ロバート・ライシュ 格差と民主主義

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492444009

作品紹介・あらすじ

クリントン政権の労働長官、オバマ大統領のアドバイザー、ハーバード大学教授、
『タイム』誌「最も業績を収めた20世紀の閣僚10人」選出、
『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙「最も影響力のある経営思想家20人」選出など、
輝かしい業績を誇るロバート・ライシュの最新刊。

暴走する資本主義が「格差」を生み出し、
「格差」が民主主義を歪め、
民主主義の歪みが資本主義の暴走を加速させる――

米国で起きている衝撃的な「負の連鎖」のメカニズムを、軽快な筆致で明らかにする。
この事態は、けっして米国だけの問題ではない。

本書で明かされる「暴走する経済から『かけがえのないもの』を守るたった1つの方法」は、
民主主義国家に生きるすべての人にとって、忘れてはならない教訓となる。

感想・レビュー・書評

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  • 二点。
    1. 企業が利益の追求を良しとされ、自国経済に責任を持たないならば、政治に影響を与えるのはNGとすべき。
    政治献金が認められ、ロビー活動ができるならば、自国の経済に責任を持つべき。ある意味トランプ大統領が自国内の工場を海外に移転する企業に口を差し挟むのは、当然なのだ。
    僕の意見は、企業の自由は継続して認める代わりに、政治には口を差し挟まない(企業献金、ロビー活動は禁止する)方が良いと思うけれど。
    2. おぼろげな記憶たよるのだが、誰か日本人の映画監督がアメリカでメガホンをとったとき「決められた時間を超えて役者に演技をさせると、逮捕される。」と言っていたのを思い出した。
    共産主義を毛嫌いするアメリカは、同時に労働組合が正当に権利を主張し、労働者がしっかり保護されている国だ、と認識したのを思い出した。
    アメリカで資本主義が支持され、長く続けられるのは、この「労働者が正当な権利を主張する。」と言う点にある、と知った。
    ところが、現代のアメリカでは事情が全く異なるらしい。
    疲弊した労働者の蓄積は、アメリカの資本主義の永続性を損なうと思った。
    日本でも、最近外国人を薄給で雇えるようにする方向にあるようなのだが、政府の役割としては、そうではなくて、最低賃金を上げて、企業が等しく競争できる環境を整えることにあるのではないか、と思った。
    我々企業に雇われたり、フリーランスで薄給で働いている人たちは「俺だって、もうちょっと努力すりゃ、ビルゲイツほどではないにしたって、もっと稼ぐこともできたんだ。だけれど努力しなかったからこんなもんなのさ。」と諦めがちになって、企業のトップや多くのフリーランスを雇う側の味方になっているけれど、それじゃダメなのだ。そうやって、甘やかすことが、経営の怠慢を生み、経営努力が「きちんと従業員に給与を払って、良い仕事をさせる。」ではなく「政治に働きかけて有利な条件で企業活動する。」に向かうのだ。
    トランプ大統領が「ビジネスマン」なんて、笑止千万だ。本来なら補助金がもらえるようなビジネスではない不動産投資に対して、「弱者むけ住宅」と見せかけて税金を自分の会社に振り込ませるような手口を「ビジネスに長けた人」とは言わない。
    世界的にずるをして高給を得ている人を容認する社会が、格差を生み、民主主義を後退させ、戦争への道を歩ませているのではないか。
    考えることが多い本である。

  • 開発目標10:人や国の不平等をなくそう
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99741099

  • ふむ

  • 少し古くなっていますが、今でも、いや、今だからこそ、なお意味のある一冊ではないでしょうか。
    米国における超富裕層による富の独占によって、一般市民が購買力を失っている、緩和策による景気拡大が見られないのはこの構造的な問題によると思われ、現在では、もっと事態が悪い方に進行している気がします。日本では、これに少子化などが重なりますし・・。

  • 富の偏在が民主主義の機能停止を招かないうちに、格差是正の適切な経済政策や税政策を、ということだろう。

  • クリントン政権で労働長官を務めた経済学者による経済格差に関する本。一部の巨大資産家により、政界がコントロールされ、富める者がますます富む仕組みができあがっていることを指摘し、改善策を述べている。ピケティと同様に拡がる経済格差を問題にしている。著者は、市場原理主義や完全自由主義を社会ダーウィン主義と呼び批判しているが、これは資本主義である限り避けられないと思うし、資本主義以外にそれを越える優れた理論はないと思われる。ダーウィンの考え方は、あらゆる生き物に適用される理論とも考えられ、必ずしも著者の主張が正しいとは思えなかった。
    「富裕層が慈善寄付控除を受けている寄付金の大部分は、貧困層のために役立っていない。寄付金はオペラ、美術館、交響楽団、劇場など、富裕層が余暇の大半を過ごす豪華な文化施設や、彼らがかつて学び、自分の子供たちを通わせようとしている大学へと向かっている」p55
    「国民の大半が手にするものの割合が小さくなっていることが問題(富裕層の資産割合が増え、中流層以下の収入が減っている)」p74
    「超富裕層の支出ばかりに頼っていたのでは経済が立ち行かない。米国の上位5%の富裕層は、収入のおよそ半分しか支出していない」p75
    「米国企業の仕事は利益を出して株価を上げることであり、アメリカ人のために良質な雇用を創出することではない(著者は給与水準を上げない企業を批判している)」p87

  • 『どの時代にも、この国がよって立つ進歩的な理想の火が逆進勢力に対抗して再燃し、その結果が根本的な改革につながったのである。

    今再び、このような動きが起きようとしている。しかし、それは自然の成り行きで実現するものではない。

    いつの時代においても、理想から逸脱した経済と民主主義のあり方に道徳的な怒りを感じ、その怒りを乗り越えて真の改革のために尽力した膨大な数の人々の関与と献身があったからこそ、この国は前進することができたのだ。

    今、あなたの怒りと献身が、もう一度求められているのである。』

    著者の思いが「申し入れ書」と「企業の忠誠についての誓い」に込められていて、良い。アメリカの病が良く分かる。

  • この30年間、経済成長による利益のほぼ全てがトップ層に渡り、政治的権力、従って助成措置や税の優遇を手にした。税収は減り、政府予算は圧縮されて公共が荒廃し、中間層は購買力を失い、貧困層との競争に駆り立てられている。

    国民から富を吸い上げる巨大な仕組み。異を唱えるべき根拠は、人類が持つ公正感覚、数の力、社会の不健全化で成長が失われること。

  • ロバート・ライッシュ氏によるウォール・ストリート批判。筆者は、こうした強欲資本主義と共和党政治家が結びつき、アメリカ政治が1929年以前に戻りつつあると批判している。

    以前に読んだ事があるような内容だけど、はてどこだっただろうか。

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