マクドナルド 失敗の本質: 賞味期限切れのビジネスモデル

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  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492502617

作品紹介・あらすじ

ぐらつく、外食の雄・マクドナルド。
10年以上にわたってマクドナルドを追いかけてきた経営学者が、
藤田田・原田泳幸両氏の戦略をレビューするとともに業績不振の真の原因に迫る。

<おもな内容>
第1章 迷走するマクドナルド
第2章 マクドナルドはどう誕生し、世界最大の外食チェーンに成長したのか
第3章 マクドナルドのビジネスモデル
第4章 原田マクドナルドの経営改革
第5章 原田マクドナルドの戦略転換
第6章 悪夢の3年:客はどこへ消えたのか?
第7章 マクドナルドに未来はあるのか?

感想・レビュー・書評

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  • 2018/12 1冊目(2018年通算148冊目)。職場の面接対策として読んだ本。普段マクドナルドを定期的に利用している人間だが、ここ最近のマクドナルドはお客に「何を訴えかけたいのかよく分からない」状態だなと薄々感じてはいた。そういう意味でまだ立ち直ってはいないのかなとも思った。会社を作る要素はヒト・モノ・金だけど、特に重要なのは人なんだなとも本を読んで感じた。会社が儲かり、お客様がお店を利用して喜び、働いている従業員が働く意欲にあふれる。そんなWin-winな関係を作るのが会社の理想なのかなと思う。

  • マクドナルド 失敗の本質
    賞味期限切れのビジネスモデル

    著者 小川孔輔
    束洋経済新報社
    2015年2月12日発行

    ビジネス書の類はつまらないものが多く、読んでいる時は興味をそそられても、読み終わると何も残らないものがほとんど。あることで成功した経営者が他の企業の成功や失敗を自分なりに分析したり、ユダヤ人はだからえらいんだみたいな話をしたり。

    この本もタイトルだけ見るとそんな本に見えるが、法政大学経営大学院教授でマーケティングの専門家である著者が、マクドナルドがなぜいまピンチなのか、そして未来はあるかについて分析している。
    ご存じのように、日本マクドナルドは2014年12月期、上場以来初の赤字で最終損益は218億円、今年は380億円の赤字が見込まれている。そして、米国マクドナルドもまたピンチで、著者の予想では2015年暮れにも深刻な経営危機を迎えそうだとのことである。

    さて、この本の前提は下記の通り。
    ・マクドナルドの現役関係者へのインタビューを意識的に行わなかった。
    ・執筆のための情報は、一般に公開されている資料とデータに限定。
    ・マクドナルドに関して議論するときに取り上げられる「倫理的な問題」については、主要な論点としては、原則取り上げないことにした。

    著者の視点の秀逸さは、日本マクドナルドを創業した藤田田氏が社長だった最後の10年間、1993年~2002年と、その後、V字回復させてまたダメにした原田泳幸CEOの10年間、2004年~2013年を比較している点。売上グラフを見ると、見事に一致、同じ曲線を描いているのである。どんどんと売上が伸び、8年目にピークを迎え、9年目10年目ですとんと落ちてダメになっている。

    では、二人は同じ轍を踏んだかというとそうではない。むしろ対照的だったと分析している。マクドナルドは米国流のマニュアルがびしっと整い、それに厳格に従いながら経営しているように思うが、藤田氏は日本流を取り入れてきた。雇用にしても、フランチャイジー(FC)にしても。FCオーナーと契約を交わす際に、相手によって契約内容を変えていたことが知られているそうだ。一説によると、少なくとも67種類のパターンがあったとのこと。

    藤田氏は最後の10年、平日ハンバーガー65円などディスカウント路線と拡大路線で成功し、デフレの勝ち組と言われた。しかし、ディスカウントによるブランド力低下と2001年のBSEさわぎで息の根が止まってしまった。

    アップル出身の原田氏は対照的に米国流を推し進め、QSC(品質、サービス、清潔度)の回復を図ることからスタート。店舗改装してMFUという設備で作り置きせずに手早くハンバーガーが作れるようにし、品質の向上とともに作り置きによるロスを減らした。そして、直営をFCへと変えていった。マクドナルドのFCは、土地や店舗をマクドナルドが買ったり借りたりし、それをFCへ再リースする方式。賃料は歩合制でFC売上高の8.5%。これに、3%のロイヤルテイが上乗せされる。ハンバーガー事業と並び、このファイナンス事業が大きな柱で一番多い時には全体の80%だった直営店を次々にFC化していけば、その分、ぐっとファイナンス事業で収益を上げることができる。

    また、プロモーションと新製品投入で売上は伸びていった。
    しかし、緩やかな値上げでお値打ち感がなくなり、コンビニなど新たな敵の出現もあって急速に勢いをなくし、レジ前メニュー表の撤去や砂時計を使いビッグマックを出すのに1分以上かかったら無料券を配るという悪あがきも実らず、原田辞任。次のカサノバ氏が就任すると鶏肉期限切れ問題が起きて大きな赤字に。

    著者は藤田、原田両氏の失敗の原因を共通のものと分析する。
    ①マーケティングの失敗
    ②サービスのトライアングルの崩壊
    ③画期的なイノベーションの不足
    ①は値下げや新商品投入など小手先のマーケティングに注力しすぎた。②は企業、従業員、顧客の三者がつくるトライアングルが崩れてしまったということ。そして最も深刻な③は米国で創業してから約60年間、抜本的なイノベーションは起こらず、いまやマクドナルドのFCシステムは、古びたモデルになっている。それを目先の価格やプロモーション戦略で切り抜けようとした点。

    つまり、マクドナルドの商売は日本もアメリカも賞味期限切れだということだろう。
    マクドナルド、もしかしてビジネスとしてもう終わっているのかもしれない。マクドナルドに興味のない私などは、そういう分析を読んでも興味がわかない。もちろん、若い頃は行ったことがある。しかし、私にとって、マクドナルドそのものが何年も前に既に終わっている。


    ちょっと興味深い話。
    藤田田氏は銀座に1号店を出し、翌年には日商222万円を記録して売上高で世界新記録を達成。その後、順調にビジネスをのばして成功し、自らを「銀座のユダヤ商人」と豪語して「拝金主義者」と思われていた。
    ところが、成功して50才も過ぎているのに、新聞配達をしていた。「銀座界隈の100軒ほどに新聞配達をしているよ」とある人に打ち明けたという。実は、新聞配達で得た現金は、そのまま封を切らずに、知り合いの交通遺児に渡していたという。
    藤田氏は実は善人だったのではないか、とも言われている。

  • 過激なタイトルに惹かれて。
    生まれてこのかた、おそらく最も利用してきたファーストフードのマクドナルド。
    価格いじりまくったり、メニュー表撤去(これは大不評だった)したり迷走してたのは知っていたが、意外に日本マクドナルドの歴史がそこまで長くないことや、米国本社とは仕組みがことなっていたり、初代藤田社長と後を継いだ原田さんとでここまで変わるのかという変遷は初耳でとても面白かった。
    利益率改善、会社のスマート化のために直営店からFC店に大きく舵を取ったというのも客目線ではなかなか目に見えてこない情報で興味深い。

    いまのマクドナルドってどうなんだろう?
    著者に問いたい。

  • 前回2018年にたまたま気になって手に取った本。
    再読しました。

    不朽の名著「失敗の本質―日本軍の組織論的研究 」当時苦境の時期だったマクドナルドの状態を「失敗」とした上で、分析しています。

    原田氏本人が、マクドナルドがV字回復で絶好調の時期、
    「成功を決める順序の経営」として書籍化された裏で、
    自身の論文で「中長期的な課題に対する根本的な解決策」として以下5つの課題を克服しないとハンバーガー事業の将来は厳しい、と提示していた著者。

    ①為替レートの反転
    ②高齢化社会の到来
    ③食文化の和風回帰
    ④後継経営者の不在
    ⑤安価で良質な労働力の確保

    この本がでてからもだいぶたち、当時から、20年近く経過しました。
    この5つの課題を見直してみると、ほとんど、どれも「手の打ちようがない」問題に見えます。

    結局、「賞味期限切れチキンナゲット」と認識された問題は、そのナゲットは日本の中には入ってきておらず、サラダの製造日を張り替えた作業は特定店舗の従業員の問題。そしてその後あちこちで「こんな〇〇が混入!」とツイッターを騒がせた問題、どれもマクドナルドの「失敗の本質」とは関係なかった話のようです。
    しかし、現実に問題は起き、売り上げは激減し、現場も本部も混乱しました。

    藤田体制以後、どうやってマクドナルドは崩壊せずに済んだのか。

    あえて、原田氏の「失敗」とされていることが、もっとのち、退任後10年たったところでの致命的な崩壊を免れるために必然だった、と考えて読むこともできると思います。


    以下は、2018時点のレビュー。

    あるところまで成功した「プロ経営者」の筆頭だった原田氏。
    原田氏が否定し、徹底的に作り替えたマクドナルドの軌跡が、実は壊したはずの藤田体制での改革の軌跡と不思議と重なることがわかります。

    いまではあまり話題にのぼらない方になってしまいましたが、同じようなことは日本のあちこちの企業で行われており、今もその渦中なのではと思います。

    どこの地方都市にいっても、駅前、そして大規模ショッピングモールの中の風景は、ほとんど同じ顔ぶれになってしまいました。

    本当は、個店の、その地域ごとの違いが、はっきりあるはずです。
    そしてそのことをもっともよく知るのは、個店で働く人であるはずです。
    個店の状況をデータと数字に変換し、その上であくまでも中央から指示して結果をだそうとするやり方は、うまくいくようには思えません。
    でも、現実にはその方向で社会が動いているように感じます。
    それが、「企業戦略」である、と言われているようにも感じます。

    いつも対比されるモスバーガーが、この本の中では優位になっている時期でした。
    2018年時点では、モスが劣勢のようです。

    お互いの戦略が数年後にどういう結果を生むのか、考えるのにいい題材になります。

  • ・売上高の成長と短期的な利益を求めて、小手先のマーケティング施策に注力しすぎていたツケが、いま回ってきている
    ・藤田時代は、ディスカウントと急速な店舗拡大戦略によって、来店客が増加した。しかし、あまりにも忙しすぎて、クルーの表情から笑顔が消えてしまった。原田時代には、売上の低迷を脱しようと、メニュー表の撤去や「ENJOY!60秒サービス」を実施した。これが裏目に出て、クルーの疲弊とモチベーションの低下を招いた
    ・人々は、新鮮でおいしい食材と料理を求めている。ただし、フレンドリーなサービスは変わらずに。あまり高い値段は困るが、安全で健康に良いシズル感のあるものが食べたい!
    ・マクドナルドを壊してしまった責任は、行き過ぎた米国の株主資本主義の定見のなさと、短期的に収益を上げようとしたマネジメントの失策にある

  • 昔、街で初めて食べたマックで、ピクルスを知った。すっかり店も増え、僕の住む田舎のスーパーにも出店するようになった頃には、モスバーガーは食べても、マックは滅多に食べなくなっていた。その間CEOは、いろいろ戦略を練り、外資系らしく施策を実行し、成功と失敗を繰り返してきた。この本を読んだ後は、経営者の視点で、ハンバーガーを味わいたい。

  • 若い頃あれだけマックに通っていたのに、最近とんと行かなくなった。本書の分析結果と自分がマックから離れていった理由が概ね合致する。
    まずメニュー廃止に代表されるように明らかにサービスの質が低下した。テイクアウトで手提げ袋に入れないのはどういう了見か?紙袋をいくつも持って帰れるか!
    そして24h営業で店舗が汚くなった。
    トドメは客層が悪くなった。長居客で混んでて席が見つからなかったり、キティちゃんのサンダルを履いたジャージ姿のヤンキーの隣でガキが暴れまくってたりして、足が向かない店の代表格になった。これも無定見な価格政策のツケだろう。値下げと高価格商品の交互投入では顧客層は安定しない。結局どっちの顧客も離れてしまう。この意味で全面禁煙化は正しい施策だ。今どきタバコを吸うような顧客層には来てほしくないというメッセージを明確に伝えている。ターゲット顧客を定め、その顧客像に商品、価格、サービス水準、店舗デザイン、ブランドイメージを整合させれば、ある程度業績は戻ると思う。今まではこれらの一貫性が無さすぎた。

    本書を読んでその背景に米国式強欲経営による短期利益主義があることがよく理解できた。そう考えて見ると、業界こそ全く違うが自分の会社も未来は暗い。目に余る近視眼的経営で社員の士気もダダ下がり。こういう会社は最近増えてるんじゃないかな。

  • 長期的な視点を持たずに目先の利益とプロモーションばかりを見ていると失敗する。

  • 日本マックの生み&育ての親である藤田氏と、低迷していたマックを再度浮上させた原田氏。それぞれの時代の背景とおその時々に取った戦術を重ね合わせながら、マックの栄枯盛衰についてまとめられた一冊。

    両者ともに時代の流れに沿った施策を打ち、一時的に売上を大きく拡大させるも、無理な拡大に足元固めがついて行かず、結果時代の変化に振り落とされ、失墜する。

    藤田氏は価格訴求&急激な店舗拡大で売上倍増も、消費が頭打ちになると逆回転が始まり、ブランド価値を下げ、不採算店舗を増やしてしまった。

    原田氏は、直営からFCへの急激な転換によるESの急激なダウン、競争力の源泉であるQSCが崩れる。更に、24時間営業、マックカフェにより、低単価・低回転の招かざる客が大幅増、コアターゲットであるファミリー層の離反を招いてしまう。

    確かに「マックがなぜ凋落したか」は分かり易くかかれているが、後知恵で批評するだけでなく、どうすれば良かったのかを抽象的なコメントだけでなく、具体的に提言があると良かったな。

    いずれにせよ、我が家はマックのヘビーユーザーなので、更に良い企業になるよう応援してきたいと思います!

  • No.742

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著者プロフィール

法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科教授

「2022年 『青いりんごの物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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