デービッド・アトキンソン 新・観光立国論

  • 東洋経済新報社
4.10
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492502754

作品紹介・あらすじ

【「カンブリア宮殿」出演で話題沸騰!】

本書は、21世紀の「所得倍増計画」の提言です。

少子化が経済の足を引っ張る日本。
出生率は、すぐには上がりません。
移民政策は、なかなか受け入れられません。
ならば、外国人観光客をたくさん呼んで、
お金を落としてもらえばいいのです。

この国には、【世界有数の観光大国】になれる、潜在力があるのですから。

ですが、2014年の訪日客数は1300万人程度です。
日本ほどのポテンシャルをもつ国としては、驚くほど少ない数と言わざるをえません。

日本の潜在力と世界の観光産業の隆盛を考えれば、
2030年までに8200万人を招致することも、決して不可能ではありません。

それを成し遂げることで、日本経済には「第2の高度成長期」が訪れるのです。
本書では、そのための方策を、詳しく解説しましょう。

感想・レビュー・書評

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  • 長年、日本に在住するイギリス人アナリストの著者による、日本が「観光立国」になるための提言。事実を客観的に分析するという手法を使って、日本が「観光立国」になるためには何が足りなくて、何をすべきなのかを明らかにしている。
    経済成長の主要因が人口であるという前提や、観光振興には「あれもこれも」というフルメニューが重要という指摘など、一部に疑問に思う内容もあったが、著者の主張には同意するところが多かった。
    特に、これまで日本が強調してきた「おもてなし」への違和感や、「お金を落としてもらう」という発想が大切であり、そのためには滞在日数に着目し、「上客」を呼んでこなければならず、また、サービスに「差」をつけるべきであるという考え方には、強く共感した。現在、順調に日本へのインバウンドは増加しているが、より「観光立国」化を図るためには、著者の提言をどんどん取り入れるべきだと考える。

  • 日本における観光業界について現状、そして理想までの解決法などが著者視点から分かりやすく書かれてあった。
    欧米への需要開拓。
    観光資源4要素(気候、自然、食事、文化)の重要性
    大量消費型の観光業ではなく、質を大切にする。
    ゴールデンウィーク型の観光業のあり方の問題点。
    日本人のおもてなしの勘違い。
    これらが私が大事だと思ったポイントだ。

  • 海外に興味のあった僕が、観光(インバウンド)の仕事を選ぶことの背中を押した本。

  • 日本の観光資源をもっと海外にアピールすることと、外国人目線でのおもてなしの整備、観光資源を守るためのお金を払ってもらう仕組みを作る必要がある。

  • 新観光立国論 2107
    1.なぜ短期移民が必要なのか
    ・GDPを維持するため。人口減少による国の強靭性の低下は避けられない。どれだけ効率化や女性の社会進出を進めても成長は難しい。
    ・議論に感情を挟むことは許されない。
    ・来る目的になるものと副次的な物の線引き
    2.観光後進国ニッポン
    ・観光立国とは、観光に関わるコンテンツを生み出すことで経済を支える産業の一つとなっている国のこと。 その一つの基準としては、2014年のUNWTOによる報告で世界の観光産業が間接的及び誘発的な影響を含めて全世界のGDPの9%を占めているとしているため、この9%を満たしているかどうかとなる。もう一つは外国人から得た収益の割合。つまり国際観光客到着数。 
    ・観光立国になるためには「気候」「自然」「文化」「食事」の4要素を満たさなければならない。複数の観光を提供できる国が観光大国になれる。地域も同じ。
    ・日本は1平方kmあたりの動植物は世界一。
    ・文化は琴、三味線、神社、工芸など伝統文化とアニメ、ダンスなどの現代文化の二つに大きく分かれる。これをコンテンツ化する力を養いたい。
    ・マナー、交通、治安、気配りなど的外れな観光PRが多い。歴史や自然、食事などコンテンツを発信しなければならない。住民としての快適さは必ずしも動機にはならない。
    ・観光立国になるためには「も」という考え方が重要である。目的となるものが少ないとリピーターはつかない。
    4.おもてなしで観光立国にニーズとビジネス視点を
    ・おもてなしを押し出すのならば、「相手が何を考えて、何を求めているのか」を把握することに努力しなければならない。いつまでも供給者視点だと観光立国にはなれない。
    ・ゴールデンウィークに代表される「多くの人を捌く観光」から「お金を落とす客に来てもらう観光」に舵を切り替えなければならない。
    5.観光立国のためのマーケティングとロジスティックス
    ・ニーズを把握し、それを満たす施策を打ち出し、日本に来てもらうのが観光業の1番面白いところ。そのために観光資源を磨き、観光客が喜ぶことをやる。
    ・日本人は外国人を一括りにする傾向が強い。国、人種、性別などを細かくセグメンテーションして、ターゲティングを綿密に計画して、実行に移していく。
    ・先進国の観光収入の平均はGDPの1.8%。日本のGDPの1.8%は817.6億ドル。それを一人あたりの観光平均支出の1461ドルで割ると、2020年には5600万人の観光客に来てもらう必要がある。さらにUNWTOによると2013年から2030年までに世界の外国人観光客数は1.7倍に増えると予想されている。そのため、2030年には8200万人の予想が妥当な線。しかし、1番重要なポイントは経済効果。人数ではない。
    ・台湾人観光客は「テーマパーク」と「旅館に宿泊」に特に興味を持っている。韓国は「日本食と日本酒」、中国人は「ショッピング」。マーケティング的には、「ショッピング」と「食」を軸にアジア諸国へのPRはできている。しかしこれは情報発信したというよりもたまたまニーズに答えられたという側面の方が強い。一方、アメリカ人は自然や文化に関心を持っている人が多い。
    ・リーケージ問題は気にすべき。収入のうちどれだけ地方経済の収益につながっているのか。爆買いをしても輸入品ばかりでは地域に恩恵はもたらされない。
    ・相手の国の文化や国民性を理解した上で、観光資源に価値を見出し、お金を落としてもらうのが観光ビジネスの基本中の基本。
    ・花火大会などのイベントのロジスティックスは最悪。運行本数を増やしたり、回数を増やしたり、有料座席を設けた方が満足度は高い。
    6.観光立国のためのコンテンツ
    ・支払う金によってランク付する。ニセコは食事やナイトタイムなどの多様性によって人気が出た。
    ・コンテンツに優先順位をつけ、早急に整備しなければならないもの、必要不可欠なもの、中長期的に整備していく物に分ける。
    ・日本には多くの文化財があるが、それが全く活かされていない。日本の文化財は一つ一つの見た目が地味で海外に比べると規模は小さい。しかし、歴史の中での意味づけや彫刻美が理解できると魅力的なもの。そのため、展示と説明が不可欠。ガイドの多様性やその質が低い為に滞在時間が短かったり、ツーリストトラップになったりしているのが現状。学べる場所としての満足度を上げていく。
    →まずは日本人にその魅力を伝える。自国民ですらその価値を十分に理解できていない。
    ・文化財はその価値を伝えるだけでなく、その当時の着物文化や公家文化、武家文化、庶民の暮らしなど日本文化全体を発信するかもこともできる。
    ・文化財には、国民の財産である側面と観光客を呼ぶコンテンツの両面があることを忘れてはならない。コンテンツの質を高めるには予算がもっと必要であり、稼げる場所に変えていった方がいい。
    ■その他
    ・観光は学際的で総合力が必要とされ、現場での実践が最も重要視される分野。また、段階的で影響が出るまでに時間がかかり、ステップを踏んだ戦略が必要となる。人間力が試される分野でもあるので、目線を上げて学び続けることでいつか役立つ日が来る。

  • 昔、観光業界に身をおいていた者として「申し訳ございません」といいたくなってしまうような内容でした。ただ、業界にいた頃に感じていた違和感の多くが言葉になって表わされているのですっきりした部分もあります。

    僕がいた当時と比べて業界も変わりつつあるもののまだまだやることはある、と感じていたのですが、そもそも努力の方向が間違っていることを教えられました。

    永田町や霞ヶ関が主導する「クールジャパン」はニッチなマーケットにしか刺さらないでしょう。「おもてなし」を押し売りしても観光資源にならない。

    国全体で取り組まなくてはいけないこともあるけれで、それを言っていては絶望的なんで、まず自分が関われる、目に見えるエリアで変えられるところから変えていきたいと思います。
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  • 内容も興味深いが、理論の組み立て方と順序を踏んで展開していく手法が面白いと感じた。
    主題は人口が減少する日本で、経済の規模を保つ・または成長を続けるには、観光産業の拡大に大きな可能性がある、というもの。

    日本に来る観光客は1000万人を超えたが、世界の26番目。フランスとスペインは人口を超えている、アジアでもタイは3000万人、マレーシアで2500万人。

    日本は観光大国の4つの条件「気候」「自然」「文化」「食事」を満たしている。

    自画自賛、勘違い、的外れのアピールは逆効果。しっかりターゲットを絞り、ニーズを測り、対応することが必要。「治安」「交通機関の正確さ」「珍しいだけのもの」で観光客は来ない。

    「お金を落としてもらう」発想を。上客の呼び込み、滞在期間が長くなるような仕組み作り。コンテンツの多様性、文化財では説明と展示の工夫。

    その他
    ある程度の基礎ができると、GDPは人口の増減に大きく左右される。
    日本での戦後の人口増は、先進国にあまり例がない規模。
    高度経済成長期のGDP増加は、同時に人口増があったからこそ。人口減の時代に、同じことを実現するのは、相当難しい。
    シンガポールは女性が活躍していると感じるが、女性の就業率は日本と同じ65%。
    観光産業が、可能性のある成長分野だと理解したが、その拡大規模がGDPにどれだけ貢献できるか、数字が明確でない気がした。

  • 元々読みたかったけど、今回は撮影案件の提案資料作るためだったので、文字数も少ないし、1日で読了

    アトキンソンさん、過去の出版物に批判などがあったんだろうなーという感じで、日本人のプライドを傷付けて、言いたいことが伝わらない損をできるだけ排除するために、言い方や、発言のフォローに凄く気を使ってるし、ケアの言葉が変わってきてるなーという感じを受けました

    過去の著書とかと比べて、言いたいことは変わってないけど、説明の仕方やロジックの組み立ても少しずつ変えてきてる

    分かりやす過ぎる例では、「変われ!」じゃなくて、「調整しよう!」というスタンスですよね

    変な言葉ですが、気を使われてますねぇ、、、

    外国の人にここまで気を使わせる国が、おもてなしの国だそうですよ

    インバウンドがうんぬんとか言うためには一回読んだ方がいい

    元ゴールドマンサックスアナリストの意見を1620円で参考にできる良い本

    大胆にバクッと数字を掴むけど、その掴み方が気持ちよくて、その方法にスキはあるけど、これくらいの範囲で読み取る分には問題ないだろう、というののズカズカした感じとか、さすが脳が違います

  • 非常に説得力のある、また耳が痛いところが沢山書いてあるがその通りだから言い返しようがない。けれど2030年までに8700万人もの外国人旅行者が訪れるようになればそれはすごいことだと思う。そのために今は作り替えていく必要があるのと同時に日本人のメンタル、外国人に対する不寛容、アジア人に対する蔑視などは改善する必要がある。自分にとっても。だが少しずつ変わってきているように感じるし、またお金への常識と一緒で自分たちの世代が居なくなれば自然と受け入れられるように変わってくるのだろう。ただ自分も観光地を巡ってみて1番思うのはどメジャーな観光地でも、しょうもないお土産しか置いてなかったり美味しくないのに値段が高すぎるご飯、観光客の足元を見るような商売の仕方はいずれ自然と淘汰されるように思う。帯で養老先生が指摘しているように観光はそんなに甘くないと思う。

  • ソロモンブラザーズやゴールドマンサックスでアナリストを務めていただけあって、徹頭徹尾事実に基づいた分析と提言が行われている。本書のテーマは観光だが、これは観光に限らずどの分野でも必要なこと。観光業の成長余力もそのために必要なこともよく理解できた。これは、観光の分野でビジネスをしようとする人や、地域おこしに取り組んでいる人にはとても参考になることだと思う。「外国人観光客をひとくくりにせず、細かい属性やニーズまで見ているか」「おもてなしの押し売りに世界はうんざり」「親切かもしれないが説明が不十分」

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著者プロフィール

デービッド・アトキンソン
小西美術工藝社社長
1965年イギリス生まれ。日本在住33年。オックスフォード大学「日本学」専攻。裏千家茶名「宗真」拝受。
1992年ゴールドマン・サックス入社。金融調査室長として日本の不良債権の実態を暴くレポートを発表し、注目を集める。2006年に共同出資者となるが、マネーゲームを達観するに至り2007年に退社。2009年創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社、2011年同社会長兼社長に就任。2017年から日本政府観光局特別顧問、2020年から政府の「成長戦略会議」委員などを歴任。
『日本人の勝算』『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』(山本七平賞、不動産協会賞受賞)『新・生産性立国論』(いずれも東洋経済新報社)など著書多数。2016年に『財界』「経営者賞」、2017年に「日英協会賞」受賞。

「2023年 『給料の上げ方 日本人みんなで豊かになる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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