• Amazon.co.jp ・本 (411ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492534083

作品紹介・あらすじ

世界のイノベーション研究の最重要理論、初の書籍化!

感想・レビュー・書評

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  •  日本では、イノベーションと言えば、クリステンセンが有名だが、世界的には本書の方が有名らしい。


    「両利きの経営」とは?
    ・知の探索:自身・自社の既存の認知の範囲を超えて、遠くに認知を広げていこうとする行為
    ・知の深化:自身・自社の持つ一定分野の知を継続して深堀りし、磨き込んでいく行為


     クリステンセンの著書『イノベーションのジレンマ』が1997年に出版されて以来、破壊の重要性やそのインパクトについて膨大な量の研究や論述がなされてきた。…
     その一方で、未解決のまま残されているのが、どのように企業がそれを実行できるか、あるいはすべきかという点だ。クリステンセンは著書で「組織は破壊的変化に直面すると、探索と深化は同時にできないので、探索にあたるサブユニットをスピンアウトしなくてはならない」と主張している。
     …
     それとは対照的に、私たちの研究やコンサルティングの経験からいうと、過去と未来とが断絶されていると、新規部門の足を引っ張って成功を阻み、往々にして身動きのとれない状態に追いやってしまう。…既存組織に活用すべき資産があるならば、探索を担当する組織にもそれが利用できるようにしなければならない。
     確かに、過去と未来を切り離すことは戦略的に筋が通る。しかし必要なのは、ターゲットを絞り込んだ場合、新規事業に対する経営上層部の強力なバックアップ、組織全体のアイデンティティなどをはじめとする、より高度な分離なのだ。

     成熟した技術や市場と、新しい技術や市場との競争をめぐるリーダーシップ課題について考えてみよう。単純化して、実現可能性(組織能力)や対応する顧客タイプ(市場)で分けると、イノベーションは概念上、三つの方向性(領域)で起こる可能性がある。
     一つ目は、「漸進型イノベーション」だ。…
     イノベーションの第二の方向性は、大きな変化、もしくは、不連続的な変化によって起こり、組織能力が無効になるような技術進歩を通じて改善が図られる。この種のイノベーションには通常、異なる知識基盤が必要だ。…
     第三の方向性は、一見するとマイナーな改善によって起こり、既存の技術や構成要素を組み合わせることで既存の製品やサービスを大幅に向上させる。…これは主にクリステンセンが「破壊的イノベーション」と述べたものと同じものだ。

     ベゾスの戦略は短期的な収益性よりも、フリー・キャッシュフローや市場シェアを増進させる長期的見解に立って意思決定することを重視している。「利益率は最適化の対象ではない。私たちが望んでいるのは、一株当たりFCFの絶対額を最大にすることだ。(中略)FCFは投資家が使えるものだが、利益率は使えない」

     アマゾンの戦略を説明する際にベゾスが指摘するのは、顧客志向を打ち出す企業は多いが、そのうち大半がそうなっていないことだ。その理由として、「企業はスキルを重視する。新しい分野に事業を広げようと考える際に、最初に考えるのは『なぜこれをやるべきなのか。自分たちにはその分野のスキルがない』点だ。こうなると、企業の寿命は有限になる。というのは、世の中は変わっていくため、かつては最先端スキルだったとしても、すぐに顧客には不要なものとなるからだ。それよりも『自社の顧客には何が必要か』から始まる戦略のほうがはるかに安定している。この問いかけをした後で、自社のスキルとギャップを調べていくのだ。」
     このアプローチは、「コアコンピタンス」に集中する、「他は干渉しない」という従来の戦略上の教えを無視している。むしろ、短期の漸進型イノベーションを活用しながら、資源や経営陣の支援を探索に振り向けて、長期的な成功に向けた組織能力を重視するのだ。

     ボール社が成功した理由は明白だ。130年にわたって自社を進化させ、技術と市場の変化に合わせて変革を促すリーダーが存在したからにほかならない。彼らがこうした行動をとった背景には、政府が企業買収にストップをかけたときのように必要に迫られてということもあれば、ペットボトルのように市場を先読みし、いち早く新しい市場に移行したケースもある。

     進化論の三つの基礎は、「多様化」「選択」「維持」だ。時間とともに環境が変化すると、特徴上の多様化がその有機体にうまく適合したりしなかったりする。
     そして適合すれば、生存確率が高まる。組織が存続しようと競争し苦戦するうちに、他の組織よりも何らかの競争力を持つ形で明らかに違いが生じる。組織における適合性とは、生物学における繁殖の成功ではなく、(物理的、財務的、知的な)資源を引きるける能力を指す。適合性の低い有機体は死に絶えていくのだ。

     おそらく、これらの事例の中で目を引く最も重要な共通点は、探索ユニットが大組織の資産を活用でき、それが競争優位につながった、ということだ。その資産とは、技術的資産(サイプレス、チバビジョン、HP)や、ブランドや顧客へのアクセス(USAトゥデイ、フレクストロニクス、ダヴィーダ、サイプレス)である。

     リーダーに求められる三つの行動
    ①新しい探索事業が新規の競合に対して競争優位に立てるような、既存組織の資産や組織能力を突き止める。
    ②深化事業から生じる惰性が新しいスタートアップの勢いをそがないように、経営陣が支援し監督する。たとえば、ベンチャーが必要な資源を確保できるようにする。新規事業のリーダーはマイルストーンの達成について説明責任を負う。非生産的な摩擦を極力抑えて、新旧の事業間が交わる部分を管理する、といった具合だ。
    ③新しいベンチャーを正式に切り離して、成熟事業からの邪魔や「支援」なしに、成功に向けて必要な人材、構造、文化を調整できるようにする。

     IBMの歴史を振り返ると、新規成長プロジェクトのリーダーを選ぶときに、より若く、より経験の少ない人材にプロジェクトを任せる傾向がある。これは、リーダーが若いほど「IBMウェイ」が染みついていないので、新しいアプローチを試しやすいだろうとの考え方に立っていた。
     しかし、こうしたリーダーはよく失敗してしまう。若手マネジャーは大企業の中で未熟な事業を育てるために必要なネットワークや信頼関係を持っていないことが多いのだ。こうしたプロジェクトに「最優秀人材を配置していなかった」と、ハレルドは言う。
     それが今や、正反対のアプローチをとるようになり、「大きな事業を構築したことがあり、その過程で多くのことを学び、IBMをよく理解し、変えるべきことやテストすべきことをわきまえた経験豊富な人材を投入するようにしている」。ただし、新規事業の運営は成熟事業とは全く勝手が違うので、新しく選んだリーダーには、新しい機会に必要なスキルについて訓練を受けてもらう。

     両利きになるための要素
    ①探索と深化が必要であることを正当化する明確な戦略的意図。探索ユニットが競争優位を築くために利用可能な組織能力や資産を明確にすることも含まれる。
    ②新しいベンチャーの育成と資金供給に経営陣が関与し、監督し、その芽を摘もうとする人々から保護すること。
    ③ベンチャーが独自に組織構造面で調整を図れるように、深化型事業から十分な距離を置くとともに、企業内の成熟部門が持つ重要な資産や組織能力を活用するのに必要な組織的インターフェースを注意深く設計すること。これには、どの時点で探索ユニットを打ち切るか、あるいは、組織に再編入するかに関する明確な判断基準も含まれる。
    ④探索ユニットや深化ユニットにまたがって共通のアイデンティティをもたらすビジョン、価値観、文化。こうしたものがあると、全員を巻き込み、同じチームの仲間だという意識を持つのに役立つ。

     …明確な戦略的意図、経営陣の保護や支援、対象を絞って統合された適切な組織アーキテクチャー、共通の組織アイデンティティが揃わなければ、両利きの経営を成功させるのは難しい。この一連の要員が補完し合うことにより、深化に伴って惰性の力が働きやすい背景の中で探索を根づかせることができるのだ。

     両利きの経営の成功と失敗にかかわるリーダーシップの原則
    ①心に訴えかける戦略的抱負を示して、幹部チームを巻き込む。
    ②どこに探索と深化との緊張関係を持たせるかを明確に選定する。
    ③幹部チーム間の対立に向き合い、葛藤から学び、事業間のバランスを図る。
    ④「一貫して矛盾する」リーダーシップ行動を実践する。
    ⑤探索事業や深化事業についての議論や意思決定の実践に時間を割く。

  • 産業構造の変革に直面している、世界中ほぼすべての会社のための本。どうすれば効率性の向上によって既存の資産と組織能力を「深化・有効活用(exploitation)」しながら、十分に「探索・開拓(exploration)」するための準備ができるか、というテーマを掲げています。クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」を土台にしつつ、違うのはクリステンセンが「探索」組織は「深化」組織と距離を置き、独立で判断スピードを上げていく組織論がイノベーション実現の要諦であると主張しているのに対し、「探索」と「深化」の両立を高い次元でバランスとるマネージメント=「両利きの経営(ambidexterity)」というリーダーシップが必要だとしているところでしょう。冒頭のアマゾンでジェフ・ベソスが繰り返す「探索」と「深化」の繰り返しが圧倒的で、つまりベソスが持っているコンピテンシーを普通の経営者が持てるか?という問いかけに感じてしまいました。まさに「社長はつらいよ!」。IBMとシスコとの違い、コダックと富士フィルムは紙一重にもおもえます。

  • 長く生き残る企業は現業のExploitationと将来のためのExplorationをバランスをとってやっているとの論。またそのためには二つをある程度別組織にして、トップのビジョンと庇護をで同じ屋根の下にかろうじて収まっている程度のコントロールと、Explorationの方のシステマティックな進捗管理が推奨されている。たくさんの成功・失敗事例が出てくるが、その時の環境と経営者のベットの当たりはずれが要因じゃないか?と見えるものも多く、理論というより逸話の集合体のようにしか個人的には思えない。経営学とはそういうものなのかもしれないが。

  • 最近よく聞く両利きの経営のオリジナル。事例が多くて読むのは大変だが、既存事業を持つ企業が新規分野を探索するには、既存事業とある程度分離しつつも強みとリソースを活用できる組織設計がポイントでそれをできるリーダがいるかどうかが成功と失敗を分ける、ということを再認識。

  • 新規事業担当には必読の1冊。知の探索と知の深化。世の中でも皆気が付き始めていることだとは思うが、具体例も豊富に交えて解説してあり頭の整理になる。

  • クリステンセンのイノベーションのジレンマから時代が過ぎ、新規事業ユニットはスピンアウトすべし、という考え方から一転、成熟事業の組織能力を活用すべし、という戦略に変わった。
    アマゾンの事例やその他、本戦略をとって成功した企業のストーリーは非常に参考になる。
    ただ、目線が経営者の目線であり、その他のマネージャー層で何ができるかはなかなか難しいと思わせられる。

  • 実践あるのみ。

  • イノベーションのジレンマに陥らないためには、「深化」と「探索」の両立が必要。そのためには、探索する事業が競争優位性を持つような、組織的アセットやCapabilityを持っていること、経営陣が「探索」する事業への監督含めコミットすること、既存の「深化」事業と適切な距離を置くこと。物理距離も含む、が大事。また、「深化」「探索」横断でシナジーが生まれるようなビジョンの構築も必要
    IBMが衰退していた時、実は次の市場を創出するような事業アイデアはたくさん資料に存在していた。ただ、実行に至らなかった。実行するための組織改編やアセットの再配分、ができていなかった。
    「探索」していく上で組織間のコンフリクトや調整は必ず生まれる。トップがこのコミュニケーションにどこまで粘り強く入れるか、が重要

  • 探索と深化。変化と進化。アマゾンの箇所が一番読みやすかった。凝りかたまりせず、柔軟に状況に適応していくことと、頑固に極めていくことと、その両方がバランスよく持てるのか、。

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