5年後、メディアは稼げるか――Monetize or Die?

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  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492762127

作品紹介・あらすじ

米国の新聞社・出版社が繰り広げている
「血みどろの生存競争」が日本にやってくる!

4カ月でビジネス誌系サイトNo.1に導いた
東洋経済オンライン編集長が予見するメディア・サバイバル

今、日本と世界のメディア界は、大きな岐路を迎えている。今後5年、メディア業界は100年に一度といってもいい激震を経験するはずだ。では、ウェブのさらなる進化などによって、メディアの形はどう変わっていくのか。ネットメディアを運営するプレーヤーの目と、業界を分析するジャーナリストの目から、「メディア新世界」の姿を予測する。
・8~9割のメディア人はデフレに
・テクノロジー音痴のメディア人は2流
・日経以外の一般紙はウェブで全滅する
・有料課金できるメディアの条件
・起業家ジャーナリストの時代がくる
・最後のガラパゴス業界が激変する
・欧米メディアの”血みどろ”の戦い
・これからはコンテンツとデータが王様
・5年でデジタルは端役から主役に
・一番偉いのは、新しい”稼ぎ”を創る人
・新時代のカギを握るのは、30代
・“のっぺらぼうメディア”の終わり
・ウェブと紙の6つの違い
・紙の本はそのまま残る?
・雑誌が紙である必要はあるか?
・次世代ジャーナリストの10の生き方
・記者は没落、編集者は引く手あまた
・ウェブメディアの8つの稼ぎ方
・どうすればネット広告は儲かるか?
・サラリーマン記者・編集者の終わり

感想・レビュー・書評

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  • ・自分が勝負しているところはどこだろうか?
    ・マーケティング、データ分析、広告については力を入れてインプットをしなければいけないと切実に痛感した。
    ・もともと新聞をとって読む習慣がないので、人々が有料課金する行動や心理について、もっと知りたいと思った。行動経済学のインプットも必要か?NetflixやAmazonにはなぜお金を払うんだろう?
    ・日本のメディアが広告に依存していないことがアメリカのように紙媒体が衰退していない救いであり、一方で確実に衰退が進む中での状況打破につながらない一番の原因であるように感じた
    ・メディアがウェブサービスから課金について学べるところはたくさんある。広告以外に、どうやってウェブサービスが人々に気持ちよくお金を払わせようとしているのかは、これから気をつけてみていきたい。





    ▼ざっくり言うと
    ・紙からデジタルのへの移行、あるいはデジタルとの併存はもはや不可避。
     単純なネットワーク広告の単価はあがる見込みは無く、ネットワーク広告に頼らずメディアがウェブ起点で「稼げる」活路を見出していくことが重要。
    ・その上で大事なのは、これまでのようにコンテンツを終わりではなく、データを活用してコンテンツを作ったり広告を作れる人材と能力。
     「ビジネスに理解のあるコンテンツ作成のプロ」「コンテンツ作成に理解のあるビジネスのプロ」と、データサイエンティスト、マーケターが重宝される。
    ・まずメディアはウェブ上で圧倒的なブランド(認知)を確立するために、無料でコンテンツの流通を増やす(PV増やし運用型広告で乗り切る)。
     そこから、有料会員やオフラインイベントなどの稼ぎと、記事広告等の単価の高い広告でマネタイズを模索していくべきだ。


    ====
    ▼序章:メディアで起きる7つの大変化
    ◎「紙が中心でデジタルはおまけ」→「デジタルを起点にして、紙、広告、イベントなどの戦略を考える」というシフトが急速に起きる

    ◎これまでの「コンテンツを制作をして終わり」から、コンテンツを出したあとが重要に変化。
    どの記事が読まれたか、どんな属性の読者が読んだのか、どの時間帯に読んだのか、どのページでサイトから離脱したのか、こうした情報を収集・統合・分析し、コンテンツ作成、広告営業、会員戦略などに活かす必要がある。企業に求められるのは、読者データをかつそうして、購買収入や広告収入を最大化して、新しいマネタイズを見出せるかがキーに。
    →収集したデータをもとに、パッケージとしてコンテンツを作れる人材・組織に強みがある
    →データ分析のプロ(データサイエンティスト)とマーケティングのプロが重宝される

    ◎ニュースを選ぶ基準は「どの媒体か」より、「誰が書いたか」「どんなテーマか」が重視されるようになる

    ◎書き手はジャーナリスト専業から、ビジネスパーソンが書き手の性質を持つようになる=ビジネスパーソンの記者化

    ◎「ビジネスに理解のあるコンテンツ作成のプロ」「コンテンツ作成に理解のあるビジネスのプロ」が活躍


    ===
    ▼第1章ウェブメディアをやって痛感したこと
    ◎東洋経済ONLINEがPVを伸ばせた理由として・・・
    ・新連載を50個スタート。特に新しい書き手と組んで、新スター発掘に投資
    ・競合分析し、ターゲット層・ポジショニングを明確化(30代をターゲットに、速報より深堀りした第2報)
    ・UXを重視。会員登録なしでも読める記事を増やし、Yahooなどの配信先のポータルやそこへの配信記事数を10倍程度に増やし、ブランド認知、ユーザーとサイト・記事との接触機会増加をねらう
    ・タイトルが10倍重要。新書や雑誌に似ている。選んでもらう=読んでもらうために、フックのあるタイトルがほぼすべて(雑誌や週刊誌が参考になる)。
    ・ウェブ原稿は感情ベース。スピーチのような構成が機能する。
    ・一貫性よりも多様性(=テレビ局の番組欄のイメージ)。新聞と違って、ウェブ記事には「パッケージとして読む」習慣がない。様々な方向性の記事を載せる=多様性を確保ことで、様々な読者との接点が生まれる(マスコミが中立な報道をする背景には、そのほうが敵を作らず、読者の裾野を広げられるという"ビジネス的な配慮"がある)
    *サイト立ち上げ時時は多様性重視。ブランド確立とともに、方向性を絞っていっていくのがいいかも?

    ・ウェブメディアでは両論併記よりも、主観・断定が重要。一方で担保されるべきは「透明性」。事実にもとづいた記事であるのは大前提で、実はステマだったとか、ユーザーからの信頼性を失うと、ブランドも落ちる。

    ◎雑誌は生き残れるか?
    ・無料のスマホ記事とわざわざ買って読まないといけない雑誌はそもそもかなり苦境
    ・紙の優位性はデザインが優れているとこ(読みたい、手に取りたくなる)
    ・雑誌の良さはパッケージとして売れることだったが、いまのユーザーは必ずしもパッケージ(コース料理)を求めていない。記事単体(アラカルト)を適正価格で有料販売する方法は1つの活路か。
    ・長くて深い特集主義を取ることも、ウェブとの差別化につながるか
    (新聞はしぶといが、ユーザーは主に高齢層。世の中を変える主体ではない高齢層にずっと情報を出していても、退屈・・・)

    ===
    ▼第2章:米国製メディアは稼げているか?
    ◎米国メディアは広告収入への依存度が高く(米:8~9割、日本:2~3割)、リーマンショックで広告収入が激減。
    ◎オンライン広告も分野としては成長したが、100:10:1=紙:ネット:モバイルぐらい、単価が安い。無料でコンテンツを出して広告のインプをいくらあげても、スズメの涙程度にしかならなかった。リーマンショック後も広告単価は戻らず。
    →単価の安さの理由
    ①需給バランス:広告主や広告ニーズに対して、広告枠が無限
    ②先行巨大プレイヤーの存在:GAFAが広告が64%の広告を握っていて、メディアには残り滓しか回ってこないし、その残り滓を取り合わないといけないため

    ◎広告に頼らずどう収入を確保するか?各社の戦略
     
    ★有料課金のメーター制、特に有料と無料記事を組み合わせたFinancial Timesの「フリーミアム」モデルが成功。
    ①1ヶ月に10本など一定数記事が無料で読める
    ②一定本数を越えたら有料会員にならないとそれ以上よめない
    ③有料会員に慣れば限度無く読み放題
    ④検索で出てきた記事、SNS等で拡散された記事は読み放題
    ⑤デジタル購読料は紙より安い
    ・無料記事でライトユーザーを稼ぎ、そのPVで広告収入を確保+ブランディング。ヘビーユーザー化してきたら、課金して購読料を稼ぐ=チャンネルが複数、さらにそれぞれのチャンネルが複数の役割を果たす
    ・★広告か有料課金かの二者択一のちょうど中間をいった
    ・また、BtoB、ビジネスに不可欠な経済情報として法人向けのパッケージを作り、大口を確保する=エリートが読んでるみたいなブランディングにも寄与。
    ・FTはデータを広告にも活用。属性情報を利用してターゲティング、データをもとに広告主やターゲットなる読者によって単価を設定できる

    ◎NYTの戦略
    ①有料会員のオプションを豊富に用意
    特定カテゴリだけ読めるプラン、イベント参加とセットになった特別プランなど
    ②グローバル化
    現地記者を雇い、現地向けの記事を書く。また、NYT本体の記事も翻訳して供給
    →コンテンツ流通量を増やして、インプで広告を稼ぐ作戦か?
    *これうまくいってるのか?BBCとかどうなんだろう?
    ③動画コンテンツ拡充
    エンゲージメントが強いし、制作にコストがかかるので、動画広告は単価高いの背景
    ④イベント・商品展開
    オリジナル商品の開発、スター記者やタレントを登用したリアルイベントを開催


    ◎アトランティック
    紙とデジタルの壁をとっぱらう
    →広告に達成すべきノルマだけを提示して、紙とデジタルどちらで展開しようともノルマさえ達成すればOK
    ブランド広告(ネイティブ広告、スポンサーコンテンツ)・・・コンテンツ仕立ての記事

    ◎フォーブス
    プラットフォームとして、学者などにサイトを開放。CMS=編集権も開放して、競争原理でユーザーに人気なオーサーが残っていく形に。PVやリピーター率を原稿料に反映する。人気なのはテクノロジー、投資、ヘルスケア。
    →読者ニーズを最優先にすると、読者に媚びをうる人が残るような形になるかもしれないが、「調査報道」の記事と「読者ニーズに最大限振る」記事は、ビジネスのためには併存されうる

    ===
    ▼第3章:ウェブメディアでどう稼ぐか

    ★最終的にメディアの存亡を決めるのは崇高な理念ではなく、経済原理

    ◎メディアの機能3つ
    ①コンテンツ収集・制作(調達・生産)
    ②コンテンツのパッケージ化(編集・統合)
    ③コンテンツを読者に届ける(流通・販売)

    ・新聞の宅配サービスた大発明=サブスクだから勝手にコンテンツが届くぶん、勝手に課金されて続けていく

    ・新聞は良い記事を書いても出世できないが、ネタを落とすと評価が下がるので、どうしても守りのマインドになりやすい?


    ◎ビジネス面から見たウェブメディアの4類型(RAPU=ひとりあたりの収益率)
    ①収益力の低いニッチメディア(PV低い/ARPU低い)
    ②収益力の高い日メディア(PV低い/ARPU高い)
    →経済系メディアなど。広告の企画力・営業力で属性がはっきりしているので単価の高い広告がとれることが期待できる
    ③収益力の低いマスメディア(PV高い/ARPU低い)
    ④収益力のあるマスメディア(PV高い/ARPU高い)
    *②がとるべき戦略
    →赤字確保でコンテンツを出しまくり③に。マネタイズに励み④に「成長を重視し、ユーザーが固まったらマネタイズに」
    →マスは取りに行かず、ユーザー満足度を高いままにして高収益を保つ。どこかのタイミングでコアユーザーを損なわない範囲でマスに打って出る

    ◎メディアの稼ぎ方8つ
    ①広告②有料課金③イベント④ゲーム⑤物販⑥データ販売⑦教育⑧★マーケティング支援(地方の中小など。月額制)

    ・広告枠は無限に存在できるので(供給過多)、正規の値段で売り切るのは難しい→運用広告・アドネットワーク(売れ残った広告枠を広告出す側にまとめて売りさばくアウトレットみたいなもの)に売りに出される。ただ激安なので、いくら売りに出しても設けにならない
    →儲けるための突破法は、「面白い広告を作る」「おもしろい広告をリーチさせるため下院登録させて属性情報を深く抑える」「属性情報を広範に紐付け、広告だけでなくイベントや教育、マーケティング支援に使う」
    →企業をコンテンツ仕立てで宣伝するブランドコンテンツは「おもしろい広告」として出てきた有力な手立ての1つ。ただし、「透明性の確保」が重要。
    →また、広告だけに頼ると、スポンサーの意向を気にして、ジャーナリズムが廃れる。広告以外にも収益チャネル=有料課金・購読が必要。

    ◎有料化に成功しているメディアの条件
    ①媒体が経済系、エリート系、データ系=お金を払ってもみたい情報かどうか=自分の儲けにつながる情報かどうか。これらはBtoBにも強み
    ②紙でブランドを築けているか=このブランドにならお金を払うという消費者の意識が定着しているかどうか
    ③無料サイトとしての圧倒的な実績。幅広い読者が存在しないと、広告収入も低いし、有料に移行するそもそものパイが少ない。また、「通りすがり」よりも「リピーター」のほうが、比較した時にお金を払ってくれる

    ★有料化や課金のヒントはネットサービスに有り
    ・ニコニコ→無料会員でも視聴可能だが、有料会員になると視聴者数が制限され、無料ユーザーは追い出される。また生放送ができたり、生主と電話できる→コンテンツというより体験・サービスを売る
    ・クックパッド→有料にすると人気レシピを検索できるようになるなどの特典

    ・有料になると・・・広告表示のない特別なレイアウト、イベントに優先招待、好きな筆者に質問を送れるように、パーソナライズが追加される、検索エンジンや何かが使えるようになる→こうしたオプションとコンテンツを組み合わせて売っていく



    ===
    ▼第4章:食えるメディア人 食えないメディア人

    ・今後、ウェブ媒体や代理店が増え、広告主の数は変わらないので広告主のちからが増していく
    →ウェブとリアル、広告の知識、イベントなどを組み合わせた、横断的に広告やコンテンツをパッケージとして売れる編集者的な視点や能力をもった人に強み

    ★次世代ジャーナリストの条件
    ・媒体を使い分けて、「読者満足度」と「収益機会」を最大化できる人材
    →ホリエモンのインタビューを1時間するとしたら、それをどの媒体で、どんなパッケージで出すか(雑誌の2ページ?4ページのロングインタ?全文お越しをウェブに?動画で生放送?動画を5分に編集?)
    →各媒体の特性を理解して、最適解を出せる力とそれによって収益を最大化できるインサイトが必要

    ・ビジネスへの造詣
    広告やマーケティングを知識を身につけることは、どうしたら読んでもらえるかにもつながる

    ・万能性+最低3つの得意分野を持つ+1つ得意な国を持つ
    それをかけあわせて、オリジナリティにする

    ★孤独とは、ひとりで静かな時をすごすことへの自信と心地よさである(ウィリアム・デレズウィッツ)

    ・教養
    鷲田清一によれば、教養とは「価値の遠近法」
    →あるものごとを①「絶対に必要」②「あってもいいけどなくてもいいもの」③「なくていいもの」④「絶対に不要なもの」と切り分けられる能力のこと


    ★どんな能力の組みわせが考えられるか?
    ・紙とウェブメディアを経験した次世代ライター/エディター
    →エディターは媒体やアウトプットにによって文体や長さなどを使い分け、エディター(アサインメントエディター)はアウトプット法・最適案パッケージ(コンテンツの出し方の戦略)を検討考案出来る人

    ・編集×広告
    基本的に多くのメディアは広告収入でなりたっている
    その広告収入を最大化させるために、広告の知識と、ウェブメディアに馴染むように企画・編集ができる人(中川淳一郎さん、柳瀬博一さん)

    ・福沢諭吉の時事新報はすごい
    イベントの充実(マラソン大会、コンクール美人コンテスト)
    コミュニティ(社交クラブ設立)
    海外報道(ロイターと独占契約)
    書き手の多様化(女性記者の登用)
    コンテンツのエンタメ化(時事をマンガに)
    デザインの配慮(紙をピンクに)
    テクノロジーの先進性(最新式の輪転機を輸入)
    データ情報の充実(天気予報、物価動向などを初めて掲載)
    コンテンツの二次利用(社説を書籍化して出版)
    ジャーナリズムの独立(誇大広告の多い売薬業者を批判→広告主失う)

  • 自分にとっては、発展し続けているウェブメディアについての考え方が参考になった。自分もなんとなく紙よりも自由に表現できるというイメージはあったけど、よりウェブメディアの可能性について考えさせられた。
    •ウェブメディアにおいてもっとも大事なのは、文章力よりも経験や知見の面白さ。
    •二流の記者が書くIT分野の記事よりも、IT分野で活躍するビジネスパーソンに書いてもらった記事のほうが、コンテンツ力が高く読者のニーズにも合致しうる。
    •ウェブメディアにとって大事なのは、ひとつの方向性に読者を誘うことではなく、さまざまな意見を読者に提供し、読者の頭の中を刺激することだと思っている。
    メディアはどうなるのかというよりもウェブメディアについてより興味を持った。

  • どの媒体か?よりも誰が書いたか?どんなテーマか?
    建前よりも本ん江で、客観よりも主観で書く。
    ビジネスを徹底して学ぶ。
    読者を向いた協創。誰がもっとも読者思考を徹底できるか。

  • メディアの位置付け、これからの方向性が垣間見える一冊。
    著者の言うとおり、メディアのこういう分析をした本は少ない。

  • メディア業界の全体観(ビジネルモデル)が勉強できました。
    ウェブの市場が拡大し、業界全体としてこれまでの戦い方では通用しなくなったことと、アメリカ企業の成功事例を元にこれからの戦い方を上手く説明してくれています。
    広告と有料課金が大きな収益元。メディアの属性にも寄るが、個人的には有料課金を取りに行く戦略が重要で、オリジナルコンテンツが勝負の鍵だと思う。メディア業界は面白い。

  • 171012 5年後、メディアは稼げるか 佐々木紀彦 ☆☆☆ 2013年の本ながら秀逸のIT出版論
    ITで多くの業界が激変するのは必至だが、大事なのは「稼ぎ方」=「新しいビジネスモデル」
    →良いコンテンツが、それに見合った対価を得られるようなビジネスモデルを創る
    *世の中みなさん簡単に「新しいビジネスモデルを」と仰るが、それこそ最高の企業秘密!
     みすみすアップサイドのリターンを放棄するのは、善人ではなく、ただの阿呆

    1.ウェブメディア体験で痛感 「東洋経済オンライン」
     速報より分析     クオリティの高い第2報 cf 速報は通信社(欧米)
     クローズよりオープン

    2.米国メディア
     一足早く、変革の洗礼
     広告料激減の法則 「1:10:100」紙 オンライン モバイル →広告枠の制約がない(無限)
     FTの改革 メーター制 法人比率高める(BtoB)
     読者データの分析 宝の山 Amazonになる
    経営サイドの革新力 現場のモチベーションを高め 高いクオリティのコンテンツを実現する
    それが希薄な日本では、メディアの劣化・マンネリ化が進んでいるように思える(100)
    →全く同感 残存者利益なんて行ってるから、モチベーションがどんどん崩れていく

    3.ウェブメディアでどう稼ぐか
    メディア企業の基本機能
    (1)調達・生産 コンテンツを創る
    (2)編集・統合 コンテンツをパッケージ
    (3)流通・販売 コンテンツを読者に
    日本の新聞は「宅配」の強みを持つ 18千店 特落ちリスクを避ける官僚制
    雑誌は正念場  パッケージ解体 コンテンツのバラ売り

    8つの稼ぎ方
    (1) 広告    バナー広告→スマホでは成立しにくい
    (2)有料課金
    (3)イベント
    (4)ゲーム
    (5)物販
    (6)データ販売
    (7)教育
    (8)マーケティング支援

    4.5年後に食えるメディア人 食えないメディア人
    組合せが大事 ①テクノロジー人材②コンテンツ人材③ビジネス人材
    *ウィリアム・デレズウィッツ「優秀なる羊たち」
     「リーダーシップの本質、それは『孤独』である」
    リーデーシップにとって、真に重要なのは想像力であり、新規かつ逆張り的な物の見方を考え出し、それを表現する勇気です。
    よきリーダーであるためには、いかにして一人の時間を作るか、一人で思考に集中できるか、大多数の一致した意見に左右されないか、を判っていなければなりません。
    「孤独」とは、一人で静かな時を過ごすことへの自信と心地よさです。

    「デジタルは電子のコカインである」
    脳を壊してしまう危険がある 読書、古典の読書によって充電が不可欠
    自分の思考を深める
    ⇔SNS メール

    5.福沢諭吉「時事新報」チャレンジ精神とアイデアの豊富さ
    時代は経ても、新しいメディアの登場にどう取組むかの姿勢は同じ
    「新聞人 福沢諭吉に学ぶ」(鈴木隆敏)

  •  タイトルを見て、「これは買わねば」と即座にポチってしまった本。

     著者は「東洋経済オンライン」の編集長。
     短期間で同サイトをビジネス誌系サイト№1に成長させた経験をふまえ、出版社や新聞社、ライターや編集者がこれからの時代に生き残っていく方途を探った本なのである。

     この手の本ではふつう、「ネット時代のジャーナリズムはどうあるべきか?」などというお堅いテーマが前面に出るものだ。
     それに対して本書は、“そんなキレイゴトはどうでもいい。問題はオレらが5年後、10年後に食っていけるかどうかだよ”と(実際にそういう文章があるわけではない)、「マネタイズ」の可能性に的を絞っているところがよい。副題のとおり、「Monetize or Die?」――「カネになるか、しからずんば死か」なのである。
     我々ライターとしては、そこがいちばん知りたいわけだし……。

  •  「東洋経済オンライン」の編集長の佐々木さんが執筆した『5年後、メディアは稼げるか』は、メディアの現在とこれから進むべき道を記した本だ。本の帯には「マネタイズか?死か?」と強烈な煽り文句が書いてあるが、メディアを仕事としている人ならば、これが煽りではなく的確に現状を捉えた言葉であると実感できるだろう。

     ウェブメディアの特徴や概観(アメリカ含め)を網羅的かつ客観的に説明し、メディアの稼ぎ方を考察、これからのメディア人(あくまでメディアで食っていこうとする人)に必要なスキルやスタンス、考え方を筆者の私見も交えながら論じている。

     長年編集部に在籍していた経歴があるためか、具体例を交えながら分かりやすい説明を展開している部分は素晴らしい。今まであまりメディアに触れてこなかった人でも楽に読み進められるので、業界研究の入門書として好適だ。メディア志望の就活生も読んでおいて損はない。

     一方メディアに携わっている立場であれば、この本の位置づけは大きく変わる。デジタル主体の媒体展開(ジャンル横断含め)、ユーザー属性をはじめとするデータの重要性、フリーミアム戦略――いい意味で、ここで書かれていることの多くは"当たり前"だ。というより、当たり前のこととして認識していなければならないように思う。言葉として整理されていなくとも、直近のWebの動きを見ていれば感覚として共感できるはずだ。

  • 現・ユーザベース CCOである佐々木氏による、これからのメディア論が語られた1冊。
    海外のメディアの事例を取り上げながらも、今後日本のメディアが生き残っていくためにはどのような方向性を模索するべきなのか、ということについて自身の考えを非常に簡潔に述べている。

    特に印象的だったのは、メディアの収支モデルの変化。
    従来の紙媒体メディアでは、その収入の多くを広告費で賄っていた(米国 約9割、日本 約3割)が、多くのメディアがWeb媒体に変化することによって、広告費の価格が落ち、次第に売り上げが低下しているというもの。これはこれまでは有限の枠しか設けることができなかった広告(紙面上)が、無限に広がるネットワーク上に広がることとなった(Web上)ため起きた、構造上の大きな変化である。

    この構造変化を明らかにした上で、著者は日本のメディアに警鐘を鳴らす。アメリカのメディアなどは元々広告費への依存が大きかったため様々な変化をしている過渡期であるが、日本のメディアはそこまで依存をしていなかったため、大きな変化を希求していない。
    しかし、このままでは日本のメディアは廃れ、本来の役割を果たすことができなくなってしまう。

    ここまで明らかにした上で、著者はこれからは「起業家的ジャーナリスト」が必要とされていると言う。つまり、自分で企画をし、それを形にし、自分でプロモートするという一連のプロセスを実行でき、かつビジネス、テクノロジーへの理解もあるジャーナリストということである。
    これは私自身が働きながら痛感していることとも重なる。これからは決まった枠を埋めるだけの記者ではなく、ユーザーのニーズを読み解き、かつそれを満たすことのできるジャーナリストこそ価値を持つこととなる。

    メディア業界で起きている大きな変化を分かりやすく解説し、かつその上で方向性を示した良書であると言える。


    ==========
    以下、特に印象に残った箇所を引用する。

    「私自身、ウェブメディアに移ってから、この世界の"ジャーナリズムの弱さ"を痛感させられています。いちばん驚いたのは、当たり前のように、原稿を前もって取材対象者に見せることです。こんなことは、経済ジャーナリズムの世界では考えられません。原稿の事前確認ができれば、取材対象者は自分に都合の悪い話はすべて削ってしまいます。(p. 138)」

    「個人的にはいちばん大事だと思っているのが、孤独に耐える力です。ビジネス誌の編集者という仕事柄、起業家などイノベーティブな人物に出会う機会も多いですが、そうした人々には共通点があります。それは、人生のターニングポイントで一度は逆張りをしているということです。進学、就職、転職、起業など、人生の要所で周りから反対されるような決断をしています。では、逆張りする力、自分の信念を貫く力はどこから生まれるのでしょうか。それは、孤独に耐える力です。(p. 171)」

  • この本が書かれたのが2013年、まさに署名にあるように「5年後、メディアは稼げるか」を問う年である2018年にやっと手に取り読みました。既存メディアの実際の経営状態はどうなのかはわかりませんが、書籍では「新聞社崩壊」とか「躍進するコンテンツ、淘汰されるメディア」とか曲がり角に警鐘を鳴らす本がいっぱいです。5年の変化で一番象徴的だな、と思うのは著者が、この本を上程した後、2014年に「東洋経済オンライン」の編集長から「NewsPicks」の編集長になったこと。まさに本書で書かれている、会社よりも個人、というテーマの実践ですね。5年前のメディア界の見取り図ですが、現在でもメディアに関わる人にとっての教科書としてはわかりやすいです。著者の最近の講演を聞いて本書を手にしたのですが、その時に話されていて、本書に書かれていないのは5Gという通信環境と動画というコンテンツの可能性についてです。いつもメディアはテクノロジーが引っ張るのだと思います。

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著者プロフィール

NewsPicks Studios CEO
1979年福岡県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業、スタンフォード大学大学院で修士号取得(国際政治経済専攻)。東洋経済新報社で自動車、IT業界などを担当。2012年11月、「東洋経済オンライン」編集長に就任。リニューアルから4カ月で5301万ページビューを記録し、同サイトをビジネス誌系サイトNo.1に導く。著書に『米国製エリートは本当にすごいのか?』『5年後、メディアは稼げるか』『日本3.0 2020年の人生戦略』がある。

「2019年 『異質なモノをかけ合わせ、新たなビジネスを生み出す 編集思考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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