欧州解体

制作 : 町田 敦夫 
  • 東洋経済新報社
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レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492444177

作品紹介・あらすじ

英国、ギリシャの離脱でEUは崩壊の道へ進むのか。
ドイツが覇権を握るのか。
デフレ社会の到来をいち早く予言した英国No.1エコノミストによる新たな警告。

現在のEUは、政治的・経済・外交的にどう間違っているのか、
EUに内在する矛盾と機能不全を分析し、EUの失敗を論じる。
イデオロギーではなく、合理的な経済分析から説き起こしていく、タイムリーでバランスの取れた一冊。

「EUは本来、誤った決断をするようにできているのだ。ユーロのつまずきがEUの解体を招く
なら、私たちはそれを、EUの内的矛盾の結果として起こった必然的なできごとと見なすべ
きだろう。カール・マルクスならそう言ったはずだ。」(本文より)

●ギリシャのユーロ離脱にイタリアも追随、一気にユーロ圏は解体へ
●統一通貨ユーロはユーロ圏全体をゲルマン的にした
●国民投票でEU離脱後の英国は成功する
●フランスは中核国から周縁国へ
●ベルリン、ミュンヘン、パリ、マドリッド、ローマ、ミラノ、ベネチアなど、都市国家が欧州に再び出現
●今後のEUが手本とすべきはNAFTAとASEAN

感想・レビュー・書評

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  • 「国々の再建が、国家主権をもとに行われるなら、欧州に平和は来ないでしょう。欧州の国々は、その国民に必要とされる繁栄と社会発展を保証するには小さすぎるのです。各国は一つの連邦へと自らを再編しなければなりません。」ジャン モネ1943/8

    2012年、EUから受け取った正味の金額が多かったのは、
    ポーランド 120億ユーロ
    ポルトガル 50億ユーロ
    ギリシャ 45億ユーロ
    スペイン 40億ユーロ
    ハンガリー 33億ユーロ
    チェコ 30億ユーロ

    正味の金額がマイナスだったのは、
    キプロス、ルクセンブルク、フィンランド、オーストリア、デンマーク、ベルギー、スウェーデン、オランダ、イタリア、英国、フランス、ドイツ。

    上位5カ国(ドイツ、フランス、イタリア、英国、スペイン)で全体の65%を占める。

    欧州統合の5つの主導的信念
    1.次の欧州戦争を避けたいという願望
    2.欧州は一つにまとまるのが自然だとする考え方
    3.経済的にも政治的にもサイズがモノを言うという発想
    4.欧州が一つになってアジアからの挑戦に対抗する必要があるという認識
    5.欧州の統合はある意味で不可避であるとの思い

    EUの成功点
    ・欧州戦争は起こっていない
    ・特にフランスとドイツが緊密な同盟国となっている
    ・EUの助けで、かつてのソ連圏の国々が西側に再吸収された
    ・加盟を待つ国々が列を作っている
    ・EUは世界の舞台における加盟国の発言力や影響力を広げてきた
    ・EUの制度は、欧州の統一という当初の夢の実現に向け、変革の時を迎えているように思える

    社会が発展するのは、包括的制度が収奪的制度よりも優勢なときだけ。

    EUは世界の総生産の30%、商品貿易の15%、貿易額全体の24%を握っている。

    シンガポールの一人当たりGDPは英国、フランス、ドイツより高いが、この4年間の経済成長率は年率5%とEU各国を上回る。

    2012年失業率
    スペイン 25%
    ギリシャ 24.3%
    フランス 10.2%
    ドイツ 5.5%
    オランダ 5.3%

    社会保障支出規模(失業給付含)
    EU28カ国の平均はGDPの30%弱。
    フランス、デンマークは33%を超え、ブルガルア、ラトビア、ルーマニアは18%。

    EUが域内経済パフォーマンスに影響を及ぼす5領域。
    ・貿易
    ・資本と人の移動
    ・労働法
    ・競争
    ・多額の金を集め、使うこと。

    EU加盟国間の貿易は長年の間に大幅に伸びているが、非加盟国との貿易の伸びはさらにそれを上回っている。結果的に加盟国向けシェアは、2001年の68%から2012年の63%に低下している。

    世界の富裕国の多くは小国。一人当たりGDPのトップ5は、カタール、ルクセンブルク、シンガポール、ノルウェー、ブルネイ。いずれも人口600万人未満。

    経常収支(GDPの)
    ギリシャ -20%
    ポルトガル -14%
    スペイン -12%
    アイルランド -8.5%
    ドイツ 9%
    オランダ 10%

    自国通貨を持つ事は、相対価格を20-50%も調整させなければならないクラスの危機の際に極めて重要。

    アウトライトマネタリートランザクション(OMT)
    問題のある国々の国債をECBがほぼ無制限に買い入れる施策

    2008-2014Q3までの各国成長率
    世界 17.3%
    中国 70%(ドイツ+イタリアのGDPと同等)
    インド 32%
    マレーシア 36%
    シンガポール 29%
    韓国 22%
    台湾 20%
    香港 20%
    カナダ 11.2%
    米国 8.4%
    スイス 8%
    ノルウェー 6%
    英国 3.4%
    ユーロ -2.2%
    フランス 1.5%
    ドイツ 3%
    スペイン -6.4%
    ポルトガル -7.3%
    イタリア -9.5%
    ギリシャ -26%

    イタリア公的債務の対GDP比は130%だが、価格と賃金のデフレを行っていない為、競争力改善の兆しはない。

    2008年に比して膨らんだ各国中銀のBS
    ECB 150%
    イングランド銀行 300%
    FRB 400%

    ユーロ創設までと創設後のドイツの消費支出は、年平均2.5%から0.9%に下がった。

    来る数十年の間は、かつての米国のように絶対的な優位に立つ国は現れない。

    欧州合衆国は人口5億人、有権者数4億人。人口12億人、有権者数7.4億人のインドに次ぐ世界2位の民主主義国家。米国は人口3.12億人、有権者数2.4億人。

    第二次世界大戦は、ワイマール共和国の制度的な脆弱さと、民主的なプロセスを通じた民主主義の崩壊によって勃発した。

    欧州委員会は、1,750名の言語専門家と、600名のサポートスタッフを要する世界最大級の翻訳サービス機関。

    英国はケルト人、アングロサクソン、バイキング、ノルマン人が入り混じった移民国家。

    労働塊の誤謬、、、世の中には決まった数の仕事しかないとする考え方。実際には、仕事の数は弾力的であり、働く能力と意思のある求職者全員に行き渡るまで増やすことが可能。

    欧州の各国家が分裂し、ロンドン、ベルリン、ミュンヘン、パリ、ローマ、ミラノ、ベネチア等の都市国家が出現するかもしれない。

    ネザーランドディストーション、、、英国企業による税金対策慣行。対外投資で得た所得をオランダ領の島に設立した形式的な持株会社で回収すること。この総額はGDPの5%に達する推計がある。

    フェラーリの最大の市場は英国。

    英国が今後締結の努力をするべき協定
    1. EUとのFTA
    2. NAFTAへの加盟
    3. 世界のできるだけ多くの国々とのFTA
    4. 英連邦諸国との連携強化

  • 【論旨】
    ★EUは関税同盟であり、政治同盟。投票で選ばれるわけでもないEU主導の政治は主権者不在の広域政治。政治単位は小さい方が良い。現状とそぐわない決定ばかり成されてきた。
    ★一律の労働法導入は間違いの元。競争力低下を招いた。
    ★関税同盟により域内貿易を守って競争力の低下を招き、域外の新興国への対応が遅れた。結果として全体の市場能力を低下させた。経済力低下により赤字国家の救済が難しい。
    ★移民問題が広がったのも、人の移動を自由に許しているせい。移民自体は×でないが、大量移民は問題だ。
    ★ユーロ導入の失敗。為替調整が出来ない。
    ★英国は他にも貿易同盟に入れるし組める可能性(英連邦)があるのだから、EUから離脱するべき。
    p116『直接的には、EUは主として5つの領域を通じ、域内の経済的パフォーマンスに影響を及ぼしてきた。すなわち「貿易」「資本と人の移動」「労働法」「競争」「多額の金を集め使うこと」である。EUが経済的に成功していないのは、おそらくこれら5つの領域で良い仕事が出来ていないから』
    P374『人々はコンセンサスに飲み込まれることがある。コンセンサスはそれ自体が命を持ち、ひとたび定着すると中々揺るがない。人々は自分が信じたいものを信じてしまいがち』

    ・EUの起源は戦争を避ける目的があった。欧州内戦争を二度と起さないように。米ソへの対抗措置でもあった。
    ・しかし急速なグローバル化、アジア新興国の台頭に対する施策は無かった。競争力の低下、経済成長率の鈍化で後れを取るようになった。
    ・関税撤廃のせいで、域内輸出国は良いが、輸入国はどんどん生産性が落ちる。保護されすぎて競争力が低下。
    ・労働力、人民の自由移動により失業率の増加、移民問題が膨れあがる。
    ・各国経済政策への干渉。
    ・民主主義の欠如:域内政策を決めるのはEUトップであるのにその人物を民衆は選べない。選挙がない。憲法で縛られてもいない。莫大な報酬を搾り取られる。
    ・各国政策への干渉のため、労働法による労働者保護が篤すぎて非現実的。よって企業の競争力、生産性の低下を招いた。
    ・単一貨幣ユーロでは、為替調整が出来ない。
    ・EUは欠陥だらけだ。存続には改革が不可欠。代わるものとしてNAFTAが参考になる。

    【感想】
    日本語訳は読みやすい。専門知識はなくてもとっかかりやすいが、どんどん冗長になっていく。本当は本書の1/3程度の分量で伝えられるところを、ぐりぐり書きすぎ。
    集中的に第1部(第1章、2章)と第2部の第4章だけ読めば、充分だ。あとは著者の推論が展開されている。
    全体を通しで読むにしても、2割読み(ほぼめくるだけで、気になった箇所に付箋を貼りつける。あとは付箋の場所だけ精読)で充分だと思う。

    EUが何故窮地に陥っているのか? 謎を解く鍵は一応書いてある。自由貿易協定に留めておくのが市場に良いんだ、という主張。

  • 反EU主義者のイギリスEU離脱のススメである。EUは確固としたものだという認識を持っていたが、イギリスでも離脱支持者が増えており、危機的な状況になつているようだ。日本ではその深刻さが感じられないので、この本で反EU主義者の見方が理解できた。ただ、実際に離脱した場合の影響は、要素が多すぎて誰にも分からないだけに、リスクが大き過ぎる。作者はその点で、当然ではあるが、楽観的過ぎると思う。

  •  ベルサイユ条約を締結したのに20年ともたず戦争でひどい目にあった。幾世紀もかけて醸成された美徳を備えるわが欧州こそ威圧的な米ソ超大国の対抗勢力となって世界全体に利益をもたらしたい。ソ連が解体されてもアジアが浮上してくるし政治的経済的な発言力を維持するには規模の拡大は不可欠だ。けれども世界の現実は変化した。それでも欧州は連合すべきか。

    『興味深いことに、欧州が世界のほかの地域に比べて最も強く、かつ繁栄していたのは、小さな国家に分かれて互いに激しく競い合っていた時代だった。偉大な探検家を送り出したのは、統一された欧州ではなく、スペインやポルトガル、英国、オランダ、フランス、そしてジェノバやベネチアを含む数多くのイタリアの都市国家だった。対抗心が彼らをそうさせたのだ。』140頁

  • イギリス人エコノミストから見たEUの問題点、ドイツ一極支配の恐怖、

    ユーロのつまずきがEUの解体を招くなら、EUの内的矛盾の結果として起こった必然的な出来事とみなすべきであろう。

    欧州統合の歩み、
    次の欧州戦争を避けたいと言う願望、欧州は1つにまとまるのは自然、経済的にも政治的にもサイズがものを言う、欧州が1つになってアジアからの挑戦に対抗する必要がある、大井州の15はある意味で不可避であるとの思い、

    世界はいずれ中国とインドに支配されると考えられている、英雄がなければ20年後には欧州の国々が全く意思決定のテーブルに付けなくなる。

  • 途中でしんどくなって、飛ばし読みになって、最後10章からだけ読んだ。イギリスのドイツ怖いは大戦があろうがなにがあろうが変らないんだなあ。どっちにしても、欧州って、集まるベクトルと離れるベクトルとのせめぎ合いという点で、東南アジアに似ている気がする。

  • ■書名

    書名:欧州解体
    著者:ロジャー・ブートル

    ■概要

    デフレ社会の到来をいち早く予言した英国No.1エコノミストによる
    “新たな警告”。 」
    (From amazon)

    ■気になった点

    なし

  • 図書館で借りた。

    ロンドンのシティのエコノミストがEUについて否定的な見方をしてる。
    イギリスには、こういう見方が多いんじゃない?ドイツやフランスよりも、EUに対して、皮肉な見方をしてる人が多い気がする。
    島国根性かな?
    でも、チャーチルはヨーロッパの統合を望んでいた。
    スコットランドの独立問題もあり、イギリスは遠からず連邦制になる。
    そして、移民問題。
    BBCとかEUの最近のニュース見てたらすごいよね。シリアから難民が押し寄せてる。労働力の自由な移動に対する恐怖が高まってる。文化的な摩擦も。
    ロンドンの駅でロッカールーム探してたらどこにもないんだよ。なんで?って思ったら、テロリストが爆弾をしかけるから。ロンドンにはいろんな人種が集まるし、政治的にヤバい人たちも来るから、駅にロッカーなんて恐ろしくて置けない。
    そういう意味では、日本はまだ牧歌的だけど。
    安倍バカボンボンがアメリカの犬みたいな政策ばっかやってるから、近い将来、東京でテロが起きると思う。

    グリグジットの可能性も高まってる。
    この人はギリシャに対しても厳しい見方をしてる。

    EUについては、加盟国それぞれに、いろんな思惑があって、ユーロは使わないけどEUには加盟してるイギリスなんて、いつも、EU反対派と賛成派と意見が別れてるよね。

    p.64
    ダグラス・ノースの話も出てくるね。
    重要なのは公式の制度だけではない。文化的タブー、観衆、伝統、行動規範といった、非公式な制度も重要だって。

    サルコジはEUがどこまで拡大可能なのか考えてた。
    サルコジって、ユダヤ系の血が入ってる。

    EUの人件費が高すぎるとか、公金の使い方もひどくて、会計処理もひどいって。

    ドイツ人は消費より貯蓄を好む。 p.172
    ユーロはユーロ圏全体をゲルマン的にした。

    日本の20年にもおよぶデフレについても言及されてる。
    p.176

    p.191
    量的緩和について。
    アングロサクソンは伝統的に中央銀行でお金の量を増減させることで対応してきた。
    ケインズ当時1930年代は「公開市場操作」と呼ばれていた。
    アメリカの

  • EUの指導者が市民に向けて、これは欧州の平和を守るのに必要な政治プロジェクトです、と言ったことは一度もない。むしろ彼らは経済的な利点を吹聴した。当初は経済が力強く成長していたので、それも受け入れられやすかった。経済力があればこそ、世界の舞台で発信力を確保できるし、アメリカとも対等に渡り合える。
    ようやく最近になて欧州統合はコストがかかると認識されはじめた。

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