WOKE CAPITALISM 「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492444740

作品紹介・あらすじ

「WOKE」という切り口で、企業が社会問題に取り組むことそのものが本音レベルで利益に直結する現代資本主義の構造と裏側を読み解く。
■「WOKE」とは:「WAKE=目を覚ます」という動詞から派生した言葉。公民権運動時代から使われていた言葉だが、近年は「社会正義」を実践しようとする人びとの合言葉になっている。
■「WOKE CAPITALISM」とは:企業が気候変動対策、銃規制、人種平等、LGBTQなど性的平等実現などに取り組む様子。【「WOKE CAPITALISM」のチャート図】


【「WOKE CAPITALISM」のチャート図】

リベラルな「WOKE CAPITALISM」の実践で企業イメージ&株主価値が向上
⇒翻って保守層は「意識高い系」に反発し、選挙では保守党派に投票
⇒保守党派の伸長は、「WOKE」な企業にとっても実はプラス。むしろ「減税」政策の恩恵を受けチート化。さらなる利益がもたらされる。
⇒この構造が継続し続けることで、社会階層は固定化。民主主義の破壊につながり社会はディストピア化。しかし、企業はどちらに転んでもユートピア化。
⇒繰り返し


近年「WOKE」という言葉がよく使われている。「wake=目を覚ます」という動詞から派生したこの言葉は「社会正義」を実践しようとする人びとの合言葉になっている。
たとえば、一般消費者向け企業が、気候変動、銃規制、人種平等、LGBTQなど性的平等、性的暴力廃絶などに参加する様子は「Woke Capitalism」と呼ばれる。
Woke Capitalismの実践で成功した企業は「社会正義」に取り組むことで、株主価値向上にも顧客の開拓・維持にもつながる。
一方で、リベラルなWokeの実践は保守層の反動を煽り、その反動による投票行動で政治は企業に優しい保守党に委ねられる。トランプ現象はその象徴だ。あまつさえ伝統的に企業に優しい保守党派により減税にも与れる。「Woke」を糧にしたキャピタリズムというわけだ。
ある意味で企業にとっては無敵である。ただし、社会には深刻な分断がもたらされ固定化し、民主主義が破壊されることにもつながってしまう。
「WOKE」という切り口で、企業が社会問題に取り組むことそのものが本音レベルで利益に直結する現代資本主義の構造と裏側を読み解く、オリジナルかつユニークな論考。

感想・レビュー・書評

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  • 『「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす』書評 - 内田樹の研究室
    http://blog.tatsuru.com/2023/05/10_0940.html

    WOKE CAPITALISM 「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす | 東洋経済STORE
    https://str.toyokeizai.net/books/9784492444740/

  • ●ウォーク。目を覚ます。1960年代頃のアメリカで黒人たちの間でよく使われたスラング。日本で言う「意識高い系」。近年あまり良くない意味や冷やかしの意味を込めて使われる言葉になっている。エセ進歩主義者を非難する言葉として。
    ● Amazonのジェフベゾス。気候変動対策のために100億ドルもの寄付をする。一方、この10年間で納めた法人税はその寄付額の3分の1程度。タックスヘイブンを使う租税回避を行っている。
    ●富裕層の金権政治は、公共の利益のためにある程度は犠牲にするか、自分の権益を維持できる範囲内でしか実現されない。富めるものの既得権益を守るための極めて狡猾な策略なのである。
    ●賃上げを回避するための政策。「女性の活躍」共働きをしないと生活ができない。「人生100年時代」高齢者を労働市場に供給「グローバル化」外国から低賃金労働者をを受け入れる。
    ●より進歩的な政治思想を抱く人々の多くは、企業は「啓蒙的資本主義」と言う新たな時代に足を踏み入れており、またそうあるべきだと言う見解を抱いている。

  • 昨今の企業主導SDGsとか、製品名を出さずに疾患啓発CMを出す製薬会社に胡散臭いものを感じる人は特に面白いはず

    Work(目覚めさせられた)を”意識高い系”とした訳者に拍手

    ふてぶてしいなとも必要悪だとも感じるところが難しいけど

  • 【感想】
     コンサル出身で経営に詳しい著者が資本主義と政治を語っている本。印象的なエピソードは多いが、実証やロジックは薄い。アイデア一本槍の本。
     でも実際売れてるので、「進歩的な政治を否定する」(337頁ほか)という主張は、国内外で共感を読んでいる。

     著者の言いたいことは理解できるし、突飛な意見だとも思わないので、他の方のレビューにもうなずけるところがある。
     ただ、これとは別に、日本語版にくっついている「巻頭解説」が開設のレベルに達しておらず、煽り文句ばかりで、書籍の評価にはマイナス要因にしかならない。何故執拗に中野剛志氏が専門外の解説役に採用されるのかと訝しんでいたが、『西洋の自死』と本書の編集者が同じだった。

    【書誌情報】
    『WOKE CAPITALISM――「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす』
    原題:Woke Capitalism: how corporate morality is sabotaging democracy(Bristol University Press, 2022)
    著者:Carl Rhodes
    訳者:庭田 よう子
    解説:中野 剛志
    発売:2023年4月14日
    ISBN:9784492444740
    サイズ:四六/並/360
    https://str.toyokeizai.net/books/9784492444740/

    【簡易目次】
    巻頭解説(中野剛志)

    第1章 ウォーク資本主義に関する問題
    第2章 企業ポピュリスト
    第3章 ウォークの意味の逆転
    第4章 資本主義、ウォークになる
    第5章 株主第一主義
    第6章 ウォークネスの皮を被った狼
    第7章 見た目が良くても環境に良いとは限らない
    第8章 CEOアクティビスト
    第9章 人種、スポーツ、ウォークネス
    第10章 人種的資本主義とウォーク資本主義
    第11章 ウォークな企業の最高のあり方
    第12章 右手で与える一方で
    第13章 ウォーク資本主義から目を覚ます

  • ウォーク資本主義的な振る舞いは、経済のアジェンダにおいては今まで通り企業が利益を得続けるための隠れ蓑であり、本来民主主義にて政治が担うべき役割までも進出しようとする危うさを孕む。

    企業は利潤だけを追求すべき
    企業は社会的な責任を果たすべき
    どちらでもなく、私たちが本来のウォークネス(人種や経済における不平等をきちんと見つめる知識を持ち、その解消のために戦う)を取り戻すべきなのだ。

  • 例えば最近の都知事選挙選でも裸のポスターに対して警察からの要請があったが、民主主義からすると選挙期間中の公権力の介入と言う事になりアウトとなる。感情論とは相容れないのが民主主義だったりする訳で、なかなか厄介なもんである。エシカルな企業に対しての方法論への批判で右派とは異なる。ただ世の中、やらない善よりやる偽善が耳障りが良いし意外に支持されてたりするのではないだろうか?SJWに関する批判は同意。怒りはパワーになるが他者に向けられた時、そこから建設的なモノが産まれるのだろうか?皆んな超資本主義はマズいと思い手探りで色々試してみてるのではないだろうか?

  • まず、三点でなければまともにバランスが取れないところを、二点にしてしまった現経済観念に問題があるのだと感じられた。
    また現在の正さはある意味で、「営業スマイル」「営業トーク」がどれだけ巧みであるかになってしまっていると。
    こう言ってごめんなさいだけど、かつてアメリカ製品はポンコツと思われていた時代があったが、アメリカ思想もそうだったのかもなと冷静になった。

  • 意識高い系には裏があり気をつけろとの主張に読めたが、なにぶん自分は政治的な所が弱い(興味がない)ので理解がついていけてないような気がする。何時になったら理解できるようになるのだろうか。

  • 「企業のウォーク(woke)には気を付けろ」という主張か。

    (個人のwokeは民主主義的にあって良いが)企業のwokeは損得勘定に則ったもので、民主主義に対する改善意識によるものとは限らないので、寧ろ民主主義には害を為す。

    企業のwokeは、会社の利益最大化を目指す活動手段である。主義主張への共感・賛同よりも「大衆の多くの支持を得られるか」か判断のポイント。
    なぜなら、wokeな企業のCEOの報酬は極端に高くて貧富の差を助長しており、その企業の多くは租税回避策により税金を納めていない。つまり、民主主義的に正直とは言えない行為を平然と行っていて、woke本来の問題意識に従った行動をする人物・組織と言えないからである。
    経済的に見るとwokeは新自由主義をベースにす企業が民衆に自社の商品を買わせるための手段の一つということ。

    一方で、右派保守主義者(グループ)や保守的宗教団体から見ると、wokeな行動は自分の価値観存在意義への攻撃となる。古くからの良き伝統(と本人は思っているモノ)のために反撃すべきであり、実際にSNSやメディアでヒステリックに意見を発信し、結果として民衆の分断を煽っている。
    従って、企業のwokeは社会全体への利益という観点からはマイナスになっている。
    また、保守党派が伸びても減税政策による恩恵を受けられるので、wokeな企業にとっては全然痛くない。

    企業のwokeな行動や情報発信から単純に良い事を言う会社と見なす事無く、その裏にある狙いを意識し全面的に信頼を安易に与えないように注意が必要である。

    個人的に感じていたSDGsに賛同する企業の胡散臭さも、企業のwokeの胡散臭さに通じていて、SDGsで儲ける気満々な姿勢が透けて見えるからと納得。
    「やらない善意より、やる偽善」という考え方もあるが‥

    30年程前の大学時代に『アメリカでは優秀で社会を良くしていこうという若者が政治家を目指さずに企業家(スタートアップから起業)を目指している』という話を聞いた事があるが、そんな元〝wokeな若者〟の罪滅し的な行動という一面もあるような気がしたが、そんな甘い考えは持っていないかと瞬時に自己否定。

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著者プロフィール

カール・ローズ
シドニー工科大学UTSビジネススクール学長兼組織論教授
シドニー工科大学組織論教授。主な研究テーマは、企業が市民や市民社会からその行動に対してどのように責任を問われ、また問われるべきかに関すること。この研究は、社会における企業の役割を批判的に問い直し、繁栄を皆で分かち合えるようにすることを目的とする。倫理、政治、経済について、主流派や独立系の新聞に定期的に寄稿している。著者の記事は、『ファスト・カンパニー』、『ビジネス・インサイダー』、『ガーディアン』、『コモン・ドリームズ』、『カンバセーション』などで読むことができる。近著にCEO Society: The Corporate Takeover of Everyday Life(Zed Books, 2018, with Peter Bloom)、Disturbing Business Ethics (Routledge, 2019)がある。著書はこれまで、中国語、オランダ語、ハンガリー語、イタリア語、韓国語、ポーランド語、スペイン語、トルコ語に翻訳されている。

「2023年 『WOKE CAPITALISM 「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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