ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (518ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492532706

感想・レビュー・書評

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  • ・以下の文章は『日本経済新聞』の記事からの引用です。ちょっと読んでみてください。
    「いよいよ日本経済は先の見えない時代に突入したという感がある。今こそ激動期だという認識が大切だ。これまでのやり方はもはや通用しない。過去の成功体験をいったん白紙に戻すという思い切った姿勢が経営者に求められる。」
    そのとおり、とうなずく人も多いと思います。ただ、この記事は昭和も昭和、私が生まれた1964年9月の『日本経済新聞』からの引用なのです。昔の新聞をめくってみれば明らかなのですが、この数十年間、新聞紙上で「激動期」でなかったときはついぞありません。

    ・私はこの種の法則戦略論の有用性を疑わしく思っています。なぜならば、第一に、そもそも戦略とは他社との違いを問題にしているからです。大量観察を通じて確認された規則性は、あくまでも平均的な傾向を示すものでしかありません。そこで提示された「法則」に従うということは、他社と同じ動きに乗るということであり、戦略にとっては自殺的といえます。

    ・戦略の実行にとって大切なのは、数字よりも筋の良いストーリーです。過去を問題にしている場合であれば、数字には厳然たる事実としての迫力があります。しかし、未来のこととなると、数字はある前提を置いたうえでの予測にすぎません。戦略は常に未来にかかわっています。だから、戦略には数字よりも筋が求められるのです。

    ・戦略とは、ある意味では「北極の住人」の発想です。「最後はなんとかなる…」ではなく、むしろ「放っておいたら絶対になんともならない」というのが戦略的な思考です。

    ・フェラーリにとって一番大切なことは何でしょうか。ニッチ企業が利益を獲得できる論理は無競争にしかありません。無競争状態を維持することが戦略のカギになります。そのために何ができるかといえば、要するに「売れるだけ売らない」ということです。売れそうになっても、我慢して売らない。積極的に注文を断る。絶対に成長をめざさない。

    ・「他社が実践している立派な経営手法はたくさんある。しかし、それにしても自分で考え、独自の経営を編み出したから強くなったのであって、それをまねしても会社として成長しない。だから私たちも自分で考えることにした。」―アルバック 中村久三

    ・「他社と決定的に異なるのは、アマゾンのビジネスの中核がモノを売るのではないということだ。われわれのビジネスの本質は人々の購買決断を助けることにある」―ジェフ・ベゾス

    ・全員に愛される必要は無い。この覚悟がコンセプトを考えるうえでの大原則です。誰に嫌われるべきかをはっきりさせると、その時点で確実に一部の顧客を失うことになります。しかし、全員に愛されなくてもかまわないということ、これが実はビジネスの特権なのです。行政による公的なサービスであれば、そうはいきません。

    ・顧客のことを知悉しなければコンセプトは生まれませんが、だからといって顧客の声をいくら聞いても、人間の本性を捉えたコンセプトにはなりません。顧客はそもそも「消費すること」「買うこと」にしか責任がないからです。責任のない人に過剰な期待を寄せるのは禁物です。

    ・開発の途中でさまざまなユーザー層から選んだモニターに試作品で遊んでもらうことはあるが、そのときも「このゲームのコンセプトはこういうもので、こういうところが面白くて…」というようにこちらからの説明は絶対にしない。いきなり遊ばせて、その姿を映像にとって、それを何度も見る。どの辺で楽しんでいるのか、つまらなそうにしていないか、途中でゲームを中断してコントローラーを置いてしまうとしたらどの辺か、自分たちが作品に込めた面白さの意図が伝わっているか、ひたすら「姿を見る」ことでコンセプトの効きをチェックする。

  • 本書の内容を要約すると、
    ・昨今の「戦略」本は個々のパーツを示すにとどまっていて、それを採用する側(企業側)も個々の要素ばかりにとらわれ、戦略全体が「動画」ではなく「静止画」になっている。
    ・「静止画」になる理由は、個々の要素をパッチワーク的にはり合わせただけだから。
    ・効果的な戦略とは、それについて話す人が楽しそうに話す戦略。具体的には、個別の打ち手がそれぞれ論理的因果関係でつながっており、全体をストーリーとして語ることができる戦略のこと。

    あと、全体的な話の流れでなく良いなと思ったのは、
    ・定石の戦術だとみんなが真似するから比較優位を生んだとしてもすぐに優位は低減するが、定石とは反する戦術をとると真似されにくい。その定石に反する戦術でも、戦略全体を見ればそれを採用する理由もうなずける、といえる戦略ほどいい戦略

    あと、いろんな企業のケースが出てるのが面白かったですね。
    サウスウエスト航空、ガリバー、GE、アスクル、アマゾン、しまむら、etc...

    経営学っぽい内容の本は初めて読んだが、これからもいろんなのを読みたいと思わせてくれた一冊。

  • 【気になった場所】

    優れた戦略とは
    →戦略がストーリーになっているか
    →戦略全体に動きと流れがあるか
    →ストーリーは強くて太くて長いほど良い

    ストーリーの要素
    ・強さ→可能性の高さ
    ・太さ→構成要素間のつながりの数の多さ
    ・長さ→時間軸での発展性の高さ

    戦略思考を身につける上で最も大切なこと
    →戦略をつくる面白さを知ること

    戦略とは
    →持続的な利益を生み出すための基本方策
    →企業の利益水準は、業界の競争構造に左右される

    戦略ストーリーを組み立てる要素
    ・競争優位→持続的な利益を創出
    ・他社との違い→競争優位を出す
    ・一貫性→論理的に組み立て筋を通す
    ・コンセプト→誰に何を売っているか明確化
    ・クリティカルコア→一貫性の基盤となり、持続的な競争優位の源泉

    戦略ストーリーの組み立て方
    ・エンディングから考える
    ・普通の人々の需要を把握する
    ・悲観主義で論理を詰める
    ・ストーリーの順序にこだわる
    ・失敗を避けようとしない
    ・他社と違った良いことをやる
    ・抽象化で本質をつかむ

    コンセプトを構想する上で大切なこと
    →誰をどのように喜ばせるか
    =誰に嫌われるか

  • 「鈍足だったら速く走るな」で紹介されていたので読んでみた。全体的に難しかったけど、所々、参考になった。

  • 評判になっているし、著者の別の書籍から入ったので大きな期待をして読んだが、途中だれてしまって読みきるのが大変だった。長い、くどい。著者の思考に染めたいという意図を感じてしらけてしまった。コンパクトにまとめてあれば内容的には星5つ。

  • 5年ほど前に勧められて読んで以来、超久しぶりに再読。
    かなり売れた本ではあるけど、僕的にはやはりいきなりの第1章の「ではない」の羅列について、妙な違和感を感じてならないんだよね。
    「テンプレートではない」ようなことを言っておきながら、ポーターのファイブフォースを持ち出したり、再後半の「骨法10か条」なる章を読んで「まさにこれってテンプレじゃんか!」と思わせたりw
    でも、サウスウエスト航空やらマブチモーターやら有名な事例を挙げての解説では「なるほどー」と思わせたりするので、全体としては良い読み物って感じだったね。

  • 戦略は話の面白さが大事という考え。様々な例が出てくるので読み物として面白い。
    気になった点
    ・本来は面白いストーリーであるはずの戦略が、このところ無味乾燥な「アクションリスト」「テンプレート」「ベストプラクティス」「ワンフレーズ」という静止画の羅列になってしまっているのではないか。面白く生き生きとした動画という戦略論の本来の姿を取り戻したい。
    ・戦略の良しあしはストーリーの良さ、話の面白さである。
    ・クリティカルパス・一見して不合理な事がストーリー全体として合理的

  • こなれた語り口の戦略論。部分部分はうなずける話がいっぱいでスイスイ読むのだが、全体を振り返ると、結局のところどんな「ストーリー」であったのだか戸惑う。経営論や戦略論自体があまり性に合わないせい?

    既存の戦略論を批判するのはわりとたやすい。バズワードを適当につなぎ合わせただけのものが雑誌やwebにゴロゴロしているし、自分の会社の経営計画も戦略と言うよりは気合と希望的観測と言い訳とアリバイのミックスだ。しかし、逆に筋のよい戦略を語るのはすごく難しい。まだ個別の戦略を後知恵で解説することはできよう。そこからエッセンスを抽象してきて説得力のあるメッセージにするのはすごく難しいのだと思う。

    個別のケースについては面白く読めた。あとは一般化のところがまだまだ腹に落ちない。

    ・サウスウエストやガリバーは、業界全体がある一方向に傾斜している時に逆張りしてニッチを作り出す感じ。

    ・業界の「常識」に埋もれないためにはロジックが大事と。

    ・アマゾンやマブチはリスクをとりきった度胸に感心する。

    ・SP(戦略的ポジショニング) 対 OC(組織能力)

    ・ガリバーは近年、小売率が少し高まっている。展示場も始めるようだし方向転換中か。SPで優位を作って、OCに移行していくように見える。

    ・静止画の戦略ではなく物事の順序、時間軸が大事というのはすこし新鮮に聞こえた。

    ・ところで経営学者の「コンセプト」ってナンだろう?

    ・こまかい話だが松井の例えはあんまり適切でないように思える。

  • 売れている本なので期待して読んだが、目から鱗って感じではないかな。でも一気に読めたのでストーリーとしては面白かった。

  • 筆者の主張は腹落ちしたが、いかんせん冗長過ぎるきらいがあり、500ページも必要なかったと思います。

著者プロフィール

一橋ビジネススクール教授。専攻は競争戦略。一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。一橋大学イノベーション研究センター助教授、ボッコーニ大学経営大学院(イタリア・ミラノ)客員教授などを経て、2010年から現職。著書に『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)、『経営センスの論理』(新潮新書)などがある。

「2018年 『世界を動かすイノベーターの条件 非常識に発想し、実現できるのはなぜか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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