ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)

著者 :
  • 東洋経済新報社
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本棚登録 : 5829
レビュー : 649
  • Amazon.co.jp ・本 (518ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492532706

感想・レビュー・書評

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    優れた戦略とは
    →戦略がストーリーになっているか
    →戦略全体に動きと流れがあるか
    →ストーリーは強くて太くて長いほど良い

    ストーリーの要素
    ・強さ→可能性の高さ
    ・太さ→構成要素間のつながりの数の多さ
    ・長さ→時間軸での発展性の高さ

    戦略思考を身につける上で最も大切なこと
    →戦略をつくる面白さを知ること

    戦略とは
    →持続的な利益を生み出すための基本方策
    →企業の利益水準は、業界の競争構造に左右される

    戦略ストーリーを組み立てる要素
    ・競争優位→持続的な利益を創出
    ・他社との違い→競争優位を出す
    ・一貫性→論理的に組み立て筋を通す
    ・コンセプト→誰に何を売っているか明確化
    ・クリティカルコア→一貫性の基盤となり、持続的な競争優位の源泉

    戦略ストーリーの組み立て方
    ・エンディングから考える
    ・普通の人々の需要を把握する
    ・悲観主義で論理を詰める
    ・ストーリーの順序にこだわる
    ・失敗を避けようとしない
    ・他社と違った良いことをやる
    ・抽象化で本質をつかむ

    コンセプトを構想する上で大切なこと
    →誰をどのように喜ばせるか
    =誰に嫌われるか

  • ”「優れた戦略とは思わず人に話したくなるような面白いストーリーだ」が楠木建さんのメッセージ。ストーリーが良い筋になるには、コンセプトとクリティカル・コア(キラーパス)が重要、との指摘に膝を打つ思いがした。数えきれないほどのページの端を折り、書き込みをした本書、いま関わっている事業の次の戦略を考えるシーンで大いに活用していきたい。

    <読書メモ>
    ・「ストーリー」(narrative story)という視点から、競争戦略と競争優位、その背後にある論理と思考様式、そうしたことごとの本質をじっくりお話してみようというのが、この本に込めた私の意図です。この本のメッセージを一言でいえば、優れた戦略とは思わず人に話したくなるような面白いストーリーだ、ということです。(p.ii)

    ★これでは「項目ごとのアクションリスト」にすぎません。そうした戦略の構成要素が、どのようにつながって、全体としてどのように動き、その結果、何が起こるのか。戦略全体の「動き」と「流れ」が、さっぱりわからないのです。戦略が「静止画」にとどまっているといってもよいでしょう。
     (略)
     優れた戦略は、これと正反対のところにあります。戦略を構成する要素がかみあって、全体としてゴールに向かって動いていくイメージが動画のように見えてくる。全体の動きと流れが生き生きと浮かび上がってくる。これが「ストーリーがある」ということです。(p.v)

    ・論理(logic)とは、「AならばBである」というように二つ以上の思考や現象をつなぐ理由づけ(reasoning)を指しています。ですから、論理はwhatやhowやwhenよりも、一義的にはwhyを問題にしています。一般的な定義でいえばこのとおりなのですが、経営や戦略を考えるという文脈では、論理とは「無意味」と「嘘」の間にあるものとして理解できます。(p.6)
     #無意味…自明のこと、嘘…「こうすれば必ず成功する!」法則

    ・実際に考え、決定し、行動するのはあくまでも皆さんです。本当の答えは皆さんの中にしかありません。しかし、新しい視界や視点を獲得すれば、背中を一押しされるようにアクションは自然と生まれるものです。この意味で「論理ほど実践的なものはない」と私は確信しています。逆にいえば、新しい実践へのきっかけを提供できない論理は、少なくとも実務家にとっては価値がありません。(p.11)

    ★「違いをつくって、つなげる」、一言でいうとこれが戦略の本質です。(p.13)
     #特に「つながり」が大切。つながり、組み合わさり、互いに作用する中で長期利益が実現されます。全体、綜合(シンセシス)

    ★個別の違いが因果論理で縦横につながったとき、戦略は「動画」になります。ストーリーとしての競争戦略は、動画レベルで他社との違いをつくろうという戦略思考です。(p.21)

    ★戦略の実行にとって大切なのは、数字よりも筋の良いストーリーです。(p.52)

    ・成熟した環境の下では、こうした派手な差別化の要素は探してもなかなか見つかりません。そこで、ストーリーという一つ上位のレベルに次数を繰り上げた差別化が求められるべきです。(p.58)

    ★しょせんビジネスなのです。戦争でもあるまいし、戦略は「嫌々考える」ものではありません。まずは自分で心底面白いと思える。思わず周囲の人々に話したくなる。戦略とは本来そうしなければ戦略いないのであるべきです。(p.65)

    ・競争戦略の考え方では、(勝ち負けとしてどれが最も大切かといえば)答えは?の利益です。もう少し詳しくいうと、「長期にわたって持続可能な利益」です。戦略論では SSP(Sustainable Superior Profit:持続可能な利益)といったりします。長期とは具体的に何年かと聞かれると困ってしまうのですが、少なくとも四半期の単位の瞬間風速的な利益ではなく、五年、10年と持続可能な利益を追求するというのがまっとうなゴールの置きどころです。(p.71)
     #その他の選択肢は、?シェア、?成長、?顧客満足、?従業員満足、?社会貢献、?株価(企業価値)

    ★シェフのレシピに注目するのがポジショニング(SP:Strategic Positioning)の戦略論です。これを、以下では SP の戦略と呼びます。厨房の中に注目するのが組織能力(OC:Organizational Capability)に注目した戦略で、これを OC の戦略と呼びます。(p.113)
     #SP と OC

    ・SPとは、競争上必要となるトレードオフを行うことにほかなりません。逆いいえば、トレードオフが存在しないのであれば、何も選択する必要はなくなり、ポジショニングも必要なくなります。しかし、その場合にはどんなに良いアイディアでも、すぐさま競争相手に模倣されてしまうでしょう。だからこそ、「何をやらないか」という選択が大切に成るのです。ポジショニングの戦略論の根底には、このシンプルな論理があります。(p.124-125)

    ★SPが「他社と違ったことをする」のに対して、OCは、「他社と違ったものを持つ」という考え方です。SP がシェフのレシピだとすれば、OCは厨房の中に注目する視点です。冷蔵庫の中にある素材とか料理人の腕前に違いの源泉を求めます。(p.125)
     #だから、OC はすぐには真似されにくい。

    ・同じ重量級PMといっても、欧米企業のPMは製品コンセプトの創造やマーケティングには十分な権限をもっていません。なぜかというと、欧米では分業が高度に進んでおり、コンセプトづくりやマーケティングはそれぞれの専門分野が担当するため、PMに権限を集中できないのです。(p.136)

    ・皆さんもご自分の会社の戦略の要素をリストアップしてみてください。それらは「戦略」である以上、何らかの「他社との違い」でなければなりません。一つひとつの項目を、ここでのイチロー選手の例にあるような SP と OC の連続軸の上にマッピングしてみてください。SP的なものもれば、OC的なものもあるはずです。(p.144)
     #★やってみよう!

    ・競争優位は SP と OC の組合せなのですが、業界が成熟するにつれて OC の占める部分が大きくなっていくのが一般的です。(p.151)

    ★戦略ストーリーの 5C (ストーリーを組み立てるときに柱となるもの) (p.173)
     ・競争優位(Competitive Advantage):ストーリーの「結」…利益創出の最終的な論理
     ※コンセプト(Concept):ストーリーの「起」…本質的な顧客価値の定義
     ・構成要素(Components):ストーリーの「承」…競合他社との「違い」。SPもしくはOC
     ※クリティカル・コア(Critical Core):ストーリーの「転」…独自性と一貫性の源泉となる中核的な構成要素
     ・一貫性(Consistency):ストーリーの評価基準…構成要素をつなぐ因果論理
     # Concept と Critical Core(=キラーパス)が重要。それぞれ、4章と5章で詳しく解説。

    ・フェラーリには需要よりも一台少ない数をつくるという絶対の社訓があるそうです。エンツォのときも、当初の計画段階で絶対確実な需要を400台と見込み、それから1を引いた399台が生産の上限とされました。
     もちろんこれはきわめて控えめな予測にもとづく数字で、実際の購入希望者は3000人にのぼりました。3000人の購入希望者は、まず10%の手付金を支払わなければなりません。エンツォは「普通のフェラーリ」よりもさらに特殊なスーパーカーで、日本円に換算して8000万円近くという新車価格がつけられました。フェラーリはこのお金を銀行に入れたうえで、これまでのフェラーリの使用経験とか、フェラーリクラブに入っているかとか、さまざまな条件をもとに時間をかけて実際に販売する顧客を399人選びます。こうして選ばれた幸運な人々が、ようやくフェラーリ・エンツォを手にすることができたわけです。(p.179)
     #なんという殿様商売!なんという希少価値感!!

    ・ベネッセを中心としたコミュニティ。世界で最もファン、シンパの多い会社をつくりたいというのが私の夢だ。企業が大きくなるということに関していうと、サービスをお客さまに提供して満足の対価をいただく。われわれの場合にはその満足をスポットでなく、ずっと顧客との関係性の中でいただき続けることができるような仕組みをつくろうとしている。(p.200)
     #ベネッセ 会長 福武總一郎さんが「継続ビジネス」について語った言葉。長い時間をかけて培われる顧客との関係性がもたらす付加価値にこそベネッセの競争優位と長期利益の源泉がある。

    ★赤ペン先生のグループが気の合う仲間が集う場になる二次的な機能があります。同じグループに所属する赤ペン先生は頻繁にフェイス・トゥー・フェイスのやり取りを持つことになります。自分の子どもについて相談し合ったり、一緒に買い物に行くといったように、仕事を離れた交流が自然と醸成されます。このことが赤ペン先生の定着率を高め、スキルの習熟を促進し、質の高い会員サービスをさらに強化するという成り行きです。このように、赤ペン先生を中心として、さまざまな構成要素が因果論理でつながっているというストーリーの太さが、ベネッセの通信教育事業の競争優位を確かなものにしているのです。
     #これ、とても興味深い戦略ストーリー。本屋でこういうことできないかな。

    ★ターンチームは評価・報酬のシステムとも連動しています。ターンチームのメンバーは、ターン時間で評価され、その成果がサラリーやボーナスにも反映されます。したがって、これは一種の成果主義的なシステムなのですが、個人ベースではなく、あくまでもチームベースの成果主義だということに注意が必要です。こうした評価・報酬のシステムがあれば、メンバーはますます助け合い、円滑にコミュニケーションをとりながら、ターン時間の短縮に取り組むでしょう。その結果、稼働率が上がり、低コストが期待できます。(p.212)
     #サウスウエスト航空の例。ターン時間が利益につながる KPI となっており、これをボーナスに直結させることができるのがチームのモチベーションにもつながる。こういう指標をうまくつくりだせないか? ★有効リード数、案件数、保守継続率、リピート購入率、ライセンス数……。

    ★サウスウエストのパスは、一つひとつがきわめて強い論理でつながっているといえます。ハブ空港を使わずに二次空港に特化すれば、離着陸当たりの空港使用料は確実に低減します。二次空港をポイント・トゥー・ポイントでつなげば、ターン時間は確かに短くなり、回転率は確かに増大し、これは確かに低コストに貢献するのです。「プロモーションに投資をすればブランド力が上がる」というような、「そうなったらいいな……」という漠然とした期待に寄りかかったパスは一つもありません。パスのつながりの背景にある論理が明快であり、きっちりと詰められています。論理的な蓋然性を持って一連のパスがつながっています。(p.214)
     #いまやろうとしている打ち手を、このようなパスの流れで説明できるか。単純な点ではないか???

    ・「ストーリーとしての競争戦略というのはあくまでも後知恵だ。(略)」
     そのとおりです。(略)
     しかし、それでも戦略はストーリーだというのが私の見解です。(p.218)
     #いさぎよい!

    ・いくつかの新しい要素が付け加えられたけれども、ビジネスを駆動するロジックは創業以来一貫している。その証拠に、社内では今でもベゾスの描いたオリジナルな絵、これを全くそのままの形で使っている。われわれのやっていること、やろうとしていることのすべてがこの一枚の絵に集約されている。(p.225)
     #アマゾンの戦略は、ジェフ・ベゾス氏がレストランの紙ナプキンに描いたとされる一枚の絵(p.42 図1.3 右)にあり。
     #顧客の経験→トラフィック→売り手(セラー)→セレクション→顧客の経験 のループが成長を呼び、低コスト構造→低価格→顧客の経験につながる

    ・ストーリーの一貫性の正体は、「何を」「いつ」「どのように」やるのかということよりも、「なぜ」打ち手が縦横につながるのかという論理にあります。要するに、論理が大切だいうことです。静止画を動画にするのは論理です。ストーリーの一貫性の正体も論理にあります。論理のないところにストーリーはつくれません。
     #p.229

    ★図3.10 戦略ストーリーの位置づけ
           業界の競争構造(Where,When)  → 持続的な利益
     SP(What)→ 戦略ストーリー → 競争優位 →
     OC(How)→  (Why)
     # Why が一義的な問題となる。

    ★コンセプトとは、その製品(サービス)の「本質的な顧客価値の定義」を意味しています。本質的な顧客価値を定義するとは、「本当のところ、誰に何を売っているのか」という問いに答えることです。競争優位はこちらが儲けるための内側の理屈です。顧客価値という外側の理屈が成り立たなければ、シュートは打てません。競争優位とコンセプトのツートップはあくまでもセットで考える必要があります。(p.238)
     #サッカーメタファー好きだなぁ。でも分かりやすい!

    ・本当のところ顧客が何にお金を払っているかというと、PCを使うことによって得られる何かなのです。「本当に売っているもの」を考えれば、同じPCメーカーであっても、デルとHPではコンセプトは異なります。アップルはもっと違うでしょう。(p.240)
     #★CCなら何だろう? 高い意識?教育効果?社員への信頼?顧客からの信用?安全?安心?言い訳?・・・

    ★ブックオフは「誰に」価値を提供しようとしているのでしょうか。中古品を安く便利に買おうとする人ではありません。いらないモノを捨てたくない人、「買って使って捨てる」というライフスタイルを格好悪いと思っている人、生活を切り詰めたり我慢するのではなく「欲しいとき」
    いらなくなったときに」賢い選択をすれば生活や心が豊かになるということを知っている人、こうした人々こそが価値提供の対象であると定義されました。(p.243)
     #これ意外! でも、言われてみればなるほど。CMのジングルも「本を売るならブックオフ♪」だったし。

    ・『サンロクマル』には売上の目標はあった。でも事業の目的がなかった。売上を達成する(広告の)件数が設定されると、その件数をただただ追っかけていた。なぜその件数が経営的に必要なのか?なぜその件数が読者に必要なのか?その件数を満たしたとき、読者はどんな行動を起こし、お店ではどんなことが起こり、街では何が起こるのか?これらのイメージが構成メンバーに語り伝えられていなかったのだ。実現したい世界観が明らかにされていなかったわけだ。それは言葉として、映像として、事業の構成メンバー全員のまぶたに焼きつけられていなければならないはずだった。目標があって目的がない。それは作業で会って仕事ではない。(p.250)
     #ホットペッパー前身のサンロクマル事業の失敗について、リクルートの平尾さんが語った弁。
     #→★同じ轍をふまないようにしよう。単に売上目標を語るのではなく、それを達成した時の世界を思い描き、言葉として動画として関係者で共有しよう。同じ轍を踏まないように。★

    ・久美子さんにとって、オフィス消耗品を買うとはこういう仕事です。文具店は「どうしても必要なときに、仕方なく行くところ」でした。アスクルのコンセプトは、久美子さんのような小規模事業所の消耗品の補充の最前線に入る人々の状況や気持ちや行動を見据え、彼らが絶対に喜ぶだろうという価値を構想したものです。(p.252)
     #アスクルの久美子さんのイメージ!

    ・私のゼミの学生がコンビニの本質的な顧客価値を実際にアルバイトをしながら探っていくという調査研究をしたことがありました。コンビニは「自分の部屋の延長」であり、このことがコンビニにユニークな消費を起こさせているというのが彼らの結論です。(p.255)
     #なるほど、これは新鮮! そして、そんな実践的なゼミにも感心!!

    ・こうした安直なコンセプトをごく初期の段階から否定し、ユニークなコンセプトで独自の戦略ストーリーを構想した数少ない企業の一つがアマゾン・ドット・コムです。創業経営者のジェフ・ベゾスさんは創業当初から「他社と決定的に異なるのは、アマゾンのビジネスの中核がモノを売るのではないということだ。われわれのビジネスの本質は人々の購買決断を助けることにある」と断言しています。このコンセプトを受けて、アマゾンは、レビューやレコメンデーションといった顧客の購買決断を助けるためのソフトウェアの開発に膨大に投資を続けました。顧客の行動パターンの分析技術やそれに基づいて個別化されたレコメンデーションを送る技術は着実に改良されていき、顧客が本やCDを見つけるのを助けるだけでなく、本やCDのほうが読者を発見するのも助ける、という双方向的な関係が生まれました。(p.257)
     #Eコマースは「自動販売機」というコンセプトへのアンチテーゼ。

    ・「Eコマースのポータル」というビジョンを掲げて参入した企業は数多くありました。しかし、問題はそこに至るまでの道筋です。顧客ベースを構築できなければ、ポータルのビジョンは絵に描いたモチにすぎません。楽天が凡百の企業と違ったのは、Eコマースについてのユニークなコンセプトがあり、これが筋の通った戦略ストーリーを切り拓いたということです。現在の楽天市場での取引の多くは、必ずしも右でお話したアナログでリレーション志向の購買ではないかもしれません。顧客ベースを確立してしまえば、強力なネットワーク外部性も期待できますし、さまざまな事業へと水平的に拡張していけます。しかし、これは出来上がった楽天市場を静止画的に見ているだけの話です。そこに至るまでの「動画」がきちんと描かれていたという点で、楽天は他社と決定的に違っていたのです。
     #「エンターテインメントとしてのショッピング」の楽しさを提供する、というねらいがあったから。だから店長の部屋、掲示板などが義務付けられた。

    ★コンセプトづくりにとって大切な3つのこと(p.264-279)
     1.すべてはコンセプトから始まる ⇒ 打ち手がすべてコンセプトの因果論理でつながる
     2.「誰に嫌われるか」をはっきりさせる ⇒ 全員に愛される必要はない。ターゲットを外れる顧客からはっきり嫌われるという覚悟
     3.「コンセプトは人間の本性を捉えるものでなくてはならない」 ⇒ 本当に必要とする人は誰か、どのように利用し、なぜ喜び、なぜ満足を感じるのか、何を不満に思い、どんな不便を感じているのか

    ★「戦略ストーリーの一貫性の基盤となり、持続的な競争優位の源泉となる中核的な構成要素」、これがクリティカル・コアの定義です。(p.295-296)
     第一の条件:他のさまざまな構成要素と同時に多くのつながりを持っている(=一石で何鳥にもなる打ち手)
     第二の条件:一見して非合理に見える (=競合他社が追随したがらない。模倣すると他社の戦略がズタズタになる)
     #「一見して非合理」が重要。そういうものが見いだせるかどうか。

    ・直営だからこそ、社員は第三の場所の実現に全力で取り組めるというわけです。
     見過ごしてしまいがなことですが、第三の場所にとって最も重要なのは、そこでコーヒーを飲んでいるお客さん自身が醸し出す雰囲気です。忙しいお客さんがせわしなくコーヒーを飲み、出たり入ったりワサワサしてしまえば、第三の場所はぶちこわしです。(p.314)
     #スターバックスのコンセプト「第三の場所」を支えるクリティカル・コア(=キラーパス)「直営方式」について。

    ・多くの直販業者は中間に介在する業者を排除する「中抜き」に強みを求めていました。直販営業であるにもかかわらず、中間にごく限定的な役割を担うだけのエージェントを介在させるということは、それ自体では「一見して非合理」です。しかしアスクルの戦略ストーリーでは、このエージェントの存在がキラーパスとして効いていました。(p.343)

    ・図5.4 競争優位の階層(p.357)

    ・戦略ストーリーの交互効果がもたらす競争優位をよくよく考えれば、競争優位のレベル3やレベル4になると、こうした防御の論理ではなく、むしろ「自滅の論理」とでもいうべき質の異なる論理が浮かび上がってきます。つまり、B社がA社の戦略を模倣しようとすることそれ自体がB社の戦略の有効性を低下させ、結果的にA社とB社の差異が増幅するという論理です。(p.362-363)

    ・ガリバーの戦略ストーリーの読解から得られるインプリケーション(p.417-)
     1.成長戦略は「内向き」に
       それまでその企業を動かしてきたストーリーにフィットしていなければならない。
       外的な機会に飛びつくだけの「外向き」の成長戦略は成功しない確率が大です。
     2.キラーパスを出す勇気
       キラーパスを繰り出すというんは、あえて「愚行」に手を出すということです。それが最終的にはストーリー全体の中で合理性の源泉になると頭で理解していても、戦略を実行する当の本人にとってもなかなかに厳しい話であります。
     3.「なぜ」を突き詰める
       自らのストーリーに論理的な確信を持てるまで、「なぜ」を突き詰めるべきです。

    ★戦略とは将来の世の中や環境が「こうなるだろう」(だからそれに適用しよう)という予測ではありません。自分たちが世の中を「こうしよう」という主体的な意図の表明です。(p.425)
     #いまの気持ち悪さはこれなんだな。「こうしよう」にまで高められていない。

    ★戦略ストーリーの「骨法10ヵ条」(p.429-)
     骨法その一 エンディングから考える ⇒ WTP(Willing To Pay:顧客が支払いたいと思う水準)を上げるか、コストを下げるか、無競争状態に持ち込むか。
      #★これに加えて、「顧客が動くストーリー」をどれだけ鮮明にイメージできるか。例えば…、毎日とんでもない数のメールをさばくビジネスパーソン。今日も帰りが遅くなり、気が付けばあと30分で終電。最後に残っているこのメールだけは送っておかないと…
     骨法そのニ 「普通の人々」の本性を直視する ⇒ 言われたら確実のそそられるけれども、言われるまでは誰も気づいていない
      #できるだけ価値中立的な言葉を使う。?業界ナンバーワン、?世界最高水準、○第三の場所、○買取専門
     骨法その三 悲観主義で論理を詰める
      #ホットペッパーのプチコン(プチコンサルティング。広告表現に絞ったコンサルティング。みなでやり方を相談)。一人屋台方式。
     骨法その四 物事が起こる順序にこだわる
     骨法その五 過去から未来を構想する
      戦略は長期的に考えなければいけない。当たり前の話です。しかし、自分が依拠するストーリーを理解していなければ、本当の意味での「長期」を考えることはできません。ストーリーは将来の機会を見つめるためのレンズです。
     骨法その六 失敗を避けようとしない
     骨法その七 「賢者の盲点」を衝く
      個別の構成要素の一段上にあるシンセシス(綜合)のレベルで戦略の宿命的なジレンマを解決する。ストーリーの戦略論の腕の見せ所はここにあります。
     骨法その八 競合他社に対してオープンに構える
      競争相手に対してオープンな構えを自然に取れる程度に自信を持てる
     骨法その九 抽象化で本質をつかむ
      ある企業の歴史や戦略についてじっくりと記述した本、優れた経営者の評伝・自伝。
      失敗した「愚策」を読むことも大切。ファクトの背後にある why を考えやすいため。
     骨法その十 思わず人に話したくなる話をする
      ★ストーリーの戦略論は、改めて戦略づくりの面白さに光を当てるものです。ストーリーを構想し、組み立てるということは、そもそも創造的で楽しい仕事のはずです。(略)戦略は「嫌々考える」ものではありません。まずは自分自身が面白くて仕方がない、これが絶対の条件です。

    ★戦略ストーリーが共有されていれば、少なくとも「明るく疲れる」ことができます。一人ひとりのメンバーが、今なぜこういう大変なことに取り組み、乗り越えなければいけないかというと、これをきちんとやっておくと、こういういいことが待っていて、その先にこういうことが達成できる可能性が広がるから……、という根拠を持って仕事ができるからです。(p.498)

    ・戦略ストーリーにとって切実なものとは何か。煎じ詰めれば、それは「自分以外の誰かのためになる」ということだと思います。直接的には顧客への価値の提供ですが、その向こうにはもっと大きな社会に対する「構え」なり「志」のようなものがあるはずです。(p.497)

    ★人間は多かれ少なかれ利己的な生き物です。誰もが自分が一番かわいい。しかし、その一方で人間はわりとよくできているもので、自分以外の誰かに必要とされたり、喜ばれたり、感謝されたり、そういう実感を得たときに、一番嬉しく、一番自分がかわいく思えるものです。それが人間の本性だと思います。(p.499)

    ・ストーリーとしての競争戦略について、長々と手前勝手な話を続けてきました。(略)
     私の感じた「切実さ」と「面白さ」が皆さんにも伝わり、ご自身の戦略ストーリーづくりにとって少しでも意味のある何かを汲み取っていただけたら、それに優る喜びはありません。(p.500)
     #面白かった! ありがとうございました!! > 楠木建さん

    <きっかけ>
     翻訳本かと思いきや、日本の著者。
     最近「ストーリー」がとても気になるので。”

  • 「鈍足だったら速く走るな」で紹介されていたので読んでみた。全体的に難しかったけど、所々、参考になった。

  • ビジネスのフレームワークとか、企業の成功事例を掻い摘んで、取り入れることは無意味。この著者の書籍は分かりやすい事例や、例え話を交えて解説してくれるのでページ数が多くてもすぐ読めてしまう。

  • 「見える化」よりも「話せる化」

    「機能」のお客さんは組織。その人の専門知識・技能はその人が所属する組織に提供されるものである。一方「価値」のお客さんは組織の内側にはいない。文字通り組織の外側にいる顧客。価値にコミットするということは、「こういうものをお客さんに提供したい」というアウトプットが仕事のよりどころになるということです。
    欧米では自分が組織に提供するインプット「機能」がそのまま仕事の定義になるのに対して、日本企業では組織が提供するアウトプット「価値」が人々のアイデンティティとなる傾向にある。

    「これから」の外的機会よりも、「これまで」の自社の戦略ストーリーと成長戦略とのフィットをよくよく考えることが大切です。

    エンディングから考える事。長期利益が目標である。

  • ともさん私物

  • 優れた競争戦略を構築してきた企業の活動を抽象化・言語化・図示化したいときに読む

  • 評判になっているし、著者の別の書籍から入ったので大きな期待をして読んだが、途中だれてしまって読みきるのが大変だった。長い、くどい。著者の思考に染めたいという意図を感じてしらけてしまった。コンパクトにまとめてあれば内容的には星5つ。

  • 【目次】
    1.戦略は「ストーリー」
    2.競争戦略の基本論理
    3.静止画から動画へ
    4.始まりはコンセプト
    5.「キラーパス」を組み込む
    6.戦略ストーリーを読解する
    7.戦略ストーリーの「骨法10カ条」

  • とにかくボリュームがあります。
    読み応え充分です。
    ストーリーの重要性がよくわかります

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著者プロフィール

一橋ビジネススクール教授。専攻は競争戦略。一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。一橋大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授などを経て、2010年から現職。著書に『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)、『経営センスの論理』(新潮新書)などがある。

「2018年 『世界を動かすイノベーターの条件 非常識に発想し、実現できるのはなぜか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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