転し、高付加価値商品を中心に売るブランド戦略を日本が立ち上げていかざるを得ないことを、明確に提示し、そのためには強い円が必要であることを説く。
世界的な金融危機をいいことに、ものづくり日本回帰への執着、産業資本主義への懐古主義がナンセンスであることを知らしめ(この二つが悪いわけではなく、これのみではまずいということ)、今後の日本をダイナミックにデザインしていくために必携の良書である。 -
円ドルのざっくりとした、為替の歴史がわかる。
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タイトルから興味をひかれ、衝動買い。
読み始めたころ(大3年秋)、共感したと同時に、いろいろ勉強になった。
日本の携帯市場のガラパゴス状態とかはこの本から学ぶ。
けど、大4に読み直して、
結論の一つ「日本産業は高付加価値産業に集中すれば生き残れる」
というのに疑問もつ。
これからは新興国の低・中流所得者、BOPの時代。
高付加価値産業お育成で高所得者に集中だけしていては、世界の企業に置いて行かれるのではないか。
少し短絡的な結論なのではというのが今のこの本に対する感想。
ただ、日本産業の現在の課題をわかりやすく描写していて、
読みやすかった。 -
ミスター円こと榊原氏の本。2008年。過去の世界的な経済イベントを解説しており、今後の日本の方向性を提案している。先進国においては、資産を保有している割合が大きいため、サブプライム問題のような大きな資産価値の下落は、そのまま財の下落に通じる。つまり、資産の価値に振られる状況である。一方、途上国は保有資産が少ないために、逆の状態にある。世界中の状況と日本の体制から、今後の世界で生き残るためには、農業政策、円高政策、エネルギー政策を確実に実施することが重要と説く。人口減少の問題はそのまま受け入れ、いかに、労働力が低下したなかで付加価値の高い製品・サービスを提供するかが問題となる。したがって、産業構造もこれまでのような製造業メインの国策ではなく、農業にも力点をずらしていく必要がある。エネルギーの確保も重要な点であり、今後の政治に期待。
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サブプライムを皮切りに起こった世界恐慌によって日本では円高が起こった。
しかし筆者は円高こそ歓迎すべき国益であるとしてこれからの日本への提言をしている。
その提言は明確かつ説得力にあふれていて、どれも実現すべきものだと思う。
ただ中間のこの本に威厳をつけるためだけに書かれた円の変遷は正直必要ない。