- Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492503270
作品紹介・あらすじ
スマートフォンカメラなどに搭載される「電子の目」、イメージセンサー。ソニーのイメージセンサー事業は現在シェアナンバーワンで、ソニーの収益面をがっちりと支えている。
しかしこの事業、実はソニー社内では「問題事業本部」「負け組」「お荷物集団」と言われ、事業所の中心も神奈川県厚木市の「辺境」にある。さらにストリンガーCEOは事業売却も検討していた――。
一体どのようにしてソニー半導体は幾多のピンチを乗り切り、ついには会社の基幹事業といわれるまでになったのか? 素人本部長とプロの技術者集団による痛快逆転ストーリー。
感想・レビュー・書評
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「日本の半導体各社が苦戦する中、ソニー(の半導体事業部)も負け組のお荷物集団として売却候補の集団だった。シェアもCMOSイメージセンサーとしてはゼロから始まった。収益が改善してからも、ソニーの携帯電話やカメラ部門の競合の味方かとトップに嫌な顔をされたこともあった――」。そんな状況下で、「なぜソニーだけがこの戦いに勝ち残り、今の地位を築けたのか」、「2019年度に、半導体部門の売上高は初めて1兆円を突破し…そのうち9割近くをイメージセンサーが占め…今や、半導体事業は全社利益の4分の1を生み出す稼ぎ頭」にまでなったのか。ソニーの半導体事業の舵取りを担った著者が、関係者の実名を挙げながら開発経緯を赤裸々に語った書。
CMOSイメージセンサー開発に大きく舵を切れたのは、半導体事業の売却額話が頓挫したためというから、まさに瓢箪から駒。事業売却話で「一度くじけた技術者たちのエネルギーが、ソニーを最後発から現在のシェアトップまで押し上げた要因の1つだった」。
そして、民生用としての開発が不可能と思われていた、キーテクノロジー「裏面照射型CMOSイメージセンサー」の開発に成功した裏には、ソニーならではの技術開発に寛容な社風があった。ソニーでは、周りから厳しい批判にさらされることはあっても、研究者のチャレンジを黙認してくれることが多い。「周囲も反対はするが潰しはしませんでした。ソニーの設立趣意書に「技術上の困難は寧ろ之を歓迎」とあるのを組織として受け継いでいて、10人程度のチャレンジは黙認されるケースが多い」、「自由に自分の価値観で作戦を立て、ある程度まで秘密裏に進めていく。それぞれが個性を発揮するから、とがった作戦も生まれてくる」のだという、この辺りがソニーの強さなのかな。
ソニースピリットを失ったと言われ続けたソニーだが、ソニーらしさ健在を確認できて良かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この本めっちゃ面白いんですけど。
半導体やイメージセンサーについて全く知らない素人なので、
技術のこと(とソニー内に役職)が全然分かりませんが、
それでも読んでいてソニーの半導体事業復活が垣間見れる良書です。
胸が熱くなってきます。
出井体制・ハワード体制でめちゃくちゃにされたソニーも
現場の技術者やマネジメント内には気骨のある人がいたんだな…と
改めてソニー内部の人事の厚みに驚かされます。
あくまで一方方向からの主張なので、
反対意見もあるのかもしれませんが、
それでも人間味溢れ、誠実な人たちによって
ソニーの半導体事業は復活したんだなと。。
若干、タイムラインが行ったり来たりで、
素人には理解が追い付かないことがあったり、
マンモス企業の役職が全然分からなかったりですが、
それでも読むのに値する面白いノンフィクションでした。
まさか最後の後半にミネベアの貝沼社長が出てくるとは…。
(中々いい話です。) -
知らない話が多くて面白かった。最近のソニーは確かに巨大なってしまい、井深さんや盛田さんの精神を受け継いでいるとは言い難いかもしれない。でも、その精神を受け継いでいる技術者が少なからずいることに希望が持てる。
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2022年1月22日読了。「イメージセンサー」を武器に世界で半導体の高いシェアを握るソニーの、その半導体部門の曲折を当事者が語る本。出井氏からストリンガーへのソニーCEO交替時期、自分も社会人として生きてきた時代の話なので非常にリアルに生々しく感じられ面白い。自分の父親が、自分には古文書としか思えないビジネス書を喜々として読んでいたのはこういう感覚だったのかなあ…と思ってみたりする。結局社長でも部門長でも、そのときに果敢な決断をしたり「名経営者」と褒めそやされたとしても、何年かたてば会社も外部環境もどうなるかわからず、時代がすぎると必ず評価は変わりうる、そんな中で人に気に入られるため・調和のために行動しても意味がなく、「俺はこれをやりたいからやった」という狂気に近い確信や動機がないと、人間はトップのポジションの重圧には耐えられないのではないかな…。
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成功していたCCDから後発のCMOSへシフトし躍進する過程は、いろいろな示唆があり、メーカーで働く次世代の人達の想像力、解像度を高めてくれると思う。出会えてよかった。
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今やイメージセンサーのグローバルトップシェアを誇り、日本に残された唯一の半導体デバイストップ企業とも言われる、SONY半導体部門の隆盛を描いた一冊。筆者は元SONY CSOの齋藤端氏。
CMOSイメージセンサーといえばSONY、というイメージでいたので、まさか最後発で参入し、特許も軒並み取られていたという状況からスタートしたとは想像していなかった(CCDではリーディングカンパニーだったようだが)。
そんな中から、裏面照射型(BSI)の執念深い開発と、通信技術の進展・スマホの普及とが組み合わさり、世界を席巻したというストーリーは純粋に興味深かった。
他方、やはりSONYも一介の大企業であり、社員は理不尽な人事や組織改変で翻弄されてきたのだなぁと思わされもした。本文にも書かれている通り、それを「ネアカ」に楽しめるメンバーに恵まれていることが、会社と社員が成長し、また楽しんで仕事をしていくために非常に重要なのだろう。 -
イノベーションを起こし起こし続けるにはネアカポジティブでないと。外からダメソニーと言われても社内がそういった雰囲気なら跳ね返せる。
ソニー設立趣意書「技術上の困難は寧ろ之を歓迎」 「真面目なる技術者の技能を最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」の精神が通底してるから強い、いい会社なんだろうな
実名で少しディスられ気味の人もいるが大丈夫なのか気になった -
2000年代ソニー終わったと言われてた時期に色々な記事や本を読みました。OBや去っていった人の本。SOBAの会つーのも知りました。
そんな時代を生き延び、半導体事業を大きく育てた方の本。
いちばん興味深かったのは、Googleと提携してGoogle TVを作ることになった契機などが書かれていたところ。
そーだったのかぁと読みました。
ほかにも実際のビジネスの様子が細かく書かれていて、なんか元気出る本でした。