アメリカモデルの終焉

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492532539

作品紹介・あらすじ

受難の就職氷河期世代や格差問題等、全ての元凶はここにあった!成果主義、ホワイトカラー・エグゼンプション、解雇条件の緩和…米国に追従した改革の欺瞞を暴く。

感想・レビュー・書評

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  • 【要約】


    【ノート】
    ・amazonでたまたま「貧困大国アメリカ」つながりで出てきた。批判本に対して、本書の中ではどのような論議が展開されているのかが興味深い、カモ。

  • サブプライムローン問題に端を発して多くの問題が顕在化してきているようです、先日もAIGを救済するために、7兆円(70億ドル)相当の税金投入が米国で決まったようです。9兆円の赤字を出した企業とはいえ、投入しなかった場合を考えると止むを得ない処置だったのかもしれません。

    10年後には答えが出ているかもしれませんが、アメリカのビジネスのやり方が間違っていたのかもしれません。この本では、アメリカ発のついこの間までは素晴らしいとされていた成果主義や、誤解を招いていたホワイトカラー・エグゼンプションについての解説がなされていいます。日本の将来がどうあるべきかを考える上で、参考になった本でした。

    以下はためになったポイントです。

    ・アメリカモデルを日本へ導入するにあたって、その制度が機能するための前提(管理職の人事権、何度でもやり直しのきくGPAシステム)がほとんど無視されたことに、日本で失敗した原因がある(p18)

    ・アメリカ各州には厳格な最低賃金法があるが、サービス業はチップ収入の平均を含めて最低賃金をクリアしていれば良いということになっているので、実際の固定給は時給は3ドル程度(p24)

    ・アメリカで担当業務以外の人に依頼するより効率の良い方法としては、店長を呼ぶしか方法は無い(p26)

    ・職務記述書の意味としては、「そこに書かれていることは、必ずしなくてはいけない」という意味と、「そこに書かれていないことは、やってはいけない」というコンセンサス(p31)

    ・アメリカの組織において、金銭と自尊心の絡む業績評価制度を可能にしているのは、管理職が人事権を掌握しているため(p32)

    ・アメリカで会社が何か教育するということは極めて少なく、例外として、インターン制度(原則無給)がある(p42)

    ・アメリカで若い人が「ホワイトカラー・エグゼンプション」を受け入れているのは、単に、その若い人が「エグゼンプト(管理職)」だから(p66)

    ・アメリカの労働法における管理職とは、「二人以上の部下に関する、採用権限を含む管理監督」を行っているかがポイント、基幹事務職の場合は二人以上の管理は除外となるが、認定される人は限定(弁護士、CPA、MBA有資格者等)(p68)

    ・日本で現在検討されているエグゼンプション制度と、アメリカの制度は全く異なる、アメリカでは残業のつかない人には、成果を求める代わりに裁量権を与えるのが慣行である(p106)

    ・どうして日本で大卒の必要性があるかは、一部の国家試験の例外はあるが、大学受験の結果のみが唯一の基礎能力を示す指標であり、高校や大学の成績はバラツキが多い(p122)

    ・日本企業が新卒一括採用をやめないのは、年功序列という強固なシステムが残っていて、これが給与体系・昇進にリンクしているから(p124)

    ・アメリカでの人材派遣において、派遣労働の給与水準と、直接雇用のそれは、同じである(p143)

    ・日本税法により、派遣社員は従業員ではないので、社員食堂での食事代を補助することは、接待交際費として認識される(p149)

    ・アメリカの食品業界では、立ち上げ時期の品質に比べて、利益を稼ぐ時期の品質は落とすのが通例、アメリカではマーケットシェア獲得のために投下するカネ(設備投資だけでなく、広告宣伝費)は、大半は「費用」ではなく、「資産」計上できる、その資産を償却することができる(p173)

    ・東日本はとんかつ文化、関西は串かつ文化、広島圏はお好み焼き文化であり、それぞれの食文化に根付いた形でソース文化もことなる(p181)

    ・2008年10月に国際金融危機が表面化すると、欧米金融機関では、「時価ではなく、簿価で処理したい」という声が出てきた、日本に外圧をかけてきた80~90年代の欧米の本音は、含み益を見せてほしかったから(p197)

    ・明治維新は、独仏が普仏戦争、アメリカが南北戦争、英露がクリミア戦争をしていた絶妙のタイミングで行われたことに成功の原因がある(p243)


  •  新卒一括採用・終身雇用という日本の
     独自システムを維持しながら、雇用の
     流動化を計ることはやはり無理がある

     最終的に教育改革で話をまとめている
     点が、若干安易かつ無理っぽい。

  • 府立にもあり

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大学大学院(修士)卒。 著書に『911 セプテンバーイレブンス』『メジャーリーグの愛され方』『「関係の空気」「場の空気」』『アメリカは本当に「貧困大国」なのか?』『チェンジはどこへ消えたか~オーラをなくしたオバマの試練』。訳書に『チャター』がある。 最新作は『場違いな人~「空気」と「目線」に悩まないコミュニケーション』(大和書房)。村上龍のメルマガJMMに「USAレポート」を寄稿。ニューズウイーク日本版でコラム連載。NHKBS『クールジャパン』の準レギュラー。

「2016年 『民主党のアメリカ 共和党のアメリカ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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