- Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492443972
作品紹介・あらすじ
16世紀の金融バブルがもたらした「世界史の大転換」期とあまりに酷似している現代社会。16世紀同様に、「長期デフレ社会」「先進国と新興国の逆転」は起こるのか。さらに、社会の不安定要因ともなっているエネルギーや食料価格の高止まりは続くのか。各分野を代表する識者たちが歴史の中に答えを見出すとともに、「次なる社会システム」の行方について論じる。
感想・レビュー・書評
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非常に面白い。2014年12月の原油価格の大暴落の理由が分かる
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中世16世紀と今の状況の類似性から、資本主義の終着点にたどり着いているのではないかという論説。今回はエネルギーや食料の価格の動向において、もはや実需によってではなく、投資目的での価格変動が起こっており、利子率を稼げる、要はリターンが得られる要素を探し求めている状況を解説。それにより、フロンティアを求める資本主義は、フロンティア探しが行き着くところまで行き着いて袋小路に入りつつある、というのを示している。
リターンを得られるか?という観点だけで世界を眺めたら、いずれ行き着くところは「もう稼ぐ余地はありません」という状況だというのは実感として思う所があるので、本書の主張には共感する部分がとても多い。
じゃあ次の資本主義に代わる位置づけとしての世界観がどうなるのか、それについては本書では明快な解の様なものは出てこないように思えた。あくまで現状分析の深い一冊だと思う。 -
やはり水野和夫氏の本は良いですね。私の感覚とかなりマッチしていて納得感あります。大澤真幸氏、島田裕巳氏、萱野稔人氏など、様々な分野の第一人者と共著を著し、視野を広げようとする姿勢には敬意を表したいです。
水野氏の言わんとすることをまとめると長くなってしまうのですが、短く言えば、「常にフロンティアを求め続ける資本主義の拡張は地球規模で限界に突き当たりつつあり(それでも日本の国債は後10年はもつだろうと言っています)、何時かは前回より遥かに大きい「リーマンショック2」が訪れ、今の「長い21世紀」が終わった後には、近代資本主義とは違った経済システムが出現してくるだろうが、その姿が具体的にどういったものかは、まだ誰にも見えていない」ということです。
終章で水野氏は次のように言っています。「私は今は『これで十分』と考えなければいけないときだと考えているが、その考えは世の中にまったく受け入れてはもらえない。『敗北主義』ととられ、『人間は永遠に進歩する』と反論されるのだが、何をもって進歩と言うのだろうか。そもそも資本主義は、世界中の人々が等しく豊かになるような仕組みではない。今後の世界で、アジアと欧米の均一化が進むとしても、その一方で各国内の格差は広がるだろう。おそらくある時点で、『今の経済システムでは、世界の70億人のうち60億人が豊かになるような世界はできない』ということが、誰の目にも明らかになるだろう。」
只、一点だけどうしても水野氏から直接伺わなければと思っているのは、「資本主義とは、人間の飽くなき欲望(グリード)を前提とするシステムである」という前提で、私は資本主義というのは、もう少し人間の本質に根ざしたもので、人間が人間であるということと資本主義というのは、もっと深く結びついているのではないかと思っています。