検証 日本の「失われた20年」

著者 :
  • 東洋経済新報社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492396179

作品紹介・あらすじ

日本の「失われた時代」の原因として、次の5つが指摘できる。
 その第一は、「最優先課題」と「損切り」の先送りである。これは、バブル崩壊後、金融機関が背負い込んだ不良債権の処理をめぐって典型的に表れた。
 第二は、部分最適と全体最適のトレード・オフを克服し、全体の利益を追求する国家戦略を打ち出せなかったことだ。政府が重要な決定を下すにあたって、全体最適解を下そうとする際、それに抵抗する政治力の強い組織的ストレスを克服できず、その組織の部分最適解を優越させてしまう。このことは、国家課題に関する明確な政策優先順位を設定し、それを容赦なくかつ効果的に追求し、実現する意思と能力の不在とリーダシップの不在を示している。
 第三は、既得権益層の岩盤構造である。これは、既得権益層がインサイダー集団を形成し、そこで手にするレント(過剰利潤)を守るために改革に抵抗する政治的に強固な構造のことである。
 第四は、政府も企業も「成功体験の虜」になったことだ。グローバル化とIT化と新興国の台頭と挑戦という新たな環境の下でも、日本企業の多くは高度成長期のビジネス慣行を維持し、それにしがみついていた。
 最後の第五は、官民問わずに危機意識が不十分だったことだ。日本の危機感の乏しさは、この間に深まった日本人の悲観主義の高まりと著しい対比を成している。そうした危機感なき悲観論の傾向は二一世紀初頭にはすでに明瞭に表れていた。
  これら五つの原因のうち、部分最適解と全体最適解のギャップにこそ、日本の「失われた時代」の本質がある。
 日本の「失われた時代」の行方は、世界に大きな意味を持つだろう。その行方は、アベノミクスの成否という次元にとどまらない。それは、日本の歴史的な役割と世界、なかでもアジア太平洋の地政学におけるプレゼンスと安定といった世界史的な意味合いを帯びることになるだろう。

感想・レビュー・書評

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  • 東2法経図・6F開架:332.107A/F88k//K

  • 日本を代表するジャーナリスト・船橋洋一氏を中心に、日米欧の識者が集い、日本の「失われた20年」を検証した重厚なリポートである。

     経済と政治を中心に、人口問題、教育、歴史認識、安全保障など多彩な分野の15のテーマが掲げられ、それぞれの分野の専門家が「失われた20年」を分析していく。

     失われた20年を、「失われた30年」にしないための書でもある。現在もつづく停滞と先送りに終止符を打つための処方箋も、随所にちりばめられているのだ。

     何より、詰め込まれた情報量が豊富で、1990年代初頭から現在までの日本社会の鳥瞰図として読み応えがある。

  • 船橋洋一が書いているわけではない。

  • 210.77||Fu

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、3階開架 請求記号:312.1//F88

  • 丁寧な解説

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著者プロフィール

一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長。1944年北京生まれ。法学博士。東京大学教養学部卒業後、朝日新聞社入社。同社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長等を経て、2007年から2010年12月まで朝日新聞社主筆。2011年9月に独立系シンクタンク「日本再建イニシアティブ」(RJIF)設立。福島第一原発事故を独自に検証する「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)」を設立。『カウントダウン・メルトダウン』(文藝春秋)では大宅壮一ノンフィクション賞受賞。

「2021年 『こども地政学 なぜ地政学が必要なのかがわかる本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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