デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492654804

作品紹介・あらすじ

★英『エコノミスト』誌シニア・エディターが予測する働き方の未来!
★大部分が自動化され、高学歴でも仕事を奪い合う世界で、私たちは何をなすべきか?
★トマ・ピケティ絶賛!

デジタル革命による自動化、グローバリゼーション、スキルの高い少数の人間の生産性向上により、労働力が余る時代となった。

●私たちはどのように働けばいいのか?
●子どもの教育はどうすればいいのか?
●なぜソーシャル・キャピタルの重要性が高まっているのか?
●労働力余剰により政治はどう動くのか?
●ベーシックインカムは有望か?
●私たちは産業革命の経験をどう生かすべきなのか?
●人類の富をどのように分配すべきか?

現場取材と最新データ、テクノロジーの大転換の歴史を踏まえ、気鋭の論客がデジタルエコノミーにおける働き方、政治、社会構造を見通す意欲作。

【推薦の言葉】
「ライアン・エイヴェントは傑出した書き手だ。本書はまちがいなく大ヒットするだろう」――トマ・ピケティ

「テクノロジーが経済と生活に与える影響を語るにライアン・エイヴェントほどの適材はいない」――ティム・ハーフォード

「世界トップクラスの経済学者の多くが、労働市場やテクノロジーに関して、常にライアン・エイヴェントの記事を読み、彼と交流し、討論している」――タイラー・コーエン

「野心的で洞察に富んだ刺激的な書。読みやすさと高度な内容を両立させるという『エコノミスト』のお家芸をまさに実現しており、あらゆるテーマについて的確な問題提起を行っている」――ワシントン・ポスト

感想・レビュー・書評

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  • うーん。前半は面白いんだけどなぁ...
    第2〜3章の雇用の話や雇用のトリレンマのところが一番面白い。

    -生産性が高くて給料が高い
    -機械化が難しい
    -たくさんの人を雇える
    の3つが同時に成り立つことはない

    そのため、新しい産業が出てくると少数の労働者がすごくお金持ちになり、社会の平均は上がるけど、中央値の労働者はむしろ貧しくなる
    日本でも北欧でもアメリカでも労働者の中央値は安くなっていて、トップ層が平均を押し上げている
    デジタルによって仕事がなくなった労働者が新しい給与の高い仕事につけるかというと、そうでもない

    そして、家賃などは高給取りに合わせて上がっていくので、結局は土地がある人がお金を手にしてしまう
    シリコンバレーの1990年代は、給与の上がりよりも土地の高騰スピードのほうが高かった。


    そこまでは面白いんだけど、その先の方で無形資産だのソーシャル・キャピタルだの言い出したあたりでおかしくなる。

    ソーシャル・キャピタルは、「その会社(多くはデジタルエコノミー)が富を生み出している力」で、明確に定義はできないものだという。買収してもそれを手に入れられるとは限らない、集団に宿るスキルみたいなものらしい。

    ソーシャル・キャピタルは街などにも蓄積されていて、富を生み出してる街はソーシャル・キャピタルがたくさんある、という認識だ

    それは簡単に移転できないものらしいので、日本や韓国みたいな例は例外(と言いながらシンガポールや台湾や中国も成功例として出してくる)、新興国は永遠に貧しいままでなぜならソーシャル・キャピタルがないから

    そのあたりで、「なんでもソーシャル・キャピタルで説明するけどソーシャル・キャピタルの明確な定義をせず、うまく行ったらソーシャル・キャピタルのおかげ、だめならソーシャル・キャピタルが足りない」みたいな説明が増えてくる

    このあたり、「都市は人類最高の発明である」とか「貿易戦争の政治経済学」と似た話がでてくるけど、どちらも原典を読んだほうが良さげ。

    その後はベーシックインカムとか、手作りの価値がまた見直されるとか、「人間には表面的な富の他に別の価値が」的な話が出てくる。
    意味のない意見ではないが、市場と切り離してワークすると思わせるほどの説得力は感じなかった。

    結果として、「デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか」については、いまいちぼんやりしていたと思う
    (格差が広がる話と、エレファントカーブ的な話は説得力あるけど、それはこの本の前から言われていたこと)

  • ふむ

  • 本書、原題は「The Wealth of Humans」ということで、アダム・スミスの国富論(The Wealth of Nations)を意識したものだと思います。つまり「人富論」とでも呼べるのかもしれません。ただ日本語のタイトルは『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか』ということで、かなり意味合いが違っています。私は日本語タイトルにひかれて購入したのですが、最後まで読んで、著者が言いたいのは「デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか」ではなく、副題にある「労働力余剰と人類の富」ということだと理解しました。その意味で、デジタルというバズワードを題名に含むことで販売部数は伸ばせたかもしれませんが、読者を道に迷わせるという罪も犯している気がします。

    内容はどうかというと、いかにもエコノミスト誌の記者が書いた本という印象です。つまり、労働力余剰と人類の富を主題にしているけれども、結果として大事なのは「開放性」「平等」だといいたいわけで、正直ガッカリしました。ビル・エモットの本もそうですが、表面的な事象をなぞりながら、エコノミスト誌が会社として主張したいことを主張しているだけで、正直議論の深さを感じませんでした。エコノミスト誌の記事のロングバージョンという印象です。

    また本書にはソーシャルキャピタルの話がかなりのページにわたって書かれていますが、結局ソーシャルキャピタルがどんな役割を今後果たすのか最後までわかりませんでした。これがデジタル社会のカギになると言いたいのか、デジタル社会を阻害する要因になると言いたいのか。本書からは両方の可能性が示唆されていました。また貧しい国の人間を経済的に豊かな国(つまり豊かなソーシャルキャピタルを保有する国)に受け入れることで、ソーシャルキャピタルを輸出できる、これが一番貧しい人々を救う方法だと主張していますが素直に同意できませんでした。また教育は解決策ではないなど、私の理解不足かもしれませんが、首をかしげる主張が多かったです。教育水準を上げることで、誰かが新しい産業を興すかもしれない、そうすると労働需要が増える、という可能性はないのでしょうか。正直同意しかねる主張が多い本だとは思いました。また「デジタルエコノミー」に関する記述もほとんどなく、このワードに期待すると期待を裏切られますので注意が必要かと思います。

  • サイエンス
    computer

  • 労働力は経済学の基本原理では余らない。
    労働塊の誤謬=世の中には一定の仕事しかない、と考えない。セイの法則=供給はそれ自身の需要を作り出す。

    会社の本質。市場を通じて取引しようとすると手間がかかりすぎるので、組織を作って仕事を行うようにしたもの(コース)。
    デジタル革命によって、外注がしやすくなった。具体的な貢献度を測定しやすい。

    最低賃金の引上げは労働力の余剰を進める。
    ベーシックインカムは運営が単純。最低限の受給条件として何らかの仕事に就くことを求める。
    教育は解決にならない=高度な仕事ほどデジタル化が進む。

    パイが大きくなれば問題ない、と政治はいう。
    中国はその方法で成功した。成長が大きかったから多少の分配の失敗は問題なかった。
    アメリカは分配効果が成長効果を飲み込んでしまった。分配を失敗したので格差が広がった。

    高齢化は移民や外国人の利用を促進する効果がある。しかし若い世代は仕事を奪われるため反対する。

  • 邦題が恣意的に過ぎる感はあるが、著者の語る現在世界がおかれている状況は経済と政治があいまってまさに分断をキーワードにグローバル化してきている。最後に著者がこれからの処方箋めいた記述の中で「見えざる手」のアダムスミスこそがそのベースに利他性を前提としている事を紹介しているがまさにこの概念が失われつつあることが大いに危惧される。富の一極化が経済の長期停滞を生んでいるメカニズムも詳らかにされており我々が抱える問題を把握し理解するには格好の著作だと思う。

  • 読了

  • 難しい本。いかなる成功者もソーシャル・キャピタルの蓄積に恩恵を受けているから、それを破壊するのは理に叶わない、という主張と理解した。が、果たしてどうやって望ましい未来に到達するかについて、見通しはない。富裕層が自ら賢者になるしかないのか?カネを蓄えて循環させないことが、この上なく格好悪いことにならなくてはならないと思うが、旧世紀生まれの人間には難しいだろう。

  • 『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか――労働力余剰と人類の富』
    著者:Ryan Avent
    訳者:月谷真紀

    【書誌情報+内容紹介】
    ISBN:9784492654804
    サイズ:四六判 上製 376頁 C3033
    発行日:2017年10月20日
    定価1,944円(税込)

    テクノロジーの進歩で奪われた雇用や富はどうなるのか? イノベーションがもたらす未知の世界に、気鋭のエコノミストが挑む。

    ★英『エコノミスト』誌シニア・エディターが予測する働き方の未来!
    ★大部分が自動化され、高学歴でも仕事を奪い合う世界で、私たちは何をなすべきか?
    ★トマ・ピケティ絶賛!

    デジタル革命による自動化、グローバリゼーション、スキルの高い少数の人間の生産性向上により、労働力が余る時代となった。
    ●私たちはどのように働けばいいのか?
    ●子どもの教育はどうすればいいのか?
    ●なぜソーシャル・キャピタルの重要性が高まっているのか?
    ● 労働力余剰により政治はどう動くのか?
    ●ベーシックインカムは有望か?
    ●私たちは産業革命の経験をどう生かすべきなのか?
    ●人類の富をどのように分配すべきか?

    現場取材と最新データ、テクノロジーの大転換の歴史を踏まえ、気鋭の論客がデジタルエコノミーにおける働き方、政治、社会構造を見通す意欲作。

    [推薦の言葉]
    「ライアン・エイヴェントは傑出した書き手だ。本書はまちがいなく大ヒットするだろう」――トマ・ピケティ

    「テクノロジーが経済と生活に与える影響を語るにライアン・エイヴェントほどの適材はいない」――ティム・ハーフォード

    「世界トップクラスの経済学者の多くが、労働市場やテクノロジーに関して、常にライアン・エイヴェントの記事を読み、彼と交流し、討論している」――タイラー・コーエン

    「野心的で洞察に富んだ刺激的な書。読みやすさと高度な内容を両立させるという『エコノミスト』のお家芸をまさに実現しており、あらゆるテーマについて的確な問題提起を行っている」――ワシントン・ポスト
    https://store.toyokeizai.net/books/9784492654804/


    【簡易目次】
    序 章

    第1部 デジタル革命と労働力の余剰
    第1章 汎用テクノロジー
    第2章 労働力の供給過剰をマネジメントする
    第3章 もっと良い働き口を探して

    第2部 デジタルエコノミーの力学
    第4章 希少性という利点
    第5章 情報処理する有機体としての企業
    第6章 21世紀のソーシャル・キャピタル

    第3部 デジタルエコノミーが道を誤るとき
    第7章 1%の人々限定の場所
    第8章 ハイパーグローバリゼーションと発展しない世界
    第9章 長期停滞という厄災

    第4部 余剰から繁栄へ
    第10章 賃上げがなぜ経済的に実現しにくいのか
    第11章 労働力余剰時代の政治
    第12章 人類の富

    エピローグ
    謝辞
    参考文献/注

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著者プロフィール

ライアン・エイヴェント
英『エコノミスト』シニア・エディター、記者
2007年より『エコノミスト』で世界経済を担当。現在は同誌のシニア・エディター兼経済コラムニスト。『ニューヨーク・タイムズ』、『ワシントン・ポスト』、『ニュー・リパブリック』、『アトランティック』、『ガーディアン』にも寄稿している。2011年にKindle Singleで著書The Gated City(未邦訳)を刊行した。ヴァージニア州アーリントンで妻と2人の子どもとゴールデンレトリバーとともに暮らしている。

「2017年 『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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