次なる100年: 歴史の危機から学ぶこと

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  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (927ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492444658

作品紹介・あらすじ

近代はどう終わるのか、「第2の中世」は到来するか
圧倒的なスケールで説く、水野「文明史観」の決定版!

【内容紹介】
13世紀以降の社会は「数字(利益)は嘘をつかない」という前提の上に成り立っている。「神は嘘をつかない」という前提で成り立っていた中世キリスト教社会が崩壊していったのは「神が嘘をついた」からであって、人々は来世の天国よりも現世の暮らし向きが年々よくなっていく資本を信じるようになった。そこで、13世紀に教会は利子を認め信者を引き留めた。ところが、21世紀になって、「数字は嘘をつかない」という前提が揺らいでいる。現在は13世紀の身分社会以上に所得の不平等が広がっている。(略)

「21世紀の社会はいかなる方向に向かうか」であるが、社会の在り方は中心概念になにを据えるかで決まってくる。社会の仕組みの中心概念は、21世紀においてはもはやコイン(硬貨)ではない。イコン(聖像)が嘘をついたので、嘘をつかない数字を人々は信じるようになったが、そのコイン(資本)が嘘をつくようになったからである。所有権の概念や株式会社制度を見直し、ケインズのいう「明日のことなど心配しなくてもいい社会」を構築する必要がある。

ゼロ金利社会になって、ようやく日本人は働け、働けという強迫観念から解放され、人間の本質について考える時間を手に入れた。瞑想しても人間の本質はわからないので、「古典」あるいは芸術を学ぶ必要がある。ゼロ金利とは現在と将来の時差がなくなって、現在も将来も同じ価値となったことを意味する。将来もっとよくなるのではなく現在が最高なのである。すなわち、「より遠く」の将来ではなく「より近く」の現在に高い価値が与えられる。「資本の時代」が終わり「芸術の時代」が到来する。「より近く、よりゆっくり、より寛容に」が新たな行動原理となる社会が到来するであろう。(本書「はじめに」より要約抜粋)

感想・レビュー・書評

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  • 読みづらい文体だが、主張は明快である。
    ゼロ金利の意味とは何か、どうして実質賃金が下がるのか、中間層が没落する理由は何か。
    これらの疑問が氷解した。もはや成長は幻想である。

  • 水野和夫さんの本は新書「資本主義の終焉と歴史の危機」だけ読んだことがある。
    先日、「Slowdown 減速する素晴らしき世界」を読んで、もやっと感じていたことがなんとなく書かれている気がした。
    そんなときにこの本を目にして、なんとなく関連がありそうな気がして、でも高いのでとりあえず図書館で借りてみたらとんでもない厚さだった。
    2週間で返さないといけないのでちょっと駆け足で読んでしまったけれど、やっぱそうだよなあという感じがした。
    【なんとなく感じていること】
    1)本当にこれからも順調に経済成長なんてできるのだろうか
    2)そもそもだが、消費しきれないほど作っているのではないか(服とか食品)
    3)企業の収益を現地にいる労働者に給料として還元せず、株主に戻しちゃったら日本から資本がどんどん流出することになるのではないか
    4)お金に働かせる、というのは倫理的に誤っているのではないか
    5)高度に経済成長していたのは単にその前が貧しすぎただけ、もしくは人口が急激に増えただけの、一時的なボーナスタイムだったのではないか
    6)日本の文化は、タイトな国民性からもたらされる治安の良さや、誠実さによって守られており、これ以上の貧困を許すと、秩序が崩壊するのではないか。

    とりあえずこんな感じだろうか。
    いま、この時代に肉体を持って生きている人間が、現時点の状況を歴史的に捉えようとすると、やはりデータだけでは足りず、思想(宗教や倫理も含まれる)、芸術などの助けを十二分に借りなければできないだなあと思った。
    データだけでは、抽象化は難しい。これからの100年を見据えるには、人類史全体を流れで大きく捉える必要があるんだろうな。

    水野氏にこの本を書かせたのが鈴木忠志の演劇であることや、たびたび引用されるのがシェイクスピアだということを考えると、人間の思想というものは、小説、戯曲、経典、思想書、さまざまな形で表されるものの、結局は人間の社会そのものを描き出しているのかもしれない。

  • グローバル化は、時の小泉政権が主張していたのとは違い、富裕層による帝国化である。これにより中間層が脱落、この過程は帝国崩壊につながる(歴史が証明)。
    無限の「蒐集」古代ローマが世界帝国を目指し土地を、中世キリスト教は世界宗教を目指して無限に信者を、近代はより良い生活を目指して資本を無限に集めようとした。

  • 下記のリンクでご利用ください。
    学外から利用する場合は「マイライブラリ」もしくはリモートアクセスサービス「RemoteXs(リモートエックス)」をご利用ください。https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000120270

  • 大著である。
    イコン、コインの次は、芸術が価値を持つ。その理由は、先進国で金利がつかなくなり、蒐集、収奪を特徴とする資本主義経済が終焉する。とのこと。
    芸術が価値を持つとの提案は勇気ある。本当にそうなるのだろうか。

  • 1000ページくらいあり長く脚注が非常に多いが過去の歴史から生まれた階級を変わることは少ない、富める人がどんどん富む社会になっている。

    国際収支はゼロサムでアメリカが支配層になっている

  • 中世の秋とGAFAを2文5行で書かれても話が飛び過ぎててついていけない。ゼロ金利は好きでなさそうだ。話そもそも本デカすぎ。電車で読めない重くて持ち運びに不便。終章が2/3くらいから始まったと思ったら、その半分は引用の注記でした。

  • 東2法経図・6F開架:332.06A/Mi96t//K

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著者プロフィール

1953年愛媛県生まれ。埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了。博士(経済学)。三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフエコノミストを経て、内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)、内閣官房内閣審議官(国家戦略室)を歴任。現在、法政大学法学部教授。専門は、現代日本経済論。著書に『正義の政治経済学』古川元久との共著(朝日新書 2021)、『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』(集英社新書 2017)、『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書 2014)他

「2021年 『談 no.121』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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