ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492532706

作品紹介・あらすじ

戦略の神髄は、思わず人に話したくなるような面白いストーリーにある。多くの事例をもとに「ストーリー」という視点から究極の競争優位をもたらす論理を解明。

感想・レビュー・書評

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  • 今さらだが年末休みに再度通読。
    考え抜いた末の最後のスパイスとして「業界の常識から見れば不合理」な打ち手が全体の要となる、という論の立て方は秀逸。

    しかしこの本もやはり実務の指南書ではない。端的に言って、運転資金が回るのか、についての分析がないのでこれを読んでも事業が回るようにはならない。そこら辺は本書終盤で「撤退基準を定めよ」という形でさらっと触れるのみ。

    もちろん本書は「戦略」についての本なので、日々のオペレーションは経営管理の領域として別書を当たるべきだろう。
    本書の意義として、コンサルの綺麗なプレゼンよりもまずは考え抜こう、ストーリーを立てよう、というメッセージには大いに共感を覚える。
    同じコンテクストでの失敗論、撤退論も読んでみたい。

  • 題名と評価の高さから読んでみましたが、私には合わなかったです。
    以下のように、次から次へと様々な事例が羅列され、内容が薄いと感じてしまいました。

    ------------------------------------
    茶道→レストラン→松井証券→ 液晶モニター→松井秀喜選手
    ------------------------------------

    茶道の例では、
    「種類の違いを重視するのが『表千家』、程度の違いや組織能力が『裏千家』。組織能力の方が暗黙知なので真似されにくい。」と記載がされていましたが、
    具体的にどういうところか私にはわからず、消化不良で終わってしまいました。

  • 楠木建を知ったのはラジオ文化放送の早朝の番組で、週に1回ゲストととして出演していたとき。話が面白く魅力溢れる人。

    社会に左右されずに自分の考えに重きを置き、思い描いた人生のストーリーに忠実に生きる

    競争戦略の第一の本質は他者との違いをつくること。何をやり、何をやらないか、を決める。ひたすら回し続けていると、少しずつ勢いがついていき、やがて考えられないほど回転が速くなる。

    なぜを考えることを惜しんではいけません。抽象化は汎用的な知見を手に入れる可能性が高まる。抽象的な論理こそ実用的。

    よくないのは、情報を集めて調査して、面白いストーリーのネタが見つかるという発想。情報のインプットが多くなるほど、常識が強化する。ストーリーを書く知識は十分、まずは書いてみること。

    まずは自分の頭を使って、自分の言葉で、自分だけのストーリーをつくることが先決。自信を持てるだけのストーリーの原型をつくることが大切。ストーリーの原型ができてしまえば、振り回されることなく、試行錯誤を重ねながらストーリーがより強く、太く、長くなるように磨きかけることが大切。抽象化で本質をつかむ。

    自分で面白いと思えるストーリーをつくることに尽きるというのが私の意見。思わず人に伝えたくなる話。これが優れたストーリーです。逆にいえば、誰かに話したくてたまらなくなるようなストーリーでなければ、自分でも本当のところは面白いと思っていないわけ。話がとにかく面白い。ストーリーを構想し、組み立てるということは、そもそも創造的で楽しい仕事のはず。何よりも話している本人が面白がって話をしている。

    どんな情報に接するときでも、その背後にどういう論理があるのか、whyを考える癖をつけることが大切。簡単にアクセスできる情報には、肝心なwhyが欠落。アクションの背後にある論理は、あくまでも自分の頭で読解。ファクトを漠然と眺めるだけでは、木を見て森を見ず。

    戦略思考を豊かにするためには、歴史的方法が最も有効で過去に生まれたストーリーを数多く読み、背後にある論理を読解するということ。ファクトのつながりにまで踏み込んだストーリーを理解し、そこから戦略思考の考えとなる重要な論理をつかむ。

    具体的事象の背後にある論理を汲み取って、抽象化することが大切。具体的事象をいったん抽象化することによって、初めて汎用的な知識ベースができる。汎用的な論理であれば、それを自分の文脈で具体化することによって、ストーリーに応用できる。抽象化と具体化を往復することで、物事の本質が見えてくる。ここで大切なことは、思考の推進力はあくまでも抽象化のほうにあるということ。意識的に抽象化しなければ本質はつかめない。

    戦略は嫌々考えるものではありません。まず寝食を忘れてしまうほど心底面白いことであれば、いくらでもエネルギーを投入できます。努力が苦痛になりません。

  • 読みごたえがありましたが、非常に面白くスラスラ読み切れました。

    事業戦略策定と聞くと、MBAやコンサルが使うフレームワークや堅苦しいワードで難しく捉えられがちですが、手触り感のある言葉で分かり易く、本の題名通りストーリー立てて説明してありスッと腹に落ちました。

    著者の楠木さんが敢えて長く書かれているのに短く要約するのは気が引けますが、端的に纏めると、「事業戦略であろうが起承転結が大事。起はConcept(コンセプト)。承はComponents(構成要素)。転はCritical Core(クリティカル・コア)。結がCompetitive Advantage(競争優位)でそれらの要素をConsistency(一貫性をもって)繋いでいく(戦略策定の5C)。その一連の戦略ストーリーそのものが競合他社との競争力の源泉となる。5Cの中でもクリティカル・コアが重要で一見非合理に見える打ち手が全体の文脈の中で合理的に働く様なキラーパスとなる策を講じられれば、競合他社にとって模倣の動機はなくなり、むしろ意識的な回避を誘発し、更に強力な競争優位となる」という事と解釈しました。

    纏めるのが下手くそですが、上記内容が具体的な企業(スターバックス・サウスウェスト航空・マブチモーターやガリバーインターナショナル等)の戦略ストーリーを交えながら分かり易く説明されてます。

    間違いなく良書。おすすめです。

  • 競争戦略におけるストーリーの重要性について、
    丁寧に語られた良書です。

    ボリュームはそこそこありますが、
    本書で語られるストーリー自体がおもしろいということもあって、
    一気に読めました。



    最近、ストーリーが大事だ、物語が大事だ、
    と言われますが、競争戦略におけるストーリーの意義を、論理的に説明していて、単なる成功事例の紹介ではないのがよいです。



    本書を読むと、戦略なき経営がいかに多いかを考えさせられるのではないでしょうか。

    単なるポジショニングや、自社の強みに特化した経営ではなく、
    その根底にストーリーがあるか。



    最初から完璧なストーリーなんてありえませんが、
    ゴールから逆算して、いかにストーリーをつくりあげていったらよいか。
    そして、他社と違いをつくるために、どんなことに気をつけていったらよいか。
    優れたストーリーの構造とはどのようなものか。

    示唆に富みます。



    “なぜかといえば、戦略ストーリーの優劣の基準が「一貫性」にあるからです。一貫性こそが戦略ストーリーがもたらす持続的な競争優位の源泉です。先に競争優位とコンセプトを固め、一つひとつの構成要素が強い因果論理でエンディングにつながるようにしてあげれば、自然とストーリーがシンプルで骨太になり、一貫性が確保されます。”

  • 上司の推薦で読む

    優秀な戦略には一貫したコンセプトに立脚した他には真似のできない独自のストーリーがある。いろんな本のベストプラクティスを模倣することしかしてなかった自分は全然芸がないことに気づく笑

    仕事で上手く周りを納得させて巻き込むことができないのは、ワクワクするストーリーを描くことができていないからだということにも気づく。個別の取り組みが全体に与える影響をもっと分かりやすく伝える力が必要かも



  • ・ブラックスワンでいう「講釈の誤り」感。
     "評論家"が書いたビジネス本の限界を感じる。

    ・ケース紹介がほとんど、文書構成もわかりにくく総じて全部読みたいとは思えなかった。最後は各段落の先頭を適当に拾いながら流し読み。
    ・ケーススタディ多すぎ。



    ・コンサルティング職の人がこの本を取り上げる理由がわかる。ここに書いていることを実際のケースで再現すればそれっぽく仕事した感になるからな。

    ・ビジネスのような複雑な社会科学の分野には法則はないけど理論はある。
    ・優れた結果は複数の構成要素の組み合わせで後付け説明可能。(事前予測できるとは言っていない )
    ・戦略の本質は「違いを作って、繋がる」こと
    ・違いは「程度」(OC )の違い、「種類」(SP )の違い
     繋げるは構成要素同士の論理的、時系列的なつながり。
    ・企業のゴールは持続的な利益。
    ・優れた戦略にストーリーが付与されるのは後付け、細かく読むと当時の現場の試行錯誤が偶々その要素を生み出している。分別あるいじくり回しが大事。
    ・しかし、あらかじめストーリーの原型、もっというとざっくりとした方向性がないといけない。(後付けで説明できる構成要素とその論理関係はその原型に倣いがち ) 意思決定者が大事なのはこの最初の原型、持続的な利益をもたらす鍵の設定。

    「本当のところ、誰に何を打っているのか」

    -------
    無価値な主張は無意味か嘘
    はしにも棒にもかからないこと当たり前のことしか言わないビジネス本。再現性のない嘘を書き散らすビジネス本。

    これからは先の見えない、時代今までのやり方は通用しない、過去の成功体験を一旦白紙に戻す。これは50年以上前にも言われていたこと。

    優れた戦略に対する法則は無いけど理論は存在する。

    違いを作って、つなげる。これが戦略の本質らしい。
    違いとは差別化要因。つなげるとは複数の差別化要因の相互作用、因果理論。
    違いには2つの種類がある。赤と青のような種類の違い。10と100のような数量の違い。

    短絡的な因果論は筋の悪い話になりがちなのかもしれない。みんなが思いつく、みんなが実践できる、何か裏がある、何か壁がある。など。

    賽の河原→無駄な努力

    戦略ストーリーは時間展開を含んだ因果理論
    一般に言われるビジネスモデルは構成要素の空間的な配置形態に焦点を当てている

    "筋の良いストーリーを作り、それを組織に浸透させ、戦略の実行に関わる人々を鼓舞させる力は、リーダーシップの最重要の条件としてもっと注目されてしかるべきだというのが私の意見です。"

    競争戦略は会社名同士の比較では出てこない具体的な事業例えばパナソニックの液晶テレビとソニーの液晶テレビのような視点で初めて競争戦略が必要となる

    会社は唯一目指すべきものは持続的な利益。これ投資先を選ぶのでも全く同じだな

    製薬外車は五つ星業界。

    競争とは放っておいたら利益が出ない状況。何もしなくても給料が出る勤め人には競争がないのかもしれない

    経路依存性

    ターゲットを決めると言う事は何がターゲットではないかを決めることでもある


    一見すると非合理的なものが全体に合理的な結果をもたらすことがある。またそれが競争における各構成要素へのキラーパスになり得る

  • 読了。2度目。物事の考え方の基本に自分だけの面白いストーリー性をつくり実行していく事で世の中に価値を提供出来る、といった話。今後も少なくても1年に1回は読み返す事になるだろう1冊。話していてワクワクするようなストーリー、聞いていて続きが気になるストーリーを作り実行できたら圧倒的な成長を狙える。ウチの会社の皆さまも是非時間があったら読んでみてください。

  • 戦略とは、アクションリストではなくストーリーである。その構成要素一つ一つが交互的に作用し、全体としてのフィットが高まったものが本当に優れた戦略になる。

    経営戦略を「ストーリー」とする独特な視点から捉える楠木さんの名著。実例も豊富で読みやすい。
    経営学の知識が一通りあれば深く理解でき、より面白く読めると感じる。

  • 戦略をストーリーとして、面白く、長く、因果をもって語れるか。
    戦略、と呼んでいるもの、考えていることが、分析であったり、ただの目標値だったり、聞こえの良いバズワードだったり、他でしたことの寄せ集めだったり、そんなことになっていることを正し、ストーリーとして繋がりをもって話せるか?
    面白い本である。

  • 内容は悪くないが8割が具体例

    具体例から抽出したエッセンスを筆者なりに述べている本だから仕方ないのかも

    今後は経営者本人が書いた本や人間の本性に関する本辺りを読んでいきたいと思った
    それに気づかせてもらったというのはこの本の良いところ

  • 経営戦略系の本で評判の高かった本を一冊読もうと思って、手に取った本。
    結構、色々なところの研修課題図書にもなっているようです。
    とある経営戦略に詳しい講師がやたら「戦略を『動的』に捉えろ」と言っていて、
    今ひとつピンとこなったのですが、この本を読んでようやく腑に落ちました。

    戦略にはストーリーが必要だというストーリーは、なるほど説得力があり、
    久々に経営戦略の分野で話題になったビジネス書なだけあります。
    しかも、500ページもの分厚い書籍にもかかわらず、長さとテーマの重厚さを感じさせないストーリー性は流石としかしえません。
    それでも、個人にはやや冗長に感じられ、もう少しページ数を削れるでしょ、と突っ込みたくなりもします。
    また、ページ数の割には事例が少なく、500ページもあるなら、
    もう少し具体的な事例が豊富にあってほしい(その方が理解も深まるのに)という不満は残ります。
    著者の言うストーリー性のある戦略というのがそもそも少なくて、
    完璧な事例(かつ、ある程度リサーチの上オープンにできるもの)を探すのが難しいのかもしれません。
    また、事例の一つであるデルなどは、かつての競争優位を失いつつあるので、
    どこのストーリーが崩れたのかなどもっと深堀していけば、
    読者の理解がより深まったのではないかと思います。

    あれこれ書いたけど、初心者用の本ではないですが、
    経営戦略を学ぶには一度は通っておいた方が良い本かもしれません。

  • 今までのビジネス本の中で最高!!何度も読み直してる。

  • 面白かった、本当に勉強になった。楠木先生がこの本を書いた動機は、最近の企業の戦略について軽薄で表面的な情報が溢れすぎていて、思考停止状態になってないか?それじゃダメだよ、というお考えがあったのではないかと思います。

    楠木先生が伝えたかったことは、こういうことかなぁ?と考えたことを、まとめました。

    コンセプトを大事に。
    ポジショニングを考えて無競争のフィールドに立つことも大事だが、一見すると過当競争の分野でも勝つ企業もあるんだよ、OCが大事だぜ、トヨタやガリバーやスタバやセブンイレブンみたいにね。あ、OEと間違えるなよ。
    ただ、ニッチ企業はSPの無競争状態の確保も大事だ。
    ストーリーにはコンセプトが大事だ、なぜならストーリーには一貫性が大事だが、その一貫性を保つためにコンセプトが必要だ。
    ストーリーはサッカーとよく似ている。ストーリー(=パス)の矢印の強さ、太さ、長さが大事だ、それは因果関係を表している。
    でも優れたストーリーは、最初から完成されてるわけじゃない。トライ&エラーを繰り返し、コンセプトを大事にしながら、自分の頭で考え抜いて練り上げられていくもんだ。

    when、howも大事だが、whyが一番大事。誰に何をしたら喜んでもらえるのか、イメージしろよ。
    部分合理性と全体合理性もよく考えよう。
    部分非合理×全体非合理=ただの愚か者。
    部分合理×全体非合理=合理的な愚か者
    部分合理×全体合理=普通の賢者
    部分非合理×全体合理=賢者の盲点、これがキラーパスだ!
    ただ、他社の事例を学んだとして、それをそのまま導入しても成功するわけがない。他社の事例から学んだことを抽象化して、汎用的な知識として蓄えよう。そしてそれを活かしていけば、成功する確率は高まるぞ。
    最後に、ストーリーは面白くやろう。特にリーダーが面白がることが大事で、それを組織全体に戦略実行につなげるために伝達していこう、できればフェースtoフェースで。

    乱文で申し訳ないのですが、ソフト(すぎる?)に書くと、こんな感じだろうかと思いました。

  • ・ストーリーの戦略論とビジネスモデルの戦略論との違いは、ビジネスモデルが戦略の構成要素の空間的な配置形態に焦点を当てているのに対して、戦略ストーリーはうち手の時間的展開に注目しているということです。
    ・戦略ストーリーは、きわめて主体的な意思を問うものです。前提条件を正確に入力すれば自動的に正解が出てくるような環境決定的なものではないということです。
    ・競争戦略の第一の本質は「他社との違いを作ること」です。
    ・SP(strategic positioning)の戦略は、OE(operational effectioveness=程度問題の違い)の追求ではない。戦略とはdoing different thingsであり、doing things betterではない。
    ・OC厨房の中にある他社がカンタンにはまねできないもの。
    ・顧客が認知する品質と低コストとはトレードオフの関係にあるのが普通です。
    ・レシピ先行型の企業が優れた厨房を手に入れるよりも、厨房のOC先行型の企業がレシピを獲得する方が短期的に成果が出やすいと言えそうです。
    ・戦略ストーリーの5C ① 戦略優位(Competitive Advantage):ストーリーの結。利益創出の最終的な論理 ② コンセプト(Concept):ストーリーの起。本質的な顧客価値の定義。 ③ 構成要素(Components):ストーリーの承。他社競合との違い。SP(戦略的ポジショニング)もしくはOC(組織能力) ④ クリティカルコア(Critical Core):ストーリーの転。独自性と一貫性の厳選となる中核的な構成要素 ⑤ 一貫性(Consistency):ストーリーの評価基準。構成要素をつなぐ因果論理。
    ・ストーリーの流れを作る因果論理の「強さ」「太さ」「長さ」
    ・優れた戦略家は、機会や脅威を受けてある特定のアクションをとるときに、それがストーリー全体の文脈でどのような意味を持つのか、それを取り巻くほかの構成要素とどのように連動し、競争優位の構築や維持にとっ
    ・コンセプトとは「本当のところ、誰に何を売っているのか」という問いに答えることです。
    ・実際の消費行動と無関係な情報が多すぎると、ユーザー自身が情報のスクリーニングに無意味な手間をかけなければならなくなります。
    ・サンロクマルには売上の目標はあった。でも事業の目的がなかった。なぜその件数が経営的に必要なのか?なぜその件数が読者に必要なのか?その件数を満たしたとき、読者はどんな行動を起こし、お店ではどんなこと
    ・戦略ストーリーが動画である以上、その機転にある顧客価値も動画で構想されてなくてはなりません。
    ・アマゾンが他社と決定的に異なるのはアマゾンのビジネスの中核がモノを売るのではないということだ。我々のビジネスの本質は人々の購買決断を助けることにある。
    ・楽天:ウェブ上に商品を出して売ることがEコマースではない。インターネットは自動販売機ではない。もうあまり買いたいものがない豊かな時代の顧客に、エンターテインメントとしてのショッピングの楽しさを提供
    ・アナログなコミュニケーションを維持することによって、顧客の好みや要望を知るだけでなく、店そのものを「コミュニティ」にしていることがこの店舗の成功の背景にありました。
    ・「すべてはコンセプトから」ということは、裏を返せば、「すべてはコンセプトのために」ということでもあります。
    ・コンセプトの構想にとって八方美人は禁物だということです。
    ・人間の本性を見つめる。それは「マーケティング調査をして顧客のニーズを知りましょう」という話とはまるで異なります。顧客のことを知悉しなければコンセプトは生まれませんが、だからといって顧客の声をいくら
    ・競争相手が非合理だと考えるような要素をあえてストーリーの中に組み込む。持続的な競争優位の源泉。
    ・成長戦略は内向きに
    ・コンセプトは判断に迷ったり、行き詰まったときに、常に立ち戻ることができる何かでなくてはなりません。そこに立ち戻れば、迷いが解消し、決断に向けて背中を押してくれるのがコンセプトです。
    ・「言われたら確実にそそられるけれども、言われるまでは誰も気づいていない」これが最高のコンセプトです。
    ・ 物事が起こる順番にこだわる
    ・ストーリーは失敗を避けるためにあるのではありません。むしろ、きちんと失敗するためにあるようなものです。大切なことは、失敗を避けることではなく。「早く」「小さく」「はっきりと」失敗することです。
    ・「なぜ」の積み重ねは当事者の頭の中にしかない。情報のインプットが多くなるほど、常識が強化され、帰ってキラーパスの発想は貧困になるのかもしれません。
    ・「世のため人のため」はつまるところ「自分おため」ですし、本当に「自分のため」になることをしようとすれば、自然に「世のため人のため」になります

  • これまで私が読んだ戦略論の書籍とは明らかに一戦を画す良書。言い過ぎかもしれないが、様々な戦略論の書籍があるがそれらはいずれも、本書の言うストーリーとしての競争戦略を理解して初めて意味をなすものではないか。

    500頁というボリュームで読み応えがあるが、随所に事例が盛り込まれているため、著者の言わんとするストーリーとしての競争戦略の本質を理解することは難くなく、さらに、事例に対する著者の洞察の着眼点と時折織り交ぜられるユーモアが絶妙で読破することも苦にはならない。著者が本戦略の骨法に挙げている"思わず人に話したくなる話をする"を本書で体現しており尊敬に値する。

    また、最後のまとめは、ストーリーとしての戦略のキーファクターをおさらいとして淡々と述べるのかと思いきや、戦略というものの楽しさ、リーダーシップ論、しいては他への貢献(言い換えると仕事・事業の意義)にまで昇華させて結びとするところに、著者の学者としての知見・洞察の深さだけでなく、文筆家としての才を感じる。

  • 成功の法則などない。そこにあるのは論理。

    戦略とは1.差別化:個々の事象を個別に吟味し(部門や戦術含む)、2.綜合:それらを繋ぐこと。ベストプラクティスは論理の背景を軽視しすぎ。カテゴリーに分類して答えを出すのは安直(例:水平統合だからいい、垂直統合だからいい、など)。

    日本企業は機能分化しておらず、製品・顧客志向である場合が多いため、全社的に共有される「ストーリー」が重要になる(欧米はトップのみ)。

    戦略には、競争戦略(事業戦略)と全社戦略(組織戦略)がある。競争戦略の目的は「長期にわたって持続可能な利益」を上げること。なぜなら、利益を上げているならば、他の要員(シェア、顧客満足、株価など)もついてきているから。利益の源泉は、業界の競争構造と、戦略。目標設定は戦略ではない。バズワードを駆使することも違う(背後にあるロジックを見るべき)。

    差別化には種類の違い(ポジショニング)と程度の違い(組織能力:組織特殊性)がある。程度の違いはすぐに追いつかれるため、種類の違いを創造すべき。どこのポジションに位置するべきか。これには、「何をやらないか」を決めることが重要。

    程度の違いで模倣可能性を下げられるのは、物事のやり方(ルーティン)。これは、因果関係の不明確さ、導入経路依存性、ルーティン自身の進化。

    ポジショニングと組織内標準化は、前者が「何をやらないか」を志向している点で、相容れない場合が多くある。また、ポジショニング重視の経営は、悪くなるときは即座に悪化するため、対策が取りやすいというメリットがある。

    ストーリーは業界構造、ポジショニング、組織内標準化に続く4つ目の競争優位性。いわゆる綜合の部分。コンセプト(本質的な顧客価値)、構成要素(差別化。SPとOC)、クリティカル・コア(構成要素の中核)、競争優位、一貫性の5つから成る。

    まずは、ゴールである競争優位性から考える。利益とは、支払いたいと思う水準 - コスト。したがって、利益創出とは、前者を上げるか後者を下げるか、ニッチ市場で無競争状態を目指すか。3つ目だと成長は目指せない(競争が発生するから)。これらはトレードオフの関係になりがちなので、バッティングした際にどれを重視するか検討すべきである。

    一貫性は、ストーリーの強さ(因果関係の蓋然性の強さ。いかにそれを達成するか?に徹底的にこだわる)、太さ(構成要素間のつながりの数の多さ)、長さ(時間軸でのストーリーの拡張性なり発展性。特に好循環(結果が原因をつくる状態)と繰り返し(同種ストーリーが別の市場でも適用可能)のこと。これら3つがうまく機能しているのが「筋の良い」ストーリー。

    コンセプトとは、誰に何を売っているのか、ということ(どのように、ではない)。設定の際は、1.全てはコンセプトから始め、因果論理と繋げる、2.ターゲット顧客を明確にする(同時に切り捨てるターゲット顧客をも明確にする。3.人間の本性を捉える(肯定的な言葉でぼやけさせない。目先の新しい機会を追いかけることに終始してはいけない)

    クリティカル・コアとは中核的な構成要素のこと。1.他の様々な構成要素と同時に多くのつながりを持っており、2.一見して非合理に見える(ストーリーの中でないと機能しない)という2点が求められる。

    まとめると、競争優位の段階には、模倣可能性が高い順に・外部環境の追い風、・業界の競争構造、・SPもしくはOC、・戦略ストーリー、・クリティカル・コアの順。また、競争優位の防御の論理として、防御の論理(参入障壁)と自滅の論理(ストーリー)の2つがある。

    教訓1.(すぐに模倣される)市場機会を追い求めるのではなく、ストーリーに沿った成長戦略を考えよ、2.キラーパスを出す勇気、3.「なぜ」を突き詰める

    骨法1.エンディングから考える:競争優位→長期利益としての目標と、コンセプトとしての目的。後者をどれほど鮮明にイメージできるか。2.「普通の人々」を想定する、3.悲観主義で論理を詰める。コンセプトは楽観でもいい。シナジーという言葉に本当に相乗効果があるか注意、4.物事が起こる順序にこだわる、5.過去から未来を想像する。ストーリーとのフィットを重視する。汎用性が低いくらいでちょうどいい、6.失敗を避けようとしない。ストーリー内で失敗を定義し、撤退の用意もしておく。失敗がルール化されていることで、思い切って始められる、7.賢者の盲点を突く。問題の原因は控えておき、他の部分に転用できないか検討してみる、8.競合他社に対してオープンに構える。競争相手の行動に振り回されることなく、ストーリーに磨きをかける、9.抽象化で本質を掴む。情報の背後にある論理を考えてみる、10.思わず人に話したくなる話をする。ストーリーを全体で共有する。

  • 20190415
    成功するビジネス戦略に裏打ちされた論理の重要性について説いた本。単発的に解決策を提示するような新書の類ではなく、そもそも一面的ではないロジックの深さ、それを読解することの楽しさについても学べる作品である。
    戦略を立てる上で大事なのはストーリーである。そこには、目的である競争戦略がはっきりしており、それに向かってコンセプトが明確に立てられる。そうすれば、どのポジションを取るべきか・内部組織を作るべきかが自ずと決まり、打ち手の論理がつながってくる。しかも、他では真似できない文脈の中で生きてくるキラーパスを妙手として織り込むことでユニークな存在を維持できるというものである。
    なぜから始まる問題意識が一番大事であると理解した。そのなぜの深掘りが戦略を順序だったものにして、ダイナミックな流れ・論理が生まれてくる。
    そして、その思考が身につけば、ストーリーが面白ければ人に話したくなる。さらに論理を突き詰めるようになる。結果、思考の回転速度も上がる。軽率なアンロジカルな発言もなくなる。やはり、考えを深めることは面白いことなのである。

    //MEMO//
    ストーリーを語るためのロジックとは。
    薄っぺらいロジカルシンキングではなく、真に人に伝わる論理を学びたい。

    戦略
    ①違い
    ②つながり

    ストーリーが重要な理由
    ①ビジネスモデル
    ②表面的な短さを克服
    ③チームプレーに活力

    競争戦略とは
    ⑴競争戦略の範囲
    ①あるセクター自身の競争戦略
    ②全社戦略

    ⑵競争の目的

    ⑶利益の源泉
    ①競争構造=どこで利益を上げるか。
    ②競争戦略
    →①種類の戦略=Strategic Positioning →トレードオフ
    →②程度の戦略=Organization Capability →模倣の難しさ

    戦略ストーリーの5C
    ①Competitive Advantage 競争優位
    ②Concept コンセプト
    ③Components 構成要素
    ④Critical Core クリティカルコア
    ⑤Consistency 一貫性

    コンセプト
    ①シンセシス
    ②誰に嫌われるか
    ③人間本性を捉える

    クリティカルコア
    ①他の要素と繋がっている
    ②一見非合理に見える
    →排除の論理、自滅の論理

    骨法10条
    ①競争優位のゴールの策定
    ・払いたいと思わせるか
    ・コストを下げるか
    ・競争を避けるか
    ②人間本性の論理
    ③悲観主義=弱者の立場で論理を練る
    ④物事が起こる順序
    ⑤過去から未来
    ⑥失敗をストーリーに織り込む
    ⑦賢者の盲点をつく。部分的には非合理
    ⑧オープンな姿勢
    ⑨抽象化して本質を掴む
    ⑩話したくなるようなストーリーを作る

  • ストーリーが成立しない競争戦略は、良い戦略ではない。
    確かに、無理やりこじつけた戦略や、目的のない戦略はストーリーがない、または破綻していることが多い。
    戦略を見直す際には、「ストーリーとしてどうか」という視点で捉えると、客観的に見直せると気づいた。

    内容とは関係ないが、感想。
    「〜ではなく、〜だ。」という展開は、分かりやすいけれど多用しすぎると読んでいて疲れる。「〜ではなく」は控えめにした方が効果的であると感じた。

  • この本が無かったら経営学に興味を持たず日髙ゼミにも入っていなかったであろう。

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著者プロフィール

経営学者。一橋ビジネススクール特任教授。専攻は競争戦略。主な著書に『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』(東洋経済新報社)、『絶対悲観主義』(講談社)などがある。

「2023年 『すらすら読める新訳 フランクリン自伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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