ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (518ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492532706

感想・レビュー・書評

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  • 『気合と根性が大切だということはもちろん否定しません。会社にとって一番大切なことかもしれません。しかし、「大切にする」と「依存する」ではまるで違います。気合と根性に寄りかかったリーダーからは、戦略は出てきません。

    顧客は自社の言いなり、供給業者も頭を下げてくる、新規参入はありそうにもない、といった「ハワイの住人」にとっては、戦略はそれほど必要ありません。戦略とは、ある意味では、「北極の住人」の発想です。

    「最後はなんとかなる……」ではなく、むしろ「放っておいたら絶対なんともならない」というのが戦略的な思考です。』

    戦略を全社戦略と競争戦略とに分けて、競争戦略のみに焦点を当てた作品で、非常に勉強になった。

    「競争がある中で、いかにして他社よりも優れた収益を達成し、それを持続させるか、その基本的な手立てを示すものが競争戦略です」と分かりやすく定義し、その部分の説明に集中している。

    もちろん、シェア、成長、顧客満足、従業員満足、社会貢献、株価も重要であるが、それらすべても結局は「長期にわたって持続可能な利益」に収れんされると、論点もシンプル。

    確かに項目の羅列で覚えられない戦略と違い、ストーリーのある戦略は面白く、読んでてなるほどと思う。

    ためになる作品だったな〜。今回の研修の課題図書は当たりだな。

  • 事業戦略についての書籍。(全社戦略ではない。)
    事例が豊富に紹介されているため、500Pという厚いない様になっている。
    以下は個人的なメモ。

    法則はないが論理はある。法則は必ず成り立つもの。ただ、経営戦略は2割は論理で八割は非論理だから。

    ・戦略の本質は差別化と文脈依存
    この本で言うストーリーとは、個々の要素を結びつけ、戦略を説明すること。また戦略の流れを指す。

    アクションリストの列挙ではダメで、それを繋げなければならない。
    戦略に法則はあり得ない。差別化も他社がいて成り立つ、それは文脈依存だから。
    フレームワークのみの戦略、ベストプラクティスも文脈依存。時代や環境も文脈と言える。

    ・システム的な差別化は模倣困難
    なぜ?だけでなく、いつ?どこで?を含めるのもストーリーを考える上で重要。
    欧米組織は機能分化で、日本組織は価値分化。外部組織に提供する価値に重きを置く。

    ・競争戦略(特定事業)と全社戦略
    競争戦略のポイントは、対象範囲、目的、利益の源泉
    この本は競争戦略が対象。競争戦略で重要な指標は「長期に渡って持続可能な利益」。シェアだけ見ても利益が出ていなければ意味がない。

    利益の伸び代はどこの業界に身を置くかで決まる。
    業界評価はファイブフォース分析。
    競合、参入障壁、代替品、供給者と買い手

    ・差別化を行わなければ完全競争に陥り、利益は出ない。
    差別化には程度の違いと種類の違いがある。

    一つはStrategic Positioning つまり、選択と集中。程度の追求はOperational Effectiveness と呼ばれ、模倣容易
    ポーターの戦略論は、一貫してポジショニングの考え方が根底にある。SPがあってのOE。

    もう一つはOrganizational Capability
    組織内で差別化した能力を持つということ。 Resourced Based Viewの理論が該当。
    数多くある資源の中でFirm specificity なものが該当。そして模倣困難性の高いものでなければならない。それは結局、組織のルーティンである。例えばセブンイレブンの仮説検証型発注。

    模倣困難である理由は行為と利益の因果関係が不明であること、経路依存性(Path dependency)、つまり歴史的に構築されたもの、OCそのものが進化するということ。
    SP/OCのマトリックスを。時間軸も取り入れよう。初めはSP、時間をかけてOCを。

    ・戦略ストーリーの5C
    Competitive Advantage
    Concept
    Components
    Critical Core
    Consistency

    利益の決め手は価値が大きいこと、コストが少ないこと、ニッチであること。ニッチは成長を求めてはいけない。何故なら成長市場になると他社が参入してくるから。

    ストーリーの一貫性の中には強さ、太さ、長さ、robustness, scope, expand ability

    コンセプトは誰に、何を、何で、どのようにして、の順
    誰に好かれるか、嫌われるかを明確に

    ・クリティカルコアの条件
    他の様々な構成要素と同時に多くの繋がりを持っている。それは構成要素のもととなる要素。
    一見して非合理に見える。それは他社が真似しようと思わないから。部分的に非合理で、全体的に合理的であれば良い。

    ・どうして模倣されても競争優位は続くか?
    模倣すれば不合理状態に落ち入り、より優位の状態が強化される仕組みになっている。これら合理的な戦略ではなく、一見不合理な戦略のためである。また、戦略の一部だけを模倣しても、その他のパスで繋がっている要因を同時に満たさなければ、一部だけ肥大化してうまくいかなくなる。

  • ・以下の文章は『日本経済新聞』の記事からの引用です。ちょっと読んでみてください。
    「いよいよ日本経済は先の見えない時代に突入したという感がある。今こそ激動期だという認識が大切だ。これまでのやり方はもはや通用しない。過去の成功体験をいったん白紙に戻すという思い切った姿勢が経営者に求められる。」
    そのとおり、とうなずく人も多いと思います。ただ、この記事は昭和も昭和、私が生まれた1964年9月の『日本経済新聞』からの引用なのです。昔の新聞をめくってみれば明らかなのですが、この数十年間、新聞紙上で「激動期」でなかったときはついぞありません。

    ・私はこの種の法則戦略論の有用性を疑わしく思っています。なぜならば、第一に、そもそも戦略とは他社との違いを問題にしているからです。大量観察を通じて確認された規則性は、あくまでも平均的な傾向を示すものでしかありません。そこで提示された「法則」に従うということは、他社と同じ動きに乗るということであり、戦略にとっては自殺的といえます。

    ・戦略の実行にとって大切なのは、数字よりも筋の良いストーリーです。過去を問題にしている場合であれば、数字には厳然たる事実としての迫力があります。しかし、未来のこととなると、数字はある前提を置いたうえでの予測にすぎません。戦略は常に未来にかかわっています。だから、戦略には数字よりも筋が求められるのです。

    ・戦略とは、ある意味では「北極の住人」の発想です。「最後はなんとかなる…」ではなく、むしろ「放っておいたら絶対になんともならない」というのが戦略的な思考です。

    ・フェラーリにとって一番大切なことは何でしょうか。ニッチ企業が利益を獲得できる論理は無競争にしかありません。無競争状態を維持することが戦略のカギになります。そのために何ができるかといえば、要するに「売れるだけ売らない」ということです。売れそうになっても、我慢して売らない。積極的に注文を断る。絶対に成長をめざさない。

    ・「他社が実践している立派な経営手法はたくさんある。しかし、それにしても自分で考え、独自の経営を編み出したから強くなったのであって、それをまねしても会社として成長しない。だから私たちも自分で考えることにした。」―アルバック 中村久三

    ・「他社と決定的に異なるのは、アマゾンのビジネスの中核がモノを売るのではないということだ。われわれのビジネスの本質は人々の購買決断を助けることにある」―ジェフ・ベゾス

    ・全員に愛される必要は無い。この覚悟がコンセプトを考えるうえでの大原則です。誰に嫌われるべきかをはっきりさせると、その時点で確実に一部の顧客を失うことになります。しかし、全員に愛されなくてもかまわないということ、これが実はビジネスの特権なのです。行政による公的なサービスであれば、そうはいきません。

    ・顧客のことを知悉しなければコンセプトは生まれませんが、だからといって顧客の声をいくら聞いても、人間の本性を捉えたコンセプトにはなりません。顧客はそもそも「消費すること」「買うこと」にしか責任がないからです。責任のない人に過剰な期待を寄せるのは禁物です。

    ・開発の途中でさまざまなユーザー層から選んだモニターに試作品で遊んでもらうことはあるが、そのときも「このゲームのコンセプトはこういうもので、こういうところが面白くて…」というようにこちらからの説明は絶対にしない。いきなり遊ばせて、その姿を映像にとって、それを何度も見る。どの辺で楽しんでいるのか、つまらなそうにしていないか、途中でゲームを中断してコントローラーを置いてしまうとしたらどの辺か、自分たちが作品に込めた面白さの意図が伝わっているか、ひたすら「姿を見る」ことでコンセプトの効きをチェックする。

  • およそ1年前に、実施中のプロジェクトのヒントを求めて読んだ本。
    300ページ以上、しかも小さい文字で図表なしなので、非常に取っ付きにくいのだが、読み始めたら面白くてあっという間に読んでしまった。
    数年前にベストセラーになったのも納得。

    古典的な戦略論を学ぶこともできる上、著者の主張であるストーリーとしての競争戦略がどういうことであるか、事例を交えた紹介がある
    著書自身が自嘲気味に述べているが、様々な企業のとった戦略を事後に解説するのは易しく、実際に決めていくことは難しい。

    最初から意図した通りにうまくいった戦略は少なく、実行する中で別途繰り出していく創発戦略が必要という点は同意。このあたりはリーンスタートアップやグロースハックとも通ずる点がある。
    世界のマブチモーターも、標準化をせざるを得ない状況に追い込まれたからこそ、現在の状況に至っているのは興味深い。(逆に、そこまで苦境に追い込まれていないと標準化は上手く進まないとも言えるかも)

    コンセプトと、普通はないキラーパス。
    今後もこれらを意識してみよう。

  • 合理的な戦略を組み合わせたからといって、良い(長期利益につながる)戦略になるとは限らない。うーん。なるほど。最初は周りが理解してくれなくて大変だったという事例もあって、ストーリーを組み立てること、思いを持ち続けることの大切さを再認識した。

  • 「ストーリー」という言葉によって「顧客を惹き付ける魅力的な物語が商品のPRのために必要ってことでしょ?」と勘違いするとこの本の本質を見誤る。ポーター、コッターらが構築してきた既存の競争戦略に、組織マネジメントも包含して「一貫性」をもたらすための根幹として「ストーリー」を位置づけている。リーンマネジメントの根幹にも「ストーリー」がある。
    今後の競争戦略における新たな1ページを切り開き、そして普遍になっていく内容がある。素晴らしい一冊。

  • 優れた戦略の神髄には、思わず人に話したくなるような
    面白いストーリーがある。明確なコンセプトのもと、
    戦略を実現するための様々な要素が有機的につながりを
    持ち、ゴールに向かって全体が流れるように生き生きと
    動いていく。
    マーケSTP分析や組織能力としての暗黙性だけでなく
    一貫性・交互効果をもつ成功要因を含んだ戦略ストーリー
    を持つ企業が高次の競争優位性をもつ。
    ユニークなのは、更に高いレベルの競争優位を築く企業
    は、その戦略ストーリーの中に、一見、非合理に思える要素
    が内在している、と著者が指摘している点です。
    常識としては部分的に非合理に見えるからこそ、他社は
    それを模倣しようとしない。でも、最高位の競争優位性を
    有する企業は、部分的に非合理に見えるその要素が、他の
    要素との相互作用を通じて、ストーリー全体での合理性に
    転化させている。そうした「目から鱗」のキラーパスを
    戦略ストーリーに内在しているが故に、その企業は最高の
    優位性を築く事ができる、という分析です。
    うーん、なるほど、と唸りました。

    具体的に、様々なファンンタジスタな経営事例が紹介されて
    います。とてもワクワクしながら読みました。作者の
    分析も大変説得力のある内容で、とても学びが多かった
    です。
    ストーリーを語る、というスタンスで意図的に口語的に
    ユーモアもちりばめながら書かれているので、ボリュームの
    ある本でしたが、とても楽しく読むことができました。

    経営戦略に興味がある方にはお勧めです。

  • 企業がその存続のために求められているものとして、第一に利潤を追求することがあげられます。そのためには自分たちの製品やサービスを売らなければならず、競合製品との差別化を図ることになりますが、そこで出てくるのが「戦略」ということになります。
    著者は経営学者であり、経営の現場に生きる人ではありませんが、学者としての経営理論が実地で生きるものではないと述べています。それはある企業の経営戦略が成功していても、同じ方法を理論化してどこでも真似できるものにはできない、ということを「知っている」からでしょう。
    なぜ真似できないか、という理由として、本書タイトルともなっている「ストーリーとして」競争戦略ができているから、ということがあげられます。逆の視点から見ると、理論化された競争戦略はそのエッセンスだけを抜き出した静止画のようなもので、全ての戦略が1つのゴールに向けて動き出すための、つながりや時間軸を欠いたものとなってしまうからです。

    競争戦略として、マブチモーター、アマゾン、ガリバーインターナショナルなどの成功事例と、いくつかの失敗事例が取り上げられています。成功事例に共通しているのは、戦略のコアが明確だったことと、ある部分だけ取り上げてみると、あえて不利になることをやっているように見える(実際には戦略のコアを実現するために必要なことをしているだけ)ため、他者が真似しなかったことであると述べられています。
    一例を挙げると、マブチモーターの場合、戦略のコアとなるのはコストの削減であり、そのためにモーターの形状を製品似合わせてカスタマイズするのではなく、標準化した形状のモーターを納入して製品をそれに合わせさせていました。このことは業界の非常識であり、誰もが不可能だと考えていたのですが、品質とコストを両立させたことで受け入れられるようになってきました。その結果、多くの製品に同じモーターを使うため、モーター製造の稼働率が平準化される、在庫を管理しやすくなるなどのメリットが生じました。

    このような「筋のいい」戦略を作るのは、著者いわくセンスの問題ですし、誰もが一朝一夕に習得できるものではないのだろうと思います。多くの事例を見て、自分で失敗を繰り返して、次第にセンスが磨かれていくものでしょう。また、実際にはたまたま戦略が当たっただけで、後付けでストーリーを作ったというものもあるのかもしれません。
    それでもなお、成功した事例から、多くのことを学ぶ必要があります。美術品の真贋を見分けたり、審美眼を養ったりするのには、本物に多く触れる必要があるのと同様、多くの事例をケーススタディとして学ぶことで、どういう戦略がうまくいかないか、は見えてくるでしょう。必ず成功する方法はないとしても、成功の確率を高める方法として、本書を入り口に企業戦略を考えていくのは有効だと感じました。

  • 久しぶりのメガヒット!
    とにかくおもしろい。おすすめです。読みやすいから、分厚くてもギョッとしないで!
    身近なあの会社のあの戦略、そうかそういうことだったのか!納得納得!
    読み終わったあとは、自分で色々と考えてみたくなりますよ!自分だったら?自分の事業部門なら?自分の会社なら?

    とにかく収穫の多い作品です。ただの経営学の本じゃあないですよ!ただならぬ本です。
    繰り返しますが、おすすめです。

  • 読書家の人が結構読んでいる本。

    戦略は「分析」ではなく「ストーリー」だと言っている。

    大企業に対して年100件の受注を取るために、
    要望の高い機能を追加するのではなく、
    読んだ本を捨てられない人のためのインフラとして、
    買取専門の中古本取扱店を作ろうとか(ブックオフの話)。

    色々、たくさんヒントもあっていい本だと思うし、
    世の中に何かを提案したい人は、読むべき本だと思う。

    ただ、この人が言っているストーリーのようなことは、
    企業がサービスを作るときには考えていることだと思う。
    問題は、それが明確になっていなかったり、
    サービスが大きくなっていくにつれて、
    ぼやけてしまったり、ぶれたりすることだと思う。

    最初に考えたストーリーを、どうやって実現していくのかが、
    難しいのだろうなと思った。

    ちなみに、この後に読んだリーン・スタートアップに、
    その答えらしきものが載っていた気がする。

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    『ストーリーとしての競争戦略』への批判について思うことby筆者
    http://diamond.jp/articles/-/14387
    他の人の感想
    http://ameblo.jp/tommy-sore/entry-11228684773.html
    http://d.hatena.ne.jp/ubukatamasaya/20110320/1300620599

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著者プロフィール

一橋ビジネススクール教授。専攻は競争戦略。一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。一橋大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授などを経て、2010年から現職。著書に『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)、『経営センスの論理』(新潮新書)などがある。

「2018年 『世界を動かすイノベーターの条件 非常識に発想し、実現できるのはなぜか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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