金融危機の経済学

著者 :
  • 東洋経済新報社
3.38
  • (1)
  • (4)
  • (7)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 50
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492395110

作品紹介・あらすじ

なぜ、アメリカ政府とFRBは危機の拡大を防げなかったのか。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 金融危機の問題について、簡単に説明されている。
    ただし、ちくま文庫にも同じような本を出版されているが、そっちの方が詳細に書かれており、誤字も少ない。
    両方買った私にとって、こっちの本はいらない。

  • 日本は20年ほど前にバブルを経験して、いまだに回復したのかが明らかになっていない状態です。社会人になる直前にバブルを経験しましたが、当時はお金も無かったせいかその時代を楽しむことができなかった思い出のみがあります。

    そのような歴史があるにも拘らず、アメリカで何回りも大きなスケールで土地バブルが弾けてしまいました。今回はサブプライムローンに始まって、モノライン保険、ローンの証券化等、高度なテクニックを使って世界中にばら撒いているので、弾けた場合の影響はアメリカ内部にとどまらず世界中に及ぼすことになると思います。あと何年かかるのかわかりませんが、早く正常な状態に戻ってほしいと思います。正常な状態とは?と考えてしまうこともありますが。

    この本においても、なぜこのような危機が起きてしまったのかを解説しています、やはりどの国も、法や税制の改正が分岐点になるのですね。また、あれだけ騒いで導入した時価会計も運用方法が変わったり、ペイオフも日本以外では全額保護、保護するレベルをアップ等、多くの環境が知らない間に変わってきているのは変な感じです。皆がこの経験から教訓を得て、まじめに働いてそれに応じた暮らしができれば良いと思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・ 2つの法改正(1980年に定めた貸付金利の上限規制の撤廃、変動金利・期間終了後の一括払い可能)及び、住宅ローン利子が所得税の控除対象となる税制改正により、住宅ローンが借りやすくなった(p6)

    ・2008年にFRBから規制(所得と資産から見た返済能力を考慮せずに貸してはならない)が出るまでは、規制はなし(p8)

    ・貸し手が何を基準に金を貸したかは、貸し手が担保にとる住宅の価格(p11)

    ・銀行は住宅ローンを証券化して売却すれば、資産としての住宅ローンはなくなり、バランスシートに資産として計上不要(オフバランス化)となる(p33)

    ・サブプライムローンの滞納率が目立って上昇し始めた地域は、ミシガン州・オハイオ州・インディアナ州などの自動車産業の中心地、クリーブランドでは20%(p72)

    ・2005,2006年にはアメリカ投資銀行のレバレッジ比率(資産÷自己資本(資産-負債))がないのは、債務超過の状態(元手がマイナス)で資産を保有していた、2007年に債務超過を脱したとき、レバレッジ比率は475倍(p102)

    ・破綻したリーマン・ブラザーズの社債の清算価値は、国際スワップ・デリバティブズ協会のもとで行われ、8.625%に決定、1000円の社債の償還は86円あまり(p116)

    ・FRBはAIGに対して、2008年9月16日に850億ドル(9兆円)、それによりFRBは80%の株式取得する権利を獲得、10月8日に1228億ドルへ変更(p119)

    ・金融安定化法により、銀行破たんにより、10万ドルから25万ドルへ保護が可能となった(p126)

    ・アイスランドが国家破綻となったのは、2007年以降に外国資本がいっせいに逃げたから、同国の銀行全体が外国からかりていた金額はGDPの6倍、国内分をふくめると12倍(p134)

    ・為替リスクのある円キャリートレード取引を解消するために、ドルを円に買えて、円建ての借金を返済する、ユーロ建て証券に投資していた投資家は、ユーロを縁に換えて円建ての借金を返済することになるため、円高となった(p142)

    ・イギリスはノーザンロック銀行の取り付け騒ぎ時に、全額保護決定、アメリカは10→25万ドル、スイスは3.3→10万フラン、ドイツ・デンマークは全額保護とした(p155)

    ・今回の金融危機の特徴として、1)投資銀行・ヘッジファンド等の金融機関の急成長、2)証券化の著しい進展、にある(p182)

    ・銀行傘下のSIV(特別目的会社)の破綻が避けられない場合には、銀行が貸し付け債権をバランスシートに戻し、信用リスクをとる、シティ・グループが実行した(p195)

    ・時価会計の運用は、資産保有が、1)売買のときは、時価評価、時価と取得価格の差額を損益計上、2)満期まで保有の場合は、取得価格で評価、50%以下に下がった場合には差額を損失計上、という二重基準である(p206)

  •  本書は2008年9月におきたリーマンショックに象徴されるサブプライムローン関連の本であるが、「アメリカの一部の信用力の低い人々への住宅ローンにすぎないサブプライムローンの一部が焦げ付いたからといって、なぜそれが世界中を金融危機に陥れるほどの大問題になるのか」という疑問をわかりやすく解説した書として高く評価できると思った。
     サブプライムローンや2008年におきた世界的金融危機については、多くのマスコミ等でその都度解説はされているが、本書の全体的系統的な内容 は、とてもわかりやすい。
     しかし、本書を読んでアメリカの「証券化・高度化・複雑化」した金融システムは、はたして「進歩」といえるのだろうかとの疑問を持った。たしかに「自由化・規制緩和」は「新たな可能性と市場」を生み出すのだろうが、その結果が世界中に金融危機をもたらし、その再建に巨額の国家支援が必要とされるならば、トータルでは「進歩で得られる利益」よりも「損害」の方が大きいのではないのかとも思えた。
     本書は、二度と金融危機を起こさないためには、何が必要なのかを知ることができる良書であると思う。

  • 良書です。タイトルに「経済学」とありますが、
    理論的な記述では無く、
    米国住宅ローンブームの発生から
    サブプライムローン証券化の仕組、そして
    それが米国内を超えて世界中に危機が波及した流れに
    ついてわずか220頁ほどの小著に簡潔にまとめてあります。
    感情的な議論に落ち込まず、事実関係をシンプルにまとめて
    ありますので、2009年出版ながらまだ読む価値があるかと。
    (ただし、欧州債務危機までは述べられておりません)
    なお、銀行間の資金決済の仕組みや
    金融商品時価評価の景気増幅効果の問題点にも
    触れられておりますが、
    中の人としては残念ながら用語が正確では無く
    苦笑いしてしまうような記述も。
    しかし本文の論旨には影響ありませんし、
    大意では間違っていないので問題無いかと。
    金融危機に関心のある方にぜひお勧めします。

  • サブプライム問題を丁寧に解説。

  • サブプライムから金融危機までの流れがよくまとまっており、頭の整理にはよい。門外漢にとっては十分な内容だった。高レバレッジについての言及が繰り返しなされており、かのLTCMが55倍であったのに対し、2007年のヘッジファンドは67倍。投資銀行のレバレッジ比率に関する研究でも資産規模が大きいほど高いという傾向が知られていたんだそうだ。

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

学習院大学経済学部教授。金融論、経済政策専攻。主な著書に『金融入門』『経済学を学ぶ』『金融危機の経済学』など。

「2010年 『初歩から学ぶ金融の仕組み』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岩田規久男の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×