最後の資本主義

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492444405

作品紹介・あらすじ

ライシュの提案する、新しい資本主義の形。政府か市場か、の二者択一ではなく、市場メカニズムの根幹となる市場のルールを見直すことで、資本主義を壊すことなく、サステナブルな資本主義を構築できる。
 市場メカニズムのルール自体が、勝者だけが勝ち続け、富が一方的に上方に移動するような仕組みになっている。ここにメスを入れずして、ゲーム終了時の所得再分配の率だけを議論しても意味がない。ルールそのものを、そして資本主義そのものを、一部の勝者のためだけに利するものではなく、大勢の人が生き残っていけるようなものにしていこう。
 このままでは、人間の働くことの価値はますます小さくなり、稼ぐことのできるものは資本のみとなってしまう。技術が発達し、ロボットがどんなにすばらしい財・サービスを提供できても、それを買うことのできる層は消滅する。そしてロボットが代替するのは単純労働だけではないのだ。頭脳労働でさえも、ロボットにとって代わられる時代が来ている。
 今こそ、新しいルールの下で資本主義を立て直さなければならない。そうでないと、資本主義はその土台部分から壊れてしまう。

感想・レビュー・書評

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  • 一市民にどうせいと?新規性はなくピケの亜流かな

  •  少し前に読んだ「上級国民/下級国民」で本書に触れられていたので図書館で借りた。
     ウォルマートの富豪トップ10人のうち6人が相続により莫大な財産を得て、しかも米国の下位42%が所有する富を上回っているという。株主への富豪は政治家とつながり自分たちにさらに有利になるように制度を変えてきた。1980年頃から企業は株価を上げることが使命であるという考え方に変わり、上げるべき労働者の賃金(富)が株主やCEOに吸い上げられ続けている。
     トランプ政権は(超)富裕層と貧困層を基盤にしている。労働者の賃金を抑えつつ雇用を確保し、貧困労働者の指示を集め、一方で富裕層に有利になるよう立ち回っている。ライシュの主張にあるように中間層の存在感が希薄だ。
     米国の労働長官やオバマ前大統領のアドバイザーを

  • 180630 中央図書館

  • アメリカの格差がいかにすさまじいか実際のデータを交えて解説されている。
    早く労働者階級から脱出したい。

  • 政治献金や天下りをエサに自分たちに有利なように市場のルールを変更する各業界の強欲さに呆れ返る
    法律の成立を妨害し、法律を骨抜きにし、あるいは執行させないよう予算を削らせる
    身勝手の極地だろう
    歪んだ資本主義ではなく、資本主義を歪めたのだ
    こんな市場を誰が信じるというのか
    ビジネスマンとしても大統領としてもトランプがでてきたのは当然だと思えた
    市場万能という神話は誰がルールを決め、ルールを執行しているかを見過ごさせるというのはもっともな指摘だ
    富裕層は嫌がらせのためにこんなことをしているのではない。
    ただただ自分のことしか考えていないだけなのだ
    昔のように下位層で連帯し、歪められたルールを元に戻すことが必要だというのは賛成する
    訳者あとがきで日本はむしろ超富裕層の程度が弱まっているとあったが、これは日本人が逸脱を許さないことと金に対してマイナスイメージがあるせいかもしれない。

  • 拮抗勢力の衰退、労働組合、中小企業
    ※健全で信頼されるカウンターパワーが必要
    グローバル化と技術革新は遠心力を持つ、繁栄を分かち合うための抜本的手段が必要
    ステークホルダー資本主義対株主資本主義、ステークホルダー資本主義を勝利させなければならない。
    新たなルールの構築が必要

  • ふむふむ!

  • ゲームのルールを作れるだけの権力を保有している人々に富が集まっている。

    自由市場は荒野に自生しているわけではない。ルールが市場を創造している。国家がルールを定める。
    小さな政府と大きな政府、自由か規制か、の選択は無意味。
    どういうルールか、が問題。

    市場支配力はどのくらいが適当か。正解はわからない。
    自己破産のルールの個人と企業の違い。
    自由とは、誰にとっての自由か。企業の自由か普通に働く人の自由か。

    自然産物には特許は与えられないのが変更された。肺炎球菌ワクチン。製薬会社が自社製品を処方した医師に報酬を払うことは合法。
    ミッキーマウス法=著作権法が伸びている。
    ゲーブル会社の独占により、ネットの料金が高く、スピードが遅い。
    種子を産まない大豆のため、種子会社に依存する農家が増えた。
    ICTの独占。アップル、グーグル、フェイスブック、ツイッター、アマゾン、アリババなど。

    独占禁止法の適用に正解はない。政治的力を発揮させない視点。この視点を見失っている。経済力の横行によって暗に政治的独占が進行している。

    新しい時代の倒産。大手航空会社のすべてが過去20年以内に一度は倒産している。大きすぎて潰せない。
    学費ローンは解消できない。

    執行の独占。
    判事を選挙で選ぶようになった。

    給料がその人の価値を決める、というのはトートロジー。CEOの高い報酬はストックオプションによる。
    人件費を削るのが株価を上げる短期的な方法。その結果、ストックオプションで高い報酬を得る。売上を上げるよりも、短期的な株主へのリターンを選択する。
    自社株買いなど、人件費が増大しないため、長期的な売り上げは上昇しない。

    労働者の交渉力が弱まった。グローバル化による人件費の抑制。ドイツは労働組合のちからが強い。ウエルチは、業績が良いときでも人を入れ替える。
    失業率が高いことも一因。
    GMは労働組合があるが、ウォールマートにはない。

    最低賃金を上げると失業が増える、のは言葉のあや。最低賃金は小売サービス業が多いので、雇用の減少はわずか。競争が激しいので物価の上昇もない。

    所得格差と教育格差。
    相続税の緩和で、働かないお金持ち増加。家族信託は最大90年であったのが無期限になった。王族信託によって、何世代も引き継げる。

    私立大学は潤沢な寄付による基金がありその運用益は非課税。公立大学の基金はほとんどなく、補助金は削減されている。公立大学の学生が増えているため一人あたりの予算は少ない。

    自由市場か政府か、というのは見せかけの選択。市場の設計、構築、機能させる選択肢が見えにくくなっている。

    このままいくとどうなるか。
    他人を大幅に裕福にするという理由で、自分にも少しは有利な話を断る1000ドルを二人で分割する実験。
    相互不信感の中で、疑心暗鬼、不正行為の横行、などにより世の中はマイナスサムゲームになる。
    草の根運動による政治力が減少した。人々は、労働組合、在郷軍人会のような組織にさく時間がない。

    アメリカは二大政党以外の選択肢が生まれにくい仕組みになっている。

    独占禁止法の活用。製薬会社、クレジットカード業界の寡占を防ぐ。グラススティーガル法を復活。フランチャイズ契約約款の改善、株価吊り上げのインサイダー取引の禁止、法の完全執行、罰金処罰による会社の違反の抑制。

    従業員とCEOの報酬比率による法人税の増減。または労働者の給与を上げると法人税率が下がる仕組み。
    会社は誰のものか。株主か、ステークホルダー全員か。
    株主資本主義とステークホルダー資本主義との違い。合成の誤謬。

    ロボットによる労働力の代替。ケインズの「余暇の使い方に悩むようになる」という予言が実現したら。
    思考実験=すべてを作ることができる小さな箱があるとする(Ieverything=アラジンのランプの現代版)。ほしいものができても、失業していれば誰も買えない。
    多数による大量生産と大量消費が、少数による無制限生産と、それを買える人だけの消費。

    十分な拮抗勢力の台頭によって、バランスが保たれるはず。
    知的財産の保護は、その1代限りでよい。
    相続税の復活で、金持ちの固定化を防ぐ。
    ベーシックインカムがあれば、芸術活動やボランティア活動に専念する人も増えるだろう。

  • 「暴走する資本主義」から10年。その後も富の格差は広がり続けている。本書のテーマは一貫して自由経済と政府の対立軸がなくなっていること。資本主義は自由経済によって健全な競争が保たれる前提だが、資本主義の勝者がゲームに勝つことよりルール(法律)を変えることを優先した場合、富は適切に配分されずに一部に集中し続けてしまう。
    問題定義からその真因分析、そして目指すべき方針まで示された優良図書。

  • この世のどこかに「自由市場」という概念が存在しており、そこに政府が「介入する」のだ、という考え方ほど人々の判断力を鈍らせるものはない。政府なくして自由市場は存在しない。文明とはルールによって成るもの。

    法律のどこを見ても、「株主が企業の唯一の所有者であり、したがって企業の唯一の目的は彼らの投資価値の最大化にある」とは書かれていない。
    これは、1980年代に企業の株主利益を最大化したい乗っ取り屋が経営者達に対し、採算性の悪い資産を売却し、工場を閉鎖し、借金をもっと引き受けて社員を解雇するよう要求し始めた頃に出てきたもの。

    1978年から2011年にかけて、新しい大企業が支配力を強めていくのに伴い、新規企業の参入割合は半減した。

    モンサントの市場独占により、大豆畑1エーカー当たりの平均作付け費用は、1994年から2011年の間に325%増、とうもろこしの作付けコストは259%増となった。そして、種子の遺伝子的な多様性は劇的に減少した。

    個人の収入を決定づけているのは、相続、コネの有無、先入観等その人の能力以外のもの。能力主義では全くない。

    納税者が社会的意義のある職業をもっと強く支援する方法として、社会福祉や幼児保育、高齢者介護、看護、法律相談、教育などの職業を選択した卒業生についてはその学費ローンを免除するのがよい。

    CEO報酬は1978年から2013年の間に937%増加し、同時期の労働者の賃金上昇はわずか10.2%。

    最も報酬の高い役員上位5名に対する報酬額がその企業の法人所得に占める割合は、1993年には平均5%であったが、2013年には15%を上回る。さらにこれらの報酬のほとんどは法人所得税から控除されていた為、残る普通の人々が所得の割に高い税金を払い、税収の穴埋めをしてきた。

    2001年から2013年にかけて、S&P500インデックス企業による自社株買い額は3.6兆ドル。CF総額の3分の1。

    2003年から2012年にかけて、自社株買いが最も多かった上位10位のCEOは、報酬の70%をストックオプションもしくはストックアワードで受け取っていた。

    高額のCEO報酬を出している上位150社のPERは、同業他社よりも10%低い。業績も平均15%低い。さらに、高額報酬のCEOの在任期間が長ければ長いほど業績が悪化している。

    2013年銀行上位5行に出された640億ドルの補助金は、この5行の年間利益総額とほぼ同額。この補助金がなければ、267億ドルもの賞与の原資はおろか、利益の全てが失われていた。彼らが賞与をもらう事ができたのは、彼らの能力ではなく、米国の政財界において特権的な立場にいるから。

    1950年代初頭、GEは全てのステークホルダーにとってバランスのとれた最善の利益を追求する事で有名であった。

    企業経営は全ての人々の利益になるような経済を期待して国民から託される職務。

    米国の富裕上位1%層に向かう国内総所得の割合は1960年代の10%から2013年には20%を超えるまでに上昇したが、ドイツのそれは40年間11%のまま。

    ドイツのガバナンスは、取締役会の上に監査役会があり、監査役会の半数は社員の代表者で構成されている。この為、労働者の権利が受容的。

    労働者の所得の低下は、彼らが経済力や政治力を持っていない事に起因する。

    最低賃金が高いほど、従業員の離職率が低い。

    低賃金で働く労働者の給与が引き上げられても、競争にさらされているので商品価格が上昇する事はない。

    貧しい人は向上心がないから貧困から抜け出せないのではなく、機会とそれを獲得する政治力がないから。

    最も裕福な米国人上位10人のうち、6人が遺産相続によるもの。

    システムが不公平で独断に満ちており、勤勉が報いられないと人々が感じると、私たち全員が損をする結果になる。マイナスサムゲーム。

    この30年間、企業を動かす誘因の全てが一般労働者の賃金を引き下げ、取締役の報酬を引き上げる結果につながった。

    カリフォルニアでは、CEOの報酬がその企業の平均労働者の賃金の100倍であれば、法人税率が8.8%から8%に下がり、25倍なら7%に下がる。200倍であれば9.5%、400倍であれば13%に引き上げられる。

    平均的労働者の賃金に対するCEO報酬の比率開示義務はドッドフランク法。

    年間生産性上昇率に合わせて労働者の賃金を引き上げる経営者には低い税率を課し、引き上げない経営者には高い税率を課す方法もある。国全体の経済的利益と労働者の収入を連動させる。

    カリフォルニアでは、低賃金の仕事を多く下請けに出すほど高い税率を課し、企業が雇用者を個人請負業者として不正に分類する事や、かつて社内で働いていた低賃金労働者を他者に転属させる事を禁じている。

    従業員持株制度や利益分配制度、または従業員が会社を所有する形式に協同組合を組織する事に優遇税制を適用して、従業員により直接的なオーナーシップを与える方法もある。

    企業とは契約と知的財産の集合に過ぎず、株主に所有されているわけではない。

    企業の取締役には自社の株式価値を最大化する信任義務があるという考え方は法的根拠のないフィクションにすぎない。株主は企業の役員を選ぶが、役員には株主利益を最優先しなければならないという法的義務はない。

    2014年スーパーチェーンのマーケットバスケットの取締役会は、CEOのアーサーT.デモーラスを解任した。それは彼がステークホルダー全員が利益を享受できる合同会社とみなしていた為だが、これに対し社員と顧客がデモやボイコットを起こし、最終的には取締役会は同社をアーサーに売却した。

    パタゴニアは、ベネフィットコーポレーションという形態で組織されている。株主と共に社員や地域社会、環境の利害を考慮する事を定款に定めている。

    60年前の米国では当たり前だったステークホルダー資本主義

    1980年代に定着した株主資本主義は、労働者の賃金を下げ、地域社会が荒廃した。

    1990年から2008年の間に、高校を卒業していない米国白人女性の平均寿命は5歳短くなった。

    ベーシックインカムがあれば、人々はあらゆる種類の芸術や趣味の追求に意義を見出せ、社会は芸術活動やボランティア活動による成果を享受できる。大多数の人が肉体的、精神的な活動よりも怠惰を貪る事を選ぶとは考えにくい。むしろ、多くの仕事が「天職」、すなわち働くことが単なる金稼ぎの手段ではなく、個人としての深い関与であるとみなされた時代に回帰するだろう。→hanahanaそのもの!

    次は民主主義に対する挑戦。将来を決定づける議論は政府の「規模」に関する議論ではなく、政府が誰の為にあるのかという議論。
    人々が幅広く繁栄を分かち合うように設計された市場か、ほぼ全ての利益が頂点にいる限られた人々に集中するように設計された市場かという選択をする事。

    事後に再分配を行わなくとも、公平な分配がなされていると大多数の人々が受け止められるような経済を生み出す市場のルールを設計する事。

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