目に見えない資本主義

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  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492395189

作品紹介・あらすじ

経済学者が語らない資本主義の未来。なぜ、日本型経営が復活するのか。

感想・レビュー・書評

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  • これから起こる五つのパラダイム変換。

    ・複雑系経済
    個人や企業の倫理観や行動規範が大切にされる社会

    ・共感経済
    人々の共感によって、社会全体で知識や知恵が共有される社会

    ・自発経済
    善意や好意による活動が溢れ、精神の満足が得られる社会

    ・参加型経済
    誰もが社会のイノベーションや変革に参加できる社会

    ・地球環境経済
    自然と共生し、持続的に存続していける社会

    そしてこれらに客観的尺度を求めない。
    極めて大局的視点でトレンドを予見したものだと思います。

  • 今、世の中にあるモヤモヤとした雰囲気を
    うまくまとめあげているように感じた。
    日本経営は、自信をもってよいように感じた。
    現在の資本主義を知る上で、知っておいたほうが良い
    側面がつづられていた。


    〜以下、◇○本より抜粋、●・コメント〜

    ◇「弁証法」ドイツ観念哲学論者のゲルク・ヘーゲル

    ○第一の法則:螺旋階段の法則
    「世界は、あたかも螺旋階段を登るように発展する」

    ○第二の法則:対立物の相互浸透の法則
    「対立し、競い合うもの同士は、互いに似てくる」

    ○第三の法則:否定の否定による発展の法則
    「振り子は、極点で、必ず逆方向に振り戻す」
    ●なるほど!
    まわりで起きていることと同じ!
    これは、頭の隅にいれておくと、世の中の流れを予想
    するときの参考になるかも!(投資?!)


    ◇マルクス「労働疎外論」
    本来、人間にとって喜びであったはずの「労働」が
    貨幣経済の誕生によって「商品化」され、その喜び
    が失われていった。


    ◇CSR
    残念なことに、CSRの動きそのものが
    グローバル資本主義が標榜する市場原理や
    競争原理の議論によって歪曲される傾向が
    生まれている。


    ◇社会企業家
    ある意味で「ボランタリー経済」が「マネタリー経済」
    を取り入れていく動きにほかならない。


    ◇GNH(Gross National Happiness)
    アジアの小国ブータン
    http://tinyurl.com/y974jqs
    で提唱された、「国民総幸福度」。
    2009年ダボス会議においても
    「GDPからGNHへ」というセッションが人気を集めていた
    ●日本は?!


    ◇働く
    ○日本では、「働く」(はたらく)とは、
    「傍」(はた)を「楽」(らく)にすることの意味
    働くとは、だれかを楽にすること
    ○英語の「labor」という言葉には、「苦役」という意味
    が含まれているが、日本語の「働く」には、「苦役」
    という意味は含まれていない
    ●滅私の精神


    ◇日本の企業文化
    ○日本企業において、社員に対して「責任」や「義務」という
    言葉を使うよりも『使命』があった。
    ○日本の企業観は、すでに遥か以前から「社会貢献」と
    「利益追求」を統合した「社会企業」のビジョンを先取り
    したものであった。
    ●それぞれ個々人が生まれ持って持っている使命
    自分でなければできないことは!

  • 難しくて読了に2ヶ月かかりましたが、現代を読み解くのに参考になった。「利益追求」と「社会貢献」がそもそも融合されていた日本型経営から離れている現状を整理出来た。

  • 田坂さんの本が好きなことがきっかけで手に取った本著では、世を取り巻く様々な情勢のパラダイムシフトについて述べている。目に見えない知識や想いといった資本を重視する経済は、正に理想の姿である。特に、震災後はこうした目に見えない資本の大事さを、日本人は痛感したのではないか。
    惜しむらくは、世界経済がトランプ氏の台頭や英国のEU離脱などで、逆行の兆しが強いこと。これも、螺旋的発展による揺り戻しか。これらのプロセスを眺めつつ、更に目に見えない資本主義が成熟することを願う。

  • 【阿南】田坂さんの未来予見、人間観が随所に盛り込まれた、大切な人に読んでほしい1冊です。
    「橋のデザイン」を考えるな。「河の渡り方」を考えよ。に最も感銘を受けました。
    主客一体、操作主義からの脱却、まさに私たちの目指す姿が描かれている。と感じました。

  • 正直言って、内容的にはかなりおもしろかった。論理的な構成であり、具体例も豊富で説得力があるのが多い。
    しかし、氏の著作全般に言えることだが、論理というものにとらわれすぎてしまって、同じ言葉を多用しすぎてしまって少し気持ち悪い感じが読了後に残るのが残念なところ。謝辞も使いまわしで呆れたので☆4つにしました。

  •  本の整理の時に「これから何がおこるのか(田坂広志著)」と同時に発見したのが本書、「これから何が~」の3年後の2009年に出版されています。前著がこれからのビジネスがどうなるかに重きを置いているのに対してこちらは社会がどうなるかに重点が置かれています。言い換えればより俯瞰的になっています。

     本書で提示されている五つのパラダイム転換について抜き書きすると。

    「操作主義経済」から「複雑系経済」へ:個人や企業の倫理観や行動規範が大切にされる社会。

    「知識経済」から「共感経済」へ:人々の共感によって、社会全体で知識や知恵が共有される社会。

    「貨幣経済」から「自発経済」へ:善意や好意による活動にが溢れ、精神の満足が得られる社会。

    「享受型経済」から「参加型経済」へ:誰もが社会のイノベーションや変革に参加できる社会。

    「無限成長経済」から「地球環境経済」へ:自然と共生し、持続的に存在していける社会。

    また、本書の後ろ1/3位は日本型経営礼讃の論述、理解できる部分も多々ありますが、日本企業も戦前、戦後、高度成長、バブル崩壊と様々な歴史を背負っています。そのあたりの説明が無いとおっさんの昔話的に思えてしまうのは私だけでしょうか^^;

     前著に感激しただけに、風呂敷を目一杯広げての雑なたたみ方のような印象が。。。

  • 読書会の課題図書なので読みました。リズムの良い文章、情熱のこもった語り口、そして何よりも考え込まれた知性・哲学を感じさせる論述に心を奪われそうになりました。この著者の本を読むのは初めてですが、他にも読んでみたいと思いました。5点!

  • 田坂さんの著書。
    ”複雑系”というキーワードを漁っていたところ、出くわしたので、手に取った。そういえば出版時に言っていた気がする。

    この本は未来の予測はできないが、予見ならできるという制約をあらかじめつけているところ、たしかに2009年の本ではあるが、2011年現在、その予見の通りに近い形で展開をしているだろう。
    すばらしさは紹介文から引用してみよう。

    原子力参与として招聘されたのも納得の一冊であろう。

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    目に見えない資本主義 ‐ Invisible Capitalism
    貨幣経済を超えた新たな経済の誕生
    経済学者が語らない資本主義の未来
    なぜ、日本型経営が復活するのか
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    いま、世界全体を覆う経済危機の中で、
    多くの人々が抱いている疑問がある。

    「これから資本主義に何が起こるのか」

    その疑問に答える、著者渾身の一冊。

    これから、インターネット革命、複雑系社会の出現、
    地球環境問題の深刻化を背景として、
    従来の「貨幣経済」を超えた、新たな経済原理が生まれてくる。

    それは、次の「五つのパラダイム転換」によって生まれてくる
    新たな経済原理。

    (1)「操作主義経済」から「複雑系経済」へ
    (2)「知識経済」から「共感経済」へ
    (3)「貨幣経済」から「自発経済」へ
    (4)「享受型経済」から「参加型経済」へ
    (5)「無限成長経済」から「地球環境経済」へ

    そして、これらのパラダイム転換の結果、これから、
    「目に見えない価値」「目に見えない資本」を重視する
    成熟した資本主義が生まれてくる。

    言葉を換えれば、「目に見えない資本主義」。

    その新たな資本主義への進化が起こる。

    しかし、
    この新たな資本主義において重視される価値観は、
    不思議なことに、
    かつて「日本型資本主義」と「日本型経営」が大切にしてきた
    懐かしい価値観に他ならない。

    なぜなら、これから資本主義に起こるのは、
    ヘーゲルの弁証法が語る「螺旋的発展」。

    古く懐かしいものが、新たな価値を伴って復活してくる。

    それゆえ、これから、資本主義の進化に伴って、
    「日本型経営」と「日本型資本主義」が
    新たな価値を伴って復活してくる。

    本書は、その「資本主義の進化」のビジョンを
    従来の経済学の視野を超え、
    哲学、歴史学、文化人類学、宗教学、政治学、社会学、
    経営学、心理学、情報学などの広い視野から
    深い洞察力で語った、知的刺激に満ちた一冊。

    ■目次
    第1話 これから資本主義に何が起こるのか
    「グローバル資本主義」が引き起こした世界経済危機
    世界経済危機を超えて誕生する「新たな資本主義」
    なぜ、従来の経済学は「資本主義の進化」を論じないのか
    資本主義の「経済原理」に起こる五つのパラダイム転換

    第2話 資本主義の未来を予見する哲学
    いかにして、未来を予見するか
    「弁証法」が予見する資本主義の未来
    世界は、「螺旋階段」を登るように発展する
    対立し、競い合うもの同士は、互いに似てくる
    振り子は、極点で、必ず逆方向に振り戻す

    第3話 「操作主義経済」から「複雑系経済」へ
    「蝶々の経済」に、どう処するか
    なぜ、経済が「複雑系」になっていくのか
    「複雑系経済」の最大の問題は、何か
    「複雑系経済」に、どう処するか
    グローバル資本主義による「CSR」の歪曲
    「倫理」とは、市場原理を超えたもの
    なぜ、CSR企業が「目に見えない資本」を蓄積するのか

    第4話 「知識経済」から「共感経済」へ
    「目に見えない経済」を、どう評価するか
    なぜ、従来の経済学は「知識資本」を扱えないのか
    「メタレベル」へと形態を変える知識資本
    サブプライム・ローン問題が壊した「目に見えない資本」
    資本主義の「成熟」とは、何か

    第5話 「貨幣経済」から「自発経済」へ
    「陰の経済」を、どう活用していくか
    ボランタリー経済が「陰の経済」にされていた二つの理由
    「経済原理」に起こっている螺旋的発展
    「融合経済」という新たな経済原理の誕生

    第6話 「享受型経済」から「参加型経済」へ
    「主客一体の経済」が始まる
    経済の「直接民主主義」が実現する
    「イノベーションの手法」が、イノベーションを遂げる
    「民主主義」も螺旋的に発展していく

    第7話 「無限成長経済」から「地球環境経済」へ
    「有限の経済」を覚悟すべき時代
    新たな「豊かさの指標」とは、何か
    多様な価値を多様な尺度で評価する方法

    第8話 「企業倫理」を身体化していた日本型経営
    なぜ、「懐かしい価値観」が復活するのか
    昔から「CSR」を身体化していた日本型経営
    「放任」でも「管理」でもない、「第三の道」
    日本型経営が立脚する「人間観」

    第9話 「見えない資本」を見つめていた日本型経営
    「見えない資本」が見えなくなった現代の経営者
    成熟とは、「見えない価値」が見えること
    日本型経営の「報酬観」と「組織観」

    第10話 「社会貢献」と「利益追求」を統合していた日本型経営

    第11話 「主客一体」を追求していた日本型経営

    第12話 「有限・無常・自然(じねん)」を前提としていた日本型経営

    第13話 なぜ、日本型経営が復活するのか

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著者プロフィール

シンクタンク・ソフィアバンク代表

「2023年 『能力を磨く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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